今日はラールダール(Lærdal)をあとに、アウルランフィヨルド(Aurlandsfjord)までの行程です。
朝、歴史地区の運河の埠頭にある倉庫群に立ち寄って、風雪に耐えた建物を眺めてからいざ出発。
運河の入口あたりにはマリーナがあり、ボートがたくさん係留されています。
そんな景色を眺めながら進むと、
ラールダールフィヨルドが姿を現します。
対岸の岩が壁のようにそそり立つ。
静かなフィヨルドの鏡のような水面を見ながら走るサイダー。
今日の天気は曇り空、午後から雨の予報もあってちょっと心配です。
美しいフィヨルドの風景とは、ここでいったんお別れです。
今日は、ソグネフィヨルド(Sognefjorden)の奥にあるもう一つのアウルランフィヨルドまで、1,300mの峠を越えなければなりません。ここは海辺、つまり標高0mですから最低1,300mは上るということ。
ラーダールから4kmほど走ってT字路を山側へ曲がると、いきなり10%近い勾配の上りが始まります。
もうちょっと、助走区間とかないの〜 と言いつつヨロヨロと上り始めます。
このルートは、ノルウェイ観光ルート18のうちの一つで、冬期は閉ざされ、夏の間も雪が多く残ることから「スノウ・ロード」と呼ばれています。
そんな観光ルートですが、道幅は車1台分。いきなり大型バスが下りてきてビビった〜
でも、概ね車交通は少なく、山の中の静かなコースです。
花咲く道端。そして山では木々は少し赤みがかり、紅葉が始まっているようです。
静かで黙々と上れるルートは、自転車のクライマーにとって格好の練習コースなのでしょう。路上にサイクリスト向けのペイントがありました。'Venga' って、スペイン人やコロンビア人も来るのかな?
これまでの旅でロードレーサーにはほとんど出会っていませんが、このコースでは1人が私たちを追い抜いていきました。
上り勾配が緩まる様子は微塵もなく5kmほど10%勾配が続いたあと、道がカーブを描きエルダル川(Erdalselvi)の流れが左手によく見えてきました。
その先にはいくつか建物の姿も見えます。
標高は500mを超え、路上には「グレイト・ジョブ!」とニコちゃんマーク。最高地点は1,306mなのだから、まだ半分にも達していませんが。
ここはフィンノ(Kvigno)というところのようです。建物はいくつかありますが、人が住んでいるのかどうかはわかりませんでした。
やっと勾配が緩み、平坦な部分が数百mほど続きます。ここまで結構きつかったねえ、とサイダー。
ほっとしたのもつかの間、またしても上りが始まります。
しかし、勾配は先ほどまでよりはやや緩くなっているよう。
周囲はさわやかな緑の木々と、その上には岩山が突き出ています。
川の流れに沿って上っていると、今度は「ほぼ半分来たぞ!」というペイント。標高650mくらいになったようです。
こういう途中途中のエールのほかに、100m上がるごとに路上に標高が書かれていて、ついつい「まだかなあ」と探してしまいます。
しばらく行くと、カーブに車が何台か停まっていました。
ここはスルッペン(Sluppen)というところで、川の流れを見に行っているようです。そこで私たちも自転車を下りて見に行ってみました。
川は少し広がって滝のように流れていました。
ずっと横を走ってきたエルダル川は途中からヴァルダハウグ川(Vardahaugselvi)と名前を変えており、ここでは上流からの2つの流れが合流しています。
その先には4つの短いカーブがあり、さらにどんどん上っていきます。
標高は800mを越えました。
周囲は次第に木がまばらになり、岩山の上には残雪も見られるようになってきました。
今日は上りの続く長丁場、1時間ごとに休憩をとります。
道端で補給食のナッツ&フルーツをパリポリと食べるサイダー。
すると突然、車に追われるように道の上から下りてきたのはひつじ軍団!
丸々した体の大きいひつじや若いひつじがこちらに向けて駆けてきました。
そして、サリーナとサイダーの自転車に駆け寄ると、「何かないの〜」とおねだり顔でスリスリしてきます。この光景は通り過ぎる車に乗った子どもたちにも大ウケ。
ひとしきりおねだりした後、「何もくれないなら行こうかね〜」と風のように去っていきました。
自転車で再び走り出すと、すぐに大きなカーブにさしかかります。
ここはラールダールとアウルランの境で、ここからアウルラン地域に入ります。ラールダールからは16km、標高は950m。
周囲は木がなくなり岩山の景色となり、風が強くなってきました。空には不気味な黒い雲。
そんな私たちをはげます(脅す?)ように、路上には「ここからが本当の始まりだ!」というペイント文字が。マラソンで言う「35km過ぎて地獄を見るぞ」ということか?
そのすぐ先に、ヴェアダハロンナ(Vedahaugane)という見晴し台がありました。標高970m。
まだまだ元気、というポーズはサリーナ。
うん、なかなかいい景色、とサイダー。
上ってきた方向を振り返れば、フィヨルドの谷間と山が連なる景観が広がっています。
この谷をずっと上ってきたのです。まだ上りは続きますが。
ここで昼食を、とも思いましたが、さえぎるものが全くなく強風にさらされており、もう少し上の休憩ポイントまで行くことにしました。
そして走り出したとたん、真正面からものすごい風が吹いてきました。
ほぼ真っすぐな道で勾配は6%程度ですが、風が強くてなかなか前に進まない。
ここは南北に続くフィヨルドの尾根道で、左手には牧畜の建物とひつじたちが見えます。
牧歌的な景色に見えますが、私たちは上りの強風との戦いの真っ最中。しかも、ポツポツと雨も落ちてきました。ヤバイヤバイ!
前を見れば、まだまだ続く上り。
風にあおられ、ヨロヨロとよろけるサイダー。
その坂を上ったところに、フルータネ(Flotane)という休憩スポットがありました。標高1,230m。
車が数台停まり、その奥には湖があります。
やった〜 休憩スポットだ!と大喜びで走るサリーナ。
ピークももうすぐ、ここでお昼です。
ところがここは、先ほどの展望所よりさらに強風が吹き荒れていました。サンドイッチが飛ばされそう。しかも雨が降ってきた。
周囲には雪がたくさん残り、寒さに震えつつそそくさとお弁当を食べて、フルート湖(Flotvatnet)に行ってみますが、風と雨と寒さでハイキングどころではありません。
ここで気温を見ると、何と4°Cしかない!
さすがに「スノウ・ロード」です。自転車で上っている方が少しは体が温まる。といっても、上りもつらい。。(TOP写真)
ヨロヨロと自転車で上っているのは私たちだけ。他には車と、ときどきモーターバイクが通りつつ「がんばれよ!」エールを送ってくれます。
上りの途中でサリーナが急停止。突風にあおられて一歩も前に進めません。
ピ、ピークはまだ? と叫ぶサリーナ。
次の湖フルーテ湖(Flotevatnet)を通り過ぎる。この峠道はいったん1,300mのピークに達したあと、10kmにわたって結構なアップダウンが繰り返されます。
というわけで、「やった!ピークだ」と思ってしまうと、思わぬしっぺ返しをくらうことになるのです。
とはいえ、前回の峠越え(8/11ソグネ山岳道路)で同様の経験を積み、ピークを越えてもインナーギアのまま黙々と上り下りを繰り返すサリーナ。
周囲には岩山と雪と湖との広大で荒涼としたモノクロな景色が広がっているのですが、寒さと雨と強風のため、周囲を見渡す余裕がありません。フードを被っているので、バサバサという不気味な風の音が聞こえるのみ。
いくつもの湖を通り過ぎ、このルート沿いでは最大の湖、ホーン湖(Hornsvatnet)に出ました。
どんよりとした雲の向こうにうっすらと雪を冠った山並みが見えています。次のフィヨルドを越えた先の山並みなのでしょう。
寒いし雨だし風強いし、ぜんぜん下りにならないし。と、キレそうなサリーナ。
「これを上ったら、多分上りは終わりだよ。。」とフォローしようとするサイダー。
ひつじが心配そうに見つめています。
いや、まだ上りが残っていました。
「これを上ればきっと。。」おい、狼少年か!?
今度は本当に最後のピークでした。
広く雪が残る荒野の遠く向こうに、雪を頂いた山並みがうっすらと見えています。
周囲は雲が垂れ込めて残念ながら絶景とは言えませんが、約7時間の奮闘を記念して自撮りです。
顔がこわばって寒そう。。
少し走ると、前方の山並みが少しはっきり見えてきました。アウルランフィヨルドの対岸の山並みです。
そして、右側には深い谷が現れました。
右手後ろを振り返ると、奥の岩山を取り囲むように深い谷が続いています。
この谷の先はアウルランフィヨルドにつながっており、スノウ・ロードも谷に沿って下りていきます。
そう、ここからは豪快なダウンヒル!
アウルランまでは平均8%の下り。雨が降り続いているので慎重に下りていきます。
どんどん下っていくと、正面の山並みがかなりくっきりと見えてきました。
標高1,300mはモノクロの世界でしたが、900mあたりになると周辺には木々が増え、牧場の緑も鮮やかです。
さらに下っていくと、大型バスが停まる駐車場がありました。
その先の道路からフィヨルドに向かって張り出しているのが、標高670mのところにあるステガスタイン展望台(Stegastein)です。
木の展望台が文字通りフィヨルドに張り出し、最も奥はガラスのカッコいい展望台です。ちょっとこわいけど。
スペインから来た観光客が盛り上がっていました。
その展望台からは、アウルランフィヨルドが一望に見渡せます。
右手には、アウルランフィヨルドの最も幅広い部分と、その先の折れ曲がって重なる山々が見えます。
一方、左の下にはアウルラン(Aurland)の町が見え、海が回り込んだ先にはフィヨルドの先端の町フロム(Flåm)があるはずです。
展望台からは、ひたすらヘアピンカーブを繰り返し、アウルランまでどんどん落っこちていきます。
ヘアピンカーブを繰り返すごとに、フィヨルドの景色が変化していきます。
豪華客船が通るフィヨルドの景色を楽しみながら豪快に下っていくサリーナ。
フィヨルドに牧草地や家並みが加わり、上の展望台とはまた違った美しい景色が広がっています。
左の先にアウルランの町が見えます。
フィヨルドの海のすぐ近くまで下りてきました。
海から山々が聳え立って見えます。
アウルランが近づいてきました。
今日はよく上って下ったね、とほっと一息。どうやら雨もほぼあがったようです。
今日の宿は、アウルランから3kmほど離れた場所にあります。
そこで、アウルランのスーパーで食材を仕入れてから宿に向かうことにしました。後ろが町の中心部にあるスーパー。
宿のあるダーレン(Dalen)はアウアルランから谷間を南東に進んだところにあり、そこへ向かう道路の両側もフィヨルドの崖になっています。
そんな道を進むサリーナ。
ようやく到着した宿は、若いカップルのオーナーと、もう1組の宿泊客とのシェアハウスのようなものでした。キッチンも食堂も共用で使えます。
オーナーカップルはピザの夕食。もう1組の宿泊客は中国から2週間の休暇でやってきた3人で、外で食事を済ませてきたよう。我らの夕食メニューはガルバンゾのスープ、ソーセージとタマネギ炒めのパスタ添え、ポテトサラダです。
今日はかなり大変な1日だったけど、無事に着いてよかったね〜 と乾杯! 明日はフロム鉄道で渓谷を上り、下りだけ自転車というラクチン旅のはず。晴れるといいな。