今朝はゆっくり朝食を楽しんだあと、9時過ぎにホテルを出発。曇り空だが、雨の心配はなさそうだ。
といっても、朝の雲はかなり下の方までかかっている。まずはキンロック・ランノホの村に向かい、中心の広場まで。
村の中心を右手に折れて、タメル川にかかる橋を渡る。その後はタメル川の南側の田舎道をしばらく走る。
このあたりは牧草地や森が広がって、気持ちのよいルートだ。
すると前方でバサバサっという大きな音がして、草地から丸っこい鳥が飛び出した。
それはキジでした。この日はその後も何度かキジの群れに出会った。
テイ・フォレストという森を抜けるあたりから上りになってきた。雲が低いので姿は見えないが南側にはシェハリオン山があり、道はその肩口あたりを通っている。
上るにつれて木々が少なくなり、代わりに荒野と紫のヘザーが広がるようになってきた。
続いて雲の中から小さな池が現れた。静かなシングルトラックの道は、ほとんど誰も通っていない。
周囲は荒野とそれを紫に染めるヘザー。そんな道を黙々と上るサリーナ。
上り勾配は次第に緩くなり、両側になだらかな丘の斜面が広がってきた。シェハリオン山が見えないのは残念だが、しばらくこんな景色が続く。
そこは荒野とヘザーのみ。
そんな中を通るのは私たちのみだ。
ところでこのあたりにネヴィル・マスケリンの碑があるとのことだったが、見つけられずに過ぎてしまった。
ネヴィル・マスケリンとは1700年代後半から1800年代初頭にかけて活躍した天文学者で、このシェハリオン山のまわりで測定実験を行い地球の密度を推定したそうな。
シェハリオン山が選ばれたのは、きれいな円錐形の孤立した山だからだとか。
丘を越えるとまた森が現れ、しばらく行くと小さな湖に出た。Kinardochy湖だ。
少し晴れ間が見えてきた。湖の前でちょっと休憩。まわりには赤紫の花が咲き乱れている。
赤紫の花はヘザーではなく、もっと背が高くて大きな花だった。
湖の先でB846に合流し、南下する。このB846を北に行けば、昨日訪れたタメル橋に至る。
B846を6kmほど走ったケルトニーバーンで右折し、再び田舎道に入る。この集落は小さいがB&Bがあるようだ。
リヨン川(River Lyon)に沿って、テイ・フォレスト・パークの深い緑の森を左手に見ながら進む。
感じのいい道を進むと、小さな集落にはギャラリーがあった。観光客も少しはいるのだろう。
道は川に近づくと林の中になり、
川から離れると牧草地が広がる。羊の群れの向こうの空に少し晴れ間が見えてきた。
そんなところに白い建物が現れた。フォーティンゴール・ホテルだ。
時刻はまだ11時半だが、ここを過ぎると食事ができるところはほとんどないので、ここで休憩だ。
食事の前に周辺を散策することにした。ここフォーティンゴールには、有名なものがある。それは、ホテルの隣にある小さな村の教会の敷地内にあるものだ。
これが、その有名な「フォーティンゴールのイチイ」(Fortingall Yew)。このイチイの木は樹齢2000〜3000年とも5000年とも言われ、イギリスで最も古い木、あるいはヨーロッパでも最古か、と言われているそうだ。
5000年前だとすると青銅器時代あたりだろうか。立派な木の幹はいくつもに枝分かれしていたが、青々と葉が茂って元気そうだった。
青空が広がってきた。羊が群れる牧草地の先には丘陵地が続いて見える。
道路沿いには、2階の窓の部分を丸く盛り上げて屋根を葺いた特徴的なかわいらしい民家が並んでいる。
散歩を終えてフォーティンゴール・ホテルに入ってみる。食事はこっちですよと言われて入った食堂はこぢんまりして居心地がいい。正面はバーカウンターだ。
昼食はカレン・スキンク(スモークしたタラのチャウダー)とスモークサーモンのサンドイッチ。食堂の雰囲気そのままのやさしい味だ。
さて昼食を終えてフォーティンゴールを出発。西に向かって進む。
今度は右手側に牧草地が広がる。陽が差してきて、木漏れ日の林の中を進むサイダー。
リヨン川は蛇行し、道は川のすぐそばを通るようになった。林の中をさらに進むサリーナ。
広葉樹の林の中を通る快適なシングルトラックがしばらく続き、川に近づいたり離れたりしながら走っていく。
ときどき森が深くなり、細かいアップダウンがあったり橋を渡ったりと楽しい。
インバーバー(Invervar)という集落を通り過ぎてしばらく行くと、いきなり視界の開けたところに出た。
両側に丘の斜面が迫り、行く手には幾重にも丘が連なっている。ここはスコットランドで最も長いと言われる谷、グレン・リヨン(Glen Lyon)の中央部だ。
リヨン川の両側を囲む丘陵地の斜面、そして川のまわりに広がる荒野とそこに群れる羊たち。スコットランドのグレンを代表する迫力の風景にしばし見とれた。
グレンは「谷」と訳されるが、日本の谷のイメージとはかなり違う。その雄大なグレンの真ん真ん中をまっすぐ走る。
グレン・リヨンの景色を楽しみながら走っていくと山小屋風の建物があり、観光客の姿もあった。車で来てミニ・ハイキングを楽しむ人たちのようだ。
ここはグレンリヨン・ポストオフィス(Glenlyon Post Office)。イギリスの田舎では、郵便局がティールームになっているところも多い。ちょうどいい休憩スポットで、飲み物をいただく。
そしてここから道は、まっすぐグレンを行く道と左折して丘を越える道との二手に分かれる。私たちは左折してリヨン川に架かるバルギー橋(Bridge of Balgie)を渡る。
グレン・リヨンの中を流れるリヨン川。ずっと川に沿って走ってきたが、ここでお別れだ。
川を渡って1kmほどのところから上りが始まる。ピークまでの標高差は340mほどだ。
ほぼ正面から太陽の日ざしを受けながら上る。( TOP写真)
しばらくは深い木々の緑もあり、そんな中を走っていく。
そのうちに森はなくなり、周辺には草地が広がるようになる。右手には小さな川が流れ、川の名前はAllt Bail' a' mhuilinnだそうだが、発音できない。。
荒涼とした草地を上っていくサリーナ。
このルートはハイランド南部で最も高い山ベン・ロウワーズ(Ben Lawers)の中腹を通っている。
ベン・ロウワーズは標高1,214mだが、この道の目指すピークは550m。
横を流れる小川の回りにはときどき羊たちが姿を現す。
そんな静かな道を、川に沿ってどんどん上っていく。「結構きついぜ〜」とサイダー。
空が雲で陰ってきた。「ピークはまだ〜?」と何度もつぶやくサリーナ。
ようやく勾配が緩くなり、ほぼフラットになったところに道しるべがあった。へなへなと自転車を下りて、とにかく笑顔のサリーナ。
道しるべには「ベン・ロウワーズ」と書いてある。奥にあるケルンのさらに先にベン・ロウワーズの頂が見えるのだろうか。今日はあいにく雲の中だ。
もう少し進むと、奥に湖が見えた。ここがこのルートのピークらしい。「ようやく着いた〜」とサイダー。周囲には傾斜のきつい岩山が広がっている。
ここからは下り。まず緩い下りを湖に向かって走る。
この湖はLochan na Lairigeという水力発電用のダム湖だった。南側がダムでせき止められている。
ダムを越えると下りが急勾配になり、目の前に細長い湖の姿が広がった。テイ湖(Loch Tay)だ。
丘陵地に挟まれたテイ湖は深く青い水をたたえ、その回りを森や牧草地の美しい緑に包まれている。
そんな豪華な景色の中へとダイヴするように下る。爽快〜!
湖岸まで下り、ミルトン・モーレニッシュ(Milton Morenish)に到着。あとは湖沿いに西へと緩い下りが続く。
湖岸を7kmほど行くと、本日の宿泊地キリン(Killin)に到着。今日初めて見る「町」だ。
キリンはテイ湖の西端にあり、テイ湖から流れる2つの川に挟まれている。
まずはその川の一つ、ドックハート川(River Dochart)の滝を見に行った。滝というほどの高低差はないが、急流はなかなかの迫力だ。
町の中央に戻り、本日の宿はこちら、The Courie Innだ。
私たちの部屋は3階の小さなかわいい屋根裏部屋だった。
宿のレストランでもちょっとしたものは食べられるが、親族がやっているというレストランを勧めてくれたので夕食はそこに行ってみた。
先ほどのドチャート滝の近くにあるレストランは、荷馬車の車輪が天井に飾られるなど古い納屋をイメージした落ち着いたつくりだ。前菜に頼んだのは来てびっくり、ハム、ソーセージ、オリーブ、揚げパン、赤ピーマンなどのチーズフォンデュだった。
そして次はサラダと魚介のクリームパスタ。スコットランドではパスタは今一つだが、これはとてもおいしかった。
今日は荒々しく雄大なグレンや丘陵地、そして緑に囲まれた湖など、ハイランド地方の誇る景観を充分堪能できた。旅はほぼ最終盤、明日はエディンバラへと向かう。