紅葉シーズンがやってきました。今年の夏は暑かったせいで紅葉は例年よりだいぶ遅れているということでしたが、ここに来て一気に例年並みに戻してきたようです。なんだか心の準備が整わぬうちに、あちこちから紅葉だよりが届くようになりました。え〜〜〜! これは急がねば!!
ということで急遽紅葉狩り企画です。やってきたのは東武日光線の新鹿沼駅。駅前には苺のでえっかいオブジェ。 ・・・なぜ苺?
そして正面には岡本太郎作『夢の樹』! ドーンと大迫力。
太郎さんの作品は見間違うことは絶対ないですね。凄い!
今日の計画はバスで古峯神社まで上り、そこから前日光林道と大荷場木浦沢林道を繋いで佐野市の葛生(くずう)に下るというもの。
駅前から乗車したバスはリーバスという名で、その停留所の標識は真っ赤で『いちご市』とあります。先ほどのオブジェといい、このバスといい、なぜ苺?と思いましたが、この辺りは苺の産地として有名なようです。栃木県はここ半世紀以上に渡ってその出荷量は日本一だそうです。
定刻にバスはやってきました。ところがこのバスの入口はとても狭く、うまく自転車が載せられません。運転手さんが気を利かせてくれて、うしろのドアから乗せてくださったので助かりました。今は紅葉の時期なので混雑具合が心配でしたが、このあたりの人々の足はほとんど車だからかバスは比較的空いていて、問題なく自転車は載せられ、座ることもできました。
駅前を出たバスは山へ向かって走っていきます。ほどなく右手から左手に移った大葦川の岸にポツポツと紅葉した木々が見え出します。残念ながら私たちは全員右側に座ったのでこの写真は撮れませんでした。
40分ほど揺られると大きな鳥居が現れました。古峯神社の一の鳥居です。
この一の鳥居からさらに10分揺られて古峯神社に到着。
下の様子からすると古峯神社の紅葉はピークだろうと想像できます。楽しみ〜!
さっそく神社の境内に入ってみましょう。
古峯神社の参道にはいくつも鳥居が立っています。この最初のものに『一の鳥居』とあります。あれ、さっき下で見た大きな鳥居が一の鳥居じゃなかったの・・・ 神社の説明書きによればさっきのものは『一の大鳥居』だそうな。紛らわしい〜
木の鳥居をくぐり橋を渡ると、その先に鮮やかな紅葉が見え出します。
この橋の先にはまた石の鳥居が立っています。
その先に真っ赤なもみじ。
今日は曇り空で陽の光がないのが残念ですが、それでも十分に見応えがあるもみじです。
擬宝珠の欄干がある石橋を渡り、古峯園に入ります。
古峯園はいわゆる回遊式庭園で『峯の池』の水は大芦川から引かれているそうです。池の対岸の木々が紅葉の盛りです。
古峯園は古峯神社の庭で、神社側には杉林があり、その中にも鮮やかな紅葉した木があります。
今回は池の周りを反時計回りに進むことにしました。少し行くと神主さんが祝詞を唱えています。祭壇の下に獣の皮が置かれていたので、猟師さんかなにか、そんな関係の催事でしょう。
古峯園は標高700mほどのところにありますが、そのすぐうしろには標高1,300m近くの山があります。その山頂付近の木々はそろそろ紅葉を終えようとしているように見えます。
池の北側を回り込んで進むと、下に峯の池とその西に広がる真っ赤に紅葉した木々が見えます。
そして池の西側に向かえば、茅葺屋根のお茶室が立っています。
その先は、赤やオレンジ色に混じって黄緑色から黄色の木々も混じって、カラフルながらもデリケートなパレット状態。
ここは黄色から赤のグラデーション!
この景色を眺めながら、東屋でお昼ごはんです。景色がいいと簡単なおむすびも最高の食事になりますね/
お茶室の下には小さな滝が落ちています。その横のドウダンツツジはかろうじて葉を残していますがほぼおしまい。
滝に降りてみました。
すると美女と美男を発見!(笑)
紅葉は真っ赤とオレンジ色、黄緑色とオレンジ色など、赤と黄色以外の組み合わせも楽しい。
峯の池をぐるりと一周して元のところに戻ってきました。
古峯園を出て神社にお詣りします。本当はお詣りが先かな・・・ 社殿は鳥居ゾーンより少し高いところにあり、その前は広いバルコニーになっており、下の紅葉がよく見えます。
古峯神社は天狗の神社としても知られており、境内のあちこちに天狗様の姿があります。棟の端のキリトメと呼ばれるところの装飾は赤い天狗の顔です。
建物の中にもいろいろな天狗様がいます。これは烏天狗と鼻高天狗ですね。
ここでは結ばれたおみくじがいい景色を作りだしています。
帰りがけに気がついたのですが、外にも巨大な天狗面がありました。鼻が高〜い!
さて、これで古峯神社はおしまい。ここからはサイクリングですが、古峯園の紅葉が素晴らしかったのと、寄るつもりではなかった神社にお詣りしたことで予定より20分の遅れ。サリーナは38年ぶりの『アレのアレ』が観られるかもしれないと、今日は早めに引き上げる予定なのですが、のっけから雲行きが怪しくなりました。
この辺りには紅葉で知られた古峯ヶ原(こぶがはら)があるのですが、そこは古峯神社より標高が高いので今年の紅葉はそろそろおしまいと考えられ、またこの季節は車やモーターバイクがそこそこ走るので、今回はより鄙びた前日光林道を行くことにしました。
前日光林道は古峯神社の前のトンネルから始まります。そのトンネルを抜けるとなにやらパーンパーンという音が。これはクレー射撃場から聞こえる音でした。
この古峯神社付近の前日光林道は、林道とは言ってもご覧のように二車線の立派な道です。
その割に車は滅多に通らず快適に進んで行きます。
序盤は針葉樹が多くあまり面白みのない道ですが、そのうち広葉樹が現れ出すと、微妙なニュアンスの様々な色が目に入ってきます。
ほどなく『やしお大橋』を渡ります。ここまで眺望はありませんでしたが、ここで北東の眺望が開けました。
さすがに日光の近くだけあり、周囲は山だらけです。
正面に山が見えてきました。あれは横根山(1,372m)でしょう。この前日光林道はあの山の東側を回るようにして進んで行きます。
道は穏やかな上り。ここまでは比較的直線が多かったのですが、先は美しくうねっています。私の好きなカーブ!
ここまでは想定範囲の上りということで、順調に進むサリーナとシュンシュン。
この先で林道横根線と草久栗野線が分かれます。
そして『21世紀林業創造の森』の森林交流館などに行く道を過ぎると前日光林道は第二章に突入します。
これまで広かった道幅が狭くなり、急に林道っぽくなってきます。ここからが今日のサイクリングのお楽しみ区間です。
そうそう、コテッチャンは本日新兵器を持って来ていました。アクションカメラです。昨日ほんのちょとだけ操作確認をしたものの、本番撮影は今日が始めてということで、うまく撮れるかちょっとドキドキです。
昨日試してみたところ、ハンドルに付けるとブレが大きいので今日は頭に装着して撮影します。
コテッチャンはカメラの角度が気になるようで、みんなにチェックしてもらいながら慎重に進んで行きます。
標高830m地点。古峯神社より100m以上高いところですが、木によって紅葉していたりしていなかったり。
紅葉は標高によっても、また日当りによってもずいぶん違うのが面白いですね。
このあたりはちょっとアップダウンがありますよ〜
ここはかなりの急斜面で、道の横の木々は上に生えています。
とあるカーブに差し掛かると先に稜線が見え、そこからこちら側の斜面の紅葉が道脇の木々のシルエットの向こうに見えます。
紅葉はきれいなんですが、意外と上りがきついです。
この道は樹種のせいか真っ赤な紅葉は少なくオレンジ色が主体ですが、時々こんなふうにポツンと赤い木もあります。
この道はいわゆる紅葉の名所というものではなく普通の山道なので、『映える』写真は撮りにくいのですが、日影から明るいところに出たところにある紅葉には心躍らされます。
前でシュンシュンが立ち止まり、感嘆の声を上げています。
ヴィヴィッドな色はなくとも様々な中間色が混じり合って、これはこれで良し。
カーブを回ると横根山が見えます。前に見えた横根山は東面でしたが、これは南面。いつの間にかぐるりと廻り込んでいたようです。
ここは標高900mと少しの地点。前日光林道の最高標高地点に近付きました。
シュンシュンは先ほどから『お〜〜』とか『わ〜!』とか叫びながら走っています。
シュンシュンが見ていた景色。
そのシュンシュン、もっとゆっくり紅葉狩りがしたいと、がまん仕切れなくなったようでついに歩き出しました。
『うわ〜、きれい〜』とにっこりのサリーナ。
一瞬視界が開き南の山々が見えました。この辺りの山は針葉樹が多く、残念ながら山を埋め尽くす紅葉は見られなかったのが残念。
しかし道の周りには紅葉がへばりついています。
前日光林道の最高標高920m地点に到着。暗い切り通しの向こう側に強い光の紅葉!
この切り通しからはr15鹿沼足尾線に下るだけ。
下りはスピードを上げたいところですが、紅葉をゆっくり観たいのでなんとブレーキを掛けながら下るということに。行程は予定よりずいぶん遅れているのに、ここでさらに遅れることになりそうです。
でもこんな景色が続くと、ゆっくり行きたくなりますね。
ともかくなんとか下って、思川の上流部の奥深沢に出ました。奥深沢の上流へ向かう山の神林道は通行止めになっていますが、下りは問題ありません。
奥深沢には小さな滝がいくつか落ちているようで、その中でも比較的大きめの『奥深沢不動の滝』へ下りてみることに。
この滝は入口に小さな案内板こそあれ訪れる人はあまりいないようで、その入口は狭くて分かりにくいです。
しかし道案内のロープが貼ってあり、最低限の管理はされているようです。
1分も下れば、ちょっとした紅葉の下に小さな滝が二つ落ちているのが見えます。これら二つで『奥深沢不動の滝』でしょうか。
残念ながら道案内のロープはこの写真の地点で閉じていて沢までは下りられないので、ここから引き返します。
奥深沢不動の滝を出てr15鹿沼足尾線に下り、『山の神』バス停で休憩です。
ここにはトイレと飲料水の自動販売機、そして蕎麦屋があります。コテッチャンは自動販売機で水を買おうとしましたが、どうやら壊れているらしくうまくいきませんでした。それで蕎麦屋さんに行って水をいただいてきました。
なんやかんやでここまで予定より35分の遅れ。『アレのアレ』には間に合わないか・・・
『山の神』でひと呼吸ついたあとは木浦橋から大荷場木浦沢林道に入ります。
大荷場木浦沢林道は先ほどまでの前日光林道と違って細かいアップダウンはなく、上り下りがはっきりした道で、まずは上りです。そのピークは木浦橋から300m近く高いので、腰を据えて上り出します。
標高が800mを超えました。山の神から200m近く上ったことになります。
このあたりは見頃の紅葉が続いています。
赤い木は僅かですが、
オレンジ色の木々が目立ちます。
そして黄緑色までの豊かなグラデーション。この道は300mずっと上りっ放しなので、ちょっとへーこらしてきました。
そんな時はゆっくり紅葉狩りをするという名目で一休みします。
ここは赤いもみじが良い塩梅です。
しかし私はこんな色合いも好きです。
標高が900mを超えると左手の視界がパッと開きました。
山は針葉樹林で空は白く、あまり冴えない景色ですが、ここがこのルートでは唯一の眺望ポイントです。
先に山頂らしきものが見えてきました。あれは氷室山から続く稜線で、あそこで尾根は三方に別れ、氷室山はあの向こう側、そして一方はこの道の右手に、もう一方は今見えている通りにあそこから左手に下りていっています。
この大荷場木浦沢林道のピークはあの左側に伸びる尾根を越える地点にあります。
ピークまであと少し、とふんばるコテッチャン。
相変わらず、アー だとか、ウー だとか、スゴ〜 だとか、小声でつぶやきながら走るシュンシュン。
大荷場木浦沢林道のピーク、本日の最高標高でもある標高950m地点に到着。すぐ先には岩盤を切り通した切り通しがあります。
ここで記念撮影をとコテッチャンが新兵器のアクションカメラで撮ってくれたのですが、リモコンの電波が届かず、こんな写真に。(笑)
サリーナは『アレのアレ』が気になって仕方がないのですが、相変わらず予定より35分の遅れで、このままでは帰りの電車に間に合わなくなります。
それはともかく、このピークの先の黄葉は見事でした。写真では今一つ良く表現できませんが・・・
さて、ここからは葛生駅まで30km少々の下りです。標高差は850m。
この下りは余裕を持って計画してあるので、うまくすれば35分の遅れを取り戻せるかもしれません。
しかし周囲の紅葉が素晴らしいので、スピードを上げて走ることができません。
ほら、こんなですよ。
大荷場木浦沢林道は葛生側にもほとんど眺望はありません。ピークから少し下ったところにあるこのポイントが唯一の眺望点でしょうか。
この時刻、すでに陽の光はなく、山は輝いては見えませんでした。残念。
しかし道から見る近くの木々はきれいです。
10kmほど走って標高 330mまで下ると周囲に民家が現れ出します。木浦原です。ここが『山の神』を出たあと最初に現れる集落で、オンデマンドバスのバス停がありました。
ここには御殿のような大きなお屋敷も立っていますが、Googleマップによるとこれはレストランのようです。こんな山奥で営業しているということは、かなり特別な営業形態なのかもしれません。
大荷場木浦沢林道は木浦原で終わり、それ以降はr200秋山葛生線になります。
秋山葛生線は立派な道で、びっくり。
この秋山葛生線沿いを流れるのは秋山川。秋山川は大荷場木浦沢林道のピーク付近から流れ出ているようです。
標高200m付近まで下りてきました。このあたりのバス停の標識には『立場』とあります。立場(たてば)はかつて、宿場と宿場の間にあり旅人などが休息する場所のことを指しました。もしかするとここ昔はそんなところだったのかもしれません。.
氷室郵便局を過ぎると左手に戸叶山(とかりやま)が現れます。岩肌を露出させた異様の山。
ここにはかつて江戸時代末期の1854年(安政元年)創業だという村樫石灰戸叶鉱山がありました。現在は採掘はされていないようですが、周辺には石灰関係の工場などが見られます。
これまでほとんどジオポタ専用道路だった秋山葛生線も、葛生駅が近付くにつれ少し車が通るようになってきました。
そこで秋山葛生線を離れ、秋山川を渡ってカントリーロードへシフト。この景色の川の突き当たりあたりが葛生駅でしょう。
葛生駅には予定より5分前に到着。やはり下りは速いですね。
サリーナは今日の『アレのアレ』を期待して急いで電車に飛び乗り、残ったメンバーは居酒屋の暖簾をくぐって、さっそく一杯煽るのでした。
今日のコースは良く知られた紅葉の名所というわけではありませんが、鄙びた二つの林道は自然でデリケートな淡いグラデーションの紅葉が素晴らしく、最初に立ち寄ったよく手入れされた回遊式庭園の古峯園の美しく見事なそれとの対比が楽しめました。