スペイン巡礼の道サイクリングのスタートは、ピレネーの麓ともいえるスペインの北東に位置するナバーラのパンプローナから。
フランスからピレネー山脈を越えてスペインに入る巡礼の道の一つは、フランスのヴァルカルロスからイバニェタ峠を越え、ロンシェスバージェスを経てここパンプローナに入る。
パンプローナはナバラ王国の首都として10世紀初頭にできた町で、14世紀の終わり頃から始まったといわれる闘牛やサン・フェルミン祭という牛追い祭りで有名。そのサン・フェルミン祭の開始を告げる舞台がこの市役所。毎年7月6日から14日まで行われるこの祭りの時は、この広場が人々で埋め尽くされる。
街の中心にあるカスティーリョ広場から、いよいよ巡礼の道を辿りサンチャゴ・デ・コンポステーラへ向けて自転車で出発。スペイン最初のサイクリングはこのパンプローナから、巡礼の道を辿りエステーリャまで。
下にパンプローナの街を、遠景にピレネーを望む美しい風景が続く。まず登り。そして登り、登り、まだまだ登り。なんと16kmずっと登りなのだ。勾配はさほどではなく山道でもないが、登っては休憩、登っては休憩の繰り返し。
そしてなんといっても 『暑い! やっぱりスペインだ!』
しばらくすると、ようやく爽快な下り。8kmずっと下り。
プエンテ・ラ・レイナのすこし手前でフランスからの二本の巡礼の道が合流する。一本は私たちがやってきたパンプローナからのもので、もう一本はソンポルト峠を越え、ハカを経由してくるもの。
道の合流点には旅人を見守るように、巡礼像が立っていた。その足元で、
『ふぅはぁ~、さっきの登りはきつかったね。でもダウンヒルも楽しかったね~』
プエンテ・ラ・レイナは小さく静かな街で、ここにも牛追い祭りのサンティアゴ祭があり、ロマネスクのサンティアゴ教会がある。
そしてアルガ川には町の名になった王妃の橋という古い美しい橋が架かっている。
ここのバルで一休み。休憩すると、どうしても一杯が入ってしまう…
さあがんばるぞ、と意気込むがまたまた登り! 景色はいいんだけれど… エステーリャでゆっくり昼食の予定が大幅に狂ってしまい、はらぺこ状態で道路脇のバルに。ここでもやっぱりでてきたワインボトルが空に!
暑く苦しい道をのろのろ進むと、ようやくエステーリャの街が見えてきた。
エステーリャの名は、『星の雨が降り注ぎ、埋もれていた聖母像を照らしだした』という伝説によるとされ、本当に名前のように美しい街。
エガ川に架かるカルセル橋を渡ると、高台にあるサン・ミゲル教会に到着。
サン・ミゲル教会のファサードはスペイン・ロマネスクの代表とされる。この巡礼の道にはこうしたロマネスクの建物があちこちにちりばめられている。
サン・ミゲル教会からエガ川を渡ると、かつての中心地であるサン・マルティン広場に辿り着く。ユニークな形の噴水を中心に、かつては巡礼者の旅籠だったと思われる古い建物が建ち並んでいる。
広場の角で夕陽を受けて佇んでいるのは、かつてのナバーラの王宮。
この向かいにはやはりロマネスクのサン・ペドロ教会がある。
サン・マルティン広場からエガ川を東に数百m行くとサント・セプルクロ教会。こちらは14世紀のゴシック。
この日は多くのサイクリストに出会った。日本人の若者二人連れやヨーロッパ各地からの人々。特にドイツからのサイクリストが多く、かなり年輩の夫婦やアシストカーを引き連れた本格派まで幅が広い。このへんは日本との差を歴然と感じる。