桜の次はつつじと牡丹。今年は桜の開花がずいぶん早かったように、その後に続く花々も例年より一〜二週間早いようです。東京の根津神社のつつじはこの週末が見納めになりそうなほど。
東京はピークを過ぎたものの、埼玉県ならいい頃合いじゃあないかということで、やってきたのはよく来る比企地方。
東武東上線の坂戸駅前に植えられたパンジーは満開で、花壇を賑やかに彩っています。
さて、坂戸からまず向かうは越生(おごせ)の五大尊つつじ公園です。高麗川(こまがわ)の土手に上るとそこには自転車道が延びています。先には秩父から丹沢に掛けての山並みが見えていますが、いつもならその上に見える富士山の姿は、この日は春霞で残念ながらありません。
栃木県から遥々やってきたベネデッタは、GWの遠出用に仕入れたBD-1で登場。メルカリで激安でゲットしたそうです。
高麗川の自転車道は戸建て住宅地の北でいったんおしまいになります。
そのすぐ先には沈下橋の若宮橋が架かっています。この橋は老朽化のため2015年から2016年に掛けて架け替えられ、木製丸太の柱はコンクリート製に、米国製の古い鉄道レールを利用した桁も新しいものに置き換えられました。一見木製に見える路面は合成木材です。かつての趣は大分なくなりましたが、まあこれは、完全にコンクリート製にならなかったことで良しとすべきなのかもしれません。
若宮橋から先は畑の中のカントリーロードをどんどこ。
道端に咲く小さな野草も春の景色で、集落の入口には庚申塔や『見猿・言わ猿・聴か猿』の古い石碑があったりと楽しい。
田んぼには水が入れられ、田植えの準備が進行しています。
田んぼの先は、あれれ〜、のワイルド・ロードに突入。このあたりにはまだこんな道が残っています。
ここは真っ黒な土が美しい。
毛呂山町の川角に抜けました。ここで渡るのは越辺川(おっぺがわ)。今日は高麗川、越辺川、都幾川と三つの川を辿る旅でもあります。
越辺川の越は越生の越かなと思いますが、さて辺は何だろうと我らがWikipediaを引いて見ると、『越生の辺りを流れる川』という説があるそうです。
川角から越辺川に沿って西戸を行きます。ここの越辺川の水量はうんと少なくなっています。
とある民家の裏山では、巨大な藤が紫色の花をびっしり付けています。
藤は藤棚で目にすることが多いので、それが普通の状態だと思っている方もいるかもしれませんが、自然の中の藤は寄り添う木を見つけたら、それにつるを巻き付けどんどん上へ伸びて行くのです。
越辺川の周辺には田んぼが広がっています。
ここはまだ水が入っていませんが、その先の山並みがきれい。
先に越生の山が見えてきました。
今向かっている五大尊つつじ公園はあの山のどこかにあるはず。
越生の町に入り、越辺川の左岸を行きます。
ここの川辺には細い遊歩道が設えられていて、これは川が近くていい感じです。
この遊歩道を進んで行くと、民家の屋根上に赤いものが見えます。
あそこが越生町黒岩の五大尊つつじ公園です。
五大尊とは、不動(ふどう)、降三世(ごうざんぜ)、軍荼利(ぐんだり)、大威徳(だいいとく)、金剛夜叉(こんごうやしゃ)の五大明王のことだそうです。つまりここはお寺なのです。とは言っても現在ここには寺はなくて、平安時代末期に作られた五大明王像が安置されたお堂があるだけとなっています。
つつじ公園はこのお堂周辺の東斜面にあります。
東斜面だから、ここのつつじは午前中がきれいに見えます。
眩いばかりのカラフルなつつじたち。
まるでキャンバスに油絵の具を塗ったくったよう。
これはデリケートなサツキ。
真っ赤です。
案内の方によると白い花はまだこれからだそうですが、これは満開ですね。
つつじ園のほぼ天辺まで登ってきました。下には越辺川に沿った平地に越生のまちがあるのが見えます。
山の上の方には大きな藤も咲いています。
この手前の花はまだ開いていませんが、つぼみはとても大きいです。どんな花が咲くのでしょう。
そしてこのあたりには花の匂いが充満しています。つつじの匂いってあまり記憶にないのですが、ここでははっきりとそれを嗅ぐことが出来ます。
このつつじ公園は大きく分けると二つのゾーンがあります。ここまで巡ったのは南のゾーンで、北のゾーンには五大尊を安置するお堂があります。このお堂も五大尊と呼ばれるようです。
この五大尊周辺のつつじはかなり大きなものが多く、樹齢300年を超すものが600本もあるそうです。
強烈な色彩のつつじに酔いしれて山を下りたら、そこには藤が。
つつじがあまりに強烈な印象を与えるので、この薄紫の花はとても地味に見えてしまいますが、これはこれでいい感じで咲いています。この日は日中は29°Cという夏日でとても暑く、藤の木陰が助かります。
五大尊のつつじのあとは、その近くのシロクマパンでおやつ休憩。ここはクリームパンがベリーグッドです。
小腹を満たしたら、ときがわ町の明覚駅方面へ向かいます。ここはJR八高線沿いを行くかゴルフ場の間を行くかですが、今回は後者を。少し大味な道ですが、八高線沿いよりは良いかな。
この途中にある上り坂でベネデッタがパンクです。チューブのバルブの根本から空気漏れ。ベネデッタが入手した自転車は年式は古いのですがあまり乗られた形跡がなく、チューブもかなり古いものと考えられるので、たぶん劣化によるものでしょう。
ときがわ町番匠でうどんを食べたら、午後の部の見どころの一つの物見山に向かいます。このあたりは岩殿丘陵と呼ばれるところで、小高い丘に囲まれた平地を東に向かいます。この平地はどうやら谷津のようです。
大きな谷津から小さい谷津に分け入り、どんどこ行くと、その突き当たりからは森の中に。いよいよ岩殿丘陵の丘に入ったのです。
道はぐんと狭くなり、そのうち砂利道になりました。しかも上りとあって、ここはちょっとアセアセ。
JAXA地球観測センターの前まで来ると砂利道は終わり、雑木林の中を行く快適な道になりますが、ここも登り基調のアップダウン。
雑木林を抜けると東松山市の物見山公園です。
この公園もつつじで有名です。
そして眺望も優れています。
これは東の高坂方面を見たところ。
この公園は北斜面なのですが、山が低いためか陽当たり良好で、つつじも先ほどの五大尊つつじ公園よりずいぶん早く咲き出し、この時はすでにピークを過ぎていました。
でも中にはこんなふうに見頃のものもあります。
物見山公園のすぐ下には岩殿観音こと正法寺があります。物見山公園はとても暑いので早々に退散して、この岩殿観音で涼みました。
坂東三十三箇所の十番札所になっているここには巨大なイチョウの木があります。その根っこは大迫力で、一見の価値ありです。
大イチョウの木陰で身体の熱をさましたら、門前町を下り、都幾川に向かいます。
ここはまだ岩殿丘陵の中なので、ちょっとした上りがありますが、高度差は僅かなので一気に上ります。
軽く上って下ると都幾川です。そこに架かるはコンクリート製の沈下橋の稲荷橋。
都幾川からは北上を続け東松山ぼたん園を目指しますが、時は15時で暑さのピークを迎えています。
今年は三月に一気に暖かくなり、その後も好天が続いていましたが、この日一気に気温のジャンプがあり、夏日になったのですが、まだ身体がそれに反応できません。全員もうバテバテで、東松山ぼたん園はカットして、最後の見どころの箭弓稲荷神社に直行しようという案が持ち上がりました。誰もこれに反対するものはいなかったのでルート変更です。
東松山駅前の箭弓稲荷神社に到着。この神社はその名の箭弓に野球を掛けたようで、野球関係者がよくお詣りするようです。
なんとここの絵馬はバット! 『レギュラーになれますように』とか、『全国大会に出られますように』とか、『ホームランが打てるように』とか、たくさんぶら下がっています。
箭弓稲荷神社は牡丹で有名。東松山市の花はまさにこの牡丹で、これは市のマンホールにも描かれています。しかしまずここで向かったのは牡丹園ではなく、おそらくこの牡丹の時期だけ営業するのだろうと思われる出店。そこで冷たい飲物をグビッ! あー、生き返る〜
さて、牡丹園ですが、可憐なレモンイエローの花があるかと思えば、
大人びた紫色のそれ、
こちらは清楚な白と、様々です。
牡丹と良く似た花に芍薬がありますね。この違いはいろいろありますが、もっとも大きいのは牡丹は木で芍薬は草だということ。木の幹はどこまでも太くなりますが、草の茎は一定以上太くならない。
牡丹園の奥にはつつじも咲いています。
ここのつつじの木はやや小振りなものが密集して植えられ、しかも刈り込みされているので、大降りでワイルド感がある五大尊つつじ公園や物見山公園とは大分印象が異なります。
可憐な乙女のようなピンク色のつつじ。
そしてここには藤もあります。これは『延命(ながらへ)の藤』と呼ばれるもので、樹齢は250年以上とも言われているそうです。
50m2ほどあるこの藤を下から見上げると、なかなか幻想的です。
さて、牡丹とつつじと藤を鑑賞したらあとは打ち上げ会場に向かうだけですが、東松山ぼたん園を飛ばしてしまったので、時間はたっぷり。ここはのんびり行くことにします。
本日の最終目的地は出発地点の坂戸駅です。都幾川まで下って左岸の自転車道をどんどこ行きます。
都幾川はこのすぐ先で越辺川に合流します。
いつもはその越辺川の天神橋を渡り、越辺川右岸を行くのですが、今回は久しぶりに都幾川右岸と越辺川左岸の繋がりがどうなったか見に行くことにしました。
ここはr212の早俣橋の南、正代運動広場付近で自転車道がなくなっていたのですが、さてどうでしょう。
やっぱりここはまだ繋がっておらず、写真のような状態です。
南側は九十九川の堰から島田橋まではずいぶん前にアスファルトが敷かれています。
そのきれいな路面のアスファルトに乗り、島田橋へ向かいます。
越辺川に架かる島田橋も最初に見た若宮橋同様、沈下橋です。
この橋は2014年の大雨で流出してしまい、2015年にほぼ元の姿で架け替えられました。主桁はH形鋼(元も同様)ですが、その他は木造で、全長77mとかなりのものです。
架け替えられてほぼ丸三年が経ちますが、まだ木の白さは失われておらず、香りが残っているようにさえ感じられます。
やっぱりここの沈下橋は木造がいいね。