日光紅葉企画の二日目。宿泊組は今市近くの宿から日光駅に向かいます。ここでまず進むのは例幣使街道。
この街道は、京都から日光東照宮へ金の御幣を奉献するための勅使(日光例幣使)が通った道で、江戸時代から残る杉並木が連なっています。
例幣使街道は追分地蔵尊で、やはり杉並木の日光街道と合流します。そこまで行くと少し車が多くなるので、その手前で裏道に避難します。すると正面に、男体山の北側に位置する女峰山(にょほうさん)から赤薙山(あかなぎさん)あたりが見えてきます。
今市から日光へは、勾配は緩いもののずっと上りで、ちょっとあへあへ。
お天気は、昨日に引き続き、今日も快晴です。
単日参加組とは東武日光駅で待ち合わせです。こちらはその隣にあるJRの日光駅で、1912年(大正元年)に建設されたネオ・ルネサンス様式の二代目の駅舎。
今日はサオリちゃんとサイダーに、東京方面からやってきたサワちゃんとシロスキーが加わります。
『昨日の坂、どうだった?』
『も~、たいへんでしたぁ~。でも紅葉は素敵でしたよ。』
『お天気もいいし、今日も紅葉は絶好調でしょう。坂は昨日より楽ですよ~』
と、がやがややりながら出発準備を整えます。
東武日光駅から細尾の大谷橋までは、いろは坂に向かった昨日と同じ道を進みます。しかし駅周辺には何本か道があるので、今日は大谷川(だいやがわ)に一番近い道を行ってみます。
すると道の上に大きな鳥が。その鳥が羽ばたけば、きれいな色が見えます。雄のキジです。このキジが飛んだ先には雌のキジがいました。キジはカップルで行動することが多いようです。
正面に男体山が見えてきました。その右側には大真名子山(おおまなこさん)、そして女峰山と続いています。
右手に大谷川を見ながら気分よく進んで行きますが、この道、最後は土手上の砂利道になってしまうのでした。ここは川から二番目の道を進んだ方がいいですね。
この砂利道はごく僅かな区間なので、なんとか乗り切りました。舗装路に出て少し行くと、R120に出ます。
そのすぐ先で道が大谷川を渡るところに、有名な神橋(しんきょう)が架かっています。
神橋が現在のような姿になったのは江戸時代で、その当時からこの橋は、神事や特別な場合にだけ使用されたそうで、今日でも一般には渡れません。
しかし、この日は結婚式の隊列がここを渡っていました。日光二荒山神社で結婚式を挙げると、この橋が渡れるのでしょうか?
国道は、紅葉シーズンの今は特に混雑するので、神橋のすぐ先で大谷川沿いの道に入ります。
この道からはほとんどどこにも行けないので、車は極々少なく快適。
道の先で大谷川を渡ります。
このあたりにはまだ紅葉は降りてきていないと思っていましたが、今年は例年より一週間ほど早いようで、ここも大分色付いています。
大谷川の右岸は、憾満ケ淵(かんまんがふち)と呼ばれる渓谷です。
あのざわざわした国道のすぐ近くに、こんなに静かなところがあるのか、と驚かされます。
清流の反対側、山側には赤い化粧をした石仏がずらり。こうしたお地蔵様は全部で70体ほどあるそうです。ここは本当に静かで、ゆっくりのんびり歩きたいところです。
この憾満ケ淵の先は行き止まりで、その手前の階段を上って細い舗装路に出ます。
その道もいずれ行き先がなくなるので、大谷川左岸の国道に出、清滝から旧道に入ります。
この旧道も嘘のように車が少ない。
細尾でR120と大谷川を渡ると、道はR122になります。そこから100mほど先に旧道の入口があるのでこれを入れば、周辺はのどかな景色に。
先にR122の高架が見える頃になると、民家もなくなり、いよいよ山の中へ突入という雰囲気になってきます。
R122の下を流れる小川に架かる左沢橋のすぐ先に、こんな案内板が立っています。"長い長い峠道案内図"
『え~、長い長い峠道だって~』
『きゃあ~、足尾まで12kmってあります... そんなに上れないよ~』
と、ちょっと不安な面々。いえいえ、大丈夫。足尾までの12kmは、下りも入れての旧道の長さで、細尾峠まではここから8kmですよ。高度差は400m少々で、平均斜度5.3%です。
この案内板から、道は針葉樹林の中を行くようになります。
上り始めの勾配はちょっときつめで、最初のコーナー付近が特にきついです。
第一コーナーを曲がると勾配は落ち着き、一旦空も開きます。"長い長い峠道案内図" から1km少々のところに管理用のゲートがありますが、この日、これは開いていました。つまり車も通行可の状態です。しかし、まあ、ほとんど車は通らないでしょう。
4~5回コーナーを曲がると、空が大きく開きます。R122の新道の上に出たのです。上るにつれ広葉樹が増えてきており、紅葉もちらほら。
新道の上を通過したあとは、周囲は完全に広葉樹になります。
このあたりは、まだ色付き始めのものが多く、緑から黄色ですが、道端には落ち葉がたくさん。この落ち葉をを踏むとカサカサと音を立てます。
再び空が開くと、そこは谷を渡る橋。
ここには赤いところもありますが、まだ緑が強いところが多いですね。
これは標高900m付近の北斜面です。
様々な色彩が、パレットに絵の具を並べたか、出来のいいパッチワークのように並んでいます。
昨日上ったいろは坂は、カーブの表示に『いろは』が使われていましたが、ここでは数字が使われています。
標識のないカーブもあるようですが、峠まではいったいいくつあるのかな、という話題で盛り上がります。
先頭のサワちゃん、坂が上れるかどうかで参加を迷ったそうですが、何の何の、ガシガシ進んで行きます。
二番手のサオリちゃんは、昨日、いろは坂と半月山への上りをこなし、大分自信が付いたようで、今日は余裕の走り。
しんがりのシロスキーは二人を見守りつつ、マイペースで上ります。
標高960m。緑が後退し、黄色からオレンジの木々が多くなってきました。
そろそろいいころですね。
向こう側の山の斜面には、かなりオレンジが見えます。手前の木と合わせると、なかなか見事。
『ワオ、ここはすごいね~』
『キレェ~~』
が連発されます。
標高980m。うねうねとした峠道は少しずつ高度を上げながら、何度も何度も似たようなところを通ります。
あれ、ここさっき通ったところじゃあないの、と思うようなこともしばしばあるのですが、そんなところでも、木々の色は微妙に違ってきています。
標高が1,000mを超えました。このあたりで紅葉はほぼピークでしょう。
ここまで赤い色はあまり見かけませんでしたが、このカエデは真っ赤です。
標高1,080m。
間隔の狭いヘアピンカーブを7つ8つ抜けると、視界が開き、南の山が見えます。薬師岳でしょう。
その北斜面はほぼ広葉樹で覆われていて、紅葉はピークのようです。このグラデーションは見事。
ここから道は、あるリズムのカーブを描いていきます。
標高1,160m。リズム感があるカーブももうこれでおしまいでしょうか。勾配が大分穏やかになりました。
細尾峠は、もうすぐ。
峠まで距離にして残り500m。カーブはあと二つか三つ。
『もうちょっとですね~』 と最後の踏ん張りを見せるサオリちゃん。
35番のカーブを曲がると、先に2~3台、車が停まっているところがあります。
標高1,195m。細尾峠に到着!
”←細尾8.0km、足尾4.0km→”の標識の前で、笑顔の面々。
ここまで、全員押すことなく、無事、完走です。
『なんとか上った~』
細尾峠の名は、この少し手前のハイキング道の出入口の標識に小さく表示されているだけで、石垣の切り通しとなっているピーク部には表示されていません。
まあ、それはともかく、ここまで上ってきたことを祝って、乾杯! って、お酒はないけれど。
細尾峠付近の眺望は、峠直前に僅かにあるだけで、峠そのものにはまったくありません。峠は木立に覆われていて気温が低いため、すぐに寒くなります。身体が冷えきらない程度に休憩して、足尾側に下り出します。
足尾側は初めは穏やかな下りですが、すぐに勾配がきつくなります。細尾側より足尾側の方が勾配がきついのです。
上ってきた細尾側では逆光で紅葉を見ていましたが、下りの足尾側では陽のあたる紅葉が見られます。
写真は峠から下り出してすぐのところ。
そして、細尾側よりうんと視界が開けているのが素晴らしい。
これは薬師岳から地蔵岳へかけての稜線で、山一面が紅葉です。
その稜線を西へ辿れば、R122が通る神子内川(みこうちがわ)の谷が奥まで延びています。ここからあの谷へ下ります。
この眺望が本日一番の紅葉ポイント。
この景色に
『今日、来てよかった~』
『細尾峠、上った甲斐があったね~』
と喜ぶ面々。
さらに視線を移動すれば、西の山もいい感じ。
どんなにゆっくり下っても、下りは速い。あっという間にR122との合流点、細尾峠の足尾側の上り口まで下ってきました。
"クマ注意!" 出会わなくてよかった~
ここからはR122をまっしぐら。足尾の街に下ります。
紅葉の季節、R122はそれなりに混雑するかと思われましたが、気になるほどの交通量ではありませんでした。
直線基調の国道を快調に飛ばし、途中にあった中華屋さんでお昼に。
その後も快調に進んで、足尾駅に到着。
足尾駅には、わたらせ渓谷鐵道のトロッコ列車が停まっていました。
このうしろにオープンエアの車輛が付いています。これは気持ちよさそう。
足尾駅から隣の通洞駅までは、線路脇になかなかいい道が通っています。ここはのどかでいい雰囲気です。
この雰囲気に、走りながらも微笑みが出てしまうサワちゃんでした。
通洞駅の少し先からは、再びR122を行くしかありません。
先にわたらせ渓谷鐵道の青い橋梁が見えてきました。
道は穏やかな下りで、高速走行にはぴったり。
時々ロードバイクに乗った人々とすれ違ったり、追い越されたりします。
この国道は渡良瀬川のすぐ横を通っているので、川面が見えるのがいいところ。
このあたりの山の紅葉は始まったばかりですが、時々赤く染まった木も見えます。
少々長かった国道区間ですが、沢入(そうり)駅からは渡良瀬川の左岸に県道があるので、こちらにシフト。
その沢入駅は無人駅。って、わたらせ渓谷鐵道で有人駅は数えるしかないのでしょう。
細尾峠から沢入駅まではずっと下りでした。国道を下ればその下りが続くのですが、対岸のこちら側は、ここから小さなアップダウンの連続となります。
上っては下り、下っては上る... この様子は動画でどうぞ。
渡良瀬川はこの先に草木ダムがあり、沢入駅の先から草木湖になります。
さて、もう下りばかり、と思っていた面々は、このアップダウンにアップアップ。草木湖展望台は沢入駅より高いとあって、ここに辿り着くころには全員へろへろ。
『は~ぁ』
『へ~ぇ』
『ほ~ぉ』
という具合でした。
草木ダムの先で道が柱戸川を渡ると、そこには不動滝が落ちています。このあたりの標高は420mしかなく、紅葉もまだまだこれからです。
時は15時半。午前中は快晴だった空も今は白い雲に覆われ、日の短いこの時期、雰囲気としては夕方という感じになっています。
不動滝のあとも、アップダウンが続きます。午前中の渓谷や紅葉鑑賞に時間を費やしてしまったので、ここに来て日没までに水沼駅に辿り着けるか微妙になってきました。山の日没は早いのです。
渡良瀬川沿いは、右岸の国道はアップダウンがほとんどないのですが、車がそそそこ通ります。逆に左岸の道は、車はほとんど通りませんが、アップダウンが結構あります。
みんな少々へばってきていて、このまま左岸を進むのは厳しそうなので、中野駅から右岸を行くことにしました。中野駅から水沼駅までは、国道以外に旧道が通っていて、この道がまずまず快適なのです。
中野駅からの旧道にはまったく上りがなく、快調に飛ばせました。おかげで水沼駅には、日没まで余裕を持って到着です。
水沼駅には温泉が併設されています。早めにここに着きたかったのは、この温泉に浸かるためです。輪行状態を整えたらすぐに、温泉に飛び込みます。アプゥ~。サイクリングのあとの温泉は最高ですね。
後半の渡良瀬渓谷の紅葉はこれからで、日の光がなかったのがちょっと残念でしたが、序盤の旧道、細尾峠は素晴らしい道で、この季節でなくとも満足できます。そうしたところにピークに達した紅葉が加わり、これはもう言うことなし。大満足の一日でした。