2016年のGW企画は能登。能登はジオポタ黎明期の2000年以来の16年ぶりです。
金沢からは七尾線の特急『花嫁のれん』で、と思ったら、この列車はたったの52席しかない特別な観光列車で予約が取れず、やむなく普通列車で南羽咋( みなみはくい)駅までやってきました。
その南羽咋駅は無人駅で、駅前にはなんにもなし。ただ、自転車の籠に穫れたての玉ねぎを積んだおじいさんがいるだけでした。このおじいさんと二言三言挨拶を交わして、いざ能登の旅に出発です。
ここからはまず海岸に向かいます。
1km少々走ると、海岸道の『のと里山海道』をくぐります。するとその先に、いい色のビーチが現れます。
そして、白波の日本海。
日本海をバックに出発のジャンプ写真を、と思ったら、ありゃりゃ、みんなバラバラ
このあたりの海岸線は砂浜で、その砂は通常のものより粒が小さいためよく締まり、車も走れるそうです。夏の間は道路標識も設置され公道になるというから、びっくりですね。この道路の名は『千里浜なぎさドライブウェイ』。
では自転車も走れるか。ということでやってみました。
結果は、ばっちりOKでした。予想したよりうんとスムースに進みます。これは快適快適。
波の音を聞きながら砂浜を自転車で走る経験って、まずできませんね。
千里浜なぎさドライブウェイはなかなか気分のいい道ですが、長い距離を走ればやっぱり疲れるので、ちょっと体験するだけでいいでしょう。
ということで、出発を南羽咋駅にしたのでした。
千里浜なぎさドライブウェイを2〜3km走ると、千里浜レストハウスに到着。ここが8kmほど続く千里浜なぎさドライブウェイの終点です。
ここで黒猫さんで自転車を送ったマサキンが合流し、本日のメンバーが全員揃いました。
千里浜レストハウスからは気多大社に向かいます。
のと里山海道に沿って能登海浜自転車道が通っており、海はあまり見えないものの、車に煩わされずに進むことができます。
羽咋川を渡りのと里山海道を離れると、自転車道は羽咋健民自転車道になり、右手に気多大社の一の鳥居が見えてきます。
その鳥居をくぐって行けば、先には黒い瓦屋根の民家が続きます。これが気多大社の参道です。
もう一つ鳥居が現れると、ここからが気多大社の境内。
気多大社は能登最大の神社で、祭神の大己貴命(おおなむちのみこと)は出雲から舟でこの地に入ったとされています。
鳥居の先にあるのは安土桃山時代に造られた檜皮葺の神門。
その下にはお決まりの注連縄(しめなわ)が見えます。
神門をくぐった正面には拝殿があり、その奥に本殿、そして向かって右手に白山神社 。
これらのうしろには広大な原生林の『入らずの森』が見えています。ここは立ち入り禁止ですが、タブやツバキなどの常緑広葉樹が密生し、樹齢百年をこえる木が林立しており、国の天然記念物に指定されています。
気多大社の第一印象は、どうしてこんなところにこんな立派な神社があるの、というものでした。こんもりとした新緑の森を背景にした境内では、静かな時間が流れていきます。
気多大社で安全祈願をしたら、再び海岸の自転車道へ向かいます。
滝港の先で道巾が狭まると、もうそこは車は通らずジオポタ独占道路に。
『ここは海辺で風がいい気持ち〜』と、自転車道をルンルン行くレイナ。
廻っているのは滝崎という、小さな丸っこい岬。
そんな自転車道をどんどこ、
どこどこ行って、
途中から海岸を離脱し、内陸にある妙成寺(みょうじょうじ)に向かいます。
道端の田んぼはちょうど田植えが始まったところ。
その田んぼの向こうに塔が見えてきました。
あれが妙成寺の五重塔にまちがいないでしょう。
妙成寺は小高い丘の上に構成される日蓮宗のお寺で、10棟の建物が国の重要文化財に指定されるなど見所もたっぷり。
境内に入ると、まず左手に、浄行菩薩に水を注ぎ、たわしでゴシゴシすると煩悩の汚れを取り除いてくれるという浄行堂があり、その先に仁王門が建ちます。
仁王門の横に見えるのは鐘楼。
階段を上って仁王門をくぐると、正面に五重塔がすくっと建っているのが目に入ります。
この塔は北陸地方で唯一の五重塔で、加賀藩三代藩主前田利常の母が願主となり建てられたと伝えられているそうです。
五重塔の前で右を向くと、視線の先に本堂、その右隣に祖師堂が建ちます。本堂は桃山建築の粋が集められており、祖師堂は本格的な禅宗様式の造りだそうです。
気多大社でも感じたことですが、この寺もたいへん立派で、現在のこの地からはなぜこれが建立されたのか想像するのはちょっとむつかしい。
妙成寺からは再び海岸の自転車道へ。
しばらく松林の中を走っていくと
視界が開け、左手に海が見えるようになりました。
港を囲む砂浜の入り江を望む海岸に、木の柵に囲まれて苗が植えられていました。松林を植林しているのでしょうか。
自転車道は高浜の町に到着しました。町に入ってすぐのところで、シロスキーが見つけた洋菓子店『シュクレ・プラージュ』に立ち寄る。午後3時、ちょうど小腹がすいてグッドタイミングです。
焼き菓子をいくつか買って、米町川を渡った土手でおやつタイムです。能登の塩を使ったお菓子や甘くないチーズ味のお菓子など、とてもおいしい。
羽咋健民自転車道はここから内陸部を通っているのですが、私たちは自転車道を離れ、海沿いの道を行くことにしました。
先頭を引くのは、この旅に向けて大きな車輪の愛車をゲットし、すいすい走るマサキン。
車はほとんど通らず、自転車道かと思うようなローカルな道路を飛ばします。
県道に合流したところで、前方に青と白の煙突が現れました。直下に活断層の疑いがあるということで最近ニュースになっている志賀原子力発電所です。
四角い建屋が並ぶ長い直線道路を通過。
黒い岩の磯の続く海辺をサリーナが引いていくと、
福浦の集落に入りました。板張りの壁に黒い瓦の立派な家並みが続きます。
福浦港は、江戸時代には北前船の風待ち港として船宿が軒を連ね、賑わっていたそうです。
家並みの間を抜ける細い路地は、急な上り坂になったりしながら金刀比羅神社前の広場に続いています。
広場から南西を望むと、小さな白い灯台の姿が見えました。この広場に自転車を置いて、灯台まで行ってみることにします。広場から灯台までは畑の中を小道が続いています。
白い板張りに黒い屋根の姿がかわいらしい『旧福浦灯台』をバックに微笑む面々。
この旧福浦灯台は、何と日本最古の木造灯台だそうです。1608年、かがり火を焚き夜の船の航行を守ったことが灯台の始まりと言われ、現在の灯台は1876年に建てられたそうです。
旧福浦灯台からの福浦港入口の眺め。港はこの入口を入ると南湾と北湾の2つの入り江に分かれています。
神社の広場に戻り、家並みをかすめる急勾配の細い路地を自転車でぐわわ〜んと下ると、南の入り江に到達します。この勾配、上りだったら絶対押しだ。。
南の入り江を回り、北の入り江の集落を通り抜け、その正面を右に曲がれば本日ほぼ唯一といってよい山上りに入ります。
標高差は60mほどの短いものですが、今日は初日、しかもここまでほぼ平地をルンルンと走ってきたこともあって、平均勾配6%ほどをヨタヨタと上る面々。
上りきったところには展望台とお休み処があり、目の前には右に鷹巣岩が突き出ています。この岩の上にはほんとに鷹の巣があったとか。
福浦から30kmほど北の関野鼻あたりまでは、『能登金剛』と呼ばれる海岸線の景勝地です。今日の宿泊地の富来はその間に位置するので、今日明日としばらく海岸の絶景が続くのです。
一息入れたあとは、絶景を眺めつつ次のポイントへと走り出します。
すぐに『巌門』の眺めが見えてきます。海に突き出た松林の岩山の下に、日本海の荒波によって穿たれた洞窟が。
巌門の洞窟までは階段で下って行けるので、自転車を置いて出発。入り江の向かい側には、先ほどの展望台から見えた鷹巣岩がそびえ立っています。
階段を下りたところが巌門の洞窟正面です。
この景観は古来より知られ、歌川広重の『六十余州名所図絵』の中に、能登の国の『滝之浦』として巌門、鷹巣岩が描かれています。
ぽっかりとあいた洞窟から望む日本海。この洞窟の奥へ進むと能登金剛遊覧船の乗り場に出られます。海上から見る奇岩の景観も楽しそうですが、本日のジオポタは時間がとれず、先へ進むことにします。
巌門から4kmほど進むと『機具岩』に到着。男岩と女岩が注連縄で結ばれる夫婦岩で、伊勢の二見岩になぞらえ『能登二見』とも呼ばれています。
『機具岩』の由来ですが、その昔、能登の地に織物の業を広めた渟名木入比め命(ぬなきいりひめのみこと)が、織機を背負って山越えする途中で山賊に会い、投げた織機が岩に変じたのだとか。ところでこの夫婦岩、大きい方が女岩とのことです。
さらに奇岩の続く海辺を北上していくと、
富来七海の集落に入りました。『間垣』を立てている家も見られます。
『間垣』は日本海の強風から家を守る高い竹の垣根で、能登の外浦海岸(日本海外洋に面した側の海岸)に見られ独特の町並み景観をつくり出しています。
ほどなく海岸の景色が変わり、美しい砂浜の増穂が浦に到着しました。
海岸を望むところに『世界一長いベンチ』というのがあるらしい。行ってみることにしました。う〜ん、確かに長い、と感心するレイナ。
夕陽の中、ベンチに沿って増穂が浦を満足げに走るのは、レイ、シロスキー、レイナとマサキン。
ベンチはやっぱり座らなきゃ、ということで座って記念写真。他には誰もおらず、世界一長いベンチをジオポタが独占。
美しい夕陽の沈むあたりにあるのが本日のお宿です。お腹も相当すいてきた。
ところがベンチの北端で道がなくなってしまい、あせるジオポタ。レイナの地図情報で獣道を強行突破し、何とか道路に復帰することができました。
今日の宿は炉端焼きが名物の民宿。まずは近くにある町営温泉に送迎していただき、冷えた体をほっこりと温めます。
続いて夕食は暖かい炉端を囲みます。まず炉端で焼かれている『やなぎばちめ』は、石川県ではお馴染みの魚だそうです。うま味のある白身魚です。
ここからがまたすごい。炭火の上に網を乗せ、大きなホタテ、海老、牡蠣、イカ、そしてナスやタマネギなどの野菜が次々と焼かれていきます。お世話をしてくれたお母さんたちとの会話も楽しく、満腹・満足で夜は更けていきました。