モンタレグレのお城
今日はいよいよ自然豊かなペネダ・ジェレス国立公園に入ります。
モンタレグレを出発する前にお城周辺を散策しました。これは14世紀の要塞跡を19世紀にお城にしたものだそうです。
教会と水場
こちらは古い教会と水場です。
街の建物は全部石造で、これはこのあたりの村すべてに共通です。
お城付近から北西を望む
お城は街外れに建っており、この外側はもう畑と山ばかりになります。
今日はこれからあのジェレス山脈を越えてスペインに入ります。
モンタレグレを出る
夏のポルトガルはほとんど雨は降らないそうですが、今日のお天気は生憎の雨。しかしここに公共交通機関はないので、自転車で行きます。気温はなんと12°Cとかなり寒く、Tシャツの上に長袖を2枚を重ね着します。
ここの畑に植わっているのはジャガイモとトウモロコシ。
カーヴァド川に沿って走る
少し行くとカーヴァド川が見えてきました。しばらくはこの川に沿って走ります。
先にコヴェレンス
9kmほど走るとペネダ・ジェレス国立公園に入ります。ここでは運が良ければ公園のシンボルであるノロジカやイベリアオオカミ、そして小型の野生馬のガラーノ・ポニーに出会えるかもしれないそうです。
ペネダ・ジェレス国立公園に入って最初に現れる村はコヴェレンスです。
コヴェレンスの牛さん
雨のせいもあるのでしょうが、道にはほとんど人はいません。ここではめずらしく牛飼いのおじいさんと牛さんに出会いました。
コヴェレンスからは進路を変えてM513に入るのですが、ちょうどその入口にバールがあったので休憩します。こういう日に暖かいものが飲めるのは、やはり助かります。
石垣と山の上の村
コヴェレンスからはすぐに上りになります。向かうのはペネダ・ジェレス国立公園の名の一部になっているジェレス山脈です。
道と畑との境には簡単な石垣があり、その先に山の上の隣村が見えています。
最初のピーク付近
雨の中をえっこらえっこらと上って、最初のピークに辿り着きました。
このあたりは平原というか、岩がちな土地で、その上に堆積した僅かな土に植物が根付いているといったところで、見渡す限り何もありません。
ピトンエス・ダス・ジュニアスに入る
このピークを過ぎるとすぐにロータリーが現れます。そこはピトンエス・ダス・ジュニアスへの分岐でした。
ピトンエス・ダス・ジュニアスには古くからの文化と習慣が残っており、古い修道院があります。
修道院へと続く石畳を行く
ここから村に続く道を行くとすぐ、修道院の方向を示す小さな標識があったのでこれに従って進むと、いつしか石畳に。
この石畳が谷にある修道院へと続いているのでしょう。
谷にある修道院
しかしこの石畳は何もない草原の中で突然終わります。周りには何もないように見えます。この近くに修道院があることは間違いないのですが、ここには案内標識も何もありません。ともかく自転車を置いて周辺を探してみることにしました。
この丘の上は草ぼうぼうで、修道院が見える地点にたどり着くまでちょっと大変。しかしなんとか上から発見することができたのですが、ここから修道院に下りることはできそうもありません。そこで自転車のところまで引き返すと、ちょうど下からやってきたおじさんに出会いました。
修道院に下る石の舗装
このおじさんによれば、この先に石段があるけれど、それは雨で濡れてとても滑りやすくてあぶないといいます。おじさんはどうやら途中で諦めて引き返してきたようです。
おじさんがやってきた方向にはなんとか道とわかる泥道が続いています。この泥道の先に、おじさんが言っていたように、修道院に下る石の舗装がありました。
サンタ・マリア・ダス・ジュニアス修道院
私たちはそこを慎重に下って、なんとか修道院に辿り着くことができました。
この修道院はシトー会のもので13〜14世紀ごろのもののようです。大部分は壊れてしまっていますが、お堂だけがかろうじて原型を留めています。こんな山奥の何もないところでどうやって生活していたのかちょっと考えられませんが、昔の修行僧はここでなんとかしていたわけですね。
修道院から続く谷を見る
修道院の周りはこんな景色です。
修道院の後ろには川が流れ、その先を辿るとこの写真で見える湖に辿り着きます。このあたりにはすばらしい散策路ときれいな滝があるようですが、今日は雨なので滝見物は省略です。
ピトンエス・ダス・ジュニアス
サンタ・マリア・ダス・ジュニアス修道院は谷底にあるので、そこからはあの石段と石畳を上らなければなりません。ちょっとあへあへして、ピトンエス・ダス・ジュニアスに到着です。
この村は中世からの共同体生活を続けていることで知られています。現在それがどの程度残っているのかは分かりませんが、かつてここは地の果てだったでしょうから、村人が協力し合わなければ生活できなかったのでしょう。完全な社会主義の村といえます。
エスピゲイロ
これはエスピゲイロ(Espigueiros)と呼ばれる伝統的な高床式穀物倉庫です。多くのものは花崗岩でできていますがこれは新しく、1995年に造られたもののようです。
現在これらはほとんど使われていませんが、かつてこの地にトウモロコシがもたらされたころはそれが貴重なものだったことから、このエスピゲイロに収蔵されたそうです。
教会と水場
ここの建物は外からはわりかし立派に見えたのですが、村の中に入ると廃墟や人が住んでいるのかいないのか分からないような家がたくさんあります。
階段の上が居住スペース、下は倉庫や家畜のスペース
この村の人口はたったの201人(2001年)で、若者は出て行き、そのほとんどが年寄りだとか。
ここには背の低い二階建ての家が多く、上階は居住スペース、下階は農業用の倉庫や家畜のためのスペースになっているようです。
マーガレットと石の家
村の中央らしきところにバールがあったのでそこでお昼にしようと思ったら、そこでは食事はできないとのことで、別のレストランを教えてくれました。たった200人しかいない村でもちゃんとレストランはあるのです。しかもこれは驚くほど立派です。
このあたりではどんなに小さな村にでもレストランはあります。これもよく考えてみれば、共同体生活の一部を成しているものといえるでしょう。村人は事あるごとにこのレストランに集うのでしょう。
続く石の家
残念なことにここでは人口が少ないからか、バールとレストラン、そしてレストランと間違えて入ったパン工場の人にしか出会いませんでした。
今日は雨ということもあるのでしょうが、通りは淋しく、人はまったく歩いていないのです。
羊さんとヤギさん
ピトンエス・ダス・ジュニアスを出てスペイン国境に向かいます。この国境はジェレス山脈の峠となる地点でもあります。
道脇の原っぱで草を食むのは羊さんとヤギさんです。
角のある雌牛
そして道の真ん中には堂々たる牛さんが私たちの進路を妨害して立っています。この牛、良く見るとおっぱいがあります。大きな角があるけれど、これは雌牛なのです。
やさしい目をしていて襲ってくる気配はありませんが、さすがにこの大きな角で一突きされたらたまりません。慎重に脇をすり抜けます。
雨の中スペイン国境に向かう
小雨ながら雨は止みません。しかも道は上り!
奇妙な山
このあたりの山はたいてい穏やかな表情をしているのですが、これはがちゃがちゃで奇妙。
まだ元気なサリーナ
スペイン大好きのサリーナは、スペイン国境が近いとあり元気一杯。
スペインのバイシャ・リミア-セーラ・ド・スレース自然公園に入る
標高が1200mを超えたところで、スペインのバイシャ・リミア-セーラ・ド・スレース自然公園に入りました。国境は峠になっていて、ここからしばらくは下りです。偶然か、ここで雨も上がり、ヤッホー!
ここでちょっとポルトガル側の国立公園(Parque Nacional Peneda-Gerês)とスペイン側の自然公園(Parque Natural Baixa Limia-Serra do Xurés)について説明しておきます。これらは基本的には連続した一つの自然保護地域といえます。
まずポルトガル側のペネダ(Peneda)とジェレス(Gerês)はそれぞれ山脈の名で、ペネダ山脈(Serra da Peneda)が北、ジェレス山脈(Serra do Gerês)が南にあります。これらを含む一帯が自然保護地域になっており、その中で唯一の国立公園に指定されているのです。
そしてスペイン側ですが、Serra do XurésはポルトガルのSerra do Gerêsと同じ意味です。Baixa Limiaは低いリミアの意で、これはオーレンセ県の一地域で、ペネダ山脈とジェレス山脈の間に位置します。Limiaは川の名であり、ポルトガルではLima、リマ川になります。
つまりペネダ山脈とジェレス山脈の間に挟まれたポルトガルとスペインに跨がるゾーンが自然保護地域になっており、それぞれの国で別の名が付いているということです。
野原を翔る馬
突然丘の上でざわざわという音。そちらを見ると、私たちに驚いたのか、たくさんの馬が一斉に走り出しました。
このあたりには野生馬がいるそうですが、これは違うでしょうね。
湖に向かってダウンヒル
先に大きな湖が見えてきました。ここはこの湖にダイブするように下って行きます。
エスピゲイロとちりめんキャベツ
湖の手前のレキアスという村の入口まで下ってきました。ここにもあのエスピゲイロが建っています。
その手前に植えられているのは、ちりめんキャベツというもので、キャベツという名は付いていますが、葉っぱはちりちりでバサバサしたものです。これはカルド・ヴェルデというスープに入れられて食べられることが多いものです。
湖とサイダー
レキアスからの道は湖が見えて景色はいいのですが、またまたアップダウンが始まります。
落っこちてきそうな岩
道はごろごろした岩がある山の裾野を行き、こんな落っこちてきそうな岩があちこちに。
とんがり山
先にはぎざぎざのとんがり山が見えています。
しかし道はその山に向かうのではなく、手前で折り返して上って行きます。
湖の畔のドルメン
アップダウンを繰り返しつつも湖の畔に下りてきました。
そこにはこんな石のドルメンが。どうやらこれはお墓ではないかとのことですが、世界のあちこちにこうしたものがありますね。
サラス湖
この湖はサラス川を塞き止めてできたダム湖のようで、ここはそのダムの上です。
サラス湖からの上り
サラス湖からはまたまた上り。えっこらよっこらときつい坂道を上ります。
しかもここにきて雨脚が強くなってきました。その上この先で予定していた道はとても走れなそうなダートで、迂回を余儀なくされてしまいます。
プラドのエスピゲイロ
しかし運良く少し先のパルケイロスからプラドに抜ける道を発見し、ほっとします。
道もいつの間にか下りになってきています。
サラス川沿いを下る
道はサラス川沿いで、谷底の川面は見えませんが快適な下りです。
しかしサリーナはしきりに川と反対側を気にしています。
山側は岩だらけ
その目線の先はこんなふう。
迫る山の表面にはごろごろの岩が積もっていて、今にも落っこちてきそうなのです。
でっかい岩の間を行く
小さいのからでっかいのまで、ごろごろごろ。
街が見えた!
山が途切れ、その合間から遠くが見えます。小さな街がありその先には湖もあります。
あの街が本日の宿泊地のロビオスでしょうか。
まだまだ続くごろごろ岩の山
ごろごろ岩の山はまだまだ続いています。
ア・セラ村の落石現場?
ア・セラという本当にちっちゃな集落があったので入ってみました。
すると大変、あのごろごろ岩がついに山から転げ落ちて、いくつも民家を押しつぶしているではありませんか。
巨大岩を使った民家
こんなふうに。
しかし良く見ると何か変。なんとそこに人が住んでいる! 実はこれは岩が民家を押しつぶしたのではなく、巨大な岩を建物の一部として使った家だったのです。これぞ石の家だ〜。
しかしこれには驚いた。
山間の風景
ア・セラの先にはまたしても上りが待っていました。山間の風景はのどかそのものですが、そろそろ膝が笑いかけています。
ア・ビラ
ペクセドからはちょっとショートカットしてア・ビラに抜けました。
このショートカットに使った細道や村の中のうねうねした道には何ともいえない味わいがあります。
ロビオスへの下り
ア・ビラからロビオスへは快適な下りです。
下にロビオス
ついに下にロビオスの街が見えてきました。ここまで来ればもう安心。
ロビオス到着
私たちの到着を祝福するかのように、ロビオスに入ったとたんにお日様が顔を出しました。
今日の走行距離は60kmと大したことはなかったのですが、雨とアップダウンに徹底的に痛めつけられました。下りでもそこら中に細かなアップがあり、これがボディーブローのようにじわじわと効いてくるコースでした。
ここはスペイン。ポルトガルになくてスペインにあるもの。それはタパスです。タパスは簡単にいえばツマミで、小皿に載った簡単な料理。一日三食をレストランでのちゃんとした食事ではきついので、ちょっと抜きたくなることがありますが、そんなときはバールのタパスがいい。オリーブある? と聞けばもちろんといい、これはタダ。スペインではオリーブは酒のお伴に付いてくることが多いのです。チビローネスとガンバ(小イカとエビ)の串焼が美味しかった。ツマミという素晴らしい文化は日本とスペイン圏にしかないですね。
ロビオスは温泉の街です。ポルトガルに入ってそろそろ一週間になるので、ここに連泊し、温泉に浸かって休養することにしました。明日はその温泉に行こうと思います。