概要
フィンランドを代表する建築家、アルヴァ・アールト(1898 -1976)の仕事のいくつかを見て回ったので、その紹介です。
ヘルシンキ
厚生年金会館(1952-56)
アールトにしては少し固い方形のファサード。赤茶の煉瓦(タイル?)に黒いスチールサッシ、緑青が噴いた銅の笠木。
アールトが好んだ円形の連続するトップライト。天井は低めで落ち着いた空間。プロポーションの妙。
格子の天井から、いかにもアールトという照明がぶら下がっている。
廊下にあった?ランプ。陰影がとても美しい。
フィンランディア・タロ(フィンランディア・ホール)(1962-71)
白大理石張りの外壁は反ってしまっていて大改修だった。仕上の大理石と躯体の間に断熱材を発見。外断熱らしい。
大ホールの壁の装飾(写真では黒く潰れたところ)は木を束ね合わせたようなデザイン。落ち着いた照明が心地よい。
アカデミア書店(1966-69)
白大理石の内装に変わった形のトップライト。
アールト自邸(1935-36)
黒に近い茶に塗られた羽目板の二階は住居。レンガに白いペンキのアトリエ。道路側からも庭側からも一切の誇張がない抑制の利いたマッス。インテリアもさりげなく自然だ。
エスポー、オタニエミ
ヘルシンキ工科大学(1949-66)
アプローチは大ホールの側から。
光の妙。
やわらかい構造。
セイナヨキ
セイナヨキのタウン・ホール(1958-87)
遠方に教会の塔。
競り上がったマッスが議場。一階はピロティ。
さりげないデザイン。
小さなガラスの照明がぶら下がる。
セイナヨキの教会(1958-60)
体育館のような素っ気ない外観にずんぐりした塔。
横からの光が印象的な祭壇。
天井からぶら下がった照明がちょっとしたアクセントに。
変わった形の明かり取り窓。
セイナヨキ市立図書館(1963-65)
裏側の扇のように広がった凹凸の外観は、ハイサイド・ライトのルーバーとプレーンな腰壁の対比が面白い。
こじんまりした図書館だがインテリアがすばらしい。
1m強ほどの段差が付いた二つのゾーンからなる。中央部の下のゾーンは落ち着いた雰囲気。
セイナツァロ
セイナツァロの村役場(1950-52)
ユヴァスキュラから南に15kmほどのところにある小さな村の役場。アールト中期の傑作。
煉瓦の外壁、端正なフォルムの外観。
この時点では町村合併により役場ではなくなり、町民会館のようなものとして使われているとのこと。
裏手は美しい松林。
こじんまりした中庭はいい感じのスケール。
細かい割付けの木のサッシ。
外壁同様、内壁仕上も煉瓦。ハイサイド・ライトの光が絶妙。
木製の合成梁とそこから出る屋根を受ける細い枝のような構造。
格子状の桟が入った窓は装飾的。
廊下の壁の照明は簡素な木の板を組み合わせたもの。
ドアノブには皮を細かく編み込んである。
イマトラ
ヴォクセンニスカの教会(1956-58)
玄関はさりげなく、ぐるっと回った後ろ側の形態は内部空間が三つに分割できるゾーン構成がそのまま現れていて、面白い。
白い壁と天井に白い十字架が三つ。現地ではスリー・クロス・チャーチと呼ばれるようだ。横の高い窓にはちょっとした装飾が。
正面右手に独特の形状をした白いオルガン。ハイサイドライトも効果的で美しい。
この建物には形の異なる101の窓があるという。
ここからはアールトではありませんが、イマトラにあった建物です。
労働者住宅博物館
1890〜1960年代の工業労働者用の住宅。
上の内観。日本の庶民の住宅より立派。
こちらはもう一つのタイプ。
旧国営ホテル(1903)
お城型でアール・ヌーヴォー。現ヴァルティオ・ホテル。