今日はこの企画のメインイベント。奥志賀の紅葉を楽しみ野沢温泉へ下ります。湯田中温泉の朝は少し雲があるものの、朝日が昇っています。天気予報でも今日は晴れ。良き紅葉日和です。
朝風呂に浸かり、おいしい朝食をいただいたら、さあ、出発。
私たちはまず、湯田中温泉駅の前から志賀高原までバス輪行です。長電バスに確認したところ、よほど混雑していなければ自転車の持ち込み可ということです。
この日は私たち以外に乗客は4〜5人で、問題なく乗れました。
湯田中温泉の駅前は標高600mほどで、周囲の山にはまだ紅葉はやってきておらず、緑色です。私たちを乗せたバスは、猿が温泉に浸かることで有名な地獄谷野猿公園の入口をかすめ、どんどん高度を上げていきます。
道脇にちらっちらっと色付いてきた木々が現れるようになった頃、バスは志賀高原の入口のサンバレーバス停に到着します。バス停に至る直前には、道端にカメラを並べた人々がたくさん。どうやらみんな、一沼の撮影をしているようです。私たちはここで下車し、これ以降は自転車で上ります。
この周辺には、紅葉の名所として知られる一沼、丸池、蓮池などがあります。私たちは自転車で上り出す前に一沼と琵琶池を覗いてみることにしました。
バス停から一沼に向かうと、すでに周辺はいい感じに紅葉しています。ここの標高は1,400mで、湯田中温泉より800mも高いのです。
道路際に一沼付近の案内図がある入口を入ると、道は二手に別れ、一方は一沼、もう一方は琵琶池に通じています。
ここはまず琵琶池へ。
赤やオレンジに色付いた木々の中を抜けていくと、下に琵琶池が現れました。
この対岸の木々は、紅葉にはまだ少し時間がかかりそうですが、この池はひっそりしていて、なかなかいい感じです。
琵琶池を眺めたら、やってきた道を戻って一沼へ向かいます。
この周囲の紅葉はこんな。
緑から黄緑、そしてオレンジに変わろうとする木、すでに赤くなったハゼの仲間と、グラデーションが美しい。
歩いているうちに周囲にうっすらと霧がかかるようになりました。一沼に着いた時には、真っ白という感じに。
さっきまで晴れていたのに。。でも霧の一沼もまたなかなか乙です。睡蓮も黄色く色付いています。
琵琶池と一沼を眺めたら、いよいよ自転車に跨がり、出発です。
写真は道路を挟んで、一沼の反対側の紅葉です。
上り出すとすぐ右手に丸池が現れます。
このカーブのところはちょっときつく、斜度7%ほどで、えっさこらさと上って行きます。
いくつかカーブを廻ると、大きな青い道路標識が現れます。ここでR292を離れ、左の奥志賀方面のr471奥志賀高原線に入ります。
この奥志賀高原線は、先のr502奥志賀公園栄線と合わせ、かつては奥志賀スーパー林道と呼ばれた有料道路だったそうです。奥志賀スーパー林道はここから野沢温泉村を経て、千曲川流域の栄村に至る66kmほどの道で、今日はこれを行きます。
奥志賀高原線に入るとほどなく、正面に志賀1号トンネルが見えてきます。そのすぐ手前はジャイアントスキー場のゲレンデで、道の上にはリフトが横切っています。山の向かい側に見えるのは、西館山スキー場のゲレンデ。
志賀1号トンネルの横にはかつては旧道があったのですが、それはジャイアントスキー場のゲレンデになってしまっていて、すでになく、トンネルを抜けて進みます。この志賀1号トンネルは500mほどで、1mほどの歩道があるのでこれを行きます。
トンネルを抜けて道がカーブした先に志賀山が頭を出すと、右手にトイレが現れ、その先で道は二手に分れます。
ここは左へ行くと志賀2号トンネルに、右へ行くとそれを迂回する旧道で、私たちは右の旧道へ。
この分岐から道はガーっと高度を下げていきます。せっかく上ったのに。。
そして志賀2号トンネルへ向かう高架橋をくぐって、横湯川を渡ります。するとすぐ砂利道になり、カーブを廻るとそこは最近人が通った気配のない、草が生えた細道に。トンネルの出口まではまだ1kmほどありそうなので、この先は断念。戻って志賀2号トンネルへ向かうことにします。
すると来る時は気が付かなかったのですが、左手にちょっとしたスペースがあり、志賀高原清水公園『志賀の源水』が現れます。これは冷たくて甘く、おいしい水です。
源水をいただいたら、えっこらよっこらして元の道に戻ります。
何とか気を取り直し、トンネルへ向かうはサイダー、シロスキー、サリーナ。
すぐに先ほど下をくぐった高架橋が現れます。
ここはかなり紅葉が進んでいます。右手は赤。
左手は緑色からオレンジ色に変わろうとしています。
さて、志賀2号トンネルまでやってきました。このトンネルの延長は386mと短いのですが、歩道が60cmほどしかなく、自転車でその上は通れません。そして車道中央にポールが立っているため、交通量が少なくても、車は対向車線に回避できない構造です。
さらに具合が悪いことに、車道の端のちょうど自転車で通るあたりの舗装が剥げ、きちんと修繕していないので極めて危険な状態です。結局このトンネルは半分ほど走り、残りの半分は押して進みました。
トンネルは恐ろしかったのですが、それを抜けると山はいい色です。白樺の白い幹も輝いて見えます。
この先で道は志賀3号トンネルへ向かいますが、ここには迂回ルートがあります。
その道は発哺温泉(ほっぽおんせん)方面に向かい、途中から分岐します。
この迂回ルートは誰も通らず快適で、紅葉もいい感じ。
『ここはいいねぇ〜』 と、珍しく先頭を牽くシロスキー。
この迂回路を出ると、ホテルとスキー場が現れ、高天ヶ原(たかまがはら)に到着。
右手には志賀高原高天ヶ原の標識が建ち、雪のないゲレンデが雲の中へ延びていっています。
標高1,680m。ここが本日の最高標高地点で、この先15kmほどは基本的に下りです。
スーっと下って『一の瀬』の大駐車場で一休み。ここは白樺林がきれい。
この反対側にはホテル群があるのですが、それを見たシンチェンゾーは、
『お〜、ここはシャレー志賀、昔、彼女とよく来たっけ!』 と感慨深そう。
一の瀬の先で道は二手に分れます。左はホテル群とスキー場をつなぐ道で、右はr471奥志賀高原線。
空が開けて明るいのは前者で、木々が近いのは後者。今回は紅葉目的なので、ここは後者を。
この選択は間違いではなかったようで、道はすぐに微妙な色を奏でる木々の中を行くようになります。
ここは黄緑色から黄色、そしてオレンジ色に移ろうとしています。
雑魚川の支流のアライタ沢を越えると、周囲の木々はオレンジ色が強くなります。
中にはほぼ真っ赤なものも。
『この道は素晴らしいですね〜 遥々やってきた甲斐がありました。』 と、紅葉に笑みが絶えないキルピコンナ。
道は雑魚川に沿って続いています。雑魚川には天然のイワナがいて、釣り人には人気の場所だそうです。
これ以降、何度もこの川を渡ることになります。つまりこのあたりは基本的には下りなものの、細かいアップダウンがたくさんあるのです。
雑魚川を渡るとその先で道はちょっと上りになり、上の道に合流します。
するとそこは奥志賀高原。
西にはスキー場のゲレンデが、東には烏帽子岳と紅葉した森が見えます。
その烏帽子岳をうしろに、記念の一枚。
この先で左に奥志賀高原スキー場の分岐が現れると、ゲートが出てきます。道はここからr502奥志賀高原栄線になるのです。この奥志賀高原栄線は、ここまでの471号奥志賀公園線から繋がる奥志賀スーパー林道の一部で、奥志賀林道とも呼ばれるようです。ゲートは林道だった時代のものでしょうか。
この先、補給可能ポイントは17km先のカヤの平キャンプ場までないので、ここまでに飲料水などを確保しておいた方がいいです。
奥志賀高原栄線に入るとすぐに、雑魚川の支流のガキ沢を渡ります。
奥志賀高原栄線は奥志賀高原線同様、しばらくは雑魚川の谷を行くので、基本的にはあまり眺望はないものの、このあたりは少しだけ右手に谷が開け、又七山あたりが見えます。
その雑魚川に下ってきました。
奥志賀高原牧場の東で源助沢が流れ込むこのあたりが、本日の紅葉の見所の一つです。
カエデもいい色に。
黄緑と黄とオレンジ色に染まった木々。
ただ、ため息が出るだけ。
ため息二つ。
ため息三つ。
このあたりは、停まっては写真を撮り、停まっては写真を撮りと、なかなか前に進みません。
のろのろ。。
オレンジや赤ばかりでなく、緑も黄緑も黄色もきれい。
真っ赤はハゼの仲間。
ゆっくりゆっくり進み、このあと二度雑魚川を渡るとそこがこのルートの谷底で、標高は1,200mに。そして雑魚川林道の分岐が現れます。この雑魚川林道を行くと秋山郷です。雑魚川はこのあと雑魚川林道に沿って流れて行きます。
雑魚川林道の反対側にはこれまで同様のr502奥志賀高原栄線が続きますが、ここにもゲートがあります。その上には『野沢温泉43km』の標識が。この先、こちら側を流れる川は満水川となります。
この時ちょうど正午で、予定よりなんと40分の遅れ! ここまで、紅葉が良すぎた〜
ゲートからは上りです。この日の昼食は『カヤの平』のキャンプ場を予定していますが、そこまではあと9kmほどあり、300mも上らなければなりません。
カヤの平まではまだだいぶかかりそうなので、少し急ごう。
赤シャツのシンチェンゾーが牽き、サリーナ、シロスキー、キルピコンナと続きます。
じわじわ上って行くと、満水川に流れ込む支流の小さな滝が現れます。
紅葉と滝という組み合わせは実に麗しい。
オレンジ色に赤が混じって、ここはいい感じ。
『紅葉は素晴らしいけど、腹へってきた〜』 と、足取りが重いサイダー。
『まだカヤの平に着かないの〜』 と、こちらもお腹が鳴り出したサリーナ。
カラマツ林に突入しました。
カラマツは落葉松とも呼ばれるように落葉樹で、きれいに紅葉もします。しかしここはまだ緑ですね。
ここの上りは勾配こそきつくないものの、じわじわと体力を奪っていきます。
前に出てきてみんなを牽くシロスキー。一方のサリーナは、『ハンガーノックになりそう。。』 と、後退を始めます。
仕方がないので道端に座って、おむすびを一ついただきました。
雑魚川林道の分岐点から7kmほど進むと、ようやくカヤの平への分岐が現れました。
カヤの平はその名のとおり平らなところなのですが、道は依然上りのまま。
先行が仇となって、おむすびを食べ損ねた赤シャツのシンチェンゾーは、早く昼食にありつきたいと、ここでダッシュ。一人、彼方へと消えていくのでした。
一方、おむすびを食べた残りの四人は、まったり進んで行きます。
分岐から2kmほどで、標高1,460mのカヤの平のキャンプ場に到着。
ここにはカヤの平高原の案内所とロッジがあり、ロッジでは簡単な食事ができるようです。
私たちはここでお弁当をパクリ。
カヤの平にはブナの原生林やシラカバの群生林があり、その林齢は250年ほどだそうです。
予定ではブナ林を散策するつもりでしたが、ここまで40分も遅れているので、これは残念ながら断念。20分遅れとし、カヤの平を出発します。
やってきた道を戻り、再びr502奥志賀公園栄線に入ります。
満水川まで穏やかに下るとそこから再度、緩いながらも上りが始まります。
後半のピークは1,570m。そのピークに向かって、徐々に高度を上げていきます。
そしてここからが、後半の紅葉のピークゾーン。
赤があり、オレンジ色のシャワーを浴びて進みます。
奥志賀スーパー林道の紅葉は当たりでした。このルートで一つだけ不満を言えば、絶景の遠望がないということでしょう。
右手の眺望が少し開きました。あの山は木島山でしょうか。ここは見渡す限りの遥かな展望とはいかないものの、その不満を少し晴らすことができるところです。
山影は見えないものの大次郎山の山頂が近付き、後半のピークが近くなってきました。
すると心なしか、勾配がきつくなります。
右も左も正面も、ここは紅葉のピーク。
この見事な色の中を、高度のピーク目掛けて上って行きます。(TOP写真)
『奥志賀林道竣工記念』と掘られた石碑が建つカーブに来ました。ここが後半のピーク、標高1,570m地点です。雑魚川林道分岐からの上りは、標高差は300mと小さいのですが細かなアップダウンがあり、距離は20kmと少し長かったです。
予定より15分遅れでこの石碑の前を出発します。カーブを廻ると道は下り出し、すぐに右手の視界が開きます。幾重にも重なる山の稜線の間に、白い雲が漂っています。ここは幻想的。
次のカーブまで下ると、目の高さに雲が浮かんでいます。ここで突然シロスキーが、
『あ、あそこに見事な城がある。』 と、言います。みんなでそちらを見るも、それらしいものはどこにも見えません。このお城、城好きでロマンチストのシロスキーだけに見えたのでした。
さて、あとは野沢温泉に下るだけです。ビューンと下って下って、さらに下って、快調に野沢温泉に到着! の予定が、予定はいつでも未定。。
『あや〜、パンク〜』 と、シンチェンゾーがストップ。なんとかパンク修理を終え再び下り出すも、五分もたたないうちにまたパンクです。
こりゃ〜、まずい〜。今日、キルピコンナとサリーナは東京へ帰らなければならないので、あまり遅れるわけにはいかないのです。すでに先ほどのパンクで、20分以上の遅れになっているのです。キルピコンナとサリーナ、そしてシロスキーに先に下ってもらい、シンチェンゾーとサイダーでパンク修理を始めます。
この二回目のパンク修理に手間取り、慌てて三人を追うシンチェンゾーとサイダー。脇目もふらずカッ飛んで、 日本の夕陽百選に選定されている見晴台まで下ると、先行三人の姿がそこにありました。
この見晴台からは、下に野沢温泉のまちが良く見えます。条件が良ければ、北アルプスから北信五岳の飯縄山、斑尾山、戸隠山、黒姫山、そして妙高山が見えるのですが、この時は北アルプスは見えず、北信五岳は一番南の飯縄山とそのすぐ手前にある斑尾山が見えただけでした。
しかし先行三人組が到着した時には、雲の上から妙高山が頭を出していたそうです。
ここで時計を見ると予定時刻ちょうどになっていました。途中の休憩ポイントをパスしたので、いつの間にか予定に追いついたようです。
見晴台からは慎重に野沢温泉に下ります。野沢温泉は13の共同浴場があることで知られています。これらの共同浴場は村人の共有財産で、その近くに住む人々によって管理されていて、入浴料はありませんが、気持ちを賽銭箱に入れる仕組みです。
私たちの今宵の宿は、熊が発見したという古い湯で寺湯とも呼ばれた『熊の手洗湯』のすぐ近く。キルピコンナとサリーナもなんとか温泉に浸かることができました。もちろん、宿泊組の三人は、このあとゆっくりまったりと寛ぐのでした。
奥志賀スーパー林道の紅葉は、想像以上に素晴らしいものでした。まだもう少し紅葉は進むかもしれませんが、見頃と言って良い頃合いだったと思います。出発地と到着地が温泉というのも、それに輪を掛けて旅を充実したものにしてくれます。
明日はここ野沢温泉の外湯巡りをして、ゆっくり出発し、千曲川沿いを遡り、長野の善光寺にお参りします。長野の直前に砂利道の三登山山麓林道がありますが、さてはて、どうなることやら。