今日から6月です。6月の花といえば紫陽花でしょう。神奈川県開成町のあじさいまつりが今日からなので行ってみることにしました。
なんとなく5月は春で6月からが夏というふうに思っていますが、その5月は各地で月の最高気温を更新し、関東地方でも30°Cを超す日がありました。6月はいったいどうなるのでしょう。ちょっと気温が心配でしたが、予報では最高27°Cほどとまずまずのようです。
やってきたのは小田急小田原線の渋沢駅。
紫陽花は午後にして、午前中は林道三廻部線(みくるべせん)と尺里峠(ひさりとうげ)越えという山系イベントを入れてみました。午前中はちょっときつく、午後はマッタリ系という構成。
駅前を出るとほどなく、北に丹沢山系の山々が見え出します。
その丹沢に向かって進路をとれば、これが初っ端からちょっときつい上りで、すぐにあへあへ。
隣を流れているのは四十八瀬川ですが、これは道からの距離が離れており川面はまったく見えず。
ようやく上りが終わると、その四十八瀬川に架かる才戸橋に下ります。
才戸橋を渡ると秦野市の三廻部(みくるべ)です。ここは集落の入口の坂がきつい!
この坂を上り切ると新しい道が出来ており、その下では大規模道路工事が進行中です。いったいこれはなんだろうと思ったのですが、どうやら新東名高速道路のようです。
四十八瀬川に沿って集落の下を通る道から集落内の生活道路に上がると、そこには茶畑が広がっていていい感じです。その向こうには白い花を咲かせたソバ畑も。
三廻部の集落の終わりからは四十八瀬川沿いに続く細道に入ります。この道は、集落から離れたところにぽつんと一軒だけある三廻部病院の横を通り、林道三廻部線に続いていきます。
入口の明るい広葉樹はすぐに針葉樹に変わり、ぐっと狭くなった薄暗い道を進んで行くと、ここで一気に気温が下がったようで、空気がひんやりして気持ちいい。
前方が明るくなると、針葉樹の森は再び輝かしい広葉樹に変わります。
この時期の広葉樹は、弱々しい新緑から力強い緑に変わりつつありますが、まだ深いヴィリジャンまでは至らず、初々しさを残しています。
この道の右手側には相変わらず四十八瀬川が流れているのですが、その川面は見えず、またその向こう側の景色もほとんど見えません。
これは木々の合間からほんのちょっとだけ見えた川向こうの山です。
この細道に入って1kmほど進むと、道端に林道三廻部線の起点の標識が現れます。ここから先が林道三廻部線になるのですが、先の道の様子はこれまでと変わる気配はありません。というか、ここまでがすでに林道と言われてもおかしくないようなものなのです。
草が成長していて気付かなかったのですが、よく見ればこの標識のすぐ手前に、今はほとんど使われていないように見える片持ちの旋回式ゲートがあります。
標識の向かいには、ちょろちょろと流れ出る水場があります。
少し気温が高くなって来たので、この水で顔を洗ってすっきり。
三廻部線の起点の標識を過ぎるとヘアピンカーブがあり、勾配が上昇。しかしこの急勾配ゾーンは短いので一気に上ります。
標識から1.5kmほど進むと、寄方面と鍋割山方面の分岐点です。これを鍋割山方面に進むとすぐに表丹沢県民の森の駐車場で、そこから徒歩10分ほどで黒竜の滝に行けます。暑かったらこの滝に行こうと思っていたのですが、今日の気温はそれほどではないし、ビジターのアッちゃんによれば、そこには山ヒルがウジャウジャいるそうな。それで今日は黒竜の滝はパスし、三廻部線で寄方面に向かいます。
寄方面の道はここで四十八瀬川を離れ、やって来た道をクイックターンするようにして山に向かいます。
これを僅かに上ると立派なゲートが現れました。
このゲートから先はまずは直線基調の道が続くのですが、ここは斜度10%以上あり、ちょっとエッコラです。
路面はまずます良好ですが、所々に斜面から落ちてきた小石がころがっています。不用意に踏むとパンクしそう。
そのうちヘアピンカーブが出て来て、この後もヨッコラな、サンダリアス、アッちゃん、シュンシュン、シロスキー。
この林道には相変わらず眺望はありません。しかし四十八瀬川を離れてから1.5kmほどで、ようやく左手の視界が開け、秦野あたりとおぼしきところが見えるようになります。
これが林道三廻部線で唯一の眺望です。この眺望ポイントまで来ればピークはもうすぐ。
勾配が緩くなると切り通しのピークです。このピークには急な階段で下りてくる登山道がクロスしていますが、特に他には見るべきものはないので、一息付いたら反対側に下ります。
下り側には水がしみ出しているところがあるので注意して。細かいカーブが続く道を3kmほど下るとゲートがあり、林道三廻部線はおしまいになります。
ゲートの先には中津川が流れています。中津川はこの北3kmほどのところにある鍋割山の山頂付近に源を発し、その水は青みあるいは緑色掛かっていて、やや白濁しています。よく見れば河原の石も緑色っぽいものが多いようです。この石はおそらく緑色凝灰岩で、中津川にはこれらの成分が混じっているのでしょう。
水質の問題でか、はたまた流れが比較的急であちこちに段差があるためか、この川に魚はいないようです。
この中津川沿いの道は緩い下りで、漕がなくてもビューンと気持ちいい。
川面が近いのもいいですし、周囲の山が見えるのもいいです。
田代橋まで下ったら右岸に渡り、虫沢川沿いに入ります。ここでツバメを発見。ツバメがいるということは虫がいるということですね。それで虫沢? 道端にはホタルの標識があちこちに立っているので、この虫はホタルを指すのかもしれません。
先ほどの中津川には生物はいないようでしたが、この虫沢川の方は川床に苔が生えており、魚の姿もありました。虫沢川はこのすぐ下流で中津川に合流していますが、そこから下流は魚がいるということでしょうか。
川の流れと生物の不思議を思いつつ虫沢川を離れ、短い激坂を上るときれいな茶畑が現れます。
このあたりは松田町寄。この寄はなんと『やどりき、やどりぎ、やどろぎ』などと読むそうですが、これはまず読めませんね。先の三廻部(みくるべ)といい、日本の地名の読みってむずかしい。このあともう一つ、これもまずもって読めない地名が出てきますよ。それは尺里峠(ひさりとうげ)。
茶摘み最盛期である『夏も近づく八十八夜』は五月の頭。それからすでに一月が経っていますから一番茶はもうとっくに摘まれており、中には茶葉が完全に摘み取られてしまっている畑も見えます。
道はこの茶畑の先の針葉樹林の縁を上っています。
この道が尺里峠を越えて山北に続く道です。
ここはちょっと急勾配でギコギコ。
針葉樹の中をえっこらよっこらと上って行くと、小さなスペースに茶畑が築かれていました。
『へ〜、こんなところにも茶畑、造るんだね〜』 と、ちょっとびっくり。
こういった山間部ではほんの僅かでも作物ができそうなところがあると、必ずそこには畑なり田んぼなりが築かれるのです。
この狭い茶畑の先で道はヘアピンを描いています。ここはさすがに激坂で、ダンスしながら上るシュンシュンとサンダリアスでした。
ヘアピンカーブはさらにこの後もいくつか続き、
最後のペアピンを描き切って道がまっすぐになると、左手の視界が開き、ちょっとした展望が得られます。
ここからは北に丹沢山、南東に相模湾が見えるはずなのですが、この時は両方とも見えずに残念。この景色がこの道で唯一の眺望です。
眺望点を過ぎるとピークの尺里峠まではすぐなのですが、ここからが意外ときつくてヘ〜コラ。
なんとか尺里峠に到着です。かつてここには『ここは尺里峠』と書かれた立て札があったのですが、現在それはなくなってしまったようで、ここが尺里峠であることを示すものは何もないようです。『高松山はなじょろ道→』、『第六天からの富士山→』という標識を眺めながら一息付きます。
ここには害獣駆除だか狩猟だかの方々の軽トラックが二台停まっていて、その荷台には犬籠が見えます。ビジターのアッちゃんによれば、このあたりは鹿が増えすぎて困っているらしいです。昔は丹沢には蛭はほとんどいなかったそうですが、鹿の生息域拡大にともなって蛭もどんどん増えているのだそうです。
さて、一息付いたら高松に下ります。
尺里峠から高松に下るルートはいくつかありますが、私たちは一番東のそれを使います。
このルートからは富士山がよく見えるのです。
今日は朝方は晴れていましたがそのうち雲が出て来て、現在、空はかなり厚い雲に覆われています。富士山は見えないだろと確信を持っているにも拘らず、やっぱり富士山眺望ポイントではその存在を確認してみるのでした。
反対側からは上りたくないような超激坂を下って、旧高松分校に到着。ここは2010年3月に廃校になった小学校で、最後年の生徒はたった二人だったそうです。
表から見るとその標識も建物も数年前とあまり変わっていないように見えます。
裏手に廻ってみると、ここもまったく以前のままで、生徒が描いた鳥の絵も残っています。
私たちに人気なのは『ひよこ』!
さて、意外と健全な旧高松分校を眺めたら、山北に下ります。
この下りでは所々眺望があるのですが、やっぱりそこに富士山の姿はなし。
この下りの途中にはさらに『山ゆりの滝』があるのですが、どこだったか忘れてしまい場所がはっきりしません。アッちゃんによればそれはずいぶん下ってからとのことなので、ずんずん進んでいきますが、この下り側の路面舗装は表面が剥がれたところが多いので、慎重に行きます。
ハンドリングを間違えると前方宙返り一回転ひねりの大技を出しそう。軽く見積もってもリム打ちパンクは避けられそうにありません。そんなんで路面に意識を集中していたら、うっかり滝を見過ごしてしまいました。
山北町の尺里川まで下り、東名高走道路をくぐって進めば道は平らになり、田植えが済んだばかりの田んぼの中を抜けて進みます。
これで前半の山遊びは終了。まったりポタリングに入ります。
酒匂川(さかわがわ)に出ると先に大口橋が見えます。あの橋を渡った向こう側が開成町で、そこにはきっと紫陽花が咲いているはず。
酒匂川はこの日、鮎漁の解禁日。川には長い釣り竿を持って川に浸かっている人の姿が。
大口橋を渡って酒匂川の右岸の大口公園に入ります。
ここから小田原厚木道路付近まで、酒匂川沿いに自転車道が続きます。
大口公園からは新松田駅に向かうというアッちゃんといっしょにこの自転車道を少し走ります。
アッちゃんと分かれたあとは開成町の田んぼの中へ。
明神ヶ岳をうしろに、田植えが済んだばかりのきれいな田んぼが広がっています。
開成町は丹沢の麓にあるため水が豊かで、たくさん水路が引かれています。
ここは山王供養水辺公園で、かつては水車がありましたが、どうやらそれは壊れてしまったようで、水車のない小屋だけが立っています。
このあたりの紫陽花はまだ咲き出したばかりで、ようやく花に薄青色が差したところ。
琵琶の実がたくさん。
酒匂川から分水された水は水路を通ってあちこちに流れていきます。
サラサラという水の音がたまらなく気持ちいい。
さて、紫陽花はどうでしょう。
このあたりは道端に紫陽花が並べて植えられており、それなりに色付いて来ています。
これは青。まだ白いところもありますが、かなり色が入っています。
街中に入ったところで昼食です。ここは選べるほどに飲食店は多くはなく、蕎麦屋とステーキハウスの二択だったので前者に入ってみましたが、これがなかなかおいしかったです。○
ちょっと遅めの昼食を済ませたら、開成町のすぐ隣の南足柄市でやっているというハナアオイまつりを見に行きます。
このハナアオイ祭りはハナアオイ農道という700〜800mほどの沿道で行われているはずなのですが、その道に入ってもそれらしきところが現れません。
しばらく行くとようやく赤い花が道端に現れました。しかしその数は少なく、延長もせいぜい200mといったところです。
一時は町おこしでがんばっていたのかもしれませんが、すでに息切れかな。
ところでこの花ですが、これは一般的にはタチアオイと呼ばれているものだと思います。花葵とも呼ばれるようですが、学術的にはハナアオイと言う場合は別のものを指すそうなので、注意が必要ですね。
タチアオイは日本の花にしては花自体がかなり大きいし、背丈もやたらに高いので変だなと思っていたのですが、これはトルコ原産の種と東ヨーロッパ原産の種との雑種とする説が有力だそうです。道理ででかいわけです。
ハナアオイ農道は期待したほどではありませんでしたが、それでも咲いているタチアオイの花はなかなかきれいです。
さてタチアオイを眺めたら再び紫陽花に戻ります。
周囲の田圃では田植えの後の草取り作業がされているようです。
ハナアオイ農道の近くに『岡野あじさいの里』があるので覗いてみました。
ここは規模が小さくあまり見応えはないのですが、それでもこんな調子で青から赤紫までの花を付けているものがありました。この色は紫陽花と聞いてまず思い起こす色ですね。
水が豊かなところには造り酒屋があるはず。と思っていたら高い煙突を発見。瀬戸酒造です。
この日はあじさいまつりがあるからか、店先で利き酒ができるようになっていました。奥にはちょっとした庭園のあるお休み処もあります。
瀬戸酒造の200m東には瀬戸屋敷があります。
築300年だというこの建物は代々名主を務めた瀬戸家の屋敷で、茅葺きの大屋根が立派です。現在はボランティアの方々によって行事の企画や運営がされているようです。
その瀬戸屋敷の前に停まっていたのはコミュニティーバスならぬコミュニティートゥクトゥク。
タイでトゥクトゥクと呼ばれるオート三輪タクシーのようなものですが、もっとたくさん人が乗れるようです。4ナンバーなので小型貨物車扱い? 瀬戸酒造の幟があるので、町営ではなく瀬戸酒造さんでやっているのかも。
そしてここにもタチアオイが。ひらひらの白です。
瀬戸屋敷の裏手には古民家ガーデン紋蔵があります。ここは主に和服の古着をリノベーションして売っているようですが、気持ちのいい庭で足柄茶やサイダーが飲め、水は無料でいただけます。
竹馬が置いてあったのでやってみました。低いのと高いのがありサイダーは高い方にチャレンジ。庭石の上から竹馬に乗ったまでは良かったのですが、一歩ニ歩三歩で四歩目が出ずあえなく落馬! 身体が覚えていると思ったんですがね。。
紋蔵でしばしまったりさせていただいたあとは、あじさいまつりのメイン会場になっているあじさい公園へ。
あじさい公園の横を流れる水路には発電用の現代的な水車が設置されています。
そして公園の奥には伝統的な水車が。水車そのものは何代目かのようで、新しそうです。建物の中からは石臼をトントンと突く音が響いてきます。
ここは道端に水路がありその向こう側は田んぼ。
紫陽花とこの田んぼの関係がなかなか素敵です。
アジサイの原種は日本のガクアジサイだそうですが、開成町のものはほとんどがヨーロッパで品種改良されたセイヨウアジサイだそうです。
これは濃いピンク色。
これがガクアジサイですが、現在その品種は70を超えるといいます。ですからこれは原種ではないかもしれません。
ガクアジサイは周囲にある花びらに見えるものはじつは萼で、それらに囲まれた真ん中にあるたくさんのプチプチが花です。ちなみにガクアジサイのガクはこの『萼』かと思ったら、『額』だそうです。これは周囲の装飾花を額縁に見立てたということらしいです。
開成町の紫陽花ロードです。とは言っても地元でそういう呼び方はしていませんが。この日の紫陽花は全体としてみれば3〜4分咲きと言ったところで、見頃は一週間ほどあとでしょう。
しかしとにかくここは、田んぼがありその向こうに丹沢山系と箱根の山が見えるという、すばらしいロケーションです。
開成町の紫陽花に満足したら酒匂川の自転車道を下ります。
この沿道にも紫陽花が咲いています。
自転車道はR271小田原厚木道路の南で酒匂川に狩川が合流する地点まで続きますが、私たちは富士見大橋を渡り国府津駅に向かいます。
富士見大橋と言えど、この日ここから富士のお山の姿は拝めず。しかし酒匂川の上流を見れば、今日の午前中走っていた丹沢山系の山々がうっすら見えます。
6月なので帰りは汗びっしょりのはずと、予定では鴨宮駅と国府津駅の間にある温泉でさっぱりするつもりでしたが、意外とそう汗をかいておらず、泡は泡でも温泉より冷たいやつの方がいいということで、これはパスし国府津駅前に直行。
駅前からはちょこっとですが、相模湾が見えました。しかしその相模湾を見に行こうと言い出すものはおらず、即座に冷たい泡に向かう面々でした。