中央市場
ディジョンの朝。今日はまず、近所にある中央市場での買い物から始めましょう。
オシャレな外観の市場は7:30オープンですが、7時過ぎに行ってみると搬入のためすでに入口は開いています。
中央市場の内部
この中央市場は、1868年にエッフェル社が提案した設計図に着想を得て1875年に完成したそうです。19世紀終わり頃、鉄とガラスの軽快な建物が現れ始めた時期ですね。天井に吊られた丸い飾りには『150年』と書いてあります。今年はオープン150周年!
内部は鉄の繊細な柱に支えられたアーケードが通り、柱頭のブドウの葉模様の装飾もステキ。開館時間前でまだお客さんはいませんが、すでに商品が並べられた店舗も多くあります。
果物の店舗
鮮やかな色彩に惹かれて果物・野菜の店舗へ向かいます。
洋梨、キウイ、桃。そしてパックリと切られた瑞々しいスイカ。
野菜コーナー
野菜のコーナーには、チコリー、根セロリなど、日本ではあまり見かけないものも。
アンズタケ
そして、キノコ。黄色っぽいオレンジのキノコが山と積まれています。『ソテーすると美味しいよ』とお店の男性。
あとで調べてみたら、これはアンズタケといってヨーロッパではよく食べられているそうです。アンズの香りがするからアンズタケだそう。確かにいい香りです。
鶏屋さん
そして肉やチーズのエリアにやってきました。
ここは鶏屋さん。鶏だけでなくアヒル肉とか、あとはソーセージや卵、パテなども売っています。
アヒル肉を買う
じゃあ、ここではアヒル肉を買ってみましょう。そして、生ソーセージと卵も。
オシャレなマダムが包んでくれました。今日は豪華な食事になりそうです。
パン屋さん
市場を出てパン屋さんへ。今日はクロワッサンとグジェール(gougère/ポンデケージョ)を買いました。
どれも1つ€1也。値段は日本と比べても同じくらいかなと思いますが、いつものバゲット1本分です。バゲットは本当にリーズナブルだなあ。
朝食
買い出し終了。宿へ戻って早速朝食です。
ソーセージと目玉焼き、そして新鮮サラダにサクサクのクロワッサン。満点の朝ごはん~
ダルシー公園入口
ゆっくり朝食を済ませ、宿を10時少し前に出発。今日は徒歩でディジョン観光です。
まず私たちが向かったのはダルシー公園。ここは、エンジニアのダルシー氏がディジョンの街に水を供給するため貯水槽をつくり、その周囲が公園として整備されたそうです。
公園入口のシロクマ
緑と噴水の気持ちのいい公園です。その入口にはなぜかシロクマくん。
この彫刻は、動物彫刻で有名なディジョン出身の彫刻家フランソワ・ポンポンの作品とのこと。
フクロウのルートの出発地点
このダルシー公園は、ディジョンの歴史地区を散策する『フクロウのルート(Le parcours de la Chouette)』の出発地点とされています。
地面に埋められた四角い金属板のフクロウが見所を示し、小さい三角の金属板で次の方向へと導いてくれます。なぜフクロウなのかは、後ほどわかりますよ。
ここはスタート地点なので、数字の1が振られています。では、三角矢印方向に出発。
ギヨーム門
ダルシー公園からまっすぐ南東へ向かった先に、『ディジョンの凱旋門』とも呼ばれるギヨーム門があります。
ディジョンにはかつて街を取り囲む城壁があり、ギヨーム門はその城壁の門の跡地に1788年に建てられたもので、当時は城壁と繋がれていたそうです。
マイユ本店
ギヨーム門を抜け、さらにまっすぐリベルテ通りを進みます。この通りはディジョンの商業の中心地。歴史ある建物や店舗も並んでいます。
その一つがここ、有名なマスタードの老舗マイユ本店。創業は1747年。ウチでも愛用していますよ。
マスタードの味見
店内ではたくさんのマスタードやビネガーが並び、マスタードはハーブやフルーツ入りなどバリエーション豊かで、どれがいいかな~と試食させてもらいました。甘いのとか香りとか、色々ありますね。
そして、普通のやつですが、滞在中の食事用に粒マスタードとマヨネーズを購入。
三つの顔を持つ家
リベルテ通りをさらに進むと、この通りで最も古い建物『三つの顔を持つ家(Maison aux Trois Visages)』がありました。
1470年に建てられたコロンバージュ(木骨造)のこの建物は、19世紀初め頃から最近まで薬局として使われていたそうです。つい最近修復作業が行われ、鮮やかな赤い木組みの顔になっています。
フォルジュ通りへ入る
その先にはフランソワ・リュド広場。中央の噴水には『ブドウの実を踏むブドウ収穫人』の像、そして可愛い回転木馬もあるディジョンを代表する風景の一つです。(TOP写真)
ここから、いよいよ歴史的な建物が並ぶフォルジュ通りに分け入ります。フクロウさん、案内よろしく。
後ろにノートルダム教会
通りを進めば、角の建物の背後に一際高い塔が聳えています。ノートルダム教会です。
13世紀前半に建てられたゴシック様式の教会ですが、この時代の他の教会とは異なる特徴を持っています。
西側ファサード
まずは西側ファサード。3つの身廊の幅のまま長方形に立ち上がった平坦なファサードで、教会の屋根はフライングバットレスではなく柱で支えられています。
これは、この教会が密集した居住地区にあり、敷地が限られていたことが要因なのだそう。
怪物たちの彫刻
そして、ファサードの3層それぞれのコーニスから突き出た怪物たちの彫刻。これらはゴシック教会建築でよく見られるガーゴイル(動物・怪獣の姿をした雨樋)のようですが、雨樋の機能はなく装飾的なものなのです。
なお、当初の彫刻は1240年頃に撤去されており、現在見られるこれらの彫刻は19世紀末のものだとか。
教会の内部
中へ入ってみると、身廊と2つの側廊の三廊式で、平面はラテン十字形。
交差部は、その上の塔の窓から光が入っています。
翼廊のステンドグラス
翼廊には細長いランセット窓と、上には大きな薔薇窓。それらのステンドグラスが美しく輝いています。
ノートルダム教会の北側
ノートルダム教会を出て北側の路地に回ると、そこには大勢の観光客の姿がありました。
みんなここで何をしているかというと、
フクロウを触るサリーナ
教会の壁の縁の小さな像を左手で触っています。順番を待って、サリーナもお触り。
実はこれがディジョンのシンボル、フクロウの像なのです。
フクロウの像
たくさんの人たちに撫でられて、フクロウはすっかりツルツルになっています。
右手を胸に当て、左手でフクロウを触ると幸福が訪れるんだとか。この通りの名前はフクロウ通り(Rue de la Chouette)、そして旧市街の観光ルートも『フクロウのルート』、というわけです。
ファロの直営店
フクロウ通りを進むと、木組みの建物の小さなお店がありました。
ここはマスタードのファロ(Fallot)の直営店です。
ファロの店内
ファロは1840年に創業した家族経営のマスタード製造会社です。
店内には商品のマスタードの他、粒を挽く石臼やマスタードを入れておく甕など、伝統的な道具が展示されていました。
メゾン・ミリエール
この小さなフクロウ通りは歴史的な建物が連なって、本当に面白い。
ファロの先のこの建物はメゾン・ミリエール(Maison Millière)。1483年に建てられた住宅で、閉鎖されたり倉庫に使われたりと苦難の時代があったそうですが、修復を経て今はティールームとお店になっています。
オテル・ドゥ・ヴォギュエ
その隣の石造りで美しい屋根の建物は、オテル・ドゥ・ヴォギュエ(Hôtel de Vogüé)。17世紀初めに建てられた邸宅で、中央の門をくぐると中庭をコの字型の建物が囲んでいます。
現在はディジョン市の人事部が入居しているそうです。
コロンバージュの建物が連なる
そして、フクロウくんに従ってヴェルリ通り(Rue Verrerie)へ入ります。
この通りはコロンバージュの建物が連なり、中世の街を彷徨っているようです。
サン・ミッシェル教会
通りを巡って出てきたところに堂々と現れたのは、サン・ミッシェル教会。
15世紀の終わりから16世紀にかけて建てられた教会で、ゴシックとルネサンスの様式が見られます。ファサードの2つの塔は17世紀のものだそう。
リュード美術館
サン・ミッシェル教会から西へ少し進んだところには、リュード美術館(Musée Rude)があります。19世紀ロマン派の彫刻家フランソワ・リュードに捧げられた美術館で、かつてのサン・テティエンヌ教会の翼廊と内陣が利用されています。
中に入らず入口から見ただけですが、正面の巨大な群像彫刻に圧倒されます。これは、パリの凱旋門に飾られている『1792年の義勇軍の出発』という作品の石膏像だそうです。
ディジョン美術館入口
ディジョン中心部の狭いエリアに見所がたっぷりで驚きますが、ようやくブルゴーニュ大公宮殿に到着しました。この広大な建物の東側はディジョン美術館になっています。
建物は14~15世紀に建てられ、17世紀にヴェルサイユ宮殿を設計したマンサールによって改築されたそうです。こちらが美術館の入口です。建物は結構シンプル。
エジプトのミイラ棺
この美術館は1799年に開館、古代エジプトから近現代までのコレクションがあり、特にブルゴーニュ公国時代の作品が見所とのこと。
早速、鮮やかなエジプトのミイラ棺が目を惹きます。
フィリップ豪胆王の肖像画
こちらは1400年頃に描かれたブルゴーニュ公国フィリップ豪胆王の肖像画のコピーで、17世紀頃のもの。
衛兵の間
そして、『衛兵の間』にはフィリップ豪胆王、息子のジャン善良王と妻の墓があります。
墓に施された彫刻は、フランドル地方出身の彫刻家クラウス・スリューテルによる14~15世紀のもの。
台座の彫刻
この墓の台座部分の『嘆く人々』という緻密な彫刻がすごい。
これらの人物群では、当時の服装などが詳細に再現されているそうです。
大公宮殿の前面
大公宮殿の見所の一つに『フィリップ善良王の塔』(Tour Philippe le Bon)があります。塔に上れば宮殿前の半円形のリベラシオン広場や周囲の街並みが見渡せるとのこと。しかし、インフォメーションに行ってみると『入館はガイドツアーだけなのよ。でも今日明日のガイドツアーは満席なんです』と言われ、残念~
リベラシオン広場に出て、大公宮殿の前面とフィリップ善良王の塔を下から眺めます。
リベラシオン広場
大きな半円形のリベラシオン広場は、真昼の日差しを受けて白く眩しい。
パラソルのテラス席で昼食
そして広場を縁どるようにパラソルが続き、そのカフェやレストランは昼食を楽しむ人々で賑わっています。
私たちもその中のレストランで昼食にしましょう。
昼食を味わう
今日は私たちがフランス旅を始めてから10日目ですが、何と、これが初めてのレストランでの食事。ディジョンは美食の街ですから、一度はレストランで味わいたいですよね~
頼んだのは、ブフ・ブルギニョン(牛肉の赤ワイン煮込みブルゴーニュ風)、ハムステーキのマスタードソース定食。もちろん赤ワインでいただきま~す。
ブフ・ブルギニョン
これがブフ・ブルギニョン。ブルゴーニュ地方の農家で、硬い牛肉を地元の赤ワインでじっくり柔らかく煮込んだという郷土料理です。
牛肉はほろりと崩れるほど柔らかく煮込まれてとても美味しい。赤ワインとの相性も素晴らしいです。付け合わせはマッシュポテト。
広場の南の路地を行く
フランス初のレストラン食をゆっくり堪能したら、観光街巡りを再スタート。
リベラシオン広場から南へ路地を進みます。このあたりにもコロンバージュの家並みが。
サン・ベニーニュ大聖堂の後ろ姿
そして西へと方角を変えてどんどん進むと、前方に教会の尖塔が見えてきました。
次の目的地のサン・ベニーニュ大聖堂です。見えているのは後ろ姿、アプスの部分で、屋根は光沢のある鮮やかなブルゴーニュタイル。入口は反対側の西にあります。
サン・フィリベール教会
そのサン・ベニーニュ大聖堂の南隣にも雰囲気のある教会があります。
これはサン・フィリベール教会で、尖塔は16世紀初めのゴシック様式ですが、他の部分は12世紀に建てられたロマネスク様式の教会です。中には入れませんでしたが、簡素な正面にアーキボルトが3つ並び、いかにもロマネスク。
サン・ベニーニュ大聖堂のファサード
そして、こちらがサン・ベニーニュ大聖堂の西側ファサード。
聖ベニーニュに捧げられた修道院だったこのゴシック教会は、13~14世紀に建てられ、1792年にディジョン教区の大聖堂になりました。
大聖堂の内部
中に入ってみましょう。ゴシック様式の垂直の伸びる高い天井の身廊は、明るい黄土色。両側に側廊があり、奥に半円形のアプスがあります。
内陣を眺めていると、右奥に観光客の一団が歩き出す姿が目にとまりました。『ひょっとしてガイドツアーかな』と急いで行ってみると、『何だ、もう出発だよ早く早く!』とチケット係のおじさん。14時半からのクリプト(地下聖堂)ツアーにギリギリ間に合いました。
地下聖堂
この地下聖堂は、11世紀初めに教会の東端に建てられた3階建てのロトンダの下層部分です。この時代には地上の教会や聖ベネディクトの墓、ロトンダ等の複合施設が建てられましたが、地上の教会はその後再建され、ロトンダも1792年に破壊されました。
ロトンダの下層部分は瓦礫で埋められていましたが、その遺構が1844年に発見され、地下聖堂の発掘と修復が始まったそうです。太い柱の円形の地下聖堂はプレロマネスク様式。
円形ドームと天窓
天井は円形のドーム、そしてその中央には小さな円形の天窓が光を招き入れています。ローマのパンテオンのようですね。
ここは地下聖堂なのに天窓?と思いましたが、かつて3層のロトンダであった建物も、上部2層の床に開口部があって光を取り入れていたそうです。
サン・ベニーニュの墓所
そして、ここには2世紀の殉教者サン・ベニーニュの遺骨が柱に囲まれた墓所の石棺に埋葬されています。
地下聖堂の柱はシンプルなものがほとんどですが、柱頭に彫刻が施されているものがありました。かつては多くが彫刻で装飾されていて、残ったものは数少ないのかもしれません。
柱頭1
この柱頭の左側は蹄のある動物、その右の角は人が両手を胸の前に置いているようです。その右は怪物の顔か。
背後にも複雑な模様が彫られています。
柱頭2
これは馬か怪物か。植物と絡み合っているようです。
かつてのロトンダ
これはかつてのロトンダを描いた絵。隣接する塔の階段の一部も保存されていました。
ディジョン考古学博物館
サン・ベニーニュ大聖堂を出て宿に帰ろうとした私たち、大聖堂の隣に重要な見所があるのを危うく忘れるところでした。
この建物は旧サン・ベニーニュ修道院の宿舎で、1934年からディジョン考古学博物館となっています。
考古学博物館1階入口
まず1階に入ります。ここは元は修道士の宿舎で13世紀ゴシック様式の建物。
柱と交差ヴォールトが連なる広い空間に、思わず感動させられます。
ティンパヌムの展示1
ここ1階には、コート・ドール県、または広くブルゴーニュ地方のロマネスクやゴシックの彫刻が展示してあります。
これは教会のティンパヌムでしょう。中央にキリスト、テーブルに並ぶ人々は最後の晩餐でしょうか。
ティンパヌムの展示2
こちらはサン・ベニーニュ修道院のティンパヌムで『キリストの威厳』。12世紀のもので、中央にキリスト、その周りを天使が取り囲んでいます。
柱頭1
これは柱頭。複雑に絡み合った植物の間から顔を覗かせる怪物たち。
柱頭2
こちらは聖人を襲おうとしているのか、誘惑しようとしているのか、怪物たちが見つめています。
人物の頭部
人物の頭部、いや神様か。誰だかわかりませんが、とても表情豊かです。
ひょうきん怪物
そして、こんな怪物も。ちょっとひょうきんでイタズラ好きそう。
旧修道士室
歴史ある楽しい彫刻を雰囲気ある建物の中で見学できるのですから、本当に素晴らしい博物館だと思います。
2階は17世紀につくられた部屋で、旧石器時代からメロヴィング朝時代(5~8世紀)までの宝飾品や武器などが展示されています。
地下1階の展示室
1・2階を見終わって帰ろうとしたら、受付の係の方に『地下にも展示がありますよ、ぜひ』と言われ、地下に降りました。また重要なものを見逃すところだった。
地下は、元は11世紀の修道院の作業室と納骨堂で、ここにはガロ・ローマ時代(1~3世紀)のブルゴーニュ近郊の遺跡が展示されています。
紀元前後の木彫り
これらの木彫りはセーヌ川源流の女神セクアナに捧げられたもので、紀元前後のもの。木彫りの像がよく残っていたものです。
旧納骨堂
旧納骨堂は、太い柱に支えられた静かで厳かな空間。
そこにガロ・ローマ時代の石碑やレリーフ、彫刻などが展示されています。
石像
石像はチュニックを纏っています。ローマの影響なのか。
レリーフ
このレリーフはバルかレストランみたいですね。
宗教的な題材だけでなく、人々の生活が描かれているのも面白い。
グランジェ広場
見応えのある博物館でした。これで歴史地区の観光は終了です。
帰りはギョーム門の前を横切って、グランジェ広場(Place Grangier)に差し掛かります。左手の建物は1909年に建てられた郵便局です。
ホテル・サントラル
このあたりにはかつてディジョン城があり、19世紀終わりに取り壊されて以降、再開発が進められたそうです。
というわけで、周囲には20世紀初頭のアール・ヌーヴォーやアール・デコの建物が建ち並んでいます。写真は1927年に建てられたホテル・サントラルで、最近修復された美しいファサードを見せています。
アヒル肉のソテー
あとは宿でゆっくりするだけ。途中のイタリア食材店で買ったオリーブや生ハムをつまみにまずは一杯。
そして晩ご飯はサーモン、レタス、チコリなどの豪華サラダ、そして今朝市場で買ったアヒル肉のソテー、インゲンとアンズタケ添え。とても美味しくいただきました。
今日はディジョンの観光スポットを歩き回り、歴史ある建物や遺構、美術品などをたくさん鑑賞できました。それにしても多くの博物館が無料だったりガイドツアーが充実していたりと、さすがフランスは文化大国ですね。さて、明日はボーヌへ移動。ブドウ畑をサイクリングしながら、ワインのシャトーに立ち寄るのも楽しみです。
