熊本市内
2011年のGW企画は東日本大震災のため予定していた計画を急遽変更、九州は熊本から天草、雲仙を巡り島原までとなりました。前夜熊本に乗り込んだのは、ケロガメ、ジーク、ムカエル、サリーナ、サイダーの5人。
当日はジオポタにしてはめずらしく早い、朝7時に集合。これは本日最大の見どころである通潤橋の放水時刻に間に合うようにです。この日のテーマは熊本の古い石造のアーチ橋(めがね橋)巡りなのです。
肥後のめがね橋のルーツは、加藤清正が熊本城築城のために近江より呼び寄せた石工の子孫が長崎で石橋の技術を学び、この地にアーチ橋を架けたのが始まりのようで、その後、長崎奉行所の下級武士だった人物が習得した技術を発展させていった種山の石工と呼ばれる集団により、この地に多くのアーチ橋が残されたようです。
水前寺江津湖公園入口付近
熊本市街の路面電車が走る大通りから裏道を抜けて、まずは水前寺江津湖公園に向かいます。
水前寺江津湖公園は熊本の観光名所の一つである水前寺公園の少し南にある、瓢箪型をした江津湖の廻りに整備されています。
水前寺江津湖公園
湖の畔には遊歩道が整備され、気持ち良く走れます。
川の水はとても澄んでいてきれいで、野鳥もたくさん。ここには釣りを楽しんでいる人やカヌーの練習をしている人、ジョギングをしている人などがいました。
『ここはとってもきれい~』 とサリーナが行く。
カントリーロードを行く
水前寺江津湖公園を出るとそこはもう郊外といった雰囲気になり、田畑が広がります。
県道から田畑の中を通るカントリーロードに入れば、そこはジオポタ貸し切りの道。遠くに緑の山を望みながら快調に飛ばすジーク、サリーナ、ケロガメ。
あやしげな道に
その道が御船町の中心部を通り抜けると、突然細いダート道になります。
かまわず突き進むは先頭サイダー。他の面々は行けるのかどうか半信半疑で、行こうか戻ろうかと思案。しかしサイダーがどんどこ行ってしまうので止むなく後を追います。
続あやしげな道
この怪しげな道は細いもののすぐに舗装路になり、山の中へと入って行きます。
新緑が美しいこの道はちょっと上ったのち、すぐ下りとなりました。
R445
下った先でR445に合流しました。
R445は狭く、それなりに交通量があるので慎重に進みます。
続R445
その脇には緑川の支流、御船川が流れます。
このあたりの石橋の多くは緑川流域に架かっており、今日のめがね橋巡りもそれらのいくつかを辿るのです。御船川のこのあたりにはかつて、御船川目鑑橋(みふねがわめがねばし)という石造で二連の美しいアーチ橋が架かっていたそうですが、洪水で流失したため現在はその姿を見ることができないのが残念。
下鶴橋
R445は穏やかな上りとなり、ほどなく御船川の支流八勢川を越えます。
そこに架かっているのが下鶴橋。国道の橋は新しいものに架け替えられましたが、そのすぐ横に、かつてこの道が通っていた下鶴橋が保存されているのです。
下鶴橋の高欄
よく見れば、下鶴橋の高欄には徳利と盃がくり抜かれています。石工のちょっとした遊び心でしょうか。
ちなみにこの橋は東京の二重橋や日本橋などを造った有名な石工の作だそうです。
R445沿いの畑と山
下鶴橋を眺めたあともR445を行きます。
通潤橋近くまで一本道で、穏やかな3%ほどの上りが続きます。
山とムカエル
今日はお天気、
『暑くなってきた~。上りもきつくなってきた~。』 とムカエルがワセワセ。
吹野橋
御船川が離れて行き、七滝を過ぎ吹野に入ると国道から分岐した小径に吹野橋が架かっています。
ひっそりとしていて目立たないこの橋は、現在も車が通れる現役の橋として使われています。
へいへいしながらムカエル、サリーナ、サイダーが到着。へろへろ~っとケロガメが到着。そして、よたよた~っとジーク到着。
立野橋
吹野橋からも上りは続きます。6kmほど進み道が南へ向かい出すと、ようやく金内への下りになり、その途中、国道からちょっと外れたところに、雑草が生い茂る立野橋があります。
上から見た立野橋
ほとんど自然の中に埋もれたようなこの橋は、真ん中に細い水路が流れる水路橋です。
金内橋
立野橋から少し下ると金内に到着。
国道の下に再び御船川が現れ、その東に金内橋が架かります。この橋は御船川を渡る大きなアーチとその脇の水路を渡る小さなアーチの二つのアーチからなります。小さなアーチの下を流れる水路は先ほど通ってきた立野橋の水路に繋がって行きます。
夕尺橋
R445に戻りほんの少し進むと夕尺橋。
これは目を見開いて探さないとわからないほどちっこく、かわいらしい橋。ここはアーチ橋である必要はなかったろうと思いますが、見習い石工の修行のために造ったのでしょうか。
下りのR445
夕尺橋からR445は再び上りに。
2kmほど進み標高500mに達したところから、ようやく道は下りとなります。どんどこどんどこ下って千滝川に沿って進めば、ついに本日の第一目的地、通潤橋に到着したよう。さすがにここは周辺にあまたある石橋の中でも一番有名な橋だけあり、道の駅通潤橋の前には車がたくさん駐車しています。
通潤橋の前で
通潤橋は江戸時代の後期に五老ヶ滝川の対岸に灌漑用水を渡すために造られた水路橋で、石造の単一アーチ橋。とっても大きくて迫力満点! 放水がなくても十分に見応えがあります。
この橋の中には三本の石造の通水管が通っていて、その中に詰まった堆積物を取り除くために時々放水が行われるのですが、これは現在ではほぼ観光用として行われているようです。この日の放水時刻は正午。それまでは橋を眺めながら、ワクワク。
放水する通潤橋とびしょぬれサイダー
定刻の正午、ドドッー、という感じ(もちろんそんな音はしないけれど)で一気に水が吹き出しました。
20mの高みから排出される水路の水はきれいな放物線を描いてまるでスローモーションを見ているように落下を始めます。飛び散る飛沫は黒い木々と石を背景に、まるで光を照射しているように眩しく感じられます。橋の反対側にも放水がはじまり、そしてこちら側は最初に放水された下からも水が出て、合計三つの放物線。
圧巻!
放水時の通潤橋はその価値300%UP!
放水する通潤橋の動画
通潤橋上部
この橋は水路橋なので人や車を渡す役目はないのだと思いますが、その上は歩いて渡れるようになっています。
手摺がないので、橋の際に立つと結構高くて怖い。舗装のように見える三本の筋は水が流れる石管で、橋の両側が高くなっています。水は向こう側の高台から一旦下に下がり、こちら側で再び高い位置まで上ってくる、逆サイフォンと呼ばれる方式で川を渡ります。
五老ヶ滝
通潤橋で感動の放水を見たあとは、そのすぐ近くにある五老ヶ滝へ。
通潤橋の下を流れる五老ヶ滝川に落ちる美しい滝です。この時は水量こそ少なめでしたが、落差50mの白い帯が背後の緑とごつごつした岩肌に映えていました。
緑川へ向かう山越え道
通潤橋、五老ヶ滝のあとは近くで昼食をとったのち、緑川の支流を辿りその本流に向かいます。
通潤橋が架かる五老ヶ滝川もその支流の一つで、緑川はこのあたりの川の中心となる流れです。白小野から山間を行く道は車がほとんど通らず、細かなアップダウンはあるものの総じて下りのいい感じの道です。小さな山越えはあるけどね。
緑川沿いの森を行く
切り通しを抜けてようやく緑川本流に出ますが、その緑川は谷の底でほとんど見えません。しかしすばらしい森の中をどんどん下ります。
『この道、かいてきぃ~』 と前籠ぶらさけたケロガメが飛ばす。
緑川周辺に開けた視界
その森が途切れ視界が開けると緑川を挟んだ対岸の山々が顔を出します。下に見えるのは内大臣橋でしょうか。
このへんで空からポツポツと冷たいものが。運良く道端に建っていたバスの待ち合い小屋に避難。なんとこの山の中の道はバス通りだったのです。
さらに下る
この雨はパラパラとしただけですぐに止みました。
山道をさらに下ると、
田んぼと農家
ようやく下に田んぼと民家が見え出しました。
緑川
そしてついに緑川が現れます。このあたりで緑川はすぐ先にある緑川ダムによって塞き止められ、湖のようになっているのです。真っ赤な吊橋脇瀬橋まで下ると、今度は少し上り。
再び森の中を行く
再び森の中を進み、ガーデンプレイスのキャンプ場を抜け、緑川ダムを横目に進みます。
このあたりには茅葺き屋根の水車小屋と小さな新鍵ノ戸橋があるはずなのですが、奥まったところなのか道端には発見できず。
船津ダム付近
総合運動公園の脇を廻り、森の中を先へ進めば、初々しい若葉の銀杏の木も。
下った先に船津ダムが現れるとここまでの快適な道は終わり、R218に出ます。
霊台橋
R218を下り出すとすぐ、緑川に架かる霊台橋に到着。
私たちの到着を待っていたかのように、ここで雨が降り出しました。夕立です。めがね橋には雨も良く似合いますが、かなり強い雨だったのですぐ脇のバス停の屋根の下でしばし雨宿り。
霊台橋は単一アーチのとてもきれいな石橋で、その径間(アーチの大きさ)28.4mは国内最長級(三位、明治以前建造では一位)。通潤橋(径間27.6m)が下から見上げるのに対し、この橋のファーストビュウは上部からなので、通潤橋よりむしろ小さく見えるのがちょっと惜しいかな。
霊台橋の上で
しかし通潤橋にはない優美さがこの橋にはあります。
路面と高欄の穏やかな競り上がりがなんともいえない雰囲気を作り出しています。よく見れば、道はちょっと曲がっている。建造後に曲がった可能性もなくはないでしょうが、最初からだとすればどうして曲がっているの?
この橋で本日の熊本・肥後のめがね橋めぐりは終了。アーチの上で記念撮影です。こうして見るとやっぱり大きいですね。
霊台橋から南の山へ向かう
霊台橋のあとはR445を南下。雨にけぶった山々が美しい。
温泉宿
その山の麓にひっそりと佇むのが本日の宿。そこはなんと部屋付きの露天風呂があるすばらしい温泉宿なのでした。ほんのり硫黄の臭いがする温泉に浸かり、
ぷふぅぁ~~
大感激の通潤橋の放水に、日本最大級の石造単一アーチ橋霊台橋、緑川沿いの麗しい緑の中のダウンヒル、そして快適露天風呂と、2011年のGW企画は最高の出だしとなりました。
明日はめがね橋巡りを続け、宇土半島から大矢野島に渡ります。
◆ひとこと by ケロガメ
長かったぁ~。
今年のジオポタGW-6泊7日は最長!と思って過去ログを調べたら、日数では去年夏の利尻・礼文・サロベツ原野2010-7泊8日が最長でした。しかし距離は、熊本・天草・雲仙・島原の450kmがダントツの1位です。
2位:2001年、紀伊半島周遊-4泊5日340km
3位:2010年、みちのく横断-4泊5日336km
毎日70kmペースは老ケロガメには堪えました。3日目のアップダウンを走り切って尋常でない疲労を感じたので4日目は単独バス輪行しました。これでスタミナ回復し6日目に標高680mの雲仙温泉まで登ることが出来ました。
一番の感激は初日の通潤橋、朝7時に出発した甲斐がありました。そこから一寸歩いた所にある落差50mの五老ケ滝も見応えがありました。
沢山の石橋を巡りましたが私は通潤橋ひとつで十分満足出来ました。通潤橋までバス輪行、そこから少し走って「離れの宿白木」に泊まるというお手軽企画でジオポタを満喫できると思います。
二番目に印象深いのは最終日、r128雲仙千々石線の下り道路とその後の廃線跡の道です。これ程性格の違う道を続けて走る企画は珍しい。
雲仙温泉を出て直ぐの下り、深い谷の下までつづら折が刻まれているのが見えました。平均勾配6.5%の凄い加速、加えて半径数メートル程度の急カーブが随所にあって緊張を強いられながらも一寸快感でした。廃線跡のやや薄暗い感じの切り通し道は、見上げると木立に覆われて柔らかい緑色の光が降っていました。『こんな道なら一日70km走ってもいい』と声をあげると、誰かが『ははは』と笑い、私には『俺もそう思う』と云っている様に聞こえました。
天草の海は美しく澄んでいました。それ以上の魅力を知るには、走らずに滞在することが必要なのでしょう。今回の天草区間、結構あちこち寄ったけれど、なんとなく駆け足旅の印象が残りました。土地感を得たのでマイペースでもう一度行ってみたいです。