ボウ川
いよいよバンフ国立公園のバンフからジャスパー国立公園のジャスパーまでの旅の始まりです。 バンフからジャスパーまでは300kmで、この間を数日かけてのんびり行きます。
今日はバンフからその隣町のレイク・ルイーズまでの60km。 この間は国道1号線のトランス・カナダ・ハイウェイ とその旧道であるボウ・バレー・パークウェイが結んでいます。 私たちはもちろん交通量が少なく景色がよいとされる後者を使います。 途中にはロッキーならではの山々と美しい渓谷があるといいます。
川辺の自転車道を行く
バンフの象徴的な山、カスケード山を背にして宿を出発、ボウ川の畔に出ると朝の川面は清々しく、静かに周囲の景色を写し込んでいます。
川辺には歩行者と自転車のための道がありました。 左手にゴンドラで上れるサルファー山を望みつつこの道を進めば、鋭く尖ったランドル山が後ろに遠ざかって行きます。
フェンランド・トレイル
いつの間にか道はボウ川を離れ、フェンランド・トレイルに入ったようです。
この一周2kmほどのトレイルは林の中のダートでとても静か。 写真は入口付近の明るいところですが、奥の方は大きなスプルースに覆われていて薄暗く、ひんやりとしています。
バーミリオン湖
フェンランド・トレイルを抜け、素晴らしく透明な小川40マイル・クリークに架かる橋を渡ると、バーミリオン湖に続くバーミリオン・ドライブに出ます。 この道はバーミリオン湖の先きで行き止まりなので、滅多に車が通らず快適。
バーミリオン湖と尖ったランドル山
そしてすぐにバーミリオン湖が現れ出します。 バーミリオン湖は早朝に朱色に染まるそうですが、日が高くなったこの時間は静かに周囲の景色を青い湖面に写しています。 バンフの南東にあるのこぎりのようなランドル山(2,949m)も。
ボウ・バレー・パークウェイ
バーミリオン・ドライブの終点からボウ・バレー・パークウェイの入口までは自転車道が延びていて、交通量が多いトランス・カナダ・ハイウェイを通らずにアプローチできます。
トランス・カナダ・ハイウェイの下をくぐり抜け、いよいよレイク・ルイーズまで続くボウ・バレー・パークウェイに入ります。
先にパイロット山
ボウ・バレー・パークウェイはトランス・カナダ・ハイウェイの旧道で、狭い上に速度制限が厳しいため一般の車はハイウェイにまわるので、交通量が比較的少なく安心して走れます。 道脇まで針葉樹林が迫っているためあまり眺望はないものの、その分静かな雰囲気です。 そして時折道の先に現れるごつごつした岩山の眺めが楽しめます。
まず最初に目に付くのはパイロット山(2,941m)。 ボウ谷が大きく進路を変えるところにあるのでとても目立ちます。 角度によっては山頂がとんがって見えます。
先にキャッスル山
次に特徴ある平べったい形の大きな岩山が現れます。 キャッスル山(2,728m)です。
この山はこの付近では観光的にもっとも有名な山のようで、よくパンフレットなどで見かけます。 なるほどこちらから見るとお城か要塞のようにも見えます。
快調サリーナ
こうした名のある山以外にも山々が続き、どんどん風景が変わって行きます。
『今日はお天気最高で気持ちいい~。 どんどん変わる山は本当にごつごつした岩、ロッキーね。』 と快調にサリーナが行きます。
しかし道は穏やかながらもずっと上り基調。
熊に注意!
あるところにこんなものが。 熊注意の標識です。 そして速度は30km/h以下(一般のところは60km)にせよとのこと。
バンフ国立公園は野生動物の保護区になっており、たくさんの動物がいるんです。 時々そうした動物たちが道路に出てくるから注意しろってことですね。 ATTENTION! の下の動物の絵はここでは熊ですが、これは場所によって違うので面白い。
このあたりからちょっとした上りで少しあへあへ。 こんな時に熊さんに出会ったらどうしよう~
近づくキャッスル山
キャッスル山がぐんと近づくとジョンストン渓谷の入口に到着です。 この渓谷沿いには初級のハイキングコースがあるのでちょっと歩いてみることにしました。
ジョンストン渓谷
せせらぎの音を聞きながら穏やかな上りの舗装路を森の奥へと向かいしばらくすると、道は渓谷の岩肌にへばりつくキャットウォークに変わります。
このあたりからいかにも渓谷といった雰囲気になり、ざわざわと落ちる小さな滝があちこちに見られるようになります。 川の水は石灰を含んでやや白っぽく、エメラルドに近いターコイズといったところでしょうか。
キャットウォークが終わると再び舗装のトレイルとなり、さらに森の奥へと入って行きます。
小さな滝
複雑に流れる方向を変える渓谷の表情は豊かで美しく、上流へ行くに従い、落ちる滝の落差が大きくなってきているようです。
バンフから近く、道脇にトレイルヘッドがあり、難易度が低いここは人気のハイキングコースで人が多いのですが、この渓谷の持つ豊かな表情はそれに増して魅力的です。
ロウアー・フォール
歩くこと30分、いくつかの小さな滝の先きにロウアー・フォールというちょっと落差の大きな滝があります。 滝としてはそれほど大きなものではありませんが、周辺の雰囲気が良く魅力的です。
この滝には二つ滝壺があり、最初のそれは遠目には岩陰に隠れていて良く見えませんが、橋を渡った先の洞穴を潜るとそのすぐ脇に出ます。 轟音をたてて渦巻く真っ白なこの滝壺はちょっとした迫力があります。
ロウアー・フォールとサリーナ
『この渓谷はとってもきれい。 こっちの二番目の滝壺はエメラルドね~』 とご機嫌のサリーナ。
ロウアー・フォールの第二の滝壺
第一の滝壺から小さな落差であるのがこの第二の滝壺。 こちらはまさにエメラルド。
ここはマイナスイオンいっぱいできもちいい~
ちょっと幅広の滝
ロウアー・フォールがあるからにはアッパー・フォールもあるのか。 もちろんあります。 ということでさらに奥へと進みます。
しばし進むとこんな滝が。 一瞬これがアッパー・フォールかと思いましたが、それはこの滝の少し上にありました。
アッパー・フォール
ロウアー・フォールから歩くこと40分、こちらがアッパー・フォールです。
ロウアー・フォールより落差は大きいのですが、これ以上は滝壺に近づけないのが残念。 しかしごつごつした岩肌の間に落ちるこの滝もそれなりにいい感じです。
シマリスくん
このあたりでシマリスくんがお出ましに。 すごく小さくてすばしっこい。
渓谷はさらに奥へと続きインクポットという見どころもあるようですが、そこまでは結構な距離があるのでアッパー・フォールから引き返し、入口にあるレストランで昼食にしました。
そのレストランのウェイターによると、この先レイク・ルイーズまでは二ヶ所きつい坂があるとのこと。 やっと坂が終わった~、と思ったらすぐに次の坂が現れて精神的に辛かったとか。 さてさて、この先どうなる。。
先にベル山
ジョンストン渓谷を出ると再びあのキャッスル山を見ながら走るようになります。 そのキャッスル山が針葉樹林の後ろに隠れると正面に白い頂の山が現れます。 ベル山(2,934m)です。 日本のアウトドアメーカーのモンベルの名はここからきているのでしょうか。
黒クマ子熊ちゃん
そのベル山を眺めつつ走っていると、前方に数台の車が駐車しています。 事故でもあったかな、と思いつつ近づくとどうも様子がおかしい。 みんなカメラを森に向けています。
なんとカメラの先にいたのはブラッックベアーの子熊ちゃんでした。 後ろ足で立ち、木の実かなにかをむしゃむしゃと一心不乱に食べています。 一向にこちらを気にする風はなし。 親熊さんが近くにいたらちょっと怖いのですが、どうもあたりにはいないようです。
連続する山々
子熊ちゃんのあとも山々は続きます。 ん~~、しかし名前がわからないのが残念。
こうした山々を眺めながら走っていると突然視界が開け、めずらしく交差点に出ました。 クートニー国立公園のホットスプリング方面から来るr93との合流点、キャッスル・ジャンクションです。
この交差点には宿泊施設とちょっとした買い物ができる店があります。 あのキャッスル山の正面も近づいてきています。
ベル山
そしてベル山、マウント・ベルも大きくなってきました。
キャッスル山の正面
キャッスル・ジャンクションを出るとほどなく、キャッスル山見晴し台があります。
ここがこの山のほぼ真正面。 斜め横から見るとお城か要塞のように見えたキャッスル山もここからはまたちょっと違って見えます。
ボウ・バレー・パークウェイを行くサイダー
ボウ・バレー・パークウェイは緑豊か。 どこまでも続く針葉樹がおもしろいパースペクティヴを作ります。
ストーム山見晴し台から見るボウ川
この道はずっとボウ川に沿って走っているのですが、その川面はこれまでほとんど見ることができません。 そのボウ川が姿をみせるのがここ、ストーム山見晴し台。
穏やかなターコイズの流れの手前を走るのはカナディアン・パシフィック鉄道の線路。
続々山々
これまでずっと見えていたキャッスル山が後ろになると、その姿はまるで壮大な岩の壁!(TOP写真)
そして行く手にはベル山から続くパノラマ・リッジの山々、その先に見える白い山はテンプル山でしょうか。
この先で上りと下りの車線が別れると、ジョンストン渓谷のウェイターが言っていた上りが始まりました。 最大で8%ほどの坂が1.5kmほど続いてここはさすがにちょっとハヒハヒです。
ベイカークリーク
上りがあれば下りがある。 稼いだ高度を放出するかのように降下してしばらく行くとベイカークリークという小川に出会いました。 このあたりにはリバーではなくクリークと付けられた川がたくさん流れています。 みんな爽やかな流れでとてもきれい。
この近くにはユースホステルとそれに付帯するレストランがあります。 ベイカークリークからも穏やかな上りは続きます。
モランツカーブ
本日の行程もそろそろ終わりに近づいています。 レイク・ルイーズまで5kmほどのところで再びボウ川が姿を現します。 ここはカナディアン・パシフィック鉄道のためにロッキー山脈を撮影したニコラス・モラントの写真によって有名になったポイントだそうです。
高い山々を背景としボウ川の手前を走るS字カーブの線路。 ここに、時には100両を越す貨物列車が通る様は本当に絵になりそうですね。
レイク・ルイーズのビクトリア氷河
さて、モランツカーブからはちょっとした上り坂ですが、一漕ぎするとレイク・ルイーズに到着です。
正面に見えるのはルイーズ湖の先にあるビクトリア氷河。 その氷河をゆっくり見るのは明日以降にして、ヴィレッジと呼ばれるゾーンにある宿にチェックイン。
カナディアンロッキーの本格走行の初日は天候にも恵まれ快適でした。 ボウ・バレー・パークウェイは走りやすく、子熊ちゃんとの遭遇も楽しかった。 変化する山々に、ジョンストン渓谷のハイキングも楽しく、満足した一日となりました。
明日はお天気だったらモレイン湖でテンピークスを眺め、ラーチバレーでも歩いてみようと思います。
笑い話
夕食は安レストランで、と思ってユースホステルの食堂にすることにしました。 レイク・ルイーズのユースホステルは数あるカナディアンロッキーのそれらの中でも特別に素晴らしい施設で、ちょっとしたホテル並み、食堂もうまい、と聞いていたからです。
それらしい施設に辿り着くと、外観はちょっと洒落た造り。 居心地はたいへん良さそうです。 私たちのモーテル風の宿よりずっと良いなぁ~と感心。 名前はポストホテルとあります。
ここのユースホステルは名前もなんとかホテルみたいだったな、と疑いもせず中へ。 室内は落ち着いた雰囲気で外観以上に素晴らしい!
レストランに辿り着くと洒落た身なりのスタッフが、『予約しているか』と仰せになります。 ほ~ここのユースではレストランに予約するような人々もおるのか、と感心。 『いいや、予約してはおらぬ。』と申せば、『それではちとここで待たれよ。』と仰せです。 しばらくして美女が持ってきたメニューを見て目の玉が飛び出た! 一番安いワインが50ドルもする!!
あとで知ったのですが、このポストホテルはこの地区では最高のホテル、そしてレストランだそうです。 もちろんここでは一番安い料理を注文したことは言うまでもありません。 それにしても高級ホテルとユースホステルを間違えるなんてね。。。