フェルケー広場と聖モジツ教会の塔
クロムニェジーシュのフェルケー広場を取り囲む建物は朝日に輝いています。
市庁舎
中でも市庁舎の塔は、真っ白で眩しいくらい。
クロムニェジーシュを出発
朝のフェルケー広場を散策したあとは宿で朝食をとり、身支度を整えてオロモウツへ向けて出発。
今日はモラヴィアの重要な都市二つを繋ぎますが、行政上の区分としては、ここクロムニェジーシュは南モラヴィア地方、オロモウツは北モラヴィア地方になります。
お城の庭園の脇を流れるモラヴァ川
お城の庭園の脇を進むとモラヴァ川の流れに出合います。 その脇にはお城の庭園の濃い緑が続いています。
今日はほぼこのモラヴァ川に沿って進む、自転車ルート47を行きます。
クロムニェジーシュ郊外
お城の庭園が見えなくなり、幹線のD1号線を越えると民家もまばらになり、周辺は小さな森になります。
自転車歩行者道
この森を抜けると隣村に入り、そこからは車道の脇に自転車歩行者道が並走するようになります。
周囲はこれまで同様に麦ととうもろこしの畑。 ワインで有名なモラヴィア地方ですが、それはここよりもっと南の方のようで、このあたりではぶどう畑は見かけません。
田園を行く
フロピニェを抜けると周囲は完全に田園地帯となり、畑とその先に広がる森しか見えなくなります。
今日のコースはほぼ完全にフラットで、小高い丘さえ周囲には見えません。
森を行く
サージーチーの村で進路を西に向けると、再び森の中へ。
この森の中を行く道は区画整理をされたようにまっすぐで、完全舗装路。 よくある地道も出てきません。
森とモラヴァ川
まっすぐだった道がすこしうねうねすると、クロムニェジーシュを流れていたモラヴァ川を渡ります。
ロボティツェ
モラヴァ川のすぐ先で森はおしまいになり、すぐにロボティツェに到着。
この村はすごく小さな村ですが、こうしたところにも教会だけはあるのです。
小さな池
その先には小さな池が現れます。
このあたりはモラヴァ川がいくつもの支流に分れるところで、基本的に湿地帯で、この向こうには大きな池も。
アニーン
アニーンを通過すると、右手の木立の向こうに、その大きな池がちらっちらっと見えるようになります。
池の畔には地道の散策路があるようですが、これまで充分に地道を楽しんできた私たちは、もう地道はいいよね、ということで直進。
トヴァチョフ
アニーンから続くトヴァチョフはちょっとした街で、高い塔がいくつも建っています。
これはたぶんお城ではないかと思います。
435号線を行くサリーナ
トヴァチョフからの自転車ルート47は大きな池の中を行くダート道。 例によってこれもパスした私たちは、一般の道路435号線を行きます。
435号線は最近舗装し直されたらしく、きれいな路面で車はほとんど通らず、まったく問題ありません。
435号線を行くサイダー
周囲はじゃがいも畑と牧草地らしき草原。
草原に咲き乱れるオレンジのひなげし
この草原の中には、これまでよく道端で見かけたオレンジ色のひなげしが咲き乱れています。
先に巨大な教会
このひなげしを眺めながら進むと、先に二本の尖塔を持つ大きな建物が現れます。
どうやらドゥブ・ナト・モラヴォウの教会のようです。 近づいてみるとこの教会はかなり新しそうです。 村の規模からするととてつもない大きさですが、チェコにはまだ信心深い人々が多く、寄付がたくさん集まるのでしょうか。
ドラフロフ手前のモラヴァ川
ドゥブ・ナト・モラヴォウの街に入ったついでに、ここからは自転車ルート47に復帰します。
一旦モラヴァ川を渡り、畑の中の細道を行き、ドラフロフの手前で再びモラヴァ川を渡ります。 このあたりのモラヴァ川はクロムニェジーシュを流れていたそれより川幅が広がり、ゆったりとした流れに見えます。 川岸では若者たちがギャアギャア騒ぎながら水遊びを。
彼方にオロモウツの気配
ドラフロフから自転車ルート47は小さな村を覗いて行きますが、私たちは適当にこれをショートカットして435号線をメインに行きます。
今日のルートはほとんど高低差がないのですが、やや高台になったところに来ると、遠くに大きな町の気配を感じます。 オロモウツが近づいたようです。
オロモウツ新市街
オロモウツは人口10万人を超す大都市で、ここで最初に現れたのは新しい高層の住宅群でした。
この住宅群を横目に進みトラムの走る道を渡ると、いつしか路面は石畳になり旧市街に入ります。
ドルニー広場
旧市街でまず辿り着いたのはドルニー広場。
ちょっといびつな形のこの広場は一面大工事中でした。
ドルニー広場の柱像
広場中央にはお決まりの聖母マリア柱像。 こうした広場の真ん中に建つ聖母マリアの柱像は各地にありますが、ほとんどは18世紀に起こったペストの終焉を記念して建てられたものだそうです。
この柱像を挟んでジュピターとネプチューンの噴水があります。
ハウエンシルド宮殿
オロモウツの歴史は冒頭で少し述べましたが、17世紀の三十年戦争でスウェーデン軍により占領され、大きなダメージを受けます。 その後18世紀に入り街は復興され、現在見る姿になったとか。
したがってこの街の多くの建造物は、先の聖母マリア柱像や噴水を始めとして18世紀に造られたものが多いのです。 オウィディウスの物語をモチーフにした特徴的なコーナーの張り出し窓を持つハウエンシルド宮殿も18世紀に改築(16世紀建造)されたもののようです。
ホルニー広場
ドルニー広場を北西に進むと、オロモウツのメインスクエア・ホルニー広場です。
アリオンの噴水
まず目の前に現れるのがこのアリオンの噴水で、子供たちは中に入って大はしゃぎ。
チェコの噴水は石造の大変歴史あるものが多いのですが、これは21世紀初頭の広場改築時に造られたもので、ブロンズのようです。 それにしても、ヨーロッパの人々は噴水が好きですね。
聖三位一体の碑
そしてこの噴水の先に建つのが、ユネスコ世界遺産に登録されている聖三位一体の碑です。
18世紀の前半に40年の歳月を費やして建てられたこのバロック様式の柱像は、もはや柱とは呼べないような壮大なオブジェで、日本語訳では柱ではなく碑としているものが多いのも頷けます。
聖三位一体の碑ディテイル
内部は小さな礼拝堂になっており、それを取り巻くようにして競り上がる石の外壁は、守護聖人や使徒などの像とレリーフで埋め尽くされています。
黄金に輝くの聖三位一体
中央に輝くのは、金で覆われた聖三位一体と聖母マリア被昇天像。
市庁舎
ホルニー広場でもっとも大きく目を引く建物はこの15世紀に建てられた市庁舎で、20世紀の中頃に改修されたものの、以前の姿をよく留めているといいます。
南面にはゴシック様式の張り出し窓の付いた聖イェロメ礼拝堂があり、この内部にはドナウタイプと呼ばれるチェコで最も古く独特な丸いアーチ型天井が架かります。 東面にはルネサンス様式のサンルームと階段があります。
市庁舎の前に集まる人々
辺りをぶらぶらしているうちに、その市庁舎の前に人だかりが。
みんな上を向いてカメラを構えています。
市庁舎の塔と仕掛け時計
カメラの先を見れば、黄金のモザイクの中に時計が見えます。
時はもうすぐ正午。
天文時計
この時計は毎正時になると上の窓にある人形が踊り出す仕掛け時計で、一般的な時刻以外にも月日や月齢など様々な時が計れる複雑時計で、天文時計と呼ばれています。
モザイクの現在の絵柄は社会主義時代に改変されたものだそうで、労働者や科学者といった、いかにもそれらしいモチーフになっています。
自転車レース
この日のオロモウツには特別なイベントがありました。
それはUCIの自転車レース、チェコ・サイクリング・ツアーの第四戦で、ここホルニー広場がスタート&フィニッシュ地点です。 フィニッシュライン付近は決して広くなく、その50m手前にはあの聖三位一体の碑を廻る90度のコーナーがあり、ちょっとテクニカルなゴールです。 石畳の路面をゼーゼーいって走り抜ける選手たちの息づかいが聞こえる距離で見るレースは迫力満点。
聖ヴァーツラフ教会の尖塔
ホルニー広場の東にあるカエサルの噴水を眺め、そのまま東へ向かうと道にはトラムが走り、その向こうに聖ヴァーツラフ司教座教会の高い尖塔が見えてきます。
聖ヴァーツラフ教会
12世紀初頭に建てられた聖ヴァーツラフ教会は13世紀の大火後にゴシック様式で再建、19世紀にネオ・ゴシック様式に改装され、現在の姿になったようです。
教会の左手に見えるのはロマネスク司教宮殿(プシェミスル宮殿)で、これは元はプシェミスル王朝時代の貴族が12世紀に建設し寄贈した司教館でした。
聖ヴァーツラフ教会内観
聖ヴァーツラフ教会の内装はネオ・ゴシック様式で華やか。
柱から天井にかけてはまるで織物かなにかのように、彩り豊かに星や花がぎっしりと描かれています。
大司教宮殿
聖ヴァーツラフ教会から南へ向かい、大通りを越えてヴルモヴァ通りの石畳を上れば、大きな建物が続くブロックになります。
その中の公園に面して初期バロック様式の大司教宮殿があります。 三つの門がある長いファサード、内部は広い階段と豪華なホールが特徴で、各部屋のバロック様式の飾りしっくいは当時のままの残っているそうです。 ここには多くの君主及び皇帝が滞在したようですが、19世紀半ば、皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の皇位戴冠もここで行われたそうです。
トリトンの噴水
大司教宮殿からマリアーンスカー通りを西に向かうと共和国広場に出ます。 ここには18世紀初頭に造られたバロック様式のトリトンの噴水があります。
巨大な二人のトリトンが貝を持ち上げ、その上には少年と犬、下ではグロテスクな魚のような雰囲気の二頭のイルカがその口から水を噴いています オロモウツにはこうしたバロック様式の石造の噴水が、他にも、ヘラクレス、カエサル、ジュピター、マーキュリー、ネプチューンと五つもあります。
聖ヤン・サルカンデル礼拝堂
テニソヴァ通りから斜めに入るとさらにそこからマフレロヴァ通りが別れます。 かつてこのあたりには15世紀に建てられた刑務所がありました。 17世紀、ヤン・サルカンデル神父はモラヴィアへのポーランド軍侵略を支援したとして非難され拷問を受けますが、告解の秘密を漏らすことなく、そこで殉教しました。 18世紀にこの神父に捧げる教会が建てられ、それは20世紀初頭に建て替えられて現在見る姿になったそうです。
20世紀末にこの地を訪れたヨハネパウロ2世によって、サルカンデル神父は聖人と認められ、同教会は聖人教会となりました。
聖ヤン・サルカンデル礼拝堂内部
ランタンのあるドーム屋根の下は小さな礼拝堂で、その真ん中には地下へ通じる丸穴が開いています。
なんとこの丸穴の底には、サルカンデルの時代に使われた拷問機が置いてあるのでした。
20世紀初頭の住宅
旧市街のすぐ外側の南西部には広い公園が広がります。
その前を通るヴィーデニスカー通りには、公園の緑を背にして20世紀初頭に建てられた住宅が並んでいます。 それらの多くは教会で良く見かけるような塔を持っていて、少なくともこの頃まで、それが富の象徴だったことを伺わせます。
聖モリツ教会
ホルニー広場のすぐ北に建つ聖モリツ教会は、モラヴィアン・ゴシック建築の中で最も価値のあるものの一つとされています。 正面外観はゴシック特有の高い尖塔や装飾がなく、まるで要塞のようなごつい塔があるだけで、ゴシックというよりはロマネスクを思わせます。
内部に入るとリブ柱にリブボールトの天井と、これはゴシック。 この内部にある15世紀のゴシック様式の『オリーブヒルのキリスト』という彫刻が有名だそうです。
聖モリツ教会の塔からホルニー広場を臨む
聖モリツ教会の塔に上れば、ホルニー広場の市庁舎と聖三位一体の碑の頂部が見えます。 彼方には真っ平らなモラヴィアの平原。
さて、南ボヘミア地方のチェスキー・クルムロフから始まったチェコサイクリングは、ここ北モラヴィア地方のオロモウツで一旦終了します。 ここまでお天気にも恵まれ順調だったので、予備日としていた三日間が丸々空くことになりました。 そこで明日からは東ボヘミア地方のパルドビツェからラーベ川沿いに、中央ボヘミア地方のクトナー・ホラに行ってみることにします。