今日は中文から西帰浦を経由し表善まで、済州島の南の海沿いを走ります。
60kmを超える道のりなので早起きして6時出発予定で準備していましたが、いざ出発というところでざーっと雨が降り始めました。仕方なく待機すること30分、ようやく雨があがり6時半スタートです。
オルレ8番コースに入って、昨日散策した大浦海岸の柱状節理帯を通ります。海にはどんよりとした雲が広がっています。
すぐに大浦の港に到着。サリーナが引きます。
港にはたくさんの漁船が停泊していました。今日の漁は休みかな?
大浦の港から今度は少し内陸に入り、サイダーに引かれてみかん畑の中を上っていきます。今の時期はみかんといっても甘夏かハルラボンです。これは甘夏の木のようです。
道は途中から細いダートとなり、『自転車をせっかく洗ったのに〜』という悲鳴が聞こえる。
そしてたどり着いたのは薬泉寺(ヤクチョンサ)。カラフルな寺院は李朝時代初期の仏教建築様式だそうですが、比較的新しい建物です。
こちらの大寂光殿(テジョックァンジョン)は、高さ30mの巨大なもので、単一寺院としては東洋一と言われています。
大寂光殿に入り、お供えのお米を購入してお参りします。4層分の吹き抜け空間と、黄金に輝く巨大な仏像、それを取り囲む極彩色の彫刻群に圧倒されます。
そして、そのお堂の横にはなぜか白いグランドピアノが。コンサートなどが開かれるのでしょうか。
薬泉寺を出発。まだ朝の8時でみんな元気に飛ばしています。
再び海辺に戻り、しばらくするとほぼ海沿いに自転車道らしきものが現れました。雲も少し高くなり視界が広がって、海の向こうに見えるのは一昨日訪れた山房山でしょうか。
海のすぐそばを快適に走れる自転車道です。サリーナを先頭にどんどん飛ばします。
自転車道はときどき車道と一体化しながら海辺に沿って続きます。
海に浮かぶのは虎島(ボンサム)。韓国ドラマ『チャングム』ロケ地とのことですが、どんなシーンだったでしょうか。
虎島の眺めのよいところの休憩スペースに、海女さんの像がありました。これまでいくつか見た海女さんの像に比べて、突いた魚を片手にしているリアルな姿です。
さらに進むと岬が突き出たところが見えました。その向こうには蚊島(ムンソム)などの小さな島も見えます。
海岸には木道が現れました。これもオルレ道で7番ルートです。
木道からは、松の茂る岬や小島の眺めが見渡せます。このあたりから、観光客の姿もちらほら見えるようになってきました。
木道を進むと次第に断崖が険しくなってきました。
そしてついに、木道に上り階段がやってきた。
これがかなり長い階段で、見上げただけでクラクラします。『えー』『わー』といった叫びが聞こえますが、聞こえないフリしてサイダーが進む。やむなく荷物をおろして背負いつつ自転車を運ぶ人、数段ずつ休み休み上る人、とにかく押して乗り切ろうとする人。
『が、がんばります。。』とはクッキーですが、なかなか進めません。観光客の韓国女性が、見かねて手を貸してくれました。ご親切にありがとうございました!
そして何とか到着した岬には、かなり多くの観光客が集まり写真を撮っていました。私たちも、とジークが秘密兵器を取り出す。この旅のために購入したという「自撮り棒」です。
しかし、全員が入って景色もうまく撮るのはなかなか難しい。肝心のウェドルゲ(孤立岩)がよく見えませんね〜
これがウェドルゲです。高さ約20mのこの奇岩は、約150万年前に火山が爆発したときの溶岩によって生成されたといいます。陸と離れて海の中に寂しく立っているので「ウェドルゲ」(孤立岩)という名前が付けられました。漁に出たおじいさんを待ちわびて岩になったというおばあさんの切ない伝説から「おばあさん岩」とも呼ばれているそうです。韓国ドラマ『チャングム』のロケ地としても有名です。
ウェドルゲの眺めのよいところに、青い背と赤いお腹のこんな鳥さんもいました。
遊歩道をさらに進むと、道ばたに小袋が。摘果したと思われる小さいみかんが1,000ウォンで売られているのでした。直径2〜3cmのみかんを皮のままかぶりつくと、さわやかな酸味と苦みが口いっぱいに広がりました。『これ、おいしい〜』と、もう1袋購入です。
西帰浦の市街地に入る前にちょっと寄り道を。鳥島(セソム)に渡る橋の付け根のあたりに、地質名所の『西帰浦層』があります。
ここ西帰浦市の西烘洞の絶壁には厚さ約40mの堆積岩層があり、粗面玄武岩で覆われています。ここに形成されている化石層では貝類化石を中心に様々な生き物の化石が発見されています。約200〜300万年前に化石生物と一緒に積もってできたものと思われ、その後、噴き上げる波によって削られ現在のような絶壁になったそうです。
西帰浦層で発見された化石には、斧足類(二枚貝類)、腹足類(カタツムリ、アワビ、タニシ等)、掘足類(ツノガイ類)などの貝類、棘皮動物(ウニ、ナマコ、ヒトデ等)、珊瑚の化石、クジラや魚の骨などさまざまなものがあるそうです。学術的に貴重なものとして、1968年に天然記念物に指定され、2010年には漢拏山、城山日出峰、万丈窟などとともにユネスコ世界地質公園に認証されました。
という貴重なところですが、写真のような貝の化石のようなものが含まれた岩がいくつか並べられ、観光的には『通好み』の渋い場所でありました。
急に降り出した雨をやりすごした後、貝類化石のあるエリアから東へ、漁船が係留されているソムバン川を渡り、川の上流に向かいます。
こちらは次の名所、天地淵の入口です。お揃いのウエアで走る自転車チームに遭遇しました。済州島では自転車での旅行者はあまり見かけませんが、たまにすれ違うと大きく手を振ってくれたりします。
天地淵の入口は、こんなトルハルバン(石爺さん)の欄干の橋から始まります。
天地淵は『神の池』という意味だそうで、玉皇上帝に仕える7人の天女が玉の笛を吹きながら、雲の階段を下りこの池で沐浴をしたという伝説があります。
滝までは1kmほどの散策路があり、周囲は新緑の木々に覆われています。
そして天地淵瀑布に到着です。滝の高さは22m、幅12mで、森に囲まれた池に注ぎ込む様子はとても幻想的です。
天地淵瀑布を堪能すると、時刻は12時を過ぎています。お昼の時間だ!とキルピコンナを先頭に市場に急ぐジオポタです。
この市場は、1960年代に自然発生的にできたものだそうですが、オルレ道の名所としてリニューアルされ、その名も『毎日オルレ市場』と変更されたそうです。アーケードの商店街には魚がずらり。
こちらの魚屋さん、太刀魚(カルチ)がべろん、と置かれています。
商店街の通りの真ん中に置かれた台の上には、赤甘鯛(オクトム、右の赤い魚)をはじめとする新鮮な魚。
こちらはキムチ屋さん。いろんな種類があるんですねえ。
八百屋さん。ねぎやきゅうり、そして葉ものも充実です。時間を忘れて市場歩きを楽しむジオポタの面々です。
今日のお昼は市場の中の魚屋さんに決定。お刺身定食を頼んだところ、例によってたくさんの小皿のパンチャンが並びます。
そして続いて、2つの大きな舟盛りで出てきたのはタイとヒラメ(エンガワ付き)の刺身と、アワビ、ナマコ、その他貝類のお刺身&つまみです。そのまま醤油につけて、あるいはレタスやエゴマで巻いて辛いたれをつけて、ごま油につけてと、いろいろな食べ方が楽しめます。
『すごい、盛りがいいねえ〜』などと話していたら、続いて大きな焼きサバが出てきました。さらに焼きアワビ、チャーハンとチヂミ。『わあ〜、もう食べられない!』と悲鳴を上げていたら、とどめにサバのあらのちり鍋が登場。
『もうダメ〜お腹いっぱい!!』と言いながらも、気がつくと鍋も平らげているジオポタでした。
重いからだを起こし、商店街のアーケードから外に出てみると、何と空は快晴、太陽が輝いていました。雨具を仕舞い、市場を出発です。
次に向かったのは正房瀑布(チョンバンポッポ)。海に直接流れ込む滝としては、アジア唯一と言われています。
正房瀑布は高さ23m、幅8m。絶壁には徐福という人が秦の始皇帝の命を受けて、不老不死の薬を探しに来てここを訪れたという意味の『徐福過此』という文字が残されているそうです。また西帰浦という地名は、徐福が西から帰ったという意味でつけられたとか。
その正房瀑布が流れ込む海では海女さんたちが働き、海女さんの屋台などもありました。
正房瀑布を堪能し、『さあ、ちょっと予定が遅れているのでしっかり走りましょうね〜』とかけ声のサイダーが、すぐに急停止。あら、パンクです。チューブを取り替えて、改めて出発。
西帰浦の市街地を離れると、すぐに静かな海辺となります。
海辺で海女さんたちの小屋を発見。もう漁は終わったのか、オレンジの浮きと網が残されていました。黒い岩浜のすぐ目の前には森島(ソプソム)が浮かんでいます。
自転車も車も通らず、静かな海辺をどんどん東に向かって進みます。
甫木港に着きました。ここはスズメダイ漁が有名で、毎年5月の終わりごろにスズメダイ祭りが行われるそうです。スズメダイはそろそろ旬なのですね。
甫木港をあとに、次のスポット『セソカッ』に向かいます。道路に描かれている青い線はオルレ道の印です。
セソカッに到着。ここは溶岩が固まって形成された渓谷で、西帰浦七十里の秘境とされており、奇岩と松林が面白い景観をつくっています。いかだ遊びもできます。
2人乗りの足漕ぎいかだがたくさん出ていました。『あれ、乗りたい〜』とはクッキーですが、時刻は16時で予定よりかなり遅れています。残念ですが、景色をしばし目に焼き付けて先へ進むことにします。
どんどん進んでいくと、あらこんな道に。。オルレのリボンがあるから、これもオルレ道ですね。自転車にはちょっと厳しいなあ。
このオルレ5番コースは、海岸の舗装路あり、ダート道あり、集落の中ありと変化に富んでいます。
そしてコースはこんなゴロゴロ石の海岸へ。ここを押していると、岩浜で磯遊びをしていた地元の人が、『○×◎〜!』と声をかけてくれました。どうやら『そこは行けないよ〜!』と教えてくれていたようで、ゴロゴロ石の道を引き返します。
コースは海に臨む絶壁に設けられた南元クンオン海岸遊歩道へ。ここは、韓国で最も美しい海岸遊歩道と呼ばれているそうです。
『いいところですね〜』とクッキー、キルピコンナ。
景色を楽しみつつも、今日の宿のある表善(ピョソン)まではまだあと20kmを残しており、先を急ぎます。
比安浦(ピアンポク)に到着したとき、『ちょっと待ってください〜』とクッキーが叫ぶ。パンクです。サイダー、クッキー、キルピコンナの3人がかりでアセアセとチューブ交換。大きな釘がささっていました。
日暮れが近づき、夕闇が迫る中、表善への道を急ぎます。
ところが今度はジークにトラブルが! 後輪がスローパンクのようです。何とか走れそうだということで、途中で空気を入れながら走り続けました。
へろへろ、と表善郊外にあるペンションにたどり着いたのは、日も暮れ、ほとんど暗闇となった19時半でした。去年建てたばかりという新しいペンションで、笑顔で迎えてくれたのは、若いご夫婦と2歳くらいのかわいい男の子です。
一息つくも、夕食がまだでした。暗い道のりをペンションから表善の中心市街地まで2kmほど歩き、ようやくありついたのは日本食レストラン。うどん、寿司などでほっと一息です。
朝6時半から夜7時半まで69kmを走り、ジオポタ史上初となる3人のパンクに見舞われる大変な日でしたが、『終わりよければすべてよし!』とジークの自撮り棒で記念撮影。あれ、顔が半分しか写っていないんですけど、ジーク!
◆ひとこと by キルピコンナ
5日目はチュンムンからピョソンへ向かいました。ご存じない方もいらっしゃるかと思いますが、オルレを歩く楽しみの一つに「オルレスタンプ」というものがあります。オルレを歩いてスタンプを集めるスタンプラリーです。立派なオレンジと青の2冊の台帳(オルレパスポート)もあります。
私は何年も前からオルレを歩きたいと思っていたので、もちろんオルレパスポートのことも知っていたのですが、何しろ初の海外自転車旅行! 初のGEOポタ旅行! だったので心配事が溢れかえっており、なんと初日の宿に着くまでそのことをすっかり失念しておりました。あまりにも間抜けです。オルレパスポートは空港で入手すべきだったのに…。
ずっと忘れておけばそれまでだったのですが、思い出したらもう手に入れたくて手に入れたくて我慢できず、手に入れたら手に入れたで今度はスタンプを集めたくて集めたくて…。集団行動にあるまじき行為の数々、予習不足で皆様に大変お手数をおかけしましたこと深く反省しております<(_ _)>
でも2日目に初スタンプをゲットした時の喜びは一生の思い出。思い出しては、自撮写真を見るジークさんのようにウシシシシーッッと一人笑ってしまいそうです。
そして5日目ともなれば少しだけスタンプを見つける要領も得て、一日で最多の5スタンプをゲット! この日はオルレのメッカと言いますか… 観光ポイントも沢山あったのですけれど、正直、ウェドルゲよりもスタンプが入っている小さな馬(カンセ)の木箱を見つけて狂喜乱舞する私なのでした。人はそれぞれ可笑しなツボを持っているものですね。
そうそう、この日はオルレ道中に無人の金柑販売所があり、一袋1,000₩で素晴らしく美味しかった! これは最終日に旧済州で再度購入して生丸かじりはもちろん、ジャムにして、更に甘露煮にして食べています。旅が終わっても、食べ終わるまで楽しみはもうしばらく続きますね。