一足早い春を楽しもうとやってきたのは房総。残念なことに空は白い雲に覆われています。12月からここまでずっとお天気だったのに、この週末だけ曇りに寒気到来とのことで、少し冴えません。しかしその空も良く見ればうっすらと青く、時々お日様が顔を出します。
都心から鈍行電車で3時間の保田で下りたあとは、まず海岸へと向かいました。今日は水仙を楽しむと同時に、房総半島を横断し最後に太平洋を眺めるので、その前に西側の浦賀水道を見ることにしたのです。浦賀水道の向こうには三浦半島がとても近く見えています。
『お~、あれが三浦半島? かなり近いんだね~』 とは地理に疎いムカエル。
浦賀水道を眺めたあと保田川を渡り、内房線の線路を越えて江月水仙ロードに入ります。この道はその名のとおり、道端に水仙がいっぱい。12月から2月上旬までこの水仙が楽しめます。
この一帯の水仙は花の大きな西洋水仙ではなく、日本に古来より自生していたニホンスイセンのようで、花は花弁が白、副花冠が黄色の小ぶりのものです。ここでは山ももう春めいた色になっていて、白い梅も咲いています。
春の花といえばもう一つ菜の花ですね。暖かい房総ではその菜の花ももう満開です。
水仙と菜の花を眺めつつ、江月水仙ロードをのんびり進みます。この道は車はあまり通りませんが、この時期は観光客で結構な賑わいを見せています。
ここ鋸南町は、越前、淡路島とともに日本三大水仙群生地の一つとのことで、その水仙は元名水仙と呼ばれ、かつては船で江戸に運ばれていたそうです。道脇には水仙の畑がたくさんあります。
房総に高い山はありませんが小高い山がたくさん。道はその小さな山を徐々に上って行きます。のどかでいい雰囲気です。
道が二手に別れるあたりから勾配がきつくなります。ちょっとえっこらえっこらして、ちょっと押したりして、なんとか上って行きます。
道端の水仙が少なくなり、観光客の姿もほとんどなくなるころ、江月上の小さな峠を越えます。その少し先で視界が開けると、房総の山並みが姿を見せました。山ばっかり~
中尾原まで下り東へ向かうと、川久保の集落の中の一つの民家が目に留まりました。茅葺き屋根の痛んだところを抜いて差し替える、『差茅』が行われていました。職人はたった二人だけ。いったい何日くらいかかるの?
しばらく差茅の様子を見学したあとは佐久間ダムへと向かいます。県道から分岐したダムへの道は上り。ちょっとえっこらしてダム湖の畔に辿り着きました。このあたりから再び水仙が咲き出しますが、江月水仙ロードにいたたくさんの観光客もここまでは足を延ばさないようで、ひっそりと落ち着いた雰囲気のところです。
佐久間ダムから大崩へ向かう道はいくつかありますが、私たちは一番東にある一番鄙びた道を辿ることにしました。しかし案の定、これがまたまた激坂なのでした。ムカエルはなんとかガシガシと上って行きますが、へなちょこサイダーとサリーナは即押しに。
ここはちょっと山っぽく、その割に片側が落ち込んでいるので空が広く、足元には白い水仙と、とてもいい雰囲気のところです。TOP写真もこのあたりです。
『こんなところはゆっくり押し歩いて水仙を楽しまなくっちゃあ~』 とはへなへなサイダーの言い訳でした。
斜面一面の水仙!
ほのかに水仙の香りが漂います。
見覚えのあるところへ出た、と思ったらそこが『をくづれ水仙郷』でした。ここは昨年の企画で訪れたところで、その時は水仙は終わりに近かったのですが、晴れだったのでとてもいい雰囲気でした。今回は曇りなので輝くような水仙ではありませんが、盛期の初々しい水仙がいっぱいです。
その『をくづれ水仙郷』から、これまでやってきた佐久間ダム方面を見渡します。やっぱり山がちなんですね。
売店でみかんやかんそういもを食したのち、『をくづれ水仙郷』を出て東へ向かいます。ここからもしばらく上りが続きます。
小さなピークを越えてちょっと下りになったと思ったらきつい上り返しが待っていました。その坂をヨタヨタと這い上がると再び視界が開け、房総の小さな山並みが見えます。下には夏みかんがたわわに実っています。このあたりは水仙が有名ですがここまで夏みかんもたくさん見かけました。『をくづれ水仙郷』で買った地産のみかんはとっても甘くて美味しかった。このあたりはみかんや夏みかんといった柑橘類の産地としても有名なのでしょうか。
この視界が開けたところがピークでそのあとは県道まで一気に下ります。県道に出るルートは3つか4つあるようですが、今回は前回とは違ったルートで下ります。西畑、石畑という小さな集落を抜けるルートで、国土地理院の地図では一部破線になっているのでちょっとドキドキものでしたが、実際はわりかし普通の道でした。きっと最近舗装されたのでしょう。
西畑の集落を過ぎたところで右手の視界が開けます。中央のぽっこりした山はおそらくこれから向かうルートのどこかだろうと思うのですが、地図を見てもあの山がどこなのかはっきりしません。これまであまり見かけなかった田んぼが段々に連なっているのが見えます。このどこかの区画にこれから向かう大山の千枚田があるはず。
県道から加茂川を渡り田んぼの中を進みます。このあたりは丘陵地なのでどこもかしこも段々田んぼばかりです。この時期、田んぼに水は入っていませんが、用水が滲み出したのか、ところどころに水たまりがあります。日影の水たまりには氷が張っていました。お~、さむ~。。
田んぼが段々なら道もだんだんと上って行きます。今日のルート、平地はないのかな。ここの道端にも水仙が。いや~、ここは本当にのどか。
大山千枚田へ向かう途中の平塚に新しくできたレストランで昼食です。このレストラン、目の前の棚田を見下ろすすばらしいロケーションに建っています。建物もメニューも洒落ていて、ちょっといい気分。
午後の部は大山の千枚田から。去年来た時は直前に雨でも降ったのか一部の田んぼに水が入っていましたが、今回は案の定、どの田んぼにも水はなし。ただ乾いた地面が段々に連なっています。
ここの田んぼは雨水のみで耕作されており、オーナー制により運営されています。いつまでも残ってほしい風景の一つです。
大山の千枚田からはこちらも前回とは違った道で県道へ向かいます。愛宕山の中腹までちょっと上って、細野に下りるルートです。この道、田んぼの中や民家の脇、そしてちょっとした森の中を抜けるなど、変化のあるなかなかいい道でした。
細野で県道へ出、松尾寺から小さな川沿いを上り出すとそこは桜並木です。春にはきっと素晴らしい桜の花が咲くでしょう。
左手に嶺岡浅間が現れました。山頂付近にぴょこんと飛び出した鉄塔の足元が嶺岡中央林道の最高点で、これからあそこまで上るのです。
ちょっとだけ国道を上り嶺岡中央林道に入ります。国道を走ってみると、これまで走ってきた県道や田舎道に比べ、勾配がとても穏やかなのがわかります。たいていどこでも名もなき細道の勾配はとてもきつく、国道が一番穏やかだということがこの日も実感させられました。
嶺岡中央林道は房総半島を横断する小さな山脈の尾根を進み、東は勝山から西は鴨川へと繋がっています。先の国道410号から鴨川方面に抜けるこの道には、嶺岡中央林道2号線と表示があります。
ここは尾根道なのでさぞかし眺めが良かろうと思いがちですが、実はこの道はさほどというか、ほとんど眺めはありません。そんな中で、ちらっと南に抜けた眺めがこちら。
国道からずっと上り、下から見えた嶺岡浅間の鉄塔の下まで上り詰めると、本日の最高点標高320mに到達します。
その最高点から少し東へ行ったところで今度は北側への視界が抜けます。ここはパラグライダーなどの滑空場になっているところなのですが、この日はさすがに条件が厳しいようで、空に舞うそれらの姿はありません。
標準的な嶺岡中央林道の姿はこちらでしょうか。両側を木立に囲まれほとんど視界がありません。嶺岡浅間の鉄塔から鴨川間は、ちょっとしたアップダウンはありますがずっと下りです。曇り空で西に日が落ち始めた夕刻のダウンヒルは、かなり寒い。
目の前を灰色っぽいものが横切って行きました。なんとその生き物はタヌキ。
ほとんどまっすぐなこの道は高速ダウンヒルが楽しめます。ビューンビューンと下って行くと、前方に鴨川の太平洋が顔を出します。この日は曇りで海の色もちょっと冴えませんが、お天気のこの下りはきっと最高でしょうね。
下りの勾配が穏やかになったところに魚見塚一戦場公園→の標識が現れたので寄って見ることにしました。公園の先、道路を挟み海側に500mほど行ったところに展望台があります。写真は巨大な像が建つその展望台からの眺めです。鴨川の海岸と太平洋がぐるりと見渡せます。
展望台で鴨川の海岸と太平洋を眺め、これで房総横断完了ということにしました。日没が近づいてきたので、あとは本日の宿がある高鶴山へと急ぎます。
なんとか日没前に宿に到着し、一風呂浴びて向かうは今宵のお楽しみ、本日のSpecial Event。
夕食はなんと、すばらしいスペイン料理なのです。畑の中の一軒家、薪ストーブに赤い火が灯るこの店の名パエジェーラとはパエリャ鍋のこと。ハモン・セラーノとチーズの前菜に始まり、パタタス・ブラーバス、マッシュルームの生ハム詰め、カジョス(ハチノス)、そしてパエリャに各々お気に入りのデザート。あ~、しあわせ~~