フィルツバッハの朝
今日は曇り空。 ヴァーレン湖の対岸の山の前には低い雲がたなびいています。 朝は曇りでも清々しく、ちょっと肌寒いくらいの気候です。
ここフィルツバッハはアルプスの端っこからちょっと入ったところです。 今日は谷間を縫ってそのアルプスの奥深くへと進んで行きます。
サリーナが行く
『ここはもうアルプスなんだね〜。 曇り空もなかなかいいね〜』 とサリーナがたなびく雲を目掛けて走り出します。 しばらく行くと、
サイダーが行く
『見えた〜!』 とサイダーが叫ぶ。 下についにヴァーレン湖が顔を出しました。
フィルツバッハは湖よりかなり高い位置にあり、手前の木々などに隠れてこれまで湖面は見ることが出来なかったのでした。
ヴァーレン湖
緑の芝生のような草原の向こうに林、遠くには対岸の山、ちょうど目の高さにたなびく雲。 そしてその雲の下に青いヴァーレン湖。 とても幻想的な景色です。
ヴァーレン湖への下り
フィルツバッハからはしばらく下りです。 進むにつれヴァーレン湖が全貌を現し出しました。 そのヴァーレン湖に向かって爽快に下ります。 遠くにはギザギザの山々が連なっています。 いよいよアルプスという実感が湧いてきます。
湖面を走る
6kmほど爽快なダウンヒルを楽しむと、道は湖面近くを走るようになります。 この湖沿いはサイクリング・ルートになっていて、そのコースに合流したのです。 この湖面に近いルートも楽しい。
ヴァーレンシュタット
湖面を眺めながら10kmほど走るとヴァーレンシュタットです。 スイスの街は驚くほどの歴史を持つところが多いのですが、この街にも古そうな教会があったのでこの例外ではないのでしょう。
その教会の裏には2,000mを超える山が聳えています。
ヴァーレンシュタットの湖畔にて
街の中心から少し離れたヴァーレン湖の畔に行ってみました。 西に真っすぐに延びるヴァーレン湖が険しい山々に取り囲まれているのがよくわかります。
小川沿いを行く
ヴァーレン湖の眺めを堪能したあとは、左右の山を切り裂くように流れる川沿いを南東に向かいます。 この川、いまは本当に小さな小川ですが、かつてはここを、巨大な氷河が走っていたに違いありません。
小さな村
この川沿いの狭い平地にも小さな村があります。 スイスはほとんどが山で平地が少ないため、こうした狭く危うそうなところにも村ができるのでしょう。 どんなに小さな村でも大抵そこには立派な教会があるのには、いつも驚かされます。
アルプスの山々に囲まれて
こういった小さな村をいくつか通りながら、小川沿いをのんびり行けば、右も左も見上げるばかりのアルプスの山です。
馬と行く
視界が開けサルガンスの街に到着すると、道は大きく進路を変え林に突き当たりました。 なんとここには馬に乗っている人が。 ローラースケートといいパラグライダーといい、そして乗馬といい、スイスにはそこら中に多彩なスポーツが溢れています。
ライン川を行く
林を通り越し、スロープで土手の上に出ると、そこにはライン川が流れていました。 こんなところにライン川? とちょっと驚きますが、このライン川は氷河特急の最高地点オーバーアルプパスヘーエ付近に源を発し、ここから一旦ボーデン湖に注ぎ込み、ぐるっと廻ってバーゼルからドイツ・フランスの国境を北に向かい、ドイツ、オランダを通って北海に流れ込むのです。
ラインの水は石灰質を多く含むようで、白く、そして茶色く濁っています。
アルプスとフレッシュ村
このライン川をほんのちょっと走ったところで山に向かいます。 『ハイジ』の里、マイエンフェルトが近づいてきました。 最初に現れた村はマイエンフェルトの一つ手前のフレッシュ村です。
険しい山が前方に聳えています。 そこにはハイジの『大角のダンナ』がいかにもいそうです。
フレッシュ村を行く
フレッシュ村はのどかな小さな村。 村はアルプスの山が下りてきてなだらかになる境のところにあるので、村中坂だらけです。 もう少し下に造れば平らなのに、と思わずにいられませんが、ライン川との関係でもあるのでしょうか。
ぶどう畑の中をマイエンフェルトへ
フレッシュ村の水場で小休止して、ライン川とアルプスの山のちょうど真ん中あたりをマイエンフェルトに向かいます。 周囲は緑のぶどう畑できれい。
穏やかな上りが穏やかな下りになると、行く手にマイエンフェルトが見えてきました。 高い教会の塔も見えます。
ハイジドルフへ
マイエンフェルトの街中にはお城と教会、そして土産物屋が一軒ありますが特に他の街と大きく変わった風はなく、それほど見るべきものもなさそうなので、ハイジ関係の2つあるハイキングコースのうちの簡単な方、赤ルートを辿り、オーバーロッフェルス、通称ハイジドルフに向かうことにしました。 ヨハンナ・シュピリの頭の中で、ハイジとペーターが通ったに違いない道です。
ロッフェルス付近の草原と山
このロッフェルスへの道、アニメ『アルプスの少女ハイジ』ではペーターがスキーで停まれないでマイエンフェルトまで下りてしまうだけあり、さすがにきつい。 途中、デルフリの広場にある水場として描かれた小さな水場がありました。
ところでスイス中にはデルフリという場所がたくさんあります。 デルフリって村の名前かと思っていましたが実はそうではなく、小さな村を指す一般名詞なんだって。 普通の村はドルフといい、ドルフのちっこいのがデルフリなんだそうな。 だからこれから向かうハイジドルフはハイジ村という意味だそうですよ。
ハイジハウスの山羊
ハイジ村への坂道をわっせわっせと上ると、ハイジハウスの前に辿り着きます。 広場には水場があり、その前のマイエンフェルトを見下ろす草地では数匹の山羊が飼われていました。 山羊って高いところに上る習性があるのでしょうか。 競って高い岩の上に這い上がって行きます。
マランスの街角
広場で一休みしたのち、ハイジ村の下の方をぐるっと廻るようにして森を抜け、一旦マイエンフェルトに戻ってからイエニンス、マランスへと向かうぶどう畑の中を進みます。
イエニンスはシュピリが滞在していた村で、マランスの街角には『大角のダンナ』の像が建っていました。
農家の納屋にあった馬車
マランスを出たところで空から冷たいものが落ちてきました。 すぐ近くにあった農家の納屋で雨宿りさせてもらいます。 なんとその納屋には木製の馬車のようなものが置かれていました。 こんなものが今でも使われているのでしょうか?
雨とお城とひまわり
しばらく雨宿りをするもまだパラパラと降っています。 仕方がないのでこの先のイギス駅で電車に乗ることを考えて走り出します。 山の麓にちょっとしたお城が見えましたが、雨なのでここは素通り。 ひまわりも首を下げてしまいました。
線路沿いを行く
イギス駅はそれはそれは小さな駅で、本当に小さな木造の駅舎がありましたが、無人駅なのか人っ子一人いません。 トイレもなし。 ちょうどここで雨は上がったようなので、クールまで予定の通り走ることにしました。
ここからクールまではずっと線路に沿って、またライン川に沿って走ります。
林の中を行く
ライン川沿いはどういうわけかあまり川が見えません。 時に林の中、時に工場の脇、たまにライン川といった調子が続きます。 大きな道路を跨ぐようにして超えると、クールに到着です。
クールの旧市街
クールはチューリッヒを除けばこれまでで一番大きな街で、工場あり、高層アパートあり、大きな駅ありと、都会です。 しかしこの街の一角には中世の趣きがまだ残っているところがあるといいます。 スイス最古の町、その歴史は5000年ともいわれるそこは城壁に囲まれた旧市街で、カテドラルを中心に史跡があちこちにあります。
またクールは氷河特急の発着地でもあります。 今日は氷河で削られた山々を少しだけ見ましたが、明日は列車から壮大なライン渓谷を楽しむつもりです。