2001.08.23 (木) 晴れのち曇り いざ、Cliffs of Moherへ Killorglin→Lahinch~Moher~Lisdoonvarna
地図:Googleマップ/gpxファイル/GARMIN Connect/Ride With GPS
発着地 | 累積距離 | 発着時刻 | 備考 |
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Killorglin | 発08:45 発09:05 |
泊:Kerdon House/£40 バス:Killarneyまで25分 |
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Killarney | 発11:10 | Transport Museumなど街中散策 | |
Tralee | 着12:00 発12:30 |
サンドイッチを購入 バス:Lahinchi行 |
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Tarbert | フェリー発 | ||
Killimer | フェリー着 | ||
Lahinch | START | 着15:30 | これより自転車 |
Cliffs of Moher | 10km | 着16:15 発17:15 |
海岸に200mの断崖絶壁が続く Barがない! |
Lisdoonvarna | 23km | 着17:50 | 泊:Caherleigh House/£40 夕食:Roadside Tavern/スモークフィッシュ盛り合わせ(サーモン/鱒/鰻/他)/アイリッシュシチュー/ギネス/£20 3ギター+3ヴァイオリン+スプーンズ |
為替レート:1IR£=147円 |
Ring of Kerry(ケリー周遊路)を終えた僕たちは、今日はバスで長距離移動をし、アイルランドの西海岸にある景勝地『モハーの断崖(Cliffs of Moher)』を目指す。
この移動距離は150kmほどで、まずキローグリンからケリー周遊路の出発地キラーニーへ戻り、そこから改めてモハーの断崖へ向かうのだが、ディングル半島の付け根にあるトラリー(Tralee)でも乗り換えなければならないので、半日を要する。
そしてターバート(Tarbert)とキリマー(Killimer)の間の狭い海峡とも広い川ともつかぬシャノン河口(Shannon Estuary)は渡しで渡る。
バスはモハーの断崖まで行くが、そのバス停は14kmに及ぶ断崖の中程より遠いところなので、断崖の南端にアプローチすべく、リスキャノア湾(Liscannoa Bay)の奥にあるラヒンチ(Lahinch)で下車した。
ラヒンチからはいよいよ自転車だ。断崖へは幹線道路を離れ枝道に入ることになる。しかしここが断崖への入口だろうと思ったところには『行き止まり』の標識が。
これは実は車用の標識だったのだが、車では断崖まで行けないことに気付かず、結局バス停まで走ってしまった。
モハーの断崖の入口には、ミュージシャンがたくさん。写真の他にもアイリッシュ・ハープ、フィドル(ヴァイオリン)、フルートなどなど!
ここでは特にアイリッシュ・ハープがすばらしかった。この楽器は初めて聞いたのだけれどすっかり気に入ってしまった。この奏者、見掛けはまさに浮浪者のようだったのだけれど… 偶然にも彼とはこのあとすぐに再会することになる。
それで、これが『断崖!』
縞模様は主に砂岩と頁岩によるものだそうだ。
この高さ200mの絶壁が延々14kmに渡って続く。
断崖のてっぺんのアリンコかごみのように見える『点々』が人間だ。
前の写真には断崖の際に立派な石のガードがあるが、それはほんの一部だけで、ほとんどのところは申し訳程度の簡単な柵があるだけ。みんな崖ップチまでいって下を見たり写真を撮ったり。でも本当にそこは『コ・ワ・イ』のだ。
この崖に添う道の大部分は人一人がやっと通れるだけのシングルトラックだったので、自転車でここを走るのはちょっと無理だったかな。だから結果としては、バス停まで走って正解だったのかもしれない。
見学のあとはちょっと休憩したいところだが、ここにはアイルランドではどこにでもあるパブもバーもない。モハーの断崖は観光地だが、ここにあるのは断崖だけだ。
断崖を楽しんだあとはリスドゥーンバーナ(Lisdoonvarna)まで一走り。リスドゥーンバーナは温泉町で、音楽と祭り、そしてスモークサーモンでも有名だ。
私たちがインフォメーションで予約してもらった宿は温泉のすぐ近くの快適なB&Bだった。
暖炉がある居間のソファーで一休みし、夕食までの間に温泉に浸かろうと思ったのだが、スパはこの時間帯は開いていないという。西洋の温泉は基本的には治療や療養を目的とする施設で、日本のそれとはだいぶ趣が異なりプールのようなところが多いのだが、ここはどんなだったろう。
例によって夜はパブへと足が向う。このロードサイド・タバーンは1865年創業という伝統あるガストロ・パブで、すぐ隣にあるバレン・スモークハウスで作られたスモークフィッシュの盛り合わせと、アイルランドの定番料理の一つであるアイリッシュ・シチューが素晴らしい。
またここは著名な音楽家たちがしばしば演奏することで知られる。私たちが座った席には『21:15 よりミュージシャンの席です。』と貼紙が。
しかし時間になってもミュージシャンは現われない。隣の席が空いたので移動すると間もなく、ギターを持ったおじいさんが現れた。でもすぐにカウンターに行ってビールを飲みだした。あれ、この人はミュージシャンじゃなかったのね? 私たちも『黒い液体』を充分に楽しむ。
ようやくフィドルやコンサーティーナ(アコーディオンの一種)を持った人が指定席に。でも彼らも金色や黒い液体を飲んでいて一向に演奏が始まる気配がない。私たちはもうすでにずいぶん出来上がってしまっている。
22時ころだろうか。やおら登場の一人の男。例のギターのおじいさんが丁寧に『さあさあ、こちらへ!』と案内しているではないか。この男、席に着くとゆっくりケースからフィドルを取り出した。廻りのミュージシャンに明らかに緊張が走る! 『黒い液体』が男の前に置かれた。ギターのおじいさんも隣の席に着いた。おじいさんもやっぱりミュージシャンだったのね。
主役の男、周りを見ながら一言二言、音合わせを少々。それから、ふところからなにやら小さな袋を取り出し、くるくると巻いて火を着けた。自家製紙巻きたばこ、一口吸うか吸わないうちに、流れ出したのだ、すばらしいアイリッシュ・ミュージック! ありとあらゆる伝統的な音楽が次々に繰り出されるのだが、リールやジグなどのダンス音楽が始まると客も大喜び。適当なパートナーを見つけては踊り出す。曲の合間にはミュージシャンの口元に例の『黒い液体』が運ばれている。まてよ、この男、何処かで会ったような? そうだった。あの断崖でハープを弾いていた男だ!
2001.08.24 (金) 曇りのち晴れ 地のはて Burren高原 Lisdoonvarna~Black Head~Ballyvaughan⇔Poulnabrone → Galway
地図:Googleマップ/gpxファイル/GARMIN Connect/Ride With GPS
発着地 | 累積距離 | 発着時刻 | 備考 |
---|---|---|---|
Lisdoonvarna | START | 発09:30 | 泊:Caherleigh House/£40 |
Fanore | 20km | 着10:50 発11:10 |
ここまで景色良し ビーチ |
Black Head | 24km | 着11:15 発11:15 |
岬だが特に観光地にはなっていない |
Ballyvaughan | 34km | 着12:00 発13:10 |
昼食:パブ/ギネス/マッシュルームのパン粉フライ/スープ/チキンキエフ |
Ailwee Cave | 38km | 着14:00 発15:00 |
洞窟ツアー:鍾乳洞/滝 このあとBurren高原をずっと走る |
Poulnabrone | 47km | 着16:10 |
巨人のテーブルと小さいテーブルたくさん ウサギ発見 |
Ballyvaughan | 57km | 着16:50 発17:50 |
休憩:パブ/ギネス これよりバス移動 |
Galway | 57km 70km |
着18:50 着19:30 |
インフォでB&B(中心から3km)予約 泊:Larchill House/£50 夕食:ハイネケン/蟹爪バターソース/ブルーチーズサラダ/パン粉つけ鱈のオーブン焼+ベイクドポテト |
為替レート:1IR£=147円 |
今日の目玉は石灰岩でできた荒涼たる丘陵地、カルスト地形の一種であるバレン高原(Boirinn,The Burren)。
そこへ向かう前に朝食をいただこう。自転車乗りにとって朝食はとても大切だ。ここアイルランドのフル・ブレックファストはサイクリスト向きで豪華。焼きトマト、卵、ソーセージ、ベーコン、プディング、ベイクドビーンズ、ベイクドマッシュルーム、トーストとライブレッド、パンケーキといったところだが、とても全部は食べきれない。
これら以外にジュース、ミルク、フルーツそしてシリアル類やコーヒーがある。
アイリッシュ・フル・ブレックファストの中で日本人にあまりなじみがないものはプディングだろう。プディングはあのおやつやデザートにするプリンとは異なり、腸詰めのことだ。豚または牛の挽肉とオーツ麦(またはその他穀物)、そしてスパイスを腸詰にして茹でたもの。
特にアイルランドで有名なのはブラック・プディングで、これはそれに豚または牛の血が加えられ、黒っぽい色をしている。ホワイト・プディングはこの血の代わりにレバーなどの臓物が使われる。
さて、豪華朝食をいただいたら出発だ。バレン高原には様々な歴史的、考古学的な遺跡があるが、この地方でもっとも有名なプールナブローン(Poll na Brón,Poulnabrone)の『巨人のテーブル(Potal Dolman)』へ行くことにした。その近くには鍾乳洞のアイルウィー洞窟(Aillwee Cave)もある。
リスドゥーンバーナからプールナブローンへは内陸を行った方が近道だが、私たちは海岸線を行くことに。アラン諸島(oileáin Árann,Aran Islands)を一目見たかったのと、ブラック・ヘッド(Black Head)という岬の名に引かれたからだ。
海岸に出ると、すぐそこにアラン諸島がうっすらと見える。あの島々でフッシャーマンズ・セーターの一つである手編みのごつごつしたあのアラン・セーターは作られている。
アラン諸島を眺めながら海岸線を行くと、まずは昨日のモハーの断崖を小さくしたような景色が続く。その崖が徐々に低くなってくると、岩が地表を覆うようになる。このあたりは牧草もあまり生えないようで、緑豊かな "Ring of Kerry" と比べるとずいぶん風景が違う。バレン高原はごつごつした岩山だと聞くが、早くもそんな気配だ。
バレン高原の "Boirinn" はアイルランド語で『大きな岩』あるいは『石の多い場所』を意味するという。その領域は約250km²あり、実はリスドゥーンバーナもこの海岸線もそれに含まれているのだ。
やがてファーナー(Fanore)で砂浜の海岸に辿り着く。アイルランドは岩がちなのでビーチは少なく、あっても猫の額ほどのものが多いが、ここの砂浜はかなり立派だ。
赤っぽい砂浜にアラン諸島から波が静かに押し寄せる。
ファーナーの先は再びごつごつした岩が続くようになる。やがてブラック・ヘッドをぐるっと廻る。ブラック・ヘッドは荒涼とした岩の丘陵が続くだけのところで、まったく観光化されていない。岬というより、海辺を行く道のただの大きなカーブがあるだけのところだ。
ブラック・ヘッドを廻ったら、左手に入り江を挟んで西部の中心都市ゴールウェイ(Galway)あたりを見ながら、プールナブローンへの分岐点であるバリーボーン(Ballyvaughan)を目指す。
ちょうど正午にバリーボーンに到着。
走れば休み、休めばあの『黒い液体』が待っている。パブはどこも居心地がよくて、ついつい長居をしてしまう。だってこんな美女(右ですよ!)もいるからね。
『黒い液体』の正体! あの有名なギネスだ。
「ギネス、1パイント」と頼んでもすぐには出てこない。専用のディスペンサーからゆっくりグラスに注がれるのだが、その行為はグラス中ほどで中断、しばしの時を置き、またゆっくりと注ぎ足されるのだ。
待つこと5分、この時間がなんともたまらない。勿論いい意味で。
真っ黒な液体の上には柔らかな肌理の細かい泡がふんわりのっている。そこにはこの国の象徴シャムロック(クローバー)が描かれる。
『黒い液体』(2.3£=350円)で咽を潤したあとは、いよいよアイルウィー洞窟へと向う。この地の石はライム・ストーンと呼ばれる石灰石で、水を通し易い性質のものだ。この石が巨大な鍾乳洞を形成させたのだ。
遠方は今までと変わらぬ景色に見えるのだが…
反対のアイルウィー洞窟の側はこのとおり、岩しかない! 写真に人が写っているのですが分かります?
鍾乳洞では係りの人がゆっくり丁寧に案内、解説をしてくれたが、写真は写らないので…
この鍾乳洞と並ぶもう一つの見どころが『巨人のテーブル』だ。
『巨人のテーブル』は写真では見て知っているが、それがどれくらいの大きさなのかは全く想像ができない。アイルランドには同じような『巨人のテーブル』があちらこちらに点在しているらしい。そんな『巨人のテーブル』を目指して、荒涼としたバレン高原を進む。
アップダウンを何回くり返しただろうか、車が数台止まっている場所にたどりついた。どうやらここがプールナブローンらしい。周りはただ、ごつごつした岩があるだけの場所だ。
人が行く方向を眺めると、一つだけポツンと飛び出した石が。大きさは予想していたよりずっと小さい。人の背くらい。『な〜んだ』と正直思う。
この石の構造物はドルメン(dolmen)と呼ばれる巨石墓の一種で、新石器時代に農民によって創られたものと考えられている。現在見られる姿は墓の中心を成していた骨格部分で、元々はこれは土で覆われており、さらにケルンで覆われていたという。ここでは30を越える遺体が発掘されている。
驚いた! 巨人のテーブルの背後には…
観光客が創ったテーブルのミニチュアが果てしなく続く!
鍾乳洞と石のテーブルを見た後は、来た道をバリーボーンまで引き返し、またパブへ。
アップダウンの繰り返しを往復で堪能したので、今日はここで自転車終了! バスでアイルランド第3の都市ゴールウェイへと向う。
ゴールウェイは大都市だった。溢れる人、人、人!