駒ヶ根の宿で目が覚め、外を見れば空は白い。曇りです。天気予報によれば今日は一日こんな天気らしい。
今日はこの企画のメインイベントで、ここ駒ヶ根からしらびそ高原まで上ります。累積登坂高度は1,700m! ジオポタとしては最高難度の部類です。上り切れるかなぁ〜
宿で、焼き魚、湯豆腐、納豆、温泉卵という日本的な朝食をいただき、いざ出発。
ここからしらびそ高原までのルートは大きく分けて三つあります。東から、R152秋葉街道に出て分杭峠を越え大鹿村に抜ける。r210折草峠経由で小渋湖に抜ける。r18伊那街道で天竜川沿いを行き、大草村から小渋湖に抜ける。
私たちはもっとも難易度が低そうな、最後の天竜川ルートを採ることにしました
私たちの宿は天竜川の東の山の中腹にあるので、まず天竜川へ下ります。
下り出すとすぐ、正面に中央アルプスが見え出します。
駒ヶ根の田んぼはすでに田植えが終わり、きれいに苗が並んでいます。
そこに映り込む中央アルプスもまた良いです。
振り返れば、昨日宿泊した山が見えます。
これらは中央アルプスに比べればどうということのない山ですが、昨日の最後の上りはきつかった〜
田んぼを抜けて伊那街道に出、しばらく進んで天竜川の際まで下るとr18に合流します。
そこから先はr18が伊那街道となり、しばらくはこのr18で天竜川沿いを行くことになります。
基本的にはr18の一本道で選択肢はほとんどないのですが、吉瀬にちょっとした迂回路があったので入ってみました。
果樹畑の下に大きな杉の木と『吉瀬の枝垂れ桜』と呼ばれる桜の木が見えます。満開の桜の向こうに中央アルプスという絵が想像できます。
『中央アルプス、いいねぇ〜』 とこの景色に満足げな企て人サイダー。
畑の奥まで進んで道がなくなった所で方向転換し、りんごの木の間を中央アルプスに向かってダイブします。
ダイブした先のr18伊那街道は、天竜川の左岸ぎりぎりまで落っこちてくる山の急斜面を無理矢理に削り取って通されています。
川縁の道ではありますが、ほとんど山道といった風情で、細かいアップダウンの連続です。
日曽利橋までやってきました。ここで天竜川をちょっと見ておくことにします。実はr18からは天竜川は樹間からちらちらっとしか見えないのです。
ここの天竜川はまだ幅が狭く、水深も浅く、上流域の姿を留めています。
天竜川は日曽利で大きく蛇行しています。そこには数本の小川が流れ込んでおり、そのため三角州状の平場が造られているため、r18も二車線に幅員を広げます。
日曽利を過ぎると再びr18は山道になります。
日曽利の先で天竜川は今度は小さな蛇行を繰り返し出します。
これはその二番目の蛇行部分で、河原ができているのが見えます。
道にアップダウンがなくなり、フラットから下りに転じました。中川村の飯沼が近付いたのです。
このあたりから天竜川に平地が現れるようになります。
中川村の大草に入った所でr18を離れ、大草城址公園へ向かいます。
大草城址公園は大草村役場の少し南にあり、桜の名所として知られています。
しかしもうとっくに桜の季節は過ぎて、その葉っぱは深い緑色に変わっています。
今日のルートは補給ポイントもトイレも少ないので、ここでトイレ休憩です。
大草で天竜川と中央アルプスに別れを告げ、小渋ダムへ向かいます。
ここから小渋ダムの上部の桑原までは上り一本。
4.5kmで200mの上り。平均斜度4.4%。しらびそ峠の前座としてはちょうど良いでしょう。
勾配が緩いので(笑)サイダーが牽き、シュンシュン、サトちゃんと続きます。
この前座の上りは難なくクリアです。
まあ、今日はこんなところでへばっているわけにはいかないのですよ。
桑原のピークを過ぎて下り出すとすぐ、大鹿村へと続く深い谷が現れます。
遥か彼方に見えるのは、南アルプスの赤石岳あたりでしょうか。
さらに下れば、眼下に小渋湖が見えてきます。
小渋湖は小渋ダムによって塞き止められた小渋川にできた人造湖です。
豪快に下って、
小渋ダムに到着。
この時は下の小さな水門から水が吐き出されていました。
小渋ダムで一服したら、トンネルをくぐり抜けて小渋湖沿いを行きます。
このトンネルは少々長いのですが、迂回路はなし。
ほどなく先に南アルプスがちょこっと見えるようになります。
残念ながら山にはあまり詳しくないので、どの山なのかははっきりしませんが、方角からするとやはり赤石岳あたりのようです。
四徳大橋を渡り、
滝沢トンネルをくぐり抜けます。
この滝沢トンネルには湖畔を行く迂回ルートがあるのですが、この時それは工事中でした。
次の桶谷トンネルは短いのですが、ここの迂回路は使えました。
桶谷トンネルの横には小さな堰があり、ターコイズブルーの小渋川が見られます。そうそう、小渋ダムの影響範囲はこの堰の手前までで、これより先の小渋川は、驚くほどその姿を変えます。
その姿がこれ。
ダム湖を見たあとではちょっと信じられないほど、水量が少なく、浅く狭い。
小渋川が姿を変えると、道は穏やかに上り出します。
谷が狭まってきました。
短いトンネルを二つくぐり抜けると突然視界が開き、大鹿村の落合に出ます。
ここで小渋川に鹿塩川が流れ込み、道はR152秋葉街道になります。
ようやくしらびそ高原への上り口の村に到着しました。
ここの小渋川沿いには遊歩道のような道があり、これはなかなか気持ちがいいのですが、この時それは工事中でした。
さて、大鹿村を出るとこのあとは食事はもちろんのこと、補給もできません。ということでまずはここで昼食です。しかしこの大鹿村の中心部でさえ、確実に食事ができるとは限りません。事前調査でなんとか見つけた食事処の『いちばんぼし』へ。雰囲気のいい店に、気さくなマダムが経営するここはバイキングスタイルなのですが、味もなかなかでした。
ゆっくり昼食をいただいたら大鹿村の大河原を出発します。
大河原の出口の新小渋橋で小渋川を渡り、青木川沿いに入ります。ここで小渋川と別れ、このあとの供はしばらくの間、青木川になります。
さて、ここからいよいよしらびそ高原への上りが始まります。そのしらびそ高原の直前にはしらびそ峠があり、さらにその手前には地蔵峠があります。
まずクリアせねばならないのは、この地蔵峠。新小渋橋から地蔵峠までは、12kmで560mの上り。平均斜度4.6%。実際のピークは地蔵峠の少し先で、15kmで760mの上り。平均斜度5.1%。
道はぐんと狭くなりましたが、これもR152の秋葉街道です。
青木川沿いの道は右岸から左岸へ、左岸から右岸へ、と頻繁に行ったり来たりを繰り返します。
そんなところで渡る橋は、ちょっと古めかしいこんなもの。
谷はどんどん狭まってきて、川のこっち側の山はほとんど崖のようになってきました。
『そろそろ本格的な上りになってきましたかねぇ〜』 と、まだ余裕のシュンシュン。
『いえいえ、まだまだこれからですよ。』 と、去年ここを走ったサトちゃん。
ゆっくり上り詰めて行きます。この上りは距離が長い上、後になるほどきつくなってくるので、じっくり腰を据えて掛かります。
キャンプ場がある深ヶ沢の手前にちょっとしたスペースが出てきたので、ここで一休みです。
大鹿村の新小渋橋を出てから50分、250mほど上りました。地蔵峠までのほぼ半分を上った計算です。
深ヶ沢を出て15分ほど走ると、先にヘアピンカーブが見えます。
ふと上を見ると、幾重にも白いガードレールが重なっています。
ついに地蔵峠の直前のつづら折れが始まったのです。
『ついに来ましたか、激坂が! ちょっとインナーに落とします。』 と、シュンシュン。
シュンシュンはこの日のためにブロンプトンのクランクを入れ替えて、チェーンリングを二枚にしていたのです。
えっこらよっこらと腰を据えて上ります。ところがここは、
『歩いた方が早いや!』 と、自転車を押しに掛かるサトちゃん。
確かに、乗っても押しても速度は変わらない。。。(笑)
ヘアピンカーブを二つ、三つ、四つと上って行きます。
いったいいくつヘアピンカーブを廻ったでしょうか。
ついにカーブがヘアピンではなくなり、ゆったりとした弧を描くようになると、勾配はほぼフラットになります。
そして先にカーブが見え出すと、そのカーブのところに『地蔵峠 標高1314m』の標識が建っています。
ついに地蔵峠に到着したのです。
地蔵峠の名はこの奥に地蔵堂があることからだそうです。道端にも『地蔵菩薩蔵→』の標識が建っているので、ちょっと覗いてみました。
標識を入るとすぐ、道路から10mか15m奥まったところにお地蔵さんの赤い頭巾が見えます。お堂は簡素なものですが、このお地蔵さんはきっと古くから旅人をここで見守ってくださっているのでしょう。
お地蔵さんにお参りしたら、いよいよしらびそ峠に向かいます。
『え〜、峠って、道、まだ上っているじゃあありませんか!』 と道の先を見たシュンシュンが呻く。
そう、地蔵峠は今日私たちが使う道からすると峠ではなく、ただの坂の途中に過ぎないのです。実はこの地蔵峠でR125は山道、いわゆる点線国道となって地蔵堂の横を下っていくのです。国道の未通区間です。ですからR125で見ると、ここは立派な峠というわけです。
ということで地蔵峠から上はR125ではなく、蛇洞林道(じゃぼらりんどう)という道になります。
この蛇洞林道に入ると勾配は5〜6%に緩み、だいぶ走りやすくなります。
そして右手の視界が開けて、谷の向こう側の山ひだが見えるようになります。
この山ひだの深いこと深いこと。ここからは見えませんが、地蔵峠から下ったR125はこの谷底を通っているのです。
下界の緑はすでに夏の色、深いヴィリジャンに移ろうとしていますが、標高が上がったこのあたりでは、まだ新緑と言っていい初々しい若葉色です。
蛇洞林道でゆっくり高度を上げて行くと、小さなカーブの先で道は下り出しました。どうやら地蔵峠の先のピークを越えたようです。この先、蛇洞沢までは快適な下りです。しかしその先の上り返しはきついです。勾配は激がつくほどではなかったかもしれませんが、ほとんど壁のように感じてしまいます。もうかんべんして〜
この壁坂を上り切ると視界が開け、しらびそ高原へ上る道の分岐点に出ます。蛇洞林道はここから秋葉街道に下り始めますが、私たちはしらびそ高原へ。
ここからが本日の第二部の始まりといったところでしょうか。道は当然上り。(笑)
この先はずっと右手の視界が開き、先まで続く山並みがはっきり分かるようになります。深い山!
カーブに橋が架かり、そこに小さな滝が落ちています。それを彩る緑も美しい。
しらびそ峠まではもうひと息なので、ここで最後の休憩です。
山並みの上にうっすらと彼方の山が見えます。あれは午前中ずっと眺めていた中央アルプスでしょう。
山並みを眺めながら進むと先に急な上りが見え、そのすぐ手前の左手に駐車場が現れます。
この駐車場の所がしらびそ峠でした。しらびそ峠もまた例によって峠ではない!(笑)
やっと上ってきました〜
このしらびそ峠の標高は 1,833m。本日の最低標高は500mちょっとですから、ここまで1,300mほど上ったことになります。いや〜、良く上りました〜
しらびそ峠は南アルプスの眺望が素晴らしいです。この時期はもう雪が残っていないのが残念ですが、ここから見える山々はみんな3,000m級のものばかりなのです。
左から、端に荒川前岳(3,032m)、中央の塊は大沢岳(2,819m)、中盛丸山(2,807m)、兎岳(2,818m)、前聖岳(3,013m)といったところ。
ここにきて気温がぐんと下がりました。16°C。かなり寒さを感じるのでしらびそ峠は早々に立ち去り、本日の終着地のしらびそ高原でゆっくり南アルプスを堪能すことにしました。
しらびそ峠を出ると、激坂! おえ〜〜〜〜 ここが本日一番の難所かも。。。
高度が上がったからか、西には中央アルプスがずらりと見えるようになります。
ここは南アルプスに中央アルプス、そして条件が良ければ北アルプスまで見えるのでしょう。
山の上に建つ赤い屋根のハイランドしらびそに到着です。
しらびそ峠からこのハイランドしらびそまでは1kmほどしかないのですが、これが長かった〜
このハイランドしらびそが建つところがしらびそ高原で、その標高は 1,918m。
しらびそ峠は南アルプスまでの距離が近く迫力がありましたが、こちらは視界が広く、どこまでも続く南アルプスが楽しめます。
本日の行程、無事終了です。いや〜、とにかく良く上ったよ〜