ペシ岬から
今日は利尻島の鴛泊(おしどまり)から礼文島の香深(かふか)へフェリーで移動です。
その前に少し時間があったので、鴛泊湾のすぐ北側にあるペシ岬に上ってみました。ちょっとへんてこりんな形のペシ岬は下から見上げてもいかにも急ですが、実際上ってみるとそれ以上でへこへこ。足下には二三の高山植物が花を咲かせていましたが、それをゆっくり眺める余裕もなく、ただ黙々と頂上を目指します。頂上からの眺めは中々で、ここで旅を終えるジークの乗ったフェリーを見送りました。
知床口をスタート
朝のハイキングを楽しんだあとは40分の航海で礼文島へ。礼文島には高い山がなく、海から見るととても薄べったく見えます。島が近づいても利尻島へのアプローチの時のような感動はありませんでした。
香深港に到着すると各宿の方々が宿泊客を出迎えています。私たちはフェリーターミナルに不要な荷物を置き、明日宿泊する『民宿はまなす』さんの車に乗り込みました。はまなすさんは礼文島でもっともポピュラーなハイキングコース、桃岩展望台コースの一方の入口に近いところにあるので、無理なお願いをして送ってもらうことにしたのです。
あった、何の花?
車で数分南へ走ると、桃岩展望台コースの入口がある知床(しれとこ)の集落に到着です。ここからまずは元地灯台を目指します。今日は生憎の曇り空ですが、なんとか雨は免れそうで心はウキウキ。
しかし道はいきなり上りで初っ端からアヒアヒ。周辺はいつの間にか松林になり霧が出てきました。始めの方にはほとんど花は見られません。霧は徐々に深くなり、どんどん視界が悪くなります。上から下りてくる人々は皆カッパを着込んでいます。そんな方々に様子を聞けば、上ではほとんどなんにも見えないそうな。え~~ぇ。。
ついに花畑発見
元地灯台の少し手前にある秘密の花園は、最近ハイカーが踏み荒らして進入禁止になっているとのことなので、そこには寄らずに元地灯台へと急ぎます。ここまでは白い小さい菊のような花とピンクのタカネナデシコ、黄色いキンミズヒキなどをポツポツと見受けました。灯台の折り返しポイントに到達すると、すぐそこに灯台があるはずなのに、まったく何も見えません。このときの視界はわずか数メートルほどだったでしょう。
この折り返しから上り道は狭く、急になります。道脇にはガードと手すりを兼ねたロープが張られるようになります。えっさ、えっさと這い上るようにして進み、小高い丘を回り込むと、
『お、おっ、咲いている、きれい~』 との叫びが。そこには薄紫のツリガネニンジンを始めとし、数種類の花が咲いていたのです。
花とにんまりのケロガメ
『来てよかった~。先月の礼文島は、花、まったく咲いていなかったんだよ。』 と、この花畑を前に感激のケロガメでした。ケロガメはデジカメに入れてある花図鑑と足下の花を見比べて、この黄色いのはクサレダマ、こっちのピンクはシオガマギク、と解説してくれます。
レブンウスユキソウ
そしてついにここの目玉のレブンウスユキソウを発見。この花はエーデルワイスの仲間で、白い花びらに見えるのは実は苞葉(ほうよう)で、綿毛が生えており、その名はこれが薄く雪化粧しているように見えることから命名されたようです。本当の花は真ん中にある丸いやつで、プチプチの茶色が終わりかけの雌花です。これは本来黄色だそうです。
花畑
白いチシマワレモコウは宙にふわふわと浮いているようで、薄紫のツリガネニンジンはただいま満開、それに良く似たもっと背の高いのはミソガワソウ。小さな白いエゾウメバチソウもちらほらし、黄色いのはトウゲブキか。かわいらしいチシママンテマも。
桃岩展望台より桃岩を望む
ここからはとにかく花畑の連続です。小さなピンクはイブキジャコウソウ、かわいらしいぐりぐりスクリューはネジバナと楽しく続きます。メインの散策路から海側に伸びた枝道の先にある展望台は、きっとお天気だったらきれいな海が見晴らせるのでしょうが、この時はまったく何も見えず。ずいぶん歩いたのでそこでお昼にしました。
午後の部も足下の花々を楽しみつつ、アップダウンを繰り返します。ちょっと疲れてきたころヨロヨロと到着したのがこちらの桃岩展望台。ここはすぐ側まで車でやって来られるので、このハイキングコースの一方の入口となっているところです。
周囲のあらゆるものを隠していた霧が一瞬だけ薄くなり、桃岩の頭が顔を出した!
下界へ
桃岩展望台コースの散策を終え、下界へ下り出します。高度が下がると霧がなくなり、見晴らしも良くなりました。山間からは香深の海が見えます。
トンネル近くで車道に出た後、少し下ると礼文林道への分岐に到着しました。ケロガメは、もう花は満喫、とのことでまっすぐ香深へ下ります。サイダーとサリーナは林道コースへ突入。
ウスユキソウ群生地
この林道コースは先ほどまでの桃岩展望台コースとはずいぶん様子が異なり、砂利道ながら車が通れる道を進みます。ガイドツアーの方々が数組おられたので、ここも人気はまずまずなようですが、道端に花はあまり咲いておらず、ちょっとがっかりです。
その思いが一変したのはウスユキソウ群生地に到達した時でした。レブンウスユキソウはそろそろおしまいの時期なので、ここには花がまだ残っているかどうか不安だったのですが、なんのなんの。
ウスユキソウの黄色い花
ここは見事でした。レブンウスユキソウは、本当のあのちっこい黄色い花は大半は終わっていますが株はたくさんあり、その他にもたくさんの種類の花が咲いていたのです。
イブキジャコウソウ
高山植物は一つ一つの花はそれほど華やかではありません。しかし自然の厳しい環境の中でもなんとか生き抜き、小さな花を咲かせるのに、人々は感動するのでしょう。そういったものが群れになると、それはなおさらです。おそらくここのウスユキソウ群生地には人の手が入れられているのだろうと思いますが、それでも植物園ではなく、こういったロケーションで見られるのは幸せなことだと思います。
とにかく花、花、花
林道コースはただここ、ウスユキソウ群生地に来るのを目的としても良いコースでしょう。この群生地にはレンジャーハウスがあり、そこのレンジャーがちょっと花案内をしてくれました。 来た道を引き返すと、ちょっとめずらしい白いツリガネニンジン、タカネナデシコにも白花が。 黄色い星形のハナイカリ、紫のナミキソウ、赤い実を付けたナナカマド、ネジバナもたくさん。教えてもらうとこんなに発見できるものなんですね。
268ピークの案内板
ウスユキソウ群生地はとても満足しました。この少し先には『星の丘』と呼ばれる見どころがありますが、少々くたびれていたので寄らずに、268ピークと呼ばれるショートカットコースで香深へ下ることにしました。
時々とおせんぼ
268ピークはこの道近くの山の高さの268mを示しているようです。林道から分岐した道は下るのかと思いきやしばらくは上り。道幅は徐々に狭まり、ついに人一人がやっと通れるほどになり、時々周囲の草木がとおせんぼします。かなり急な斜面を上りきり、下りに転じるとこれがまたかなりの急勾配。
巨大きのこ
周囲はいつの間にか草地から林になっています。そこにはこんな巨大なきのこが。たべられるかな~