サヴォンリンナの朝は残念なことに雨です。今日は自転車で湖を眺めながら、イマトラ方面へ移動の予定ですが、しばらく様子を見ようとまずオラヴィ城(ドラクエ城のモデルとか)の見学ツアーに参加しました。
お昼を過ぎると空がやや明るくなってきたので、バスでロヒラハティ方面へ向かい、お天気次第で途中下車することにしました。
雨があがったのでスルカヴァで下車です。
昼食をとったあと、インフォメーションで地図をもらい、ロヒラハティの宿をいくつか教えてもらいました。
14:30、自転車にまたがり出発です。このあたりは車はほとんど通らず快適な上、前日のプンカハリュの再現のように、湖と松林がすばらしく美しい!
5km、10kmと進めば進むほど空は明るくなり、青空も見えてきました。青空と湖と森を眺めながら快調に飛ばします。
このあたり、湖水地方は湖だらけ、というより陸地より湖のほうが多いくらいです。したがって陸地を繋ぐには橋があちこちに必要なのですが、ところによっては橋ではなく、こんな『渡し』で渡ります。対岸から黄色い機械のような『渡し』がやってきました。
走り始めて20kmほどで湖は少なくなり、周囲は深い森に変わりました。道端に赤や白の小さな花を付けた野草が咲くだけで、あとは道と森しか見えません。ここまでお店どころか人家もほとんど見かけません。
宿があるロヒラハティまではもう一踏ん張りです。森に入る小径があったので、森の中で休憩することにしました。森にはブルーベリーやいちごがたわわに実っています。一つ二つ、つまんで食べてみると、結構おいしい。
この小径に入る一台の小さなトラックの運転手のお兄さんが、こちらを物珍しげに眺めていました。
5時過ぎにロヒラハティに到着し宿を訪ねると
『もう営業期間は終わった。』 とのこと。
フィンランドでは7月しか営業しないサマーホテルが多いのだそうです。ロヒラハティのお店はドライブイン『マヤッカ』が1軒あるのみで、そこのお姉さんに相談すると、近くの農家の宿『フッカネン』を教えてくれました。電話すると泊まれるとのことで、約8km来た道を逆戻りします。
マヤッカのお姉さんが教えてくれたフッカネンの入口は、さっき休憩した森の小径でした。
森を抜けると麦畑が広がっています。その脇の小径を2kmほど進むと黄色と赤の建物が見えてきました。
この麦畑の中の一軒家がフッカネン。到着するとワンワンとさっそくふさふさした毛のワンちゃんが出迎えてくれます。続いて、
『さっき電話してくれた人だよね。』 と若い女の子が裸足で出てきて、にっこり。ロヒラハティで宿は終わりと言われたときのショックも、8kmの逆戻りの疲れも、この素敵な笑顔で飛んで行ってしまいました。フッカネンは三世代の家族でやっているあたたかい宿です。
『おなかすいたでしょう。すぐご飯にしますからね。』 と今度は赤ちゃんを抱いたお母さんが赤い煉瓦のオーブンのある食堂に案内してくれます。食事をしているところへ現れた男性はいきなり、
『やあやあ、君たちか。さっき森のところで休んでいたね。』 と声を掛けてきました。なんと先ほど森の入口で出会ったトラックの運転手はフッカネン家の息子さんだったのです。
暖かい食事の後は、みんなで1km先の湖に向かいました。初の本格的なサウナ体験です。森を抜けた先の湖のほとりには小さなサウナ小屋がありました。この森の中の湖は静かで波一つなく、時が凍りついたような風景です。
サウナの入り方がわからない私たちは、男女別にいっしょに入れてもらうことにしました。女性陣が入っている間に男性陣はボートで湖をぐるり。ビーバーのダムやジャンピング・フィッシュなど珍しいものを見ることができました。
ボートのあとはいよいよサウナ体験です。サウナ室は7~8人が入れるほどの大きさで、隅っこに窯のようなものがあります。水桶と葉っぱが付いた木の小枝が置かれていて、適当な間隔を置いて葉っぱに含ませた水を窯に掛けます。すると熱い蒸気がサウナ室を満たすのです。
日本にあるドライ・サウナのようにカラカラというわけではなく、スチーム・サウナに近い感じでしょうか。この熱い蒸気がぐわっとやってくるときがとても気持ちがいいのです。
葉っぱが付いた木の小枝にはたいてい白樺が使われるようで、この葉っぱで体をちょっとピシパシとたたくこともあるようです。
熱いサウナ後は湖に飛び込むのが、本場フィンランド方式。裸のまま湖に行き、デッキから湖にザブン。『つ、つめたい〜』 と思うも、これが相当気持ちいい! サウナと湖を2度3度と往復するうちに体は十分に暖かくなり、そのうち水の冷たさも感じなくなるから不思議です。
この日はすばらしい松林と湖の風景を楽しみ、フッカネンというあたたかい農家民宿に泊まれ、サウナ体験まですることができた、すばらしい一日となりました。
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