サン・ニウテル要塞
今日からいよいよ本格的なポルトガル・サイクリングが始まります。ポルトガルはヨーロッパの中でも暑いほうなのでこの時期は自転車には適しませんが、この北部地方だけはなんとか自転車に乗れる気候だという情報があったので、自転車での旅をここに設定したのです。それは大正解。シャベスの朝は涼しく、20°Cしかなくてジャケットがほしいくらいです。
今日はまずシャベスの街の外れにある17世紀のサン・ニウテル要塞を見て、そののちモンタレグレに向かうことにします。
サン・ニウテル要塞の入り口
シャベスはスペイン国境から10kmしか離れておらず、ローマ橋がブラガとスペインのアストルガを結ぶ道に架かっているのを見てもわかるように、かつてここは軍事的に相当重要な都市だったのでしょう。そんなわけでかこの都市には防衛上重要なお城とサン・フランシスコ要塞に加えて、このサン・ニウテル要塞があります。
ここは中には入れませんが、入り口の石の擁壁と地面に敷き詰めらている、つるつるになった大きな石の舗装を見るだけでも、歴史を感じ取れます。
ローマ橋
サン・ニウテル要塞を眺めたら、一旦街の中心に戻ってローマ橋に別れを告げます。
タメガ川沿いを行く
ローマ橋の架かるタメガ川に沿って、しばらく遊歩道があるので、これを使って南に進みます。
ポンテ・ノヴァをくぐりしばらく行くとこの遊歩道はおしまいになり、急坂を上ってN103に出ます。
シャベスを出る
ここからはこのN103をしばらく行きます。
シャベスはとても小さいので、すぐに街を出てしまいます。うしろには昨日行ったお城の塔が見えています。
行く手の山
今日のコースは穏やかながらもずっと上りです。
シャベスの街を出ると先に山が見えてきました。このあたりはぐるりとどこもあのような山ばかりなのです。しかもどうやら風は向かい風のよう。
レーサーに追い抜かれるサイダー
高速道路をくぐるあたりから勾配がきつくなりだし、いよいよ本格的な上りになります。さらに進めば周辺に木々が多くなり、景色が変わってきます。
そんなところで、『ボン・ディア!』と声をかけてくる人がいました。その人は地元の女性レーサーで、スーっと私たちの横を追い抜いて行きました。
周辺の景色
カザス・ノヴァスという小さな村に入りました。
このあたりは基本的には岩地で、山もすべてが木で覆われているわけではなく、土が多いところだけが緑になっています。こんな土地では畑も作りにくいと思いますが、トウモロコシやジャガイモが植えられています。
ずっと続く上り
カザス・ノヴァスを過ぎると、さらに勾配がきつくなったようです。
まだ15kmほどしか走っていないのにもうあへあへ状態で、今日は無事モンタレグレに辿り着けるのだろうかと、不安になります。
上りと山並み
しかし徐々に高度を上げて行き、うしろに遠くの山並みがみえるようになってきました。このあたりの山はあんなふうにみんな穏やかで、アルプスのような険しさはありません。
上りの勾配も大したことはないのですが、路面状態があまり良くないのと風とで、まったく前に進まず。
羊飼いと羊
道脇で白いものがうごめいています。なにかなと思ったら、羊さんでした。
羊飼いが合図をすると牧羊犬がさっと動いて、すぐに羊を集めてしまいました。お見事!
先にサピアンスの村
このあたりで上りの第一弾は終了。ようやく道は下りに転じました。
先にサピアンスの村が見えてきました。
サピアンスの村はずれに建つ古い教会と水場
サピアンスへは枝道を入って行きます。私たちが走っているような広域道路は街の外側を通ることが多いので、街へのアクセスはたいていここと同じようになります。
ぶどう畑の中の石畳の道を行くと、村はずれに古い教会とお墓があり、近くには水場がありました。
トウモロコシを運ぶトラクター
この水場の先に小さなロータリーがあり、そこに小さな十字架が建っています。どうやらここが村の入口のようです。
そこにやってきたのは刈り取ったトウモロコシをいっぱい積んだトラクター。
サピアンスに入る
サピアンスに入るとうねった上り坂の途中に石造の教会があり、その前で農民がなにやらしています。
ロバ車
そこを良く見れば、荷車の先にいるのはロバさん。これは馬車ならぬロバ車ですね。
荷車の車輪って何で出来ていましたっけ。大抵木だと思うのですが、これは鉄の輪っかです。
サピアンスを行くロバ車
このあとこのロバ車はどこへ行くのか、荷台におばあさんを載せて坂道をゆっくり上っていきました。
サピアンスの広場の教会
私たちもこの坂道を上って行くと、先には広場があり教会が建っていました。この街はかなり小さいのですが、少なくとも教会は三つありますから、このあたりの人々は相当信心深いのでしょう。
この村から上った上の道にバールがあったので、そこでちょっと休憩です。
サピアンスからの上り
サピアンスからは再び上りが始まります。
ここからはきつい!
サピアンス近くの景色
えっちらおっちらと、ゆっくり高度を上げて行きます。
のどかな景色の中を這い上る
時は11時過ぎ。上りなのに長袖。気温25°Cは本日の最高気温です。
ゴロゴロ岩の山
先に山が見えていますが、その表面にはゴロゴロした岩が見えます。
ゴロゴロ岩の山その2
近づくと、それはこんなところです。山全体が岩でできているようで、その表面が風化し、雨に洗われ、ゴロゴロとした岩が現れるようになったのでしょう。
第二のピーク付近
出発地のシャベスから高度で500mほど上り詰めると、本日第二のピークに近づきます。
ピークの少し手前に水場があり、ベンチに最適な岩があったのでここで小休止。ポルトガルでは道端によく水場があり、こうしたものの多くは飲用できるようで、ここの水場で水を汲んでいる人がいました。私たちもこれにならってボトルに補給。甘くておいしい水です。
バラカンから湖に向かう
このピークで空からパラパラと雨粒が落ちてきました。お天気雨っぽいのですが、意外とそれは強かったのと、ここからは下りとなるのでカッパを着込みます。雨はすぐにあがりましたが、気温がぐっと下がって15°Cになって寒い寒い。
N103とラバガン川にできたダム湖に向かう道の分岐にあるバラカンに辿り着きました。ここにはカフェがあったのですが食事はできないということで、ともかく湖方面へ向かいます。
バラカンからのひっそりとした道
バラカンからはまったく交通のないひっそりとした道を進みます。
モルガデという小さな村に差し掛かると、小さなバールがあったので入ってみました。食事ができるかどうか聞いてみると、もちろん、との答えで、奥に通されます。バールの奥は立派なレストランになっていました。ポルトガルでは小さな村でも必ずと言っていいほど、ここのようにレストランが一軒はあり、それらは村の規模からは考えられないくらいに立派なことが多いです。
しかしここまで来るとさすがに英語は通じず、スペイン語でなんとかやりとりします。
ラバガン川を行くサリーナ
モルガデの先で湖に出ました。この湖はラバガン川がダムで塞き止められて出来たダム湖です。
対岸の山の上に風車がたくさん建っています。今日の宿泊地モンタレグレはあの山の向こう側です。
ラバガン川を行くサリーナその2
湖の周りは平らかと思ったら、意外と起伏があってびっくり。
お天気は回復基調で、ここにきて気温は20°Cまで上がったので、ようやくカッパを脱いで走れます。
ラバガン川を行くサイダー
お天気は回復、眺め良し。しかし、細かなアップダウンにバテバテのサイダーなのでした。
湖の反対側は山
湖の反対側は岩っぽい山です。
ラバガン川を行くサリーナその3
ここのアップダウンをなんとかふんばるサリーナ。
落ちてきそうな岩
山からは大きな岩がおっこちてきそうでちょっと怖い。
ロバさんと風車
サピアンスでも見たように、このあたりではまだロバが生活に入り込んでいるようで、私たちが気になったのか、ロバさんがこっちにやってきます。
あげられる食べ物はないんだけどな〜
ラバガン川のダム
こうしたのどかな景色の先で、いきなりドカーンと目に飛び込んできたのがこのダム。ものすごく大きい。
このダムの先のPisõesにレストランがあったのでここでお茶休憩。このレストランもちゃんとしたものでしたが、ポルトガルのレストランは大抵、カフェやバールといった機能を備えているので、お茶だけの休憩でもOKなのです。
湖の北側を行く
喉を潤したので少々元気回復です。
ここから湖の北側に廻り込みます。こちら側は南側と違い湖はほとんど見えないので、淡々とペダルを回します。
サン・ヴィセンテ付近
サン・ヴィセンテからは進路を北に取ります。
直線の厳しい上り
そこには厳しい上りが待っていた! しかもここは直線なので、先まで続く坂道が見えて精神的にきつい。
モンタレグレ入口のロータリー
黙々とペダルを回し、やっとこさっとこモンタレグレの入口に到着。
下ってモンタレグレに入る
このロータリーからはようやく下りになり、
お城の塔
先にお城の塔が見えると、モンタレグレに到着。
モンタレグレの街
私たちの宿は、めずらしく四つ星でした。この小さな村にどうしてこんな立派なホテルがあるのだろうかと考えてしまいますが、その理由はわかりません。ただこのホテルは、古くは刑務所として使われていたものだそうです。
刑務所かと思うとあまりいい気分ではありませんが、ホテルとしては満足いくもので、ここに荷を解き、街に出てみます。
お城
この街はとても小さく、あっという間に街外れにある古いお城に辿り着いてしまいました。
チビ・カラコイス
今日の夕食はこのお城近くのレストランのタパス(つまみ)にすることにしました。ここにはエスカルゴがあるというので頼んでみました。ウェイターは『ちっちゃいけれど、いいか?』と聞いてきます。ああ、これはあのリスボンの市場で見たチビ助のどれかだな、と思ったのですが。エスカルゴはフランス語で、ここポルトガルではそれをカラコイスと呼ぶらしいです。
出てきたそれはチビ助の中でも極小で親指の爪ほどの大きさしかなく、貝殻には所々穴が開いていて、庭先にいたやつを拾ってきたんじゃあないかと思わせるところがある。そして、でんでんむしむしカタツムリの歌にあるように、『つのだせやりだせめだまだせ』のまんま、なんと貝殻からヌーッとした顔が出ていて、そこからぴょこんと角が突き出、その先に付いている目玉がこっちを睨んでいる! ギャッ!!
これはかなり恐ろしい。しかし頼んだ以上は食べるしかありません。勇気を出して貝殻からほじくり出し口に運べば、味はあのエスカルゴです。しかしとても小さいので食べるのが面倒くさいし、ほじくり出すたんびに目玉が睨んでくるもんだから。。。
モルシージャ
このあたりで有名な食べ物の一つにモルシージャという血の入った腸詰めがあるので試してみました。かなり強い独特の味でこれは病み付きになりそうですが、たくさんは食べられませんね。
ポルトガルの本格サイクリングの初日は涼しく、避暑しながらサイクリングという目的にぴったりでした。しかし坂道は結構厳しいものがありました。明日はここから独特の文化と自然が残るペネダ・ジェレス国立公園に入り、国境を越えてスペインに行きます。