ここのところしばらく海を見ていないので、久しぶりに三浦半島を企画してみました。
都心からそう遠くなく、輝かしい海が見られる三浦半島はサイクリストにも人気のところです。ロードバイカーには幹線道路をカッ飛ぶ三浦一周コースが人気で、これは我らがシンチェンゾーのウィークリー・コースの一つになっています。しかしポタラーの私たちにこの一周コースはあまりふさわしくありません。
そこで今回は裏道ばかりを行くジオポタ・スペシャル『秘密の三浦 '21』です。
集合は京浜急行の三浦海岸駅。実はこの日は事故で京浜急行が止っていて来るまで少しバタバタしましたが、なんとか集合時刻に全員到着できました。
この駅は三浦半島でもっとも海に近い駅の一つです。駅を出たらあっという間に三浦海岸です。
三浦海岸はゆったりとしたカーブを描いた砂浜で、北(左手)に久里浜の発電所あたり、南(右手)に『蛭田の鼻』、そのさらに先に雨崎が見えます。空気が澄んでいれば東京湾の向こう、東(正面)には房総半島が見えるのですが、この日は水蒸気が多くてこれは残念。
しかし空には青い色が見えちょっとラッキーでした。この日は曇りの予報だったのです。
ここで記念撮影。本日の参加メンバーは左から、ロートル・シロスキー、昨日の地震で列車が止まったところからやってきたビジターのジンちゃん、都心からやってきたサリーナ、都心の向こう側からやってきたミルミル、多摩からやってきたシュンシュン、企て人サイダー、カメラはジンちゃんちの近くに住むユッキー。
三浦海岸からは南へ向かいます。
ロードバイクなら車道をカッ飛んでいくと思いますが、このあたりには遊歩道が設えられているので私たちはこれを使って海を眺めながらのんびり進みます。
『蛭田の鼻』が近づくと遊歩道が終わりr215に出ます。この海岸道はやや車が多いので、私たちはここから山側に入って行く枝道に入りますが、上りが嫌いなユッキーとシロスキーはそのままr215を進みます。
この道、激坂で序盤からあへあへです。
この激坂を押し上げて『蛭田の鼻』の上あたりに出、うしろを振り返ると、お〜〜っ、という景色が。
見えているのは弧を描いた三浦海岸とその背後に控える低い山々。
先に進めば進んだで、雨崎がよく見えます。
白い覆いが被せられたこの畑の作物は葉があまり成長していないので何だかははっきりしませんが、たぶん大根です。三浦は三浦大根で有名でしたが、現在それはこの地域における大根出荷量の僅か1%で、青首大根が主流になっているそうです。
畑が広がる丘からr215に下って激坂回避組のユッキーとシロスキーに合流。
2人のうしろに広がるのは金田湾。三浦海岸に面した大きな湾です。
その金田湾の南の端にあるのが金田漁港で、ここでは毎日曜日に朝市が開かれるそうです。今日は土曜日なので残念。あっ、夏場は土曜日の午後にも市が立つようです。
この日は漁師さんが網のメンテナンスをされていました。
金田湾を過ぎるとr215はカーブし出して海岸を離れます。
するとここから丘越えの上りが始まります。ロードバイカー諸君はここでスピードを上げて一気に坂の克服に入りますが、私たちはボチボチ。
200mほど行った先でこのr215を離脱し、その東側の丘に上ります。
この丘からは金田港方面の素晴らしい景色が見られます。
それよりさらに素晴らしいのが大根畑。
一面が大根の葉っぱで埋め尽くされた畑は、それはそれはきれいです。
料理好きなミルミルはこの畑を見るなり、
『はりはり漬、おいしいですよね〜』
『はりはり漬は切り干し大根じゃなくって割り干し大根を使いま〜す』
この畑の先は木々が生い茂る崖。
眩しいほどの緑輝く世界から突然暗闇に入った感じで、ここはどこ、私は誰状態です。
この先にはかつて陸軍が設置し明治時代から太平洋戦争終結まで使われた東京湾要塞と呼ばれるもののうち、砲台跡や大浦探照灯格納庫といったものがあるのですが、うっかり別の道に入ってしまったのでこれはまたの機会に。
大浦海水浴場へ向かうと、その途中にも大根畑が広がっていました。
ちょっと下って大浦海水浴場です。ここは両側を岩山に囲まれた静かなビーチでシュノーケリングのスポットらしいです。
お魚さんがいそうな岩場がありますね。
正面にはうっすらと房総半島の鋸山が見えています。今朝方は海の向こうに見えるものはまったくありませんでしたが、少し水蒸気が薄くなったようです。
大浦海水浴場のすぐ南には間口漁港があります。ここからは劔埼灯台に向かうのですが、市の観光案内で『三浦・岩礁のみち』を発見したので覗いてみることにしました。
港の奥まで行くと道は行き止まりになり、この先漁業関係者以外立入り禁止という表示があります。そこでそこにいた三人の漁師さんに聞くと、そこに書いてある通りだとけんもほろろ。なんだかこちらが悪いことでもしたような言いぶりです。とにかく歓迎されていないようなのでそそくさと撤退しました。
ということで一般道で劔埼灯台へ向かいます。この道沿いにはアサガオだかヒルガオだかの仲間と思われる花がたくさん咲いていました。そこに最近あまり見掛けなくなったでっかいでんでんむし。
劔埼灯台はあまり高くない上にそのすぐ側に電波塔が立っていて目立ちません。さらに周囲がこんもりした木々に覆われているので、なおさらです。
ちらちらっと見えていた劔崎灯台がようやくその姿を表しました。手前の白いところは例によって大根畑です。
この劔埼灯台へ向かう道の最後の方はかなり狭く、本当にこの道?という感じですが、なんとかその足下に着いたようです。しかしそこから灯台は見えず、石畳のちょっと寂しい道が上っていくのが見えるだけです。
50mほど上ると空間が開いて小さな劔埼灯台が現れました。この灯台は1871年(明治4年)に初点灯された、日本で7番目の西洋式灯台とのことで、それを示す金属板が建物に埋込まれています。
ここは駐車場がなくアクセスも不便なので訪れる人はあまりいないようです。私たちが着いた時は誰もいませんでしたが、あとからロードバイクの女性たちが4〜5人やってきました。こんな辺鄙なところに来るのは自転車乗りくらいのものなのかもしれませんね。
劔埼灯台では270°の眺望が得られます。先ほど通った間口漁港が遥か下に見えます。仮に『三浦・岩礁のみち』が通れたとしても海岸からこの劔埼灯台まで上って来るのは難儀したと思いますので、間口漁港から一般道を行ったのは結果オーライだったかもしれません。
劔埼の下は岩礁帯が広がりなかなかいい景色なのですが、ここまでだいぶ時間をロスしているので海岸へは降りずに先を急ぎます。
劔埼灯台の次にやってきたのは江奈湾の松輪港です。このあたりは松輪という地域で松輪サバで有名です。
サバといえば関サバを始め西の方が有名ですが、ここは例外的に関東のブランドになっています。そろそろ旬です。
松輪港からr215を西へ進んで行くと干潟があります。
かつては三浦半島にはたくさん干潟があったようなのですが、開発により山や森がなくなり、干潟もどんどん姿を消したそうです。ここはそんな中で残った数少ない干潟で、様々な生物が棲んでいるといいます。
道路脇には小さな蟹穴がたくさん開いていました。しばらく待っていると、そこらじゅうからカニさんが出てきます。小さすぎて写真には写りませんでしたが。
この干潟の奥でr215を離れ、三浦半島で一番高い山である岩堂山に向かいます。岩堂山へは一般的には大根丘陵縦断街道を使うと思いますが、私たちはその北にある谷津を行くことにしました。大根丘陵縦断街道は南斜面の畑、そしてその向こうに海が見えるとても良い道なのですが、今回は岩堂山からの眺望のインパクトをより効果的なものにするため、あえて眺望がないこちらの道を選んだのです。
この道の周囲はかつては田んぼだったと思うのですが、現在はご覧の通りに畑になっています。谷津だけあり所々道に水が流れ込んでいて、ビチャビチャのところがありました。一般的には大根丘陵縦断街道を使われた方が気持ちがいいでしょう。
岩堂山の北に出ました。ここから山頂までは砂利道なので自転車を置いて歩いて登ります。
岩堂山の標高は82mで、これは国土地理院の地形図に表記がある山としては三浦半島で一番高く、神奈川県内ではもっとも低いそうです。
200mも行けば視界がパッと開いて眼下にパッチワークの畑、その先に大きな風車が二基、そしてそのさらに向こうに海が見えます。
ここは全員、『お〜〜っ!』という叫び。海が少しくすんでいて真っ青ではないのが惜しいですが、それでもかなり満足な景色です。
岩堂山からの眺望に満足したら、下に見えたパッチワークの畑の中のダウンヒルを楽しみます。
ここは最高に気分良し。もったいないから車の道を通らないで畑の中を行きましょうね。
グワ〜ンと下った先は宮川漁港。ひっそりとした小さな港です。
そこに一軒だけある食堂でお昼にします。港の食堂ですから洒落たものはありません。鮪の漬け丼などの簡単なメニューが並びます。
『おいら魚はキライ』のユッキーはなんとここでラーメン。まあ、お好きにどうぞ。(笑)
私が試した鮪のカマ漬け丼は、上に載っている海苔がとても素晴らしかったです。この海苔、自家製だそうです。
宮川漁港を出たら観光地となった三崎はパスして油壺へ向かいます。
畑の先に海が見えてきました。この対比がなんとも言えませんね、三浦は。
諸磯湾に下って油壺湾に入りました。油壺湾は細長い入江で波がなく、いつでも穏やかな表情をしています。ここはマリーナとしても有名です。
ジンちゃんのうしろに見える赤い小屋は、いかにもボートハウスという感じでいいですね。
油壺湾の北岸の道は突き当たると湾を離れて急勾配の上りになります。
ここをえっさえっさと自転車を押し上げて進めば、上の広い道に出ます。
この広い道を西、先日閉館した油壺マリンパーク方面へ進むと油壺バス停があり、そこから気持ちのいい細道が左へ分かれています。雰囲気的にはこの道は散策路という感じです。
奥へ進んで行くと『油壺湾』の碑があるところに出ます。
下を覗くとそこには静かな入江の油壺湾が広がっていました。写真は奥のマリーナ側ではなく湾の入口方面です。
ここには古くは相模三浦氏の新井城があったそうです。三方を海に囲まれた天然の要害といったところでしょうか。
油壺湾の反対側には荒井浜があります。
ここは外洋に面していますが入江になっているため、比較的波が静かなようで海水浴場になっています。
油壺湾の反対側はもう一つあり、それが小網代湾です。この小網代湾に面して高層マンションのようなものが立っています。これはマリンリゾートのシーボニア。
高いヤシの木がリゾート風ですが、なんだか周囲の植生と合いませんね。
小網代湾はリゾートのヨットと漁船が混在していてちょっと面白いです。
小網代湾の奥にあるのが『小網代の森』です。小網代の森はかつては田んぼと林のいわゆる里山だったそうですが、次第に市街化の波が押し寄せ、そこにゴルフ場の建設が計画されました。しかしこれはバブル崩壊とともに立ち消えとなり、保全の方向に動き出します。
私たちが前回ここに来たのは2002年(平成14年)のことです。そのころここはまだ保全区域になっておらず、ただ草茫茫のところでした。
小網代の森が整備され一般公開されたのは2014年(平成26年)のことですから、私たちが来てから12年後のことです。そしてそれから7年が経ちました。
ここには全長1km強の浦の川が流れており、その周囲が湿原になっています。森から湿原、そして干潟、海と連なる、今では滅多にお目にかかれない場所となっています。
そこには様々な住人がいますが、これはアカテガニ。土を掘ったマンションに棲みます。
小網代の森はゆっくり歩けば2時間ほどかかるので、私たちは『やなぎテラス』まで行って引き返しました。
やなぎテラス周辺にはその名のとおりにヤナギの木が植えられています。ヤナギというと川縁に植えられるシダレヤナギを思い浮かべる方が多いと思いますが、ここに植えられているのはそれではなく枝がすくっと立った種類です。
セイタカアワダチソウが凄いことになっています。これを引っこ抜くのはさぞ大変でしょうね。
こんな花がたくさん咲いていました。
『やなぎテラス』から戻って『えのきテラス』へ行くと、その周辺ではボランティアさんが作業をされていました。
そしてその横のバケツにカニさんが。ハサミが赤いのはアカテガニだと思いますが、あとはわかりません。コメツキガニかな? アシハラガニというのもいるらしいです。
さて、それでは干潟に出てみましょう。ここでは運がよければカニカニダンスが見られるようです。
しかし奥にある干潟にはこの時は入れず、手前の小さな干潟にはあまり浜が現れておらず、ダンスは見られませんでした。残念。
でもこんなチビガニを発見。チゴガニじゃあないけどね。
小網代の森の散策を終えたら『黒崎の鼻』へ向かいます。
前回来た時はまだ小網代の森の整備がされていなかったので、その中を通って北尾根入口に抜けたのですが、現在、小網代の森の中は自転車乗り入れ禁止になっているので迂回します。乗り入れ禁止だから押し入れはOKかもしれませんが、やはり自転車は遠慮した方が良さそうです。
小網代の森の北尾根入口に続く道を通り過ぎるとまた緑の畑です。
そしてその道の突き当たりはこんなことになっています。広大な畑が眼下に広がります。ここ三戸(みと)の大根畑はかつては海軍の飛行場だったそうで、地元では『飛行場』と呼んでいるとか。確かに今でも飛行機が飛び立てそうですね。
手前の畑はまだ葉っぱが小さいですね。青首大根の種期は9月上旬から10月中旬のようですから、種が播かれたばかりなのでしょう。
大根畑から海側へ下ると三戸の集落に入ります。
このあたりは土地はありそうですが、集落内には建物がひしめき合っています。浜辺で風が強いからでしょうか。
三戸の集落の先には三戸浜という浜がありますが、浜側のほとんどのところにはロープが張られていて下る道が見つかりませんでした。ということでここはスルー。
集落ゾーンを抜け『黒崎の鼻』が近づくと、またあの緑色の畑が続きます。
そのうち真っ黒な畑が現れました。ここはちょうど種が播かれたばかりで、きれいな双葉ちゃんが出てきています。
この真っ黒な畑の先に『黒崎の鼻』はあるのですが、その入口には何にも案内はなく、ちょっと迷いました。この様子からすると『黒崎の鼻』は観光地ではないようです。
『黒崎の鼻』の入口は笹薮の間の狭い小径です。
その小径を下って行くと、薮が開いて先に『黒崎の鼻』が見え出します。『黒崎の鼻』はその名から推測できるように岬です。鼻の先端近くまで行くこともできるのですが、私たちはその手前で岩礁の浜に下りました。
写真は鼻とは逆側の出っ張りで、その下でウェディングドレス姿の方が撮影をしていました。
海岸には黒い岩礁が広がっています。空気が澄んでいれば雄大な富士山が見えるのですが、この日は残念でした。
ここは静かでいいところです。
しばらく『黒崎の鼻』で遊んで時計を見ると、なんと予定より一時間も遅れています。今日はこのあと『黒崎の鼻』の向かいにある『荒崎』を廻ってさらに先まで行くつもりにしていましたが、全員もうここで上がりにしようというので、ここから直接駅へ向かうことにしました。
大根畑の中を通り抜けて三崎口駅に到着。本日の走行距離はたったの35km。なんだか今年はまったりモードから抜け出せませんねぇ。(笑)