9月は夏か秋か? ここ数年の首都圏の9月はずっと夏でした。暑くて暑くて暑くて、サイクリングどころではなかったと思います。そんな9月に涼しくて快適なところはないかと探した結果、見つけたキーワードは、『森』と『滝』の二つ。
これに当てはまる所を探して見い出したのが、この奥武蔵で六つの滝を巡るというコースです。ところがなんと、今年首都圏の夏は涼しい・・・
当日の天気次第でコースを変更することも考えなくては、と思っていましたが、運良く?、この日は晴れで気温もそれなりに高く、予定のコースでの催行となりました。
首都圏から西武池袋線で一時間の武蔵横手駅で下車すると、周囲は山。ここにはコンビニエンスストアどころか、小さな売店一つありません。
その武蔵横手駅を出てすぐに、北へ向かう林道関の入線に入ります。するとそれはすぐに上りに。
『いきなり上りですか〜。今日は走り切れるか、ちょっと不安です。』 と、とある事情でしばらく休養していたマージコ。
滝は山の中にある。当たり前のようにそこへ行くには坂道を上らなければなりません。
道はすぐに杉林の中を行くようになります。
その横には細い関の入沢が流れています。サワサワサワサワ、という音が、すでに涼しさを演出している。
このあたりはハイキングで有名なのか、私たちと同じ道を上って行くハイカーが数組いました。
エッサエッサと杉林の中を上って行くと、右手に『五常の滝』の小さな標識が現れて、遊歩道が滝へ続いています。私たちはこの入口を素通りし、少し上ったところにある階段を下って滝にアクセスします。
階段を下りた所には小さな社がいくつも並んでいます。五常の滝の五常とは、仁・義・礼・智・信、を現すそうなので、この社はこれらに対応しているのかもしれません。
これらの社の奥にもう少し大きな社が一つあり、その奥に五常の滝は落ちていました。
この滝の落差は12mだそうですが、もっと低いような気もします。いずれにしてもあまり高くはありません。しかし、ひっそりとした森の中に落ちるこの二筋の流れは悪くありません。
有名な滝はそれだけ大勢の観光客が見に行き、滝を見ているのか人を見ているのか疑わしくなることがありますが、ここは私たちの他には、あとからやってきた一組のハイカーがいるに過ぎません。
五常の滝を眺めたら階段を上って、自転車を停めたところに戻ります。ここで事件発生。
『自転車の鍵がない!』とシロスキーが叫ぶ。予備はないらしい。
このロックはワイヤー錠で小指ほどの太さがある。途方に暮れるシロスキー。JAFを呼んだら、とか、マージコのマジックでなんとかならないの、とか、いろいろな案があったけれど、全部ダメ。ついにサイダーが奥の手を使うことに。この内容は秘密です(笑)が、なんとか15分くらいで解決。あ〜、よかったよ〜
事件は無事解決できて良かったのですが、五常の滝を過ぎると路面がアスファルトからコンクリートに変わり、激坂に。今日は序盤からハヒハヒです。
林道関の入線は激坂の途中、切り通しを過ぎたところから林道中野線となり、その先で左に林道土山線を分けますが、私たちはここは林道中野線を進みます。
するとほどなく右手の視界が開け、小さな谷が見えるようになります。
ハヒハヒが終わり、林道権現堂線に合流。
林道権現堂線は奥武蔵グリーンラインの東の端で、ここからそれに乗ることもできるのですが、私たちはこのまま林道権現堂線を下って行きます。
次の滝は林道権現堂線から枝分かれした林道宿谷権現堂線の横にある、『宿谷の滝』。
上りはいつでもきついけれど、下りはいつでもあっという間。
『やっと下りですね。ここは涼しくてきもちいいっス〜』 と、ビジターのトシちゃん。
宿谷の滝に到着。
宿谷の滝へは遊歩道の階段を下って行きます。
すると右手にストレートに落ちる宿谷の滝が見え出します。
この滝は先の五常の滝と同じく落差12mと言われていますが、五常の滝が複雑な落ち方をしているのに対し、この宿谷の滝は細いながらもストレートなため、より高さを感じます。壮快と言っていいでしょうか。
宿谷の滝を作る宿谷川はこの少し上から始まり、高麗川に流れ込むまでの短い川のようです。
宿谷の滝からはいったん下って鎌北湖を目指します。
下りはいつでもらくちんで楽しい。
毛呂山のゴルフ場と毛呂山総合公園の横を通って、大谷木川の筋に入ります。
r186の一本南側の道は気持ちのいいカントリーロードで快適。
この道は鎌北湖まで続いているようなのですが、途中から地道になってしまったので、そこで大谷木川を渡ってr186に入り、鎌北湖へ上って行きます、
鎌北湖は農業用の貯水池として造られたもので、この時は湖畔に数人の釣り人がいました。どうやらへら鮒釣りをしているようです。
鎌北湖の周囲には桜やカエデが植えられており、春秋はきれいでしょう。
複雑な形の鎌北湖を廻って進んで行くと、湖が終わった途端に上りに。
鎌北湖からは獅子ケ滝へ向かいます。
獅子ケ滝は鎌北湖の谷ではなく、その一本北側の谷にあるので、ここからちょっと山越えです。
上って行くと、先に特徴ある茅葺き屋根の民家が建っています。
屋根勾配はかなり急で、棟には煙出しが見られます。
この茅葺き民家のあとは道幅が狭くなり、勾配も強烈に。
そしてそろそろピークかと思ったら、その先はなんと砂利道でした。。。
ぎゃー、とか、う〜、とか言いながら、この砂利道を上って行きます。ガタガタと押したり引いたりして、なんとかかんとか上り切りました。
下りは舗装路かと期待していたのですが、これはあっさり裏切られることに。砂利道の下りが続きます。しかし程なく舗装路になり、獅子ケ滝の前に出ます。
細い川を渡り、道祖神がいくつか並ぶ角を西へ入ると、小さな獅子ケ滝が落ちています。この滝はどこかに落差3mと書いてあったように思いますが、まあそれよりは少し高くて5mくらいはあるでしょうか。どちらにしてもこれは、先ほど見た二つの滝よりはうんと小さいです。
しかしこの滝もまた、前の二つの滝同様に周囲はひっそりしていて、人の気配はほとんどありません。一人で瞑想に耽るのにいいところです。ここで、
『いや〜、遅れちゃってスイマセ〜ン。』 と現れたのは、今朝出掛けに二度もパンクしたムカエル。
獅子ケ滝からは阿諏訪川沿いを下り、この川が毛呂川に合流するあたりから毛呂川を遡って行き、次の目的地の桂木観音を目指します。
毛呂は柚子の産地で、道脇には柚子の木がたくさん。もう青い実がだいぶ大きくなってきています。
昼食に柚子を練り込んであるうどんを食べ、その後、桂木観音へ向かいます。
横を流れる川はいつの間にか毛呂川からその支流の桂木川になっています。
まずまずの勾配だった道が桂木川を離れUターンすると、勾配は急にアップして、ここからは激坂に。
そして、連続のヘアピンカーブ!
わっせ、わっせと上ってなんとかヘアピンカーブを脱出すると、左手の視界が開きます。
ここでほっとひと息付くも、道が二手に別れ、『桂木観音右』の標識が現れると、
そこから本当の激坂が始まりました。前輪が浮き上がりそうです、ここは。
まあ、それでもこの本当にきつい区間は100mほどなので、押しても問題無し。
桂木観音はこの激坂を上った先の、道から急勾配の階段を上った上に建っています。
この階段の下まで辿り着いても、すぐに観音様まで駆け上って行ける強者はまずいないでしょう。それほどこの直前の坂はきついです。
すぐにこの階段を上る必要はありません。観音様の前にはちょっとした駐車スペースがあり、その奥には、東京方面の素晴らしい眺望が開けているのです。
この日は少し霞んでいて見えませんでしたが、ここからは東京スカイツリーも見えるそうです。
東京方面の眺望を楽しみ、観音様にお参りしたら、三つの滝が流れ落ちる黒山三滝へ向かうのですが、ここからはハイキングです。
桂木観音の前の道を奥まで進むとこの道はなくなりますが、そこから南の山の中へ向かう小径があるのでこれを行きます。
するとすぐに山の中に入っていき、道は急な下りになります。
この道には行き先を示すきちんとした案内板が設置されているので、ハイキング路になっているのでしょう。
ここは当然自転車には乗れないので、押したり担いだり。
『この道、本当に行けるんですか〜』 と、ちょっと不安なビジターのヒデちゃん。まさかこんなところを通らされることになるとはまったく予想だにしていなかったようで。
『まあ、道、続いているみたいですから、行けるンとちゃいますか〜』 と、いつもいい加減なサイダー。
関東地方はここのところ雨続きだったので、地面はかなりぬかるんでいて歩き難いところもありますが、なんとか押したり引いたりしながら進んで行きます。
この山道を10分少々歩くと舗装路に抜け出ます。
ここからは黒山への下りです。
ぐわ〜んと下った先の久しぶりの広い道は、r61越生長沢線。横には越辺川が流れています。
この道に出ると黒山三滝はもうすぐそこです。
越辺川に三滝川が流れ込むと、そこが黒山三滝の入口です。
この入口から滝までは緩いながらもちょっとした上りがあります。
歩行者とほとんど同じ位の速度で、この三滝への道を上って行きます。
奥に進むにつれ、道脇を流れる三滝川はどんどん細くなり、滝状に落ちる所もでてきます。
土産物屋が出てきて、これ以上自転車で進むのがむずかしくなったところで道脇に駐輪し、あとは歩いて滝を見物に。
ここには男滝、女滝、そして天狗滝と三つの滝が落ちています。まずは奥にある男滝と女滝へ向かいます。
道が突き当たると先に朱色の太鼓橋が見え、右手に滝が落ちています。
この滝は上下二段になっていて、上が男滝、下が女滝。男滝は落差10m、女滝は5mほどで、いずれも大して大きなものではありませんが、二つ重なることで、ちょっとした迫力と独特の味わいが感じられます。
『二段の滝って、ちょっと珍しいね〜』 と、シンチェンゾー。
女滝の滝壺の横に小さなスペースがあったので、ここで記念の一枚。
女滝の横から男滝の前に上る階段があるのでこれを上ると、男滝のうしろの岩場に蝋燭が灯されているのが見えます。あの蝋燭はいつ、誰が灯すのでしょうか。
男滝を眺めたらそのまま上の道を引き返すように進み、小さなお堂の横からさらに上に続く階段を上ると、男滝の上に出ます。もっともこれを上っても、男滝は木々に隠れてあまりよくは見えないのですが。
男滝・女滝を眺めたらやってきた道を引き返し、天狗滝へ向かいます。天狗滝が落ちるのは三滝川ではなくその支流です。
三滝川の手前から天狗滝の入口を見ると、極めて狭い谷から細い流れが落ちていて、その横を階段が上っているのが見えます。奥には陽の光が差し込んでいて、ちょっと神秘的な感じ。
濡れていて滑りやすい石の階段を上って行くと、突き当たりにうっすらと白い筋が見えます。あれが落差20mの天狗滝です。
この滝は水量が少ない上に滝壺まで近づけないので、今日見た滝の中では一番の落差があるのに、あまり迫力は感じられません。しかし、天空から降り注ぐ陽の光と滝の白さが重なり合い、独特の雰囲気を醸し出しています。
ちょうどこの時間は、滝の真後ろから陽の光が差し込み、とてもいい感じで天狗滝を見ることができました。ここはちょっとしたパワースポットになりそうな感じ。
さて、これで本日の滝巡りはすべて終了。あとは風呂で汗を流してビールを飲むだけなのですが、まだちょっとだけ時間に余裕があるので、オプションコースを行くことに。
黒山三滝の近くに龍隠寺という、山門が素敵な寺があるのです。
龍隠寺へ向かうのには、r61越生長沢線から龍ヶ谷川沿いに入るのがもっとも分かりやすく、道も穏やかなのですが、ここは越生長沢線の一本山側の道を使ってアプローチします。
するといきなり、バーンと激坂が。
ハヒハヒを続けてなんとかこの激坂を上って行き、やっと頂上に着いたと思ったら、その先に見えるのは砂利道ではありませんか。
『ギャー!』 と、悲鳴までは上げなかったものの、『ウッ!』 と、声を詰まらせる面々でした。
この砂利道が長いのなんの。まあ実際は1kmほどかと思いますが、ここまでの度重なるアップダウンに痛めつけられている身体には、この砂利道は骨に沁みるのでした。
『今日はとても40kmコースとは思えない過酷さですね〜』 と言いつつ、紅一点のキルピコンナがなんとか下って来る。
龍ヶ谷川沿いに入るとそこは鄙びたいい道です。
その道を西へ向かうとすぐに龍隠寺に到着。龍隠寺の創建は1430年ですが、紀元803年にこの寺の基礎となる寺が建立されているので、それから数えればここは1,200年ほどの歴史を持つ寺ということになります。
開基は室町幕府6代将軍の足利義教。太田道灌とその父の道真により中興され堂が建てられたようで、道灌と道真の墓はここにあります。
杉林の中に苔むした石畳があり、その先に大きな山門が建っています。この佇まいはなかなか風情があります。
龍隠寺にお参りしたら風呂に一直線。
『今度こそもう下りですねぇ〜』 と、チェーンをアウターに掛け直すキルピコンナなのですが、これはすぐに後悔するハメに。
なんとここからさらに激坂上りがあったのです。これが本日一番のきつさとあって、全員愕然。そして下りは例によってダート。ありゃりゃ。。 このダートがまた、メンテナンスされていない道路にありがちな、轍が雨で抉れた、走り難い道を代表するようなもので、閉口。
しかしなんとかそろりそろりと下って、舗装路に出ました。この舗装路もしばらくは下りで、これは快適。
越辺川の支流の麦原川まで下った所でムカエルが急停止。なんと本日三度目のパンク。今日は厄日だ!
なんとかパンク修理を終え、さらに下ります。
麦原川はこの先で越辺川に合流します。その越辺川沿いに入っても緩い下りは続きます。
今日の〆は越生のお風呂。ちょっとだけr61越生長沢線を飛ばし、その後は飯能寄居線の一本西側のカントリーロードを進みます。
ここはちょっとだけアップダウン。
キー紛失事件やパンクもあったけれど、予定からあまり遅れることなく『ゆうパークおごせ』に到着。ここで一日の汗をゆっくり流しました。
お風呂のあとはやっぱりビール。武州長沢駅近くのワサビ専門店でワサビビールを。これ、カッラ〜〜(笑)
本日の反省会の要旨は、一年分の激坂上りと一年分の砂利道ダートを味わい、一年分の滝を見て、一年分のワサビを食べた〜、ってことのようです。