中央運河を海に向かう
今日は中部地方のアヴェイロから、大西洋に面する漁村トレイラまでサイクリングして、牛で引っ張る漁船を探します。
朝の中央運河はまだ観光客もほとんどおらず、昨日の賑わいが嘘のようにひっそりとしています。写真右に写っているのはロシオ庭園で、先には高速道路のような道に架かる斜張橋が見えています。
塩の山
その斜張橋をくぐるとすぐ、白っぽい円錐の固まりが見えてきます。
いったいあれはなんだ、と思って近づくと、それは塩田で作られた塩の山でした。
塩田で水を掻く人
この山のすぐ横に塩田があり、その中で作業している人がいたので、ちょっと様子を見させてもらいました。
畦で区切られた田んぼの中が、さらに木枠のようなもので短冊状に区切られています。その一つの区画で、この人は柄の付いた板きれのようなもので塩を押しやっているようです。これは天日によって海水が蒸発し、水に溶けられなくなった塩が沈殿したものを集めているということでしょう。
塩田と塩
こうして塩はまず一方の畦の上に面状に貯められ、次にそれが多くなったらさらに寄せ集めて小山にするようです。そしてその小山が大きくなってきたら、運び出して最初見たような大山を築くのでしょう。
運河から潟に向かう
塩田をあとにし先に進めば、中央運河に小さな橋が架かっています。
この橋の先で中央運河はおしまいになり、その先は広大な潟になります。
中央運河から海に続く水路
しかし運河の先がすぐ潟では舟が通れなくなってしまうので、その一部は充分な水深がある水路になっています。
もっともここは地図ではRia de Aveiroとなっているので、Riaを潟ではなく入り江と読めば、ここは海とも解釈できますが。
水路とその先の潟
これは水路を通してその先の潟を見たところで、所々に小さな小屋のようなものが見えます。
ここは潟とはいってもかなり手が加えられているようで、塩田のための小さな作業小屋程度は建てられるところもあるようです。
小さなマリーナ
この水路が広くなると、そこには立派なヨットが何艘も停泊しています。ここはちょっとしたマリーナのようです。
ガファーニャ・ダ・ナザレー
ボコ川を渡るとガファーニャ・ダ・ナザレーに入ります。
ここは比較的新しい街のようで、アヴェイロの旧市街に建つような古い建物はなく、鉄筋コンクリートの建物も結構建っています。
フォルテ・デ・バッラから対岸のサン・ジャシントを見る
ガファーニャ・ダ・ナザレーを通り抜けると、あたりの雰囲気が一転し、ガラッとした空間に港湾関係の施設のようなものが目立つようになります。ほどなく大きな船が見えてきて、ここが港であることを気付かせてくれます。
このガラガラした中の一本道を突き当たりまで行くと、広い川のようなものが現れ、対岸が見えてきます。この川のようなものはリア・デ・アヴェイロの出口、つまりアヴェイロの運河から繋がる水路の出口であり、この左手はもう大西洋です。ここはフォルテ・デ・バッラというところのようです。
フォルテ・デ・バッラのフェリー乗り場
道はこの突き当たりで右に折れ、その先で突然終わります。なぜこんなところに来たのかというと、ここにはトレイラがある側である対岸のサン・ジャシントに渡るフェリー乗り場があるからです。
このフェリーの時刻表は手に入らなかったので、何時に出発するのか不安でしたが、運良く20分ほどで出航しました。
フェリーでサン・ジャシントに向かう
フェリーはスムースにリア・デ・アヴェイロの中を進んで行きます。
ここならリアを潟ではなく、入り江と解釈してもいいような気もします。
リア・デ・アヴェイロに浮かぶモリセイロ
写真はモーターボートが通ったあとなので少し波がありますが、ここはまったく波がない入り江です。
そこにぽつんとあのモリセイロが浮かんでいます。残念ながらその本来の作業の海藻をとっているわけではなさそうですが、漁師らしき人が二人乗っています。
サン・ジャシントからトレイラに向かう
フェリーは15分ほどでサン・ジャシントに到着しました。乗船したフォルテ・デ・バッラは何もないところでしたが、ここは道沿いにカフェなどがたくさん並んでいて、かなり活気があります。
トレイラがあるこちら側は、大西洋とリア・デ・アヴェイロの間の僅か巾2kmほどのゾーンで、それが20kmほど続きます。
繋がれた小舟ゾーン
リアにはたくさん木の棒が立てられていて、そこにモータボートや小型のモリセイロのような舟が並べられています。
よく見ればこの舟はアヴェイロの運河を滑っていたモリセイロより小型で、舳先もあんなにカーブしていません。これもモリセイロなのでしょうか。
サン・ジャシント砂丘自然保護区付近
トレイラまでは一本道です。この道を少し行くとサン・ジャシント砂丘自然保護区になります。
ここは野鳥の宝庫だそうなのでちょっと覗いてみることにします。松林の中を行く砂利道に入ってみましたが、そこから森の中に行く道の入口には施錠された門扉があって入れません。別のところで再トライしてみようと思います。
貝漁から戻った漁師と舟
元の道に戻って先に進むと、水辺に二艘の舟が浮かんでいます。この舟は漁から戻ったばかりの様で、漁師さんが舟からなにかを下ろし始めました。
網かごにザザーっとなにかを開けています。良く見るとそれは巻貝でした。このあと開けた網かごを水でじゃぶじゃぶ。きれいに泥が落ちたら、中の貝を網に入れて陸に上げます。モリセイロのようなこの舟は、まだ現役で漁に使われているのです。
リア・デ・アヴェイロを眺めながらどんどこ
この漁師さんたちの作業を見たあとも、リア・デ・アヴェイロを眺めながらサン・ジャシント砂丘自然保護区の中に入る道を探します。
再びサン・ジャシント砂丘自然保護区の中に入る
なんとか自然保護区に入れそうな道があったのでこれを行ってみることにします。最初はそれなりに進めそうだったのですが、
道がなくなる
結局、草茫々のこんなことになってしまうのでした。あ〜あぁ。。
岸辺で遊ぶ子供たちとモータボートで釣りをする大人
元の道に戻ってリアを見れば、あちこちに釣り人の姿があります。それは陸からも、水上からもで、ここは余程釣れるところなのでしょう。
そして岸辺では子供たちが網を持ってはしゃいでいます。魚がすくえたのかな。
弧を描くリア
リアの脇を行く道は大きな弧を描いて進んで行きます。
ここは丁度自然保護区の終わりあたりですが、大西洋とリアとの間の松林はずっと先まで続いています。
潟となったリア
この少し先でリアに変化が現れました。これまで潟は道から遠く離れた沖合にしか見えなかったのですが、ここでは手を伸ばせば届きそうなところまで迫ってきています。
良く見ればこの潟には人がいます。どうやらどこかからあそこまで渡って行けるようです。
先にトレイラ
この先で叉もやリアに変化が。これまでリアの岸辺はどろどろした泥でしたが、ここに来てそれが砂浜になったのです。ここには日傘の下で日光浴している人々の姿もあります。
そして先にはトレイラの街が見え出しました。
プラヤ・ド・モンテ・ブランコ
砂浜が一際広がったところに出ると、そこにはプラヤ・ド・モンテ・ブランコとあります。
ここは潟側なので水の色はスカッと晴れた青空のようというわけにはいきませんが、ここでビーチリゾートを楽しんでいる方もいます。
漁船の船溜まり
このビーチの少し先に漁船の溜まり場がありました。ここにはあのモリセイロのような舟がびっしりで壮観です。
漁船とサイダー
この漁船を見ていて思ったのですが、やはりこれはモリセイロではないかと思います。モリセイロは元はこのあたりにあった海藻を集めるための舟のようですが、もちろん海藻だけを採っていたわけではないでしょう。それが採られなくなった現在は、魚や貝の漁が主体となったのでしょう。
良く見ればこの舟は、アヴェイロの観光用のモリセイロほどではないにしろ、舳先はやはり大きな弧を描いていますし、お尻が大きく持ち上がったものもあります。そして色彩もカラフルです。舳先などに絵が描かれていないのは、実用上それが不要だからではないでしょうか。逆に見れば、アヴェイロの観光船はこの舟をベースに、装飾性を増したものとも考えられそうです。
トレイラの自転車道
この漁船の溜まり場から先にはなんと自転車道が設けられています。
これを使って進み、ちょっとした住宅地を抜けると、
トレイラの中心部
広場のような歩行者専用の広い道に出ます。その真ん中には女の人が頭に何か載せた像があります。
どうやらここがトレイラの中心部のようです。
トレイラの中心部から大西洋に向かう
トレイラは完全な漁師町だと思っていたのですが、どうやらそうでもないらしく、この道の両側にはレストランがいっぱいあり、浮き輪を売っている店もあります。
ここはリゾート地でもあるようです。
ビーチに出る
この通りを先に進み両側の建物がなくなると、その先にビーチが現れます。ここは予想を遥かに超える人々で賑わっていました。お天気が今ひとつなので写真はあまりパッとしませんが、ビーチはとても気持ち良さそうで、砂がとてもきれいです。
そういえばここは砂丘自然保護区に連続しているのでした。
砂丘の中に駐車する
ここに来た第一の目的は、アヴェイロ駅のアズレージョに描かれていた漁船を見るためです。人が大勢いるビーチにそれがないのは明らかなので、そこを離れ、北に向かうことにします。
ほどなく砂丘が現れるようになります。その中に木製デッキが続いているので、これで砂丘を越えます。
なが〜〜い魚網
デッキが途絶えると、砂丘の先の砂浜に出ます。そこには一筋の線が描かれていました。
その線は長い魚網でした。
漁船
この魚網を辿って行くと、先の浜辺に一艘の舟がポツンと置かれています。これが私たちが探していた漁船です。
舳先は美しいカーブを描いており、その中にはアヴェイロのモリセイロほど華やかでないにしろ、絵も描かれています。
漁船とそれを引っ張るトラクター
かつてこのあたりでは漁に牛が使われていました。魚網を人に代わって引き上げるのです。その牛はきっとこの舟も浜辺に引き上げたことでしょう。さすがに今日では牛は使われなくなり、その代わりにトラクターがその役を引き受けています。
左に見えるトラクターが、ロープにくくりつけられた魚網や漁船を引き上げるのです。
漁船の積み荷
なぜ牛やトラクターの力が必要なのかといえば、このあたりはず〜っとまっすぐな砂浜が続き、港となるところがないため、網も舟もこの砂浜に上げるしかなかったからでしょう。
牛が網やこの舟を引っ張っているところを想像してみてください。ちょっとユニークじゃあありませんか。
外部WEB参考写真:海に向かう漁船/牛と漁船/巨大漁船ともの凄い数の牛
ペルセベスとアサリ
海辺の楽しみはもちろんおいしい魚介類。中心のメインストリートに戻ってランチです。さすがにここは海辺だけあり、エビ、カニ、魚と何でもあります。しかも値段はkg単位!
ここでついに私たちの大好物ペルセベス(カメノテ)を発見! これも量り売りなのですが、何グラムといわれてもピンときません。そこで『ちょっとだけください』といってみたら、ちょうどいい量を持ってきてくれました。
そしてアサリとタコ。ここのアサリは日本で食べるのとは外見も味もちょっと違いますが、これもおいしい。タコはサラダにしてみました。サラダと一口でいっても店によりいろいろで、ここのは玉ねぎが僅かに加えられ、ガリシア風にパプリカを振りかけたものでした。とにかく何を食べてもうまい!!
トレイラのビーチ
ランチを終え外に出てみると、いつの間にか青空になっていて、砂は真っ白に、大西洋は青く輝いていました。
大西洋に浸かるサリーナ
これはひと泳ぎするしかないでしょう。
大西洋に浸かるサイダー
いつものようにジャブジャブするサイダーです。
遠目には穏やかに見えた大西洋ですが、ここはやっぱり外洋だけあり、結構波が強く、簡単には沖に行けないのでした。
どこまでも続く砂浜と大西洋
アヴェイロ近郊のビーチリゾート地としてはストライプのかわいらしい家々が並ぶコスタ・ノヴァがありますが、なかなかどうして、トレイラもかなりのものです。
この素晴らしいビーチでのんびりしていると、これまでの旅の疲れが吹き飛んだ気分です。
アヴェイロ側に戻りトレイラ側を見る
いつまでもこのビーチでまったりしていたいところですが、今日はリスボンまで移動しなければなりません。
重い腰を上げて、やってきた道を引き返し、フェリーでアヴェイロ側に渡ります。
フォルテ・デ・バッラのマリーナ
フォルテ・デ・バッラからアヴェイロに戻る途中にもマリーナがありました。やってくる時見たのは潟側のものですが、ここは大西洋に面しています。
ヨットに混じってモリセイロも浮かんでいます。このモリセイロを良く見れば帆があります。アヴェイロの市立博物館で見たモリセイロの模型には帆がありましたが、やっぱりモリセイロは風の力でも進めるようになっていたのです。
小さな入り江のビーチ
マリーナの近くには小さな入り江があり、そこには小さな小さなビーチがあります。
ここは街から近くて便利なので、主に子連れの家族が楽しんでいるようです。
先にアヴェイロ
ボコ川を渡ると先にアヴェイロの街が見えてきます。
右手は高速道路のようなA25ですが、その脇に側道があるので安心して通れます。
アヴェイロの中央運河
アヴェイロの街に入れば、すぐに中央運河が現れます。
そこにはいつものようにたくさん観光客を乗せたモリセイロが浮かんでいます。
アヴェイロ旧駅
中央運河からは大通りでアヴェイロ駅に向かいます。この大通りは旧市街には付きものの石畳で、ちょっと走りにくい。
先にアズレージョで埋め尽くされた旧駅が見えてきました。ここでアヴェイロとはお別れです。
リスボンのサンタ・アポローニャ駅
次のリスボン行きは、リスボンからポルトに行った時と同じ赤い特急(AP)で、これに二時間ちょっと揺られるとサンタ・アポローニャ駅に到着です。
さて、明日からはここリスボンに留まり、リスボンとそこから日帰りできる範囲の観光名所を巡ろうと思います。