初海外サイクリングの第二スポットは、アムステルダムからスウェーデンの首都ストックホルムに場所を移しました。
サイダーとサリーナに、時を同じくして近くに来ていたナオボーがここで合流。ナオボーはレンタサイクルで、いざストックホルムのポタリングに出発。
ストックホルムの歴史は、13世紀半ばにスタツホルメン島に砦が築かれたのがはじまりのようです。現在のストックホルムはこのスタツホルメン島を始めとする多くの島々から成りたっているとも言えます。そのスタツホルメン島は今はガムラスタン(旧市街)と呼ばれており、中世からの古い建物が立ち並んでいます。ちょっとポタリングなら新市街よりこちらが楽しそうと、まずはガムラスタンに入ります。橋の先には立派な建物がずらり。
振り返った新市街の方はガムラスタンより歴史は浅いとはいえ、それでもかなりの歴史がありそうで、こちらにも立派な建物が立ち並んでいますが、中には現代的なガラス張りの建物も見えます。
ガムラスタンの最初の砦の基礎の上には巨大な王宮が築かれました。ここでの見物は衛兵交代式。楽団の演奏と共に、馬に乗った衛兵がやってきてずらりと整列。
写真の整列はナオボーとサリーナ。
王宮近くのストールトリエット広場はガムラスタンの中心です。この広場の廻りの建物は皆古くてかわいらしく、それらの建物の間からあちこちに細い路地が伸びています。
これらの路地を入ると、これぞガムラスタンという雰囲気になります。何と言ってもまず道幅が狭く、建物の高さもせいぜい5~6階止まりです。シックな色合いのこじんまりした建物が続いています。
ここはまだ広い方。中には道幅が1mにも満たないような狭い通りもあるから楽しい。
道はどこも狭いのですが、そんな中に突然教会の尖塔がすくっと天に伸びているのが見えます。これはドイツ教会(Tyska kyrkan)。
中世のストックホルムにはドイツ人の商人や職人がたくさんいたそうです。14世紀にここにドイツ人によってギルドが設立されたのがこの教会の始まりとのこと。
スタツホルメン島の横には小島のリッダルスホルメンがあります。
そこに立つリッダルスホルメン教会(Riddarholms kyrkan)は、13世紀に建てられたフランチェスコ会修道院が元で、同じガラムスタンにあるストックホルム大聖堂とともにスウェーデン最古の教会の一つだそうです。17世紀以降、ほとんどのスウェーデンの君主の最後の休憩場所となっています。
ガムラスタンはとても狭いので歩いて廻ることも十分可能ですが、佐田氏たちは自転車で対岸に渡り、客船が並ぶ湾からの眺めを楽しみました。
さらにぐるっと廻って今度はストックホルム市庁舎(1923)側へ。この市庁舎は一般的にはノーベル賞の記念晩餐会が行われる場所として知られ、建築的にはエストベリ(1866-1945)によるナショナル・ロマンティシズムの傑作として知られています。
湾にはかわいらしい観光船が停泊していました。そうそう、湾と書いて気付きましたが、ここは海ではなく、川のような湖のような、そんなところです。地図にはここはメーラレン湖とあるので湖のようです。
市庁舎はメーラレン湖の畔という抜群のロケーションに立っており、外壁はきれいな煉瓦です。シンプルですっきりしたフォルムの中に、僅かな装飾が施され、絶妙のバランスです。
こちらがノーベル賞の記念晩餐会が行われる『青の間』。しかし青い色はどこにもなく、外壁同様の煉瓦の壁です。計画ではこの内装は青く仕上げられる予定だったそうですが、下地の煉瓦が出来上がった状態があまりに美しかったので、そのまま煉瓦を仕上材としたとか。
このほかノーベル賞のパーティーが行われる『黄金の間』、バイキング・ルネッサンス様式の天井を持つ議場などがあります。高い塔に上ればガムラスタンをはじめ、ストックホルムが一望にできます(TOP写真参照)。
宿に戻る途中にはヒョートリエット広場がありました。半露店の店先には花や果物などカラフルな生鮮品が並んでいます。
この脇の建物の地下も市場で、そちらには肉や魚、野菜といったものがずらり。
一旦宿にもどって一休みした後、夕方から街の中心から南に7kmほどのところにある、アスプルンド(1885 - 1940)の名作『森林葬祭場(1940)』に向かいました。
これはスウェーデンではじめての火葬を前提とした葬祭場と共同墓地の計画で、国際コンペティションの結果、アスプルンドらの案が一等になったのです。墓地の計画を国際コンペティションにするという発想がそもそもすごいが、出来上がったものは建築家と言わず必見。
石塀の入口を入ると遥か先に十字架が一つ、その先は黒い森。
100mほど進むと視界が開け、穏やかな芝生の上りになります。右手にはこんもりした小さな丘の上に木が数本。この空間を見ただけで心がすぅーと引いて行く。
白い低い壁に沿って進むと小さな二つの礼拝堂を過ぎ、主礼拝堂の前のポルティコに到達します。
ポルティコの前には池。ここからも小高い丘の上の木々が良く見えます。
この小さな丘は人工的な設えだと聞きました。絶妙なランドスケープ。
奥へ進むとひっそりとした墓地です。西洋のお墓は日本のそれよりたいていシンプルですが、ここまでシンプルなのは見た記憶がありません。死者が眠るのにふさわしい静けさと清らかさがあります。女優のグレタ・ガルボもここに眠っているはず。
森の奥にあるのは一風変わった形の礼拝堂。葬祭場が外観上は最終的には国際様式的に纏められたのに対し、こちらは民族主義的な臭いが強いのですが、ギリシャあたりのモチーフも取り入れられています。三角の屋根の下には中央にトップライトのある半球ドームの天井があり、ドーリア調の柱が取り巻いています。
翌日はちょっと郊外に足を延ばしました。
ストックホルム中央駅は鉄骨の連続アーチによるボールト天井が、シンプルながら美しい建物です。
夕刻、フェリーでヘルシンキへ向かいます。ナオボーは自転車を返却して地下鉄で、サイダーとサリーナは自転車でバッタハムン港へ向かいました。
港に到着したサイダーとサリーナはその広さにちょっとびっくり。まずどこが港への入口なのかわからずうろうろ。港の中に入ったものの、今度は乗船するシリヤラインの停泊している場所がわからずうろうろ。辺りには港の係員らしき人は見当たらない。
乗船時間は迫っている。駆け回ってなんとかそれらしき船を発見して近づきます。しかし、自転車はどうしたものか、折り畳んで持ち込むか? 船に近づくと車が乗り込んでいる。車が乗るなら自転車は車のゾーンに入れればいいや、ということで、車の後に続いてなんとか船に乗り込みました。いや~焦った。。
先に到着していたナオボーとも無事合流出来ていっしょに客室へ向かいました。さてこの船、今まで乗ったどの船より大きく、ほとんど12~3階建のビルかと思うほどです。実際それくらいの階数があるようで、様々なお店やバー、さらにカジノまであり、メインフロアーから上の客室間は吹き抜けになっていて、一瞬どこかのショッピングモールにでも居るのかと錯覚しそうでした。
客室に荷を解きシャワーを浴びた後は、音も立てずに出航した船の一番前の展望ラウンジに腰を下ろし、夕陽の中に浮かぶ島々を眺めます。時が経つにつれ変化する空と水の色が面白く、いつまでも眺めていました。
夜も更けてきたところで、ハッピー・ロブスターというレストランで夕食です。お勧めの魚介の盛り合わせはちょっとスモークした半生の魚介で、海老、ロブスター、ざりがに、牡蠣、ムール貝やサーモンなど、とっても美味しかった。ワインを次々に空け、給仕が『もうお勧めするものはなくなりました!』 と言った時にはみんなで笑いました。