2017年のGWの後半は天竜川と決まりました。天竜川の上流は南アルプスと中央アルプスに挟まれています。その流れが発する諏訪湖からは北アルプスも見えます。
それじゃあ、GWの前半はこれらの日本アルプスを異なる角度から眺めてみよう、ということで、メインをビーナスラインに据え、この日は南アルプスの甲斐駒ヶ岳と八ヶ岳の眺望ルートを設定。
しかし今回の二日目は相当にきついと宣伝されており、提示されたプロフィールマップを見てみんな恐れをなしたのか、出発地の韮崎駅にやってきたのはマージコとサイダーのたった二人だけ。
韮崎駅からは富士川の上流の釜無川へ向かいます。すると民家の屋根の上に早くも雪山の頭が顔を出します。このほんの僅かな雪山の天辺を見ただけで、もうワクワクドキドキ。これからどんな山が見られるのかな。
韮崎はかつて甲州街道の宿場として賑わった街で、その旧甲州街道である県道には本陣跡の碑が建っています。
韮崎駅から1kmほど行くと、釜無川の竹田橋の袂に辿り着きます。
そこから南東には良い姿の富士山が。
そして釜無川を挟んで西には、南アルプスの鳳凰山(ほうおうざん)の三つの頂、薬師岳、観音岳、地蔵岳がちょこっと頭を出しています。
そこから少し離れた画面右端のとんがり山は、甲斐駒ヶ岳でしょうか。
竹田橋からは釜無川に沿って延びる、釜無川サイクリングロードを使って川上へ向かいます。
うしろの富士山はだんだん小さくなっていきます。
逆に鳳凰山の三つの頂が近付きます。
そして正面には八ヶ岳がバーンと。
右端の尖った山が主峰赤岳でしょうか。
この勇壮な八ヶ岳に向かって進むとほどなく、自転車道は終わりR20の穴山橋を渡ります。
すると釜無川の向こうにまた雪山が見えてきます。
一時、手前の山に隠れて見えなくなっていた観音岳と地蔵岳がまた現れたのです。
釜無川沿いのカントリーロードを行くと、その観音岳と地蔵岳を含む鳳凰山の全体が見えてきました。
そして鳳凰山の反対側では八ヶ岳がその全貌を現しつつあります。
たくさんの頂が並ぶ八ヶ岳は勇壮。
R20の小武川橋からはアサヨ峰、栗沢山、そしてついに甲斐駒ヶ岳がバーンと。
さて、小武川橋から考えられる進路は二つ。一つは釜無川に沿って北上し、台ヶ原を抜けるルート。もう一つは大武川沿いに入り、甲斐駒ヶ岳へ向かうルート。
アサヨ峰から甲斐駒ヶ岳へ続く景色を見て、ここは後者に決定。
小武川から大武川へ向かうと、その間にある黒沢川付近から、またあの八ヶ岳が正面に。
ここはこっちもあっちも山、山、そしてまた山の絶景です。
そして進路を西に取れば、今度は甲斐駒ヶ岳が正面に。
『うわ〜っ、こ、これはなんなんだ〜』 と叫びつつ、雄大な甲斐駒ヶ岳へ向かうマージコ。
左に屏風のように広がるアサヨ峰。そしてその右にドンと座った甲斐駒ヶ岳。
『うわ〜、ウワーッ、オオッ=』 と、声にならないうめき声を発してサイダーが続く。
少しづつ姿を変え、どんどん近付く甲斐駒ヶ岳。今回その甲斐駒ヶ岳にもっとも近付いたところが、大武川の駒城橋です。
荒々しい大武川の河床とアサヨ峰、そして甲斐駒ケ岳の対比が素晴らしい。
駒城橋を渡るとそろそろ甲斐駒ヶ岳とお別れです。
『いや〜、甲斐駒、満喫しました〜』 と、その横をゆったり進むマージコ。
ここで一風変わった屋根を持つ民家を発見。
おそらくここは小屋裏で蚕さんを飼っていたのではないでしょうか。
山ばかりに見とれていて、すっかり花の紹介をできませんでしたが、この季節は新緑に春の花もいいですね。
ここでは紅白の桃が満開です。
駒ケ嶽神社→という標識があったのでそっちに行って見ると、小さな神社がありました。
え、これが駒ケ嶽神社? とその時は思ったのですが、実はこれは巨麻神社(こまじんじゃ)で、駒ケ嶽神社はもう少し西にあるようです。その駒ケ嶽神社は巨麻嶽(こまがたけ)神社とも呼ばれていたようですから、この二つの神社には、何か共通するものがあるのかも知れません。
それはともかく、そろそろこのあたりで進路を変え、北に向かわねばなりません。
巨麻神社から僅かに西進し、北に進路を取ると、南から見る八ヶ岳の全貌が。
これまで八ヶ岳は中央本線の車窓からか、中央自動車道からしか見たことがなく、その全貌を知ることがありませんでした。
しかし今回、ここでそれを知ることが出来たように思います。とにかくその広大な裾野にびっくりです。ここは八ヶ岳眺望一押しのポイントの一つです。
振り返れば甲斐駒ヶ岳の北東面がちらりと見えています。
尾白の森をかすめ、R20の濁川橋に降りてきました。下を流れる川の名は神宮川のようですが、橋の名からすると、よく水が濁るのでしょうか。それはともかくこの川は、かつては濁川と呼ばれていたようです。
先に見えるのは小さくなった甲斐駒ヶ岳です。
R20現甲州街道から旧甲州街道に入ります。
R20は交通量が多く自転車向きの道ではありませんが、こちらの旧甲州街道はほとんど車が通らず、快適に進むことが出来ます。旧街道らしく、歴史を感じる民家もちらほら見受けられます。
サントリーの白州蒸留所付近を過ぎると、釜無川の向こう右手前方に八ヶ岳。
ここからの主役は甲斐駒ヶ岳に代わり、あの八ヶ岳に移ります。
釜無川と八ヶ岳を隔てているのは河岸段丘の急斜面・段丘崖です。
この段丘崖は遥か彼方まで延びています。
この段丘崖の手前には田圃が作られていました。
その中をどんどこ行き、
下蔦木(しもつたき)に到着。
釜無川の段丘崖はまだ先まで延びていきますが、カントリーロードはここまで。この先はR20になるので、私たちはここから段丘崖を上り、信濃境へ向かいます。
というわけで、ここからは激坂上りです。
この上り始めは特に厳しく、ヨロヨロ、ヨタヨタ。
信濃境駅までは3.6kmで200mの上り、平均斜度5.5%です。
道脇に民家がへばりついていた序盤が終わると、どうやら丘の上に出たようで、周囲は山と畑に変わりました。
激坂から急坂に変わったものの、まだまだ坂道が続きます。
『ここに下りはないの〜』 と、喘ぎつつ上るマージコ。
右手には先ほどまで裾野を走っていた甲斐駒ヶ岳あたりが見えています。
信濃境駅まで残すところ1/3というところで、前方にきれいな桃が咲き出しました。その向こうには竪穴式住居らしきものが見えます。
ここは縄文時代中期を中心とする集落遺跡の井戸尻遺跡です。縄文人は狩猟採取の生活していたという常識を覆す縄文農耕論が生まれるきっかけになったところだそうです。
もう甲斐駒ヶ岳は見えないだろと思っていたら、ここからもまだその天辺が見えていました。
さらにエッサ、エッサと上って、
ようやく信濃境駅に到着。
鄙びた信濃境駅の前では、関西から遥々やってきたジークが待っていました。
ここからはジーク、マージコ、サイダーの三人で午後の部へ突入。
その午後の部は、まず、八ヶ岳山麓を南から西に廻り込むようにして進みます。
中央自動車道をくぐり抜け、地道を進んで行くと、こんな姿の八ヶ岳が。
この八ヶ岳を横目に北西にどんどこ行って、再び中央自動車道をくぐると、
立場川に出ます。ここから南には釜無川の谷が続いています。
視線を右に移して行くと、黒っぽい山の斜面に富士見パノラマリゾートのゲレンデが銀色に輝いて見えます。
立場川を過ぎたところで方向転換し、進路を北東へ。うしろには釜無川の谷と桜が見えます。
桜はピークは過ぎてはいるものの、まだ見られる状態です。今日の前半の巨麻神社近くには山高神代桜という日本三大桜の一つがあったのですが、これだけ残っているなら寄れば良かったかな。
穏やかな坂道をゆっくり上って行くと、右手にあの八ヶ岳がまた違った姿で現れました。
いくつも頂が連なっていきます。
『すごい山やな〜。ほんで、どれが八ヶ岳っていうやつや?』 とジーク。
『これ、ぜ〜んぶで八ヶ岳ですよ〜』 と、マージコが丁寧に説明しています。
『その中であの雪のかぶった頂が、左から、横岳、阿弥陀岳、赤岳でしょうかね〜。』
微妙に変化しながら近付く八ヶ岳に圧倒されつつ、その横をどんどこ行きます。
だいぶ上ってきました。
富士見町立沢の標高が1,160mになったところで方向転換し、八ヶ岳をあとにします。
時は15時。今日はもしかすると夕立があるかもしれないという天気予報。
ちょっと先では雲が低く垂れ込め、明らかに雨を降らせている様子が伺えます。
ついさっきまで晴れていた八ヶ岳の上もどんよりした雲で覆われています。
気温は急激に下がってきています。
これはかなりまずい。こんなところで夕立に遭ったらどうしようもありません。
慎重に雨雲の動きを読んで、できるだけ雨雲から遠ざかるようにして進んで行きます。
なんとか雨に当たらずに柳川までやってきました。
ここには上槻木の集落があるし、尖石縄文考古館までももうちょっとなので、なんとかなりそうです。
柳川から先はちょっとした別荘地の中を抜け、竜神池をぐるり。
この竜神池を抜けると、雨がザーッと降ってきました。しかし尖石縄文考古館は竜神池のすぐ先にありました。もう今日はここで自転車を畳んでタクシー移動に決定。ゆっくり考古館を見学することにします。
ここは八ヶ岳山麓の縄文遺跡の出土品を集めた博物館で、なんと国宝が二点もあるのです。
その一つは『縄文のビーナス』。これは今から約4000年〜5000年前に造られたと推定されるもので、ふっくらと丸みのある造形が印象的です。粘土に雲母が混ぜられており、きらきらと輝く様はユニーク。
もう一点は『仮面の女神』で、こちらは今から約4000年前に造られたと推定されています。独特の逆三角形の顔を持ち、身体に渦巻きや同心円などの模様が付けられています。がっしりした足も印象的。
これら国宝の二点は必見ですが、ここにはその他にも見応えのあるものがいくつもあります。
さて、ゆっくり考古館を見学したら、タクシーで奥蓼科の横谷渓谷、おしどり隠しの滝のところにある本日の宿に向かいます。距離にして9km、標高差450m、平均斜度5%の上りです。この行程、タクシーにしてよかった〜
今日は甲斐駒ヶ岳と八ヶ岳を中心に、充分に山の景色を楽しむことができました。このコース、かなりお薦めですよ。特に山に雪が残るこの季節がいいと思います。
最終盤をタクシー移動にしてしまったので、今日予定していた御射鹿池とおしどり隠しの滝の紹介は明日に。そしてその明日は今回の企画のメインコース、絶景のビーナスラインです。その累積高度はなんと1,700m。果たして走り切れるか・・・
◆ひとこと by マージコ
気持ちの良い晴天に恵まれ、上るごとに形を変え迫る八ヶ岳を仰ぎ見て感激しながら走りました。
斜め後ろには南アルプスと遠くにかすむ富士山、何とも言えない心地よさでした。
遅咲きの山桜などの春の花を見ながら、重いペダルも少しは軽やかに高度を稼ぐことができました。
いい時季にいい場所を走ることができて、大満足でした。