能代の田んぼの中を行く
今日は秋田県の能代から海岸線を辿って青森県に入り、海岸で夕日を眺めながら温泉に浸かれることで有名な黄金崎の不老ふ死温泉まで走ります。途中には世界遺産の白神山地や、神秘的な色の十二湖があります。最大の見どころは十二湖の青池でしょうか。十二湖までは上りですが、それ以外はほぼフラットなコースです。そうそう、この区間には五能線が並走しているので、どこでもエスケープ可能です。
薬師山・母谷山
能代の温泉でひと風呂浴びたあと、五能線に沿って北上を始めます。このあたりは海沿いに道はなく、R101はやや車の通りが多いので、内陸のカントリーロードを選んで進んで行きます。周りはひたすら田んぼでのどか。そのうち先に八森の少し南にある、白神山地のいちばん端っこに当たる薬師山から母谷山あたりが見えてきました。あの山を過ぎると八森の海岸に出ます。
八森海岸
R101に合流するとその日本海で、小さな漁港があります。
鹿の浦
そのすぐ先に『八森岩館県立自然公園』の碑があり、『鹿の浦』とあります。八森海岸は景勝地で、ここからしばらく、入り組んだ複雑な地形の海岸線が続きます。
雄島
まず現れるのは、波間にポツンと浮かぶ雄島(おしま)で、その中にある二つの小さな山の頂には、豊漁と安全を祈願して恵比寿様と弁天様が祀られており、岩場に走る二本の大きな窪みは弁慶が引いた車の轍の跡だという伝説が残されているそうです。
海岸道を行く
このあたりの海岸線はごつごつとした岩場。左手に見える山は白神山地の末端部分になるところです。秋田から青森の日本海沿いに道はR101の一本しかありません。この国道はひどく交通量が多いというほどのものではありませんが、二車線で狭く路肩がないので、自転車ではあまり走り易くありません。そこで私たちは、国道に並走する道がある限り、そちらを行くことにしました。そんなところは車はほとんど通らず、快適です。
五能線
岩館駅の手前で小入川(こいりかわ)を渡るところに五能線の鉄橋があります。この柱は古びた煉瓦が巻かれていてなかなかいい感じ。そこにちょうどいい具合に五能線の車輛がやってきました。これは四両編成の新しいものなので、きっと『リゾートしらかみ』でしょう。
立岩
そのすぐ先の岩館漁港の近くの小入川の集落前の海岸には、若者が恋人を待ち続けるうちに岩となってしまったという悲恋の物語が伝えられる立岩が立っています。ここはかつては海だったようですが、漁港の防波堤により海流が変わり、砂が溜まって陸地化してしまったようです。このあたりの海岸は岩館海岸と呼ばれるようで、先の八森海岸と合わせて八森岩館海岸とも呼ばれ、やはりこのあたりの景勝地の一つになっています。
岩館の漁港
これがその防波堤がある漁港です。うしろの白神山地末端の山々もきれい。
岩館駅付近の海岸
さらに海岸線を進んで行けば、磯はこんな岩場。このあたりはどこも見ていて飽きない景色が続きます。
チゴキ崎灯台
快適な海岸道がいよいよおしまいになり、国道に上る途中にはこのチゴキ崎のかわいらしい灯台が建っています。足元には黄色い水仙が咲き乱れていて、きれい。この灯台はめずらしく平面形が点対称ではなく、しかも下が四角というちょっと変わった形です。ここから見る海岸線もすばらしい!(TOP写真参照)
須郷岬
チゴキ崎の先でR101に合流して少し行くと『道の駅はちもり』があります。この道の駅には『お殿水』という、その昔、津軽の殿様が絶賛したというとても甘い湧き水があり、自由に飲めるようになっているので、私たちも汲ませてもらいました。
そこから穏やかな上りを上って行くとすぐに、秋田県と青森県の県境となる須郷岬に到着。ここが白神山地の西端になります。
須郷岬の青森県側
須郷岬に特別なものは何もありませんが、その青森県側の海岸線は美しい。
干しイカ
須郷岬のすぐ先にはドライブインがあります。その店先ではこんなものが。干しイカですね。
国道を行く
このあたりは国道しかないので、やむを得ずこれをどんどこ。でも景色はいいね。この海岸線は八森岩館海岸ほどではないものの、それでもごつごつした岩場が続きます。
津梅川と五能線の鉄橋
大間越(おおまごし)トンネルを迂回して海岸を行き、再び国道に合流する手前には津梅川が流れ、そこに五能線の鉄橋が架かっていました。ここはなかなかいい感じです。
大間越付近
このあたりは海まで山が迫っているので大きな集落はありません。大間越はその中では大きなほうなのですが、それでもこんな感じです。
白神岳登山口駅の近くに国道から入る道があったので、これを行ってみました。東北地方といえどもこのあたりは今ではごく普通の家が多いのですが、中には茅葺きの家があったりします。こうした小さな集落を見るのも楽しい。しかしこの枝道はすぐに国道に合流してしまい、そのまま進むとやがて十二湖駅に辿り着きます。駅前の食堂でお昼にして午前の部は終了です。
十二湖駅からの上り
午後の部は十二湖巡りです。十二湖は白神山地の一部にあり、ブナやミズナラの自然林に囲まれた美しい湖群です。十二湖駅から内陸に向かうとすぐ、道は濁川に沿って穏やかに上って行きます。やがて正面に日本キャニオンの白い地肌が見え出します。
日本キャニオンはあのグランドキャニオンにちなんで名付けられたようですが、ちょっとというか、かなり名前負けですねぇ。しかし名前さえ気にしなければこの、浸食と崩壊によって岩肌がむき出しになった白い凝灰岩が続く断崖は、ちょっとした見所ではあるのですが、実はこの道からはあまり良く見えません。
道はその日本キャニオンの前で大きく曲がり、すると激坂に! これはちょっときつい。
王池
えっこらよっこらと上って、ボートが浮かぶ『八景の池』の前で一息付いて、『二ツ目の池』の前に出ます。ここから勾配はちょっと穏やかになります。
十二湖は全部で十二の湖があるのだと思っていたら、実は全部で三十三あるのだそうです。十二は大きな湖だけで、ということでしょうか。
王池とサリーナ
これらの湖はどれも青いのですが、微妙にその青さが異なるようです。
『王池』、『越口の池』、『中の池』と通って行きます。
雪が残る下り
道は上り基調ではあるのですが、微妙なアップダウンがあり、その道ばたには雪が残っているところもあります。
落口の池
これは『落口の池』。芽吹きを準備してピンクになった山がきれいです。
上るサイダーとサリーナ
そうそう、我らがジークはここは無理をせず、折り畳み自転車の機動力を活かしてバス輪行。写真を撮ってくれました。
物産館近く
標高240mまで上って『森の物産館キョロロ』までやってきました。ここでバス移動のジークと落ち合い、自転車を停めて周辺の散策に出かけます。ルートは『十二湖散策マップ』にある一時間のおすすめコースに従うことにしました。
鶏頭場の池
まずは物産館のすぐ横にある『鶏頭場(けとば)の池』。これまでの池はどちらかというと緑に近い色でしたが、この池はかなり青っぽいです。ここは池に映る周囲の山の木々がすばらしくいい感じ。
青池
鶏頭場の池の脇を進み、その池の端までやってくると、これまで広かった道が行き止まりになり、小さな木の階段に変わります。その上に十二湖を代表する青池はあります。
青池その2
確かにこの池は青池を名乗って恥じないものです。まるで青いインクを流し込んだよう。
青池その3
この池は想像していたより遥かにちっちゃく、想像していたより遥かに青い。
しばし青池のブルーに見とれたら、ぶな林の散策です。マップにブナ自然林とあるところへは、通常は青池から階段で行けるのですが、この時は倒木のため通行止め。やってきた道を引き返して、舗装路でアプローチします。
ブナの自然林
ここは白神山地の中ですが、世界遺産に指定されたところにあるようなブナの大木はありません。そうしたものの印象からすれば、ここにあるのはずいぶんと細い木ばかりのように見えますが、それでもいい感じ。
ブナの自然林その2
ここは人が入りやすいので、自然林とはいってもかなり人の手が入っているのでしょう。
芽吹き
何の木かな?
散策路を行く
ここはただ歩いているだけで気持ちいい。
沸壺の池
『ブナ自然林』からさらに西に進むとせせらぎがあり、『沸壺(わきつぼ)の池』に出ます。
沸壺の池その2
この池はエメラルド。
カタクリ
『おすすめコース』は沸壺の池から車道に向かうのですが、まだ少し時間がありそうなのでもうちょっと先まで足を延ばしてみます。
木々の足元には小さな植物がたくさん花を咲かせています。白いのやらすみれ色のやら。これはカタクリで、よく見かけるものより小型で花も細いようです。くりくりゼンマイももっこり。
林の中の散策路
ここはいくらいても飽きないような、そんなところです。
十二湖庵脇の流れ
車道に下り、物産館方面に戻る途中の落口の池の向かいには十二湖庵があり、ここで湧き水で淹れたおいしいお抹茶をいただきました。その水は十二湖庵の脇を流れるこの流れのものなのでしょう。落口の池の隣には『がま池』という、ほとんど水たまりかと思われるような小さな池も。
日本キャニオン
二時間ほど十二湖を散策したあとは海岸に下ります。その途中で、上りのときかすめた日本キャニオンの全貌が見えるところに出ました。かつては崩落した白い岩肌の領域がより広かったそうですが、その一部が木々に覆われ、今は大分減少したそうです。
ガンガラ穴付近を見下ろす
上りはハヒハヒだった十二湖からの下りはあっという間。下の海岸にはガンガラ穴という、ちょっと変わった岩場の絶壁に開いた海蝕洞があります。
五能線の線路とガンガラ穴付近
この五能線の線路のトンネルの脇にかろうじて見えているのがそのガンガラ穴でしょうか。ガンガラ穴は遊覧船で巡れるようですが、これは時間の関係で残念。
森山海岸
ガンガラ穴のある小さな岬を廻ると森山海岸です。こちら側にも奇岩が並んだ並んだ。あの島は汐ヶ島かな。
雪を抱く白神山地を背後に
さて、夕暮れ時が近づいています。今宵の宿は黄金崎の海辺に露天風呂があるところで、そこから夕日を、と黄金崎に急ぎます。後ろには山頂付近にまだ雪が残る白神山地。
漁港と白神山地
陸奥岩崎駅を過ぎ、R101が大きくカーブするところにはこんな漁港がありました。最近のオイル価格の上昇で出航しない船もあると聞きますが、ここの船はどうなんでしょう。ここから見る白神山地はとても素晴らしい。
黄金崎付近
ウェスパ椿山から国道を離れ、海沿いの道を進みます。黄金崎のすぐ手前の艫作(へなし)からは入り組んだ海岸線となりちょっとしたアップダウンを楽しんでいると、先に黄金崎が見えてきました。
その黄金崎にただ一軒だけある『不老ふ死温泉』が今宵の宿。到着して一休みし、海岸の露天風呂に向かいます。目の前には青からグレーに色を落としつつある日本海が広がり、そこにゆっくりと陽が落ちて行きます。温泉は黒くてかなりしょっぱい。お湯加減はいつまででも浸かっていられるぐらいでちょうどよし。ここはすばらしい! でも残念ながら空は雲で覆われ、真っ赤な夕日は見られなかったのでした。