名張の朝日
快晴! ホテルの部屋からは朝日が昇り、田んぼの水面を赤く染めるのが見渡せます。
新緑の奈良巡りの2日目は昨日に増してすばらしいお天気のようです。今日も見どころ満載、2つの水辺と2つのお寺をメインに楽しみます。
名張の民家
名張からのR165は交通量がそこそこあり、周辺の景色もパッとしない道ですが、新夏見橋を左折すると趣はだいぶ変わってきて、川の向こう岸には伝統的な民家が並ぶようになります。
まずは上り
今日も上りがあるコースですが、昨日のようにアップダウンの繰り返しではなく、栂坂(とがさか)トンネルまでずっと上り、そのあとは、ほぼずっと下りというもの。
新夏見橋で昨日まで辿った名張川から青蓮寺川が分れます。この青蓮寺川沿いを進むとすぐに上りになりました。この県道81号はR165と違い、車はとても少なく快適です。上り出すと川面は見えないものの対岸の山の緑が目を楽しませてくれます。
青蓮寺湖
2kmほどえっちらおっちらすると青蓮寺ダムに到着です。ダムにたっぷり蓄えられた豊かな水に周辺の木々が映り込み、とてもきれいです。
のんびり湖岸を行く
真っ青な空にたくさんの緑、豊かな水と、いい雰囲気の中をのんびり進むは、ここのところ出席率抜群のムカエルと企て人ジーク。
弁天橋
ダムを過ぎ少し行くと赤いアーチの弁天橋が見えてきます。この橋を渡り2つに分れた湖の西側の湖岸を進みます。
快調
『湖の廻りはぼぼ平坦で気持ちよく走れるナー』 とムカエルが飛ばし、ケン・ボーズが追います。
もう一つの橋、青蓮寺橋を渡るとがらっと雰囲気が変わり、公園風のきれいに整備された場所に出ました。どうやらキャンプ場のようです。そのキャンプ場を突っ切り、先へ進むとこれまた雰囲気ががらりと変わり、今度はダートの細道。通り抜けできるかな~、と思うものの、まあ行ってみることにしました。
この道、まもなく舗装路になるもののどんどん上り、湖は遥か下に。日なたはお天気が良すぎて暑い暑い! そんな中でお猿さんが2匹、道端でなにやら食べているというのどかさです。
香落渓に入る
10分ほどへこへこ上ったあとは豪快に下りますが、これはあっという間。香落橋に下ると青蓮寺湖はぐっと狭くなり青蓮寺川の流れとなり、香落渓へと続いていました。さらさらという青蓮寺川のせせらぎが心地よく響く中を壮快に飛ばします。
柱状節理の岩肌
我らが博識のケン・ボーズによれば、このあたりは大昔は火山地帯で、溶岩が冷えて岩になり、また溶岩が冷えて岩になり、これを繰り返して積もり積もった岩が、長年の風雨に浸食されて、現在のような複雑な岩肌になったのだそうです。つまりこの柱状節理の連続した地形と青蓮寺川の流れが香落渓というわけなんですね。
渓流となった青蓮寺川
川の流れはますます渓流風になり、ときどき、かじか蛙の『コロコロ』と虫の泣くような声が聞こえます。かじか蛙の『かじか』は『河鹿』と書くそうです。河の鹿、これはこの蛙の鳴き声が鹿に似ていることから来ているそうですが、鹿の声って知らないからな~
進むにつれ山の色合いが様々に変化し、そのところどころで柱状節理の岩肌がむき出しています。こういったところには屏風岩、天満領、天狗柱岩、小太郎岩など様々な名前が付けられています。
小太郎岩
こういったものの中で一番有名なのは、どうやらもっとも上流にある、幅700m、高さ200mの小太郎岩のようです。ちょっと遠いので圧巻というわけではありませんが、ごつごつした岩肌が人の顔に見えなくもありません。この岩の名になっている小太郎にはちょっとした物語が付いているようです。
すばらしき田舎
進行左手に視界が開けると香落渓は終わり、田んぼと畑と民家のある田舎の風景になりました。のんびりしたいい雰囲気の道が続いて行きます。
かつては茅葺きだったきつい屋根勾配の民家、入母屋造りの瓦屋根の民家、そして勾配が緩い切り妻屋根の民家といろいろですが、しっとりとした感じです。
民家と山
雰囲気のある民家、旧道のすばらしいプロポーションの街の造りを見ながら進めば、『屏風岩あっち』の看板が。香落渓の入口にも同名のものがありましたが、こちらの規模はそれをはるかにしのぐようです。しかしそこに行くにはルートをちょっと外れなければならないので、遠目に見るだけにしました。
その屏風岩はほんのちょっとだけしか顔を出さず、間もなく見えなくなってしまいましたが、確かに今まで見てきた岩々より数段大きくびっくりしました。後で地図を確認すると、この屏風岩を経由して室生寺方面に抜けるルートもありました。知らずに残念!
栂坂峠へ
次に目指すは栂坂(とがさか)峠です。日が高くなり暑い暑い。だらだら、よれよれと上り詰めますが、最後は国道となるので勾配はほどほど、ほとんど問題ありません。
栂坂峠には新しいトンネル、栂坂トンネルができていたのでこちらを使うことにしました。峠を越すよりやっぱりトンネルのほうが楽ですからね。
しかしこのトンネル、2kmほどとかなり長く、最近完成したものなのに歩道は狭く自転車が通れる幅がなかったのが残念でした。あまり車が通らないので車道でもさほど恐怖を感じなかったのが救いです。
栂坂峠からの下り
長短2つの栂坂トンネルを越えると、室生寺までは大きくUターンしたのち、ずっと下りとなります。この下りは室生寺まで続く室生川に沿った変化に富んだすばらしい道ですが、カーブが多いので慎重に下ります。
室生寺の入口の太鼓橋
下りが穏やかになり、急に建物が増えたと思ったらそこは室生寺の門前でした。旅館と食堂の間に挟まれた、気をつけないと見過ごしそうな小さなくぼみの先に、室生寺に渡る赤い太鼓橋が見えます。
室生寺五重塔
その太鼓橋を渡ると石楠花(シャクナゲ)が満開。このお寺は石楠花でも有名だそうです。石段を上り金堂、本堂を経て、その脇の階段から上を見上げれば、かの有名な五重塔が鎮座しています。この塔は高さわずか16mと非常に小さなものですが、端正な姿に、その大きさからは想像できない優雅さを備えた逸品。1998年に台風で大きな被害を受けましたが、2年後には修復され今に至っています。
上から五重塔と本堂を望む
五重塔から上の奥の院まではものすごい数の階段を上らなければなりません。何度もここを訪れているケン・ボーズはここで待っているということで、ジーク、ムカエル、サイダーが奥の院に向かうのですが、原生林に囲まれた上の方は石の階段の高さがとても大きく、上に着いた時にはみんなへろへろでした。しかし全体のイメージはどこか女性的な、柔らかな感じがするお寺です。
室生湖赤人橋
ゆっくり室生寺を見学したあとはもう一つのお寺、長谷寺に向かいます。大野までしばらく下って、少し上るとそこは室生ダム、室生湖です。
湖の中程にある赤人橋を越え、室生湖が宇陀川になるところにあるもう一つの橋を渡って北岸に出ると、そこはちょっとワイルドな道でした。
北岸を行く
左は急斜面の薮で下は湖です。道はいつしかダートの細道になりました。突然、『がしゃ~~ん、バタン』 という音。後ろを見るとなんとジークが薮の中に! ダートの細道、上りでケン・ボーズに詰まってしまい、拍子で転げ落ちたらしい。しかし、とくに怪我もなく脱出したので、ホッ。。
長谷寺の登廊
ちょっとしたアクシデントはありましたが、榛原まで下りなんとか長谷寺に到着しました。このお寺のパンフレットには『花の御寺 長谷寺』とあります。春には桜、夏には紫陽花、秋には紅葉、冬には寒牡丹と一年を通じて花々が境内に彩りを添えるとありますが、今見頃なのは牡丹です。
牡丹と登廊
入口の仁王門に向かうまでの周辺にも牡丹がちらほら。しかし仁王門をくぐり登廊に至とその廻りは満開の牡丹がぎっしり。赤、ピンク、黄色、白と色もとりどりです。ちょっとめずらしい緑の花も宗宝蔵のあたりにあるとか。
薄いピンクの牡丹
こちらは初々しく清々しいちょっとだけピンクがかった白い牡丹。
本堂の美しい幕
登廊をどんどん登った先にあるのは本堂。前面には清水寺のような懸造りの舞台があり、そこからの眺めはなかなかのものです。このお堂は正堂と礼堂からなる双堂(ならびどう)で、その間から表を見れば正面に下がる幕が逆光に美しく映えていました。黒光りの床も幻想的です。
桜井へ
長谷寺からは一路桜井を目指します。R165は特に楽しい道でもないので、旧道があるところではそちらを通ります。旧道は風情があってなかなかよろしい。
桜井の宿
到着予定時刻ぴったりに桜井に到着。本日の宿は昨日と打って変わって純和風です。その宿の前で無事ゴールのパフォーマンスは、おいおい、お猿じゃあないんだよ!
ひとこと by ケン・ボーズ
この前のジオポタ参加は07年9月の神戸舞子浜。
『久し振りに参加してみようか』 とジークの案内を見て思案していた。
実は、07年12月に2回目の狭心症の発作に襲われた。1回目は2分ほどであったが、これは10分ほども続く強烈なもの。心臓を鷲づかみされているような猛烈な痛み。ソファで身体を丸くしていたその間に、上半身は冷たい汗でグッショリ。以来、ニトロケースを首からぶら下げる物騒な存在となった。
更に、08年6月には不注意からの左足第5中足骨の骨折。
参加したいが何かがあって迷惑をかけてはいけないし、きつい坂もある上級コースとある。大丈夫だろうかと逡巡が続いていた。
そこへサイダーからの「おいでませ」の掛け声。
新緑のモミジをくぐって走っていると、冷涼な空気が身体全体を包み込み、肺の底まで緑に染まってしまうように思った。そして、名張川の清流や碧いダム湖の水面に感動した。香落渓沿いにある屏風岩や小太郎岩の不思議な光景は室生火山帯が作り出したものと初めて知った。
思い切って参加させて頂いて良かった。
素晴らしいコースを設計してくれたジークに感謝。激坂になるとたちまち遅れる私の後尾についてサポートしてくれたムカエルに感謝。誘ってくれたサイダーに感謝。
一人では家の近場のポタしか出来ない私だが、3日間で180kmを走れたのは素晴らしい仲間のお蔭です。
また、一緒に走る日を楽しみに!
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uploaded:2009-05-11