モンスターバイクと朝のマッターホルン
今日もお天気に恵まれ快晴です。 今日はまずヨーロッパ最高地点の駅、マッターホルン・グレイシャー・パラダイスに上り、アルプスの360度の展望を楽しみます。 その後はシュヴァルツゼーからツェルマットまでハイキングです。
マッター・フィスパ川沿いにあるリフト乗り場の前には、もの凄く太いタイヤの自転車のようなものが並んでいます。 なんとこの自転車にはサドルもペダルもない。 いったいどうするんだろうと思っていると、店員がやってきて説明してくれました。 これは山のダウンヒル専用だそうで、ステップに乗ってボコボコ道を豪快に滑り降りるのだそうです。 世の中にはこんな乗り物もあるんですね。
ちびマッターホルンへ
しかし今日は展望台とハイキングということで、リフトに乗り込みます。 二回乗り換えると最後のロープウェイが、ちびマッターホルン(クライン・マッターホルン)に向かいました。 この路線、展望台に行く人ばかりかと思ったら、スキーやスノーボードを抱えた人々も結構いました。
東壁正面のマッターホルン
マッターホルンの姿がみるみる変わって行きます。 北壁がまったく見えなくなり東壁の正面に来ると、その壁は垂直に切り立って見えます。 その足元を斜めに下るのはテオドール氷河。
テオドール氷河のクレバス
この氷河の支流がちょうどロープウェイの真下を流れています。 その氷河の表面には至る所に深いクレバス(割れ目)が走っています。 比較する物差しがないので正確な大きさはわかりませんが、とにかく長く広く、深そうで、ここに落ちたら絶対に助からなさそうです。
この氷河の上を恐ろしく長いケーブルがスパンしています。 よくもまあこんなところにロープウェイを通したものだと感心してしまいます。
ちびマッターホルン山頂
ロープウェイの上り勾配がきつくなったかな、と思うと、ごつごつした岩場が見る見るうちに近づいてきました。 見上げればあの黒い犬歯のようなちびマッターホルンの山頂にコンクリートの箱が突き刺さっています。 一瞬目を疑いましたが、これがロープウェイの山頂駅なのです。 おったまげた〜。。
この驚きの中、いきなりオットマッターの高度計がピーピーと泣き出しました。 なにかな〜と覗き込むと、なんとそこには『富士山山頂』とある。 これまたおったまげた〜。 なんとこのロープウェイは富士山より高いところを通っているのです。 それにしてもなんで富士山の標高が高度計に入っていたのでしょう? オットマッターは自分で入れたわけじゃあないといいます。
雪原
ちびマッターホルンの山頂駅は正式にはマッターホルン・グレイシャー・パラダイスというそうです。 その駅からはトンネルを進み、さらにエレベーターで上ります。 外に出た、と思うとそこは雪原でした。
下のトンネルの出口からは、スキーやスノーボードを楽しむ人々がこの雪原に飛び出して行きます。 ここからは国境を越えてイタリア側に下りることも出来るそうです。
ブライトホルン
エレベーターの降り口からは鉄骨の簡素な階段が上に伸びています。 この階段をえっこらよっこらと上るとようやく展望台に到着。 ここの標高は3,883m、階段を一段上るにもヘエヘエしてしまいます。
目の前にはバーンとでっかい白い山が横たわっています。 この山はいったいなんだ、と思ったら、なんとこれが自転車から最初に見えたあのブライトホルン。 白い雪がソフトクリームのようにふんわりと乗っているよう。 良く見ればソフトクリームの螺旋に沿って、黒い小さな胡麻つぶのようなものが付いています。 さらに良く見れば、なんとそれは動いている! 胡麻つぶは実はブライトホルンに上る登山者だったのです。
南面を見せるマッターホルン
ところでマッターホルンはどこにいったかな? と一瞬きょろきょろしてしまいます。 ブライトホルンから左に目をやれば、東の雄ドーム、北にはちっこくメンヒとユングフラウ、その西にヴァイスホルンと有名どころが並んでいます。
北西に目をやりようやくマッターホルンを発見。 これまで隠れていた南面をこちらに見せています。 ツェルマットやゴルナーグラートから見るそれとは全く違った表情で雪はなく、一枚岩のように立ち上がっていました。 お隣はダン・ブランシュ4,357m。
モンブラン
西側の雪原の上、遥か彼方に一つだけ頭を白くした山が飛び出しています。 これがアルプスの最高峰モンブラン4,807m。 ここから左に穏やかなさざ波のような山々が連なり、グラン・パラディーゾ山群、その左端にモンテ・ヴィーゾ。 とにかくここは360度凄い!
マッターホルンを間に
お決まりの記念撮影。
一時間ほどこの展望台と下のカフェで山々を眺めてから、ハイキングの出発地シュヴァルツゼーに向かいました。
マッターホルンの麓を行く
シュヴァルツゼー・パラダイス駅を下りると、そこは大勢のハイカーやサイクリストで賑わっていました。 これまで遠くから眺めていたマッターホルンがすぐ近くに見えます。
北東に下りてくるヘルンリ稜を見上げると、原始人の斧の刃のような鋭さです。 その途中に小さくヘルンリ小屋が見えます。 登頂を目指す本格派の登山者は、このヘルンリ小屋からアタックするのが一般的だそうです。
シュヴァルツ湖と礼拝堂
歩き出すとすぐにシュヴァルツ湖が目に入ります。 湖畔には白い小さな小屋が建っていました。 これはなんと礼拝堂なのだそうです。 こういった小さな教会がこの周辺には12あるといいます。
名もなき湖
もう一つ小さな池がありました。 振り返れば先ほどまでいた、ちびマッターホルンの黒い三角と坊主頭のブライトホルンがその池に映り込んでいます。
わたほうし
湖畔にはこんな『わたぼうし』のようなものが。
マッターホルン北壁
このコースはマッターホルンの北壁に沿って進んで行きます。 東と南面にはまったく雪がなかったのに、この北面にはまだ結構な量の雪が残っています。 その裾野をハイキング道は行きます。
ところでこのあたりから見るマッターホルン、なにかオットセイのように見えませんか?
MTB
この道はまだ広く、マウンテンバイク・コースと重なっているようで、砂利の激坂を上ってくるサイクリスト達がいます。 そして今度は後ろからダウンヒルの人々。 マウンテンバイクも面白そうですね。
ツムット氷河に向かう
その自転車の道から離れ、ハイキング専用の小径になりました。 周囲はまだ森林限界の上のようで木々はなく、先にツムット川の上流にあるツムット氷河が見えてきました。 下流の山の側面には例の灰色のモレーンが認められます。
小さな花畑
ごく僅かな草しか生えていない小さな丘の合間に、小さな花畑がありました。 黄色、赤、白と色とりどりですが花があまりに小さくて写真には良く写っていませんね。
花とマッターホルン
マッターホルンをぐるっと廻り込んで、北壁の真正面までやってきました。 黄色い花の先にはきれいな小川が流れています。 冷たくておいしい。
ここから道は方向を変え、北に向かいます。 どうやらシュタッフェルアルプに着いたようです。 ほどなく周囲はカラマツの林に変わりました。 これまで日影がなく暑かったので、この木陰でお弁当休憩です。
林の中を行く
道は林の先端近くをぐるっと回り、ツムットバッハ沿いにやってきました。 左手は大きく落ち込んだ谷ですが、木々に覆われていて川はほとんど見えません。 木々の合間から対岸の山肌がチラチラッと見え隠れしますが、その山肌は氷河によって削り取られた跡なのか、引っ掻き傷のようにでこぼこしています。
ツムット村
徐々に川の音が大きくなると、小さなダム湖が現れ、その先の橋を渡るとツムットの集落です。 その先の山間に見える白い山は、アラリンホルンとリンプフィッシュホルンでしょうか。
ツムット村到着
ツムットはとても小さな村で、一軒、二軒、三軒と家の数を数えられるくらいです。 家々は皆木造の校倉造りで古いものが多く、真っ黒。 丸い石の鼠返しがある小さな倉庫もいくつかありました。
ここまで8km、全行程の2/3を終え、この先はツェルマットまで村がないので、ここのちょっと高台にあるカフェで一休みしました。
ツェルマットへ
ここからは一路ツェルマットに下るだけです。 ハイカーがあちこちからこの道に合流してきて、その姿が多くなります。 標高は下がってきているのに、どういうわけか川のツムット側には木立が少なく、ちょっと暑い。 先の白い山がだんだん大きくなってきます。
先っぽだけのマッターホルン
シュタッフェルアルプ付近からマッターホルンはほとんど見えなくなっていたのですが、後ろを振り返ると森の向こうに、先っぽだけのマッターホルンがパイプをふかしているのが見えました。
下にツェルマット
ツムットから数分歩き、緩いカーブを過ぎると下にツェルマットの街が見え始めました。 一日を振り返りながらこのツェルマットまでの穏やかな道を、のんびり下って行きます。
電気自動車のタクシー
16時にツェルマット到着です。 12km、4時間ののんびりしたペースでした。
昨今日本ではハイブリッド車や電気自動車が話題になっていますが、ここツェルマットを走る車はタクシーから荷物運搬用のトラックまで皆電気自動車なのです。 確かに音が静かで気がつかないことがありますね。
20:40のマッターホルン
このあたりはラクレットが有名、ということで晩ご飯はそのラクレット。 茹でたジャガイモとハムやベーコンに溶かしたチーズを付けて食べます。 レストランに向かうときのマッターホルンはピンクの煙りをふかしていました。
マッターホルン・グレイシャー・パラダイスからの展望