コース紹介
シチリアの都パレルモの散歩。ここは古代ローマ、ゲルマン、ビザンツ、イスラム、キリスト教の文化が混在する渾沌とした都市。そんな中でもアラブ・ノルマン様式のマルトラーナ教会とパラティーナ礼拝堂の黄金のモザイクは必見!
2000.08.17(木)晴れ
発着地 | 累積距離 | 発着時刻 | 備考 |
---|---|---|---|
Palermoの宿 | START | 発08:30 | 泊:Sausele 145,000L/朝付 06:00起床、07:30朝食 |
Palermo駅 | 着08:35 発09:00 |
列車:Agrigentoまで12,500L/人 | |
ジェズ教会 | Chiesa del Gesù |
||
マルトラーナ教会 | Martorana or Santa Maria dell'Ammiraglio |
||
Palermoの宿 | 着08:40 発09:45 |
||
Palermo駅 | 着10:00 発10:25 |
列車:Palermo10:25→12:25Agrigento | |
Agrigento駅 | 着12:25 発12:35 |
||
Agrigento | 13km | 着13:00 | 泊:Bervedere/105,000L |
L (リラ)= 0.055円 |
2000.08.29(火)晴れ
発着地 | 累積距離 | 発着時刻 | 備考 |
---|---|---|---|
Palermoの宿 | START | 発08:45 | 泊:Sausele 145,000L/朝付 07:45起床・朝食 |
サン・カタルド教会 | Chiesa di San Cataldo |
||
クワトロ・カンティ | Quattro Canti |
||
カテドラル | Cattedrale di Palermo |
||
ノルマン王宮&パラティーナ礼拝堂 | Palazzo dei Normanni & Cappella Palatina |
||
サン・ジョヴァンニ・デリ・エレミティ教会 | Chiesa di San Giovanni degli Eremiti |
||
ジザ宮殿 | Castello della Zisa |
||
フェリーチェ門 | Porta Felice |
||
キアラモンテ・ステリ宮 | Palazzo Chiaramonte-Steri, Osterio Magno dei Chiaramonte |
||
サン・フランチェスコ・ダッシジ教会 | Basilica San Francesco d'Assisi サン・ロレンツォ礼拝堂(Oratorio di San Lorenzo) |
||
Palermoの宿 | 着12:50 発13:00 |
||
Palermo駅バスターミナル | 着13:10 発13:30 |
||
Palermo空港 | 着14:15 発16:10 |
昼食:生ハム、サラダ、スパゲッティ、リゾ、 ビール、ワイン/66,000 LAZ1766 |
|
Milano空港 | 着17:50 発19:15 |
自転車がコンベアから離れたところに置いてあり少々手間取る マルペンサエクスプレス:ミラノ北駅まで9,000L |
|
Milanoの宿 | 13km | 泊:Napoli/人160,000L/朝付 | |
L (リラ)= 0.055円 |
ティレニア海に面するシチリアの州都パレルモはシチリア最大の都市で、人口約70万人。
パレルモはフェニキア人が紀元前8世紀頃に建設した植民市に起源を持つとされる。紀元前5世紀にはカルタゴのシチリア島支配の中心となり、次いで、ローマ、ゲルマン、ビザンツの支配を受け、9世紀にイスラム勢力が進出する。11世紀にノルマン人が進入するとイスラム勢力から都市を奪い、12世紀にノルマン朝を設立しその都をパレルモに置いた。その後も、スペイン・アラゴン家、ナポリのブルボン家の支配などを受けていく。
こうしてパレルモは、古代ローマ、ゲルマン、ビザンツ、イスラム、キリスト教の文化が混在する、独特で渾沌とした都市となった。
パレルモのメイン・ストリートであるヴィットリオ・エマヌエレ通りとそれと直交するマクエダ通りとの交差点は17世紀初頭に造られたヴィグリエナ広場(Piazza Vigliena)。ここはまたの名をクアトロ・カンティ(Quattro Canti)と言う。クアトロ・カンティは『四つ角』『四つ辻』という意味で、ここはちょうどパレルモを4等分する位置になる。
この四つ辻のそれぞれの角には同じような3階建の建物が立つ。
1つの建物には3体の彫像が置かれている。
1階部分には春夏秋冬を表す四季の像、2階部分にはシチリアの4人のスペイン王の像、3階部分にはパレルモのそれぞれの区域の守護聖人の像だ。
クアトロ・カンティのすぐそばのベッリーニ広場(Piazza Bellini)には、1,143年に建てられたマルトラーナ教会(Martorana or Santa Maria dell'Ammiraglio)が立つ。聖母マリアに捧げられたアラブ・ノルマン様式の珠玉の名作だ。
当初本堂はギリシア十字に分けられた正方形で、三つの後陣を備えるものであったという。これは当時のイタリア南部やシチリアでは一般的なビザンツ中期の建築様式だそうだ。
瑠璃色の聖龕の上に『聖母被昇天』の絵が飾られ、その上方はフレスコ画で埋め尽くされている。
クーポラの中は金モザイクの『祝福するキリストと4人の大天使』(TOP写真参照)で、全知全能の神を中央に、 周りを大天使、預言者、聖人などが取り囲む。
これらのモザイクはパラティーナ礼拝堂のそれとともに、もっとも純粋なビザンチン様式の伝統を受け継いだものとされる。
マルトラーナ教会のすぐ横に立つ、3つの赤いクーポラが載るサン・カタルド教会(Chiesa di San Cataldo)もアラブ的建築だ。
マルトラーナ教会と同じく12世紀(1154年)建造だが、マルトラーナ教会が16世紀の改築でバロック様式のファサードを持つのに対し、こちらはアラブ・ノルマン様式の典型的な外観を残している。
面白いことにマルトラーナ教会の壁と天井がビザンチン様式で金ピカなのに対し、こちらは石材がむき出しで一切モザイクが施されることがなかった。
しかし床にはノルマン様式のモザイクが一面に広がっているのが見られる。
空間的には古代の円柱列に支えられた三廊式だ。
シチリアにおける最初のイエズス会教会のジェズ教会(Chiesa del Gesù)は外観は地味だが、シチリアン・バロック建築の傑作だ。
創建は1564年で完成は1603年。Gesùは英語のJesus、つまりイエス・キリストを意味する。
大理石の象嵌細工と彫刻、スタッコ細工、細密な絵画が至る所を覆っており、圧巻。
クアトロ・カンティからヴィットリオ・エマヌエレ通りを南西に進むとパレルモ大聖堂(Cattedrale di Palermo)が立つ。
このカテドラルは1,184年の再建だが改築が重ねられており、オリジナルの部分は後陣部のみでほとんど残っていないという。しかしその外観は華やかで豪華だ。これは14〜15世紀のものらしい。
建設当時の内部は黄金のモザイクで輝いていたそうだが、後の改築で全て取り払われ、唯一残るそれは入口の扉上部にある『聖母子』。
内部は新古典主義で比較的おとなしめに纏められている。
パレルモ大聖堂からヴィットリオ・エマヌエレ通りをさらに南西に進むとノルマン王宮(Palazzo dei Normanni)だ。この歴史は古く、前8世紀から前5世紀あたりまで遡り、そのころの砦の遺跡は現在もこの下に見ることができる。紀元前254年にローマ人により征服されると要塞化され、その後3世紀に渡りビザンチンの支配下にあった。
現在の建物は9世紀のアラブ時代にまで遡るが、11世紀になるとノルマン人はこれを宮殿に改築、12世紀になるとそれはより拡大され、堅牢な要塞かつ荘厳な王宮となった。
このノルマン王宮内にある1,140年完成のパラティーナ礼拝堂(Cappella Palatina)は王家のプライベート礼拝堂として造られた。
内装はコンスタンチノーブルから招聘された職人によるモザイクで見事に埋め尽くされている。ドームにはキリストを中央に大天使と天使。そしてその下に4人の伝道者と預言者。
後陣にも全能者ハリストス(イエス・キリストのギリシャ語読みに由来)。
キリストの下に見えるマドンナは12世紀のものではなくバロック時代のもの。
壁の低い部分にはノルマン様式の幾何学的なモザイクが見られる。
十字も装飾化されている。
パラティーナ礼拝堂のすぐ近くにあるサン・ジョヴァンニ・デッリ・エレミティ教会(Chiesa di San Giovanni degli Eremiti)もアラブ・ノルマン様式で、サン・カタルド教会と同様の赤い5つのドーム屋根が載っていてエキゾチックだ。
その内部はやはりサン・カタルド教会同様に何もない。
この空間を金のモザイクのパラティーナ礼拝堂と比較すると、とても面白い。
1,167年ごろ完成したノルマン王の夏の別邸だったジーザ宮殿(Castello della Zisa)には至る所に暑い夏を快適に過ごす工夫がされている。建物の前には緑の庭と池があり、風を建物の上階まで導く穴が壁に沿って開けられ、タンクに貯水した雨水を建物内に流して冷房もしていた。
ノルマン人の好みはこの建物の外観から伺えようか。質実剛健で無骨。しかしこの印象は建物の内部を見ると驚くほど変わる。
中央正面の大広間には壁に吐水口があり水路が造られている。
装飾はアラブ的で、ノルマン王宮の『ルッジェーロの間』同様、動植物やヤシの木、そして狩りの様子など、当時の生活をイメージさせる黄金のモザイクや鍾乳石飾りの天井が見える。
ヴィットリオ・エマヌエレ通りの海側にはフェリーチェ門(Porta Felice)が立つ。
この門は16世紀の終わり頃に計画されたがしばらく中断し、半世紀ほど経った17世紀の前半に完成した。設計者も何度か替わったため、海側のファサードは1階部分がマニエリスム、2階部分がバロック様式となっている。
フェリーチェ門の近くのマリーナ広場の東にはキアラモンテ・ステリ宮(Palazzo Chiaramonte-Steri,Osterio Magno dei Chiaramonte)が立つ。フランス出身のキアラモンテ家は14世紀シチリア封建領主でもっとも有力な一族だった。
この邸宅は、観賞用の植物や果物の木、エキゾチックな動物がたくさんいる大きくて緑豊かな庭園に囲まれていたという。平面形は正方形でその中に正方形の中庭がある。中庭には尖頭アーチの柱廊が巡らされ、14世紀当時の3連窓が完璧な形で残る。この3連窓がある部屋は大広間で、有名な天井画を見ることができる。
17世紀になるとここに異端審問所が置かれ、庭ではいわれのない人々の首が切り落とされたという。
13世紀に建てられたサン・フランチェスコ・ダッシジ教会(Basilica San Francesco d'Assisi)は後期ロマネスク様式のファサードを残している。ポータルは14世紀のもので、強力な後援者であったキアラモンテ家の記章が飾られている。
内部は三廊式で、幾度なく修復が繰り返されたため、ゴシック様式、バロック様式、新古典様式の折衷様式となっているが、右後陣の『無原罪の御宿り礼拝堂』は見どころの一つ。ヴィトー・ダンナの『無原罪の御宿り』(1772年)を正面にし、そのまわりを彫刻家ジョヴァンニ・バッティスタ・ラグーザ(18世紀)の作品が取り囲む。天井は、アントニオ・グラーノの『聖母戴冠』だ。
そして17世紀~18世紀を生きたシチリアを代表する彫刻家ジャコモ・セルポッタ(Giacomo Serpotta)の作品が8点ある。
この横にあるサン・ロレンツォ礼拝堂(Oratorio di San Lorenzo)はカラヴァッジョのシチリアにおける最高傑作『キリストの降誕』(1609年)が飾られていたが、これは盗難に遭い現在まで行方不明だ。しかしここでもセルポッタの優れた作品が見られる。