ポルトのカンパニャン駅
今日は北部のポルトを離れ、中部地方のアヴェイロに行きます。
少しゆっくりして、10時過ぎに宿を出発し、2kmほど離れたカンパニャン駅へ。正面に見える現代的な建物は新しい駅の入口で、右手に見えるクラシックな建物が古い駅です。
アヴェイロ行きはどちらが入口なのか分からなかったので、ひとまず古い駅に入ると、正面にチケットカウンターがずらりと並んでいて、その一番端の窓口には人集りが。空いているカウンターの上には『Urbanos』とありますが、アヴェイロまでの切符といえば窓口を教えてくれるだろうと思いそこに行くと、すんなり切符をくれました。
カンパニャン駅のプラットフォーム
この窓口で聞いたプラットフォームに行くと10:52発とあります。隣のプラットフォームには人が次から次にやってくるのに、こちらはまばらでちょっと不安に。そしてそのうち表示されていた発車案内がなくなってしまいました。
インフォメーションで聞くと、10:52発はポルト行きで隣のプラットフォームだけれど、IC(急行)なのでUrbanosの切符ではだめで、買い直さなければならないといいます。Urbanos はリスボンやポルトとその周辺を結ぶ都市近郊列車のようです。ICの窓口はあの混雑している一番端のだというので、これは到底間に合いそうもない。まあUrbanosでも1時間で着くというので、次の列車を待つことにしました。
Urbanos車内
カンパニャン駅のプラットフォームに架かる屋根は現代的なHPシェルを並べたもので、すっきりとしていて美しいデザインです。
20分ほど待つとUrbanosの列車がやってきました。普通の列車のデザインはやや重い感じがしますが、これは現代的で爽やか。内部の座席配置は対向四人掛けで、こうした近郊列車には長距離列車にはないローカリティーがあって、これはこれで面白い。
旧アヴェイロ駅外観
海を眺めながら一時間ほどこの列車に揺られて、アヴェイロに到着。
アヴェイロ駅には新しい駅舎ができており、機能的にはすべてそちらに移っていますが、その隣に古い駅舎が保存されています。
旧アヴェイロ駅プラットフォーム側
この古い駅舎には、この地方の歴史や人々の暮らしが描かれた美しいアズレージョがびっしり。
ここには運河や塩田などのアヴェイロのものを始め、ちょっと離れたパレス・ホテル・ド・ブサコなども描かれています。
漁船
そうした中にこんな漁船の絵がありました。この近くでは漁船を陸揚げするのに牛が使われていたそうですが、その牛が引っ張った漁船がこれでしょう。この漁船もモリセイロと呼ぶのかどうかはわかりませんが、これはトレイラで見られそうなので、明日見に行こうと思います。
駅前のカフェ
アヴェイロ駅を出ると正面に真っ白な建物が見えます。一階は気持ち良さそうなカフェとレストランで、上はホテルのようです。
この建物の左手の道がアヴェイロのメインストリートです。
新しいアヴェイロ駅
私たちはそのメインストリートではなく、脇道を使い、まず中央運河の起点となる所へ向かいます。
後ろに見えるのが、現代的なデザインの新しいアヴェイロ駅。
旧ジェロニモ製陶工場
1kmほど行くと高い煙突を持つ立派な煉瓦造の建物が現れます。
これは旧ジェロニモ製陶工場だそうで、現在は文化会館のようなものになっているようです。ポルトガルといえばアズレージョですから、ここもアズレージョを焼いていたのでしょう。
中央運河の起点
この旧ジェロニモ製陶工場の前が、アヴェイロの街を流れる中央運河の起点で、そこには今では観光船になったモリセイロが浮かんでいます。
このモリセイロは、元々は農作地の肥料となる海藻(moliço)を採るためのものだったようで、モリセイロ(moliceiro)の名もこれから来ているようです。しかし現在は、この海藻が採れなくなったのか、または肥料として使われなくなったのか、もっぱら観光用になっています。
中央運河を下る
さて、この運河の起点からはそれを下り、旧市街に向かいます。
中央運河を巡る観光モリセイロ
この運河にはいくつも橋が架かり、その下をくぐって、観光客を乗せたモリセイロがひっきりなしにやってきます。
モリセイロとサリーナ
中央運河の起点から1kmほど行くと、アヴェイロの中心部です。運河を渡る大きな橋の上にロータリーがあり、その先に再び現れた運河の両岸にはモリセイロがたくさん停泊しています。
この舟の特徴は、大きく反り返った舳先と色鮮やかな彩色でしょう。そしてもう一つ、この舟は海藻を引き上げやすくするため、舟べりが低くいことです。そんなわけで観光用の舟には、運河に落っこちないように背もたれとなるガードが取り付けられています。
反り返ったモリセイロの舳先
舳先には思い思いの絵が描かれています。
その絵の下にちょこっと文字が書いてあるのですが、これは絵と一体で、描かれているのは社会風刺やカモンイスの叙事詩の一場面など、様々だそうです。
モリセイロを後ろから見る
モリセイロはお尻のデザインも独特です。ここにも舳先同様、様々な絵が描かれています。
お尻のアップ
この写真を見てちょっと何かへん、と気が付かれた方はすばらしい。後ろに取り付けられている舵が宙に浮いています。これじゃあ舵がきれないじゃあないか。。
まったくその通りなのですが、今は動力もモーターになっているので、舵もそれに付いているのを使っているのでしょう。おそらく元々はこの状態から舵をスライドさせて、水中に入れられるようになっているのではないかと思います。
アール・ヌーボーの建物
この運河の北側にはアール・ヌーボーの建物がいくつも並んでいます。写真の真ん中の建物は現在、市立博物館になっています。
アヴェイロは港町であり塩田でも栄えたところでした。しかし、16世紀後半の暴風雨で運河の入口が閉ざされてしまい、町は衰退していきます。ところが19世紀にまたもや暴風雨があり、これによって閉ざされていた運河の入口が開き、復興を遂げます。これは冗談のような話ですが、どうやら本当のことのようです。
その復興の際、当時流行していたアール・ヌーボー様式でここに多くの建物が建てられたのだそうです。
ロータリーからロシオ庭園方面を見る
先に見える緑のゾーンはロシオ庭園で、その少し先にこの中央運河から分岐するサン・ロケ運河があります。
このサン・ロケ運河までが旧市街で、その先は潟になっています。
繁華街
ロータリーの北のホテル・アヴェイロ・パラセの横は小広場になっていて、白と黒のきれいな石の舗装がされています。
ここから奥にもこの舗装が延び、いい感じの道が続いていきます。どうやらこのあたりがアヴェイロの繁華街のようです。
突き当たりにヴィラ・クルス教会
この一角にあるレストランでランチに。もちろんここは海の幸でしょう。タコのマリネとアロス・デ・ガンバ(エビのリゾット)を。
新鮮でおいしい海の幸を充分に頂ける海辺の街は、やはりうれしいです。
サン・ロケ運河
ランチの後はサン・ロケ運河沿いを歩きます。こちらの運河は中央運河に比べ、静かです。その理由の一つに、旧市街はここで終わり、対岸の向こうに街はなく、すぐ潟になっているということがあげられます。
この運河にもいくつも橋が架かり、その一つ一つを眺めると結構面白いのですが、それらの橋のどれだかは、ここで開催されるモリセイロのレガッタの際、人が乗りすぎて落っこちたことがあるそうです。この静かな運河が人で埋まるくらいのこのレースはいったいどんなものなのか、ちょっと興味をそそられます。
満員のモリセイロ
この静かな運河に満員の観光客を乗せたモリセイロがやってきました。モリセイロは現物を見るまでもっとずっと小さな舟だと思っていたのですが、これには30人近い人が乗っています。
モリセイロはおおよそ全長25m、幅2.5mあり、意外と大きいのです。
アール・ヌーボー美術館
サン・ロケ運河のあとは魚市場に行ってみましたが、もう午後も遅い時間帯だったのでそれは閉まっていました。ちょっと残念。
魚市場からロシオ庭園を通って中央運河に戻ると、そこにはアール・ヌーボー美術館(Museu Arte Nova)があります。
市立博物館のアズレージョ
市立博物館では比較的新しいアズレージョが展示されていました。
これは1920-1930年ごろのもので、良く見られる青と白ではなく、緑と赤というのが新鮮で、図柄も歴史画などではなく幾何学的なのが面白い
市立博物館のアズレージョその2
これらの他、青系でももの凄く繊細な幾何学模様のものや微妙なグラデーションがかかったもの、アールデコ調のものなどが並んでいます。
帆のあるモリセイロの模型
この博物館の一階はおみやげコーナーで、そこにモリセイロの模型がありました。これには帆が張られています。
モリセイロは竿を使ったり牽引されることによって動くものだと思っていましたが、かつては帆があったのでしょうか。
ミゼリコルディア教会
運河巡りはこれで終わりにして、大聖堂の方に行って見ようと思います。
ロータリーから南には白と黒の石畳のうねった道が延びています。この道は市庁舎の脇を通り、ミゼリコルディア教会の前に出ます。この教会の外壁は幾何学模様のアズレージョで覆われています。
Casa Santa Zita
その先にも外壁をアズレージョで覆われた建物が。これは一階は幾何学模様、上階は具象で中にキューピッドらしいのが描かれていたので、きっと教会関係の建物でしょう。
この建物の前は広場風の広い通りになっていて、その突き当たりには政府の機関が入っているらしい立派な建物が建っています。
サンタ・ジョアナ通りの建物
広いサンタ・ジョアナ通りに出ると、そこにはこんな建物が並んでいます。この二つの建物のデザインはかなり異なりますが、両方とも一階にアズレージョが巡らされ、連続した景観になっています。
サンタ・ジョアナ通りから大聖堂を見る
サンタ・ジョアナ通りは大聖堂通りです。通りの中央に植栽帯が設けられ、その向こうに大聖堂が見えます。
この大聖堂は周囲の建物に比べ極めて大きいわけではありませんが、前の建物群が下げて建てられているので、今でもよく目立ちます。
大聖堂
16世紀建造、バロックのファサード。
大聖堂内部
聖堂内部はかなりすっきりした印象ですが、腰には青と白のアズレージョが巡らされています。
アヴェイロ美術館中庭
大聖堂のすぐ近くにアヴェイロ美術館があります。
この建物はポルトガル王アフォンソ5世の王女ジョアナが隠棲した15世紀に建立された女子修道院だったものです。彼女の墓はこの中にあり、その石棺はカラフルな大理石のモザイクで飾られており、バロック様式の傑作とのことです。
美術館内の礼拝堂
大聖堂の内部はかなりすっきりしていましたが、ここにある礼拝堂はかなりゴテゴテ。
段状になった巨大なケーキのような祭壇はポルトガル独特のものなのか、あちこちで見掛けます。
バロックの舟
王女ジョアナの石棺はよく写真に出てきますから、ここでは別のものを。
舟のように見えますが、なんだったかな。
何気ない裏通り
これでアヴェイロ散策はおしまいです。宿に戻り一休みして夜の部に備えます。
さて、明日はアヴェイロ駅のアズレージョに描かれていた牛で引き揚げる漁船を見に、大西洋に面する漁村トレイラに行きます。