群馬県みなかみ町の鄙びた湯宿温泉の朝は寒い。温泉に浸かって身体を温め、ゆっくり朝食をいただいたら、猿ヶ京と諏訪峡のハイキングに出かけます。今日は自転車はなしでハイクのみです。
湯宿温泉から猿ヶ京の南にある赤谷湖までは2kmほどなのですが、赤谷川沿いにあるだろうと思っていた遊歩道はないことがわかったので、バス移動に切り替えました。R17を歩いてもあまり楽しそうではないですからね。
バスに5分も揺られれば、相俣ダムによってできた赤谷湖の畔にある赤谷湖記念公園に到着。
湖を取り囲む山はまだかろうじで紅葉を残していてくれました。
大木の紅葉も。
この湖畔には遊歩道が設けられているので、これを使って猿ヶ京まで行きます。
大きな欅の木は赤くならずに茶色になってしまたようで、ちょっとこれは残念。
赤谷湖に突き出した猿ヶ京の先端部分が見えてきました。
切り立った崖が湖から立ち上がっているように見えます。
遊歩道の横のモミジはまだ青いものから、すっかり濃い紅色になったものまで様々。
静かな湖面を鴨が泳いでいきます。
お天気は最高で、すでに気温も13°Cまで上がっていますが少し寒く感じるのか、ボートに乗る人はいないようです。
このボート乗り場の先の駐車場でいったん遊歩道はおしまいになり、また新たな遊歩道が始まるのですが、去年の台風で壊れたのか、この先は通行止めになっていました。仕方がないので上のR17に出てこれを行きます。
すると右手に赤い赤谷水管橋が見えてきました。この橋の上に人がいます。水管橋ですから普通は人はいないはずなのですが、メンテナンスや工事をしている様子はありません。よく見ると一本のロープがぶら下がっていて、その先端に人がいます。これはバンジージャンプでした。あたし、高いところ苦手だから一生やらないと思う。(笑)
このバンジージャンプを過ぎると猿ヶ京の街に入って行くのですが、温泉街は高いところにあり、坂道をどこかで登らなければなりません。
結局、猿ヶ京の観光ステーションとなっている『まんてん星の湯』の下まで来てしまったので、その階段を登ります。『まんてん星の湯』は温泉施設で、隣には演芸場もあります。ここで身支度を整え直し、バンフレットをいただいて猿ヶ京の街の散策に出かけます。
バンフレットの地図を見ると、すぐ近くに『手湯』の文字が。足湯はよくありますが手湯ってのはどんなかな、と早々に行ってみます。
それはまさに『手湯』でした。(笑) 温泉がちょろちょろと流れ出る下に、ちょっとした石の器が設えられていて、ここで手を温められます。真冬、手がかじかむ位の時にはいいかもしれませんね。
うしろの山から飛び出ているのは谷川岳でしょうか。
かつて猿ヶ京は三国街道の宿場で、江戸幕府が全国53カ所に設けた関所の一つが置かれていました。三代将軍徳川家光の時代、1631年(寛永8年)に開設されたと伝わる関所の跡に資料館が立っているので覗いてみました。
通行手形を始め、藩札、旅行用心帳、旅に携帯する品々などが展示されています。
『まんてん星の湯』でいただいた地図には『おがんしょめぐり』とあります。この地で『願かけ』することを『おがんしょかけ』と言うそうで、街道に沿って点在するお地蔵様や神様などにお参りするのですが、願いが叶うとお供えをしお参りする『おがんしょばたし』をするのが習わしだそう。
この『おがんしょめぐり』の場所は地図にあるだけでも12あり、とても全部は廻りきれないので、めぼしいところを何箇所か訪ねます。まずは庚申塔と神明神社です。
R17沿いにある鳥居をくぐって200mほど行くと、もう一つの鳥居が見えてきます。その先は激階段。(笑)
なんだか足腰に悪そうなので遠慮しようかと思いましたが、サリーナがスタスタ行ってしまったので止むなく付いて行きます。
登った先にあったのは、さすがにかつての宿場町の神社だけあり、神楽殿のある立派なものでした。
この日は11月15日で七五三の日だったのですが、今年は新型コロナウイルス感染症のためこれは行えず、地区の役員さんたちが掃除をされていました。
サリーナが選んだ次のお願しょは町の中心からちょっと離れたところにある『カッパ地蔵』。
それは町から北東部の、赤谷湖に流れ込む赤谷川の畔にある公園にあるようです。
いただいた地図を頼りに北東に進んで行きますが、この地図が縮尺がきちんとした地図ではなく、良くあるイラストマップで、なんだか良くわからず、一本西側の道を行ってしまいました。戻ってやり直し。
正しい道に入るとそれは赤谷川に向かって落っこちて行きます。
途中、川が少し広がったところが見え、その向こうに広場らしきものが見えます。あそこがカッパ広場でしょう。それにしても結構落っこちないといけないですね。
むかしむかしこのあたりに河童が住んでいて、胡瓜畑を荒らしたりしていたので、村人たちは河童を捕らえることにしました。しかし頭のいい河童たちはなかなか捕まりませんでした。
ある日のこと、お婆が川で小豆を洗っていた笊に河童がひっかかりました。河童が『助けてくれれば何にでも効く膏薬のつくり方を教える。』というので、お婆は河童を逃してやる事にして膏薬のつくり方を教わりました。それからというもの村の衆はこの膏薬のお陰でずいぶん助かったそうですが、お婆は河童との約束を守って誰にも膏薬の作り方を教えなかったので、お婆が死んでしまうとみんな困ってしまいました。河童は山の奥深く引っ越ししてしまったのか姿を見る事もなくなり、村の衆は河童を懐かしむようになりました。そのうち河童の膏薬で命を救ってもらったりした村人達は川の畔に河童地蔵さまをまつり、大好きな胡瓜を上げて供養しました。
不思議なことにそれからは、河童地蔵の頭のお皿に水をかけてお願しょかけながらその水を体の悪い所にかけると、自然となおってしまうそうです。今でも祭りの日になると胡瓜を持って河童地蔵にお願しょかけに行く人はあとを絶たないそうです。
河童地蔵の近くに『縁結びの滝』があるので行ってみることにしました。
赤谷川は上から観たようにここだけ膨らんでいます。向こうには手湯から見えたあの山がチョンと見えています。
滝は大抵山の奥に落ちているものなので、ちょっとだけ山歩き。
最初は木立の中を行く何気ないルートでしたが、沢が出てくるとゴロゴロの岩がそこら中に散らばっています。
そのゴロゴロ岩を避けたりよじ上ったりした先に『縁結びの滝』は落ちていました。
豪快な滝とは言えませんが、きれいな流れです。
『縁結びの滝』を眺めたら『まんてん星の湯』に戻って昼食です。
そのテラスは日影だったのでちょっと寒かったのですが、赤谷湖を眺めながらの食事は気分が良かったです。
猿ヶ京の散策を終えたらバスとタクシーを使って諏訪峡に移動。
諏訪峡は水上温泉の南にある利根川の流れを指します。諏訪峡には遊歩道があり、その南端の入口はr61沼田水上線の銚子橋です。
上の写真の標識のすぐ先にある階段を下り出すと、こんな景色が目に飛び込んできます。
これがあの利根川とは驚きです。
まさに渓流。
私が知る利根川はせいぜい関東平野に入った渋川あたりから下流なので、こうした渓谷の利根川を見るのは初めて。
流れが狭くなりちょっと勾配が急なのでしょう。ここはザワザワ。
このあたりの利根川は南北の流れなので、午後のこの時分に陽の光は谷底まで届かないのが残念ですが、川面より少し高いところの木々は光を受けて輝いています。
諏訪峡遊歩道は利根川の流れに沿って北上していきます。
ある情報ではこのあたりの紅葉はそろそろおしまいとのことでしたが、まだ赤い木々が残っていて、充分に楽しめます。
しばらく歩いて行くと、木々の合間から雪山がドーン!
あれは間違いなく谷川岳でしょう。
その谷川岳を背景に、川沿いに真っ赤な木々が見えてきました。
あの下に行けばかなり見事な紅葉が楽しめそうです。
対岸の岩がなんだか仏様のように見えなくもありません。
巨大な斜張橋は諏訪峡大橋。あそこでもバンジージャンプがやられるようです。おお怖〜
あの紅葉が近づいてきました。
真っ赤なモミジが見えます。
このあたりは『もみじ公園』。
利根川の色はややグレーがかっていて、それがなんだか神秘的に見えるから不思議。
あとは写真をお楽しみください。
みなかみ町は近年外国人が多くなってきているそうです。東京からそう遠くなく自然豊かなので、キャニオニングやラフティングなどを楽しむためにやって来るそうです。
この日も外国人の家族がここで遊んでいました。高い木の上に吊るしてあったハンモックを撤収しているようでした。
歩行者用吊り橋の笹笛橋が見えると、利根川の河川敷はぐっと広がって諏訪峡はおしまいになります。
水上の温泉街に入って行きます。
静かな諏訪峡を観たあとすぐに、こんな巨大な温泉付(たぶん)マンションが現れるからびっくりです。
温泉街の入口に架かる紅葉橋から利根川の上流を眺めると渓谷ではありますが、諏訪峡ほどの魅力はなさそうです。
しかしその向こう、夕陽を浴びた山の紅葉はきれい。
せっかく水上温泉までやってきたので温泉に浸かりますが、このあたりで日帰り温泉をやっている施設はわずか。
町営のふれあい交流館は狭いと聞いたので水上館に行くことに。その水上館、行ってみてびっくり。バブル期に増築を重ねたのか、巨大も巨大でとんでもないことになっています。(笑)
まあ露天風呂でゆっくりできたので、良しとしましょう。
本日の〆はマイクロブルワリーでビール。
小麦を使った軽めのエールと、苦みが強くホップの風味が支配的なインディア・ペール・エール、そしてベルギー酵母のセゾンをいただきました。水上でマイクロブルワリー。これからもがんばってほしいです。
さて、今日行った猿ケ京と水上、どちらも紅葉が残っていて楽しめたのが良かったです。特に水上の諏訪峡のもみじ公園は素晴らしかったです。利根川の上流にあんな渓谷があったとは驚きです。この旅、水上についてはいろいろ楽しめそうなところであることがわかったのも収穫でした。