スペイン巡礼の道サイクリングの二日目はエステーリャからサント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダまで。
エステーリャからログローニョ間はバスで移動。地図で見るとかなりうねったつづら折りのところがあり、きつい登りだと思ったからなのだが、新しい道になったのかそんなところはなかったようだ。バスは日本の高速バスのようなもので、車体の下の方に荷物収容部があり、自転車を積むのにも問題ない。スペインでは都市間のバスはほとんどがこのタイプ。
ログローニョはカステーリャ・イ・レオンの中のリオハにあり、9月下旬のぶどうの収穫祭で有名なログローニョから自転車にまたがり、まずはナヘラへ向けて出発。最初の頃は高速道路のような道で二輪車レーンがあり、走るには問題ないが景色はあまりよくない。都市部を出るとブドウ畑の広がる丘陵地で景色が良くなる。
しかし、またまた長く緩い上りが始まる。
ナヘラで昼食後、公園でシエスタ(昼寝)。まっとうなサイクリストなら日の出とともに走り出し、14時から昼食、少なくとも17時までシエスタ、その後日暮れまで走るのが正解なのだが… 寝ぼ助な我々には不可能なのだった。
ナヘラを16時に出発、しかしまだ太陽ぎらぎら、日影はまったくなく暑く苦しい。ここには坂道しかないのか、またまた長く緩い上り。もちろん下りもあるのだけれど… ダウンヒルは爽快。邪魔物は全くなく(交通量は極めて少)、しかも長い。問題は自分の未熟さで、60km/h 位でちょっとビビッた。サリーナをおいてゆくわけにもいかないし。
ダウンヒルの最中、サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダの街と美しい尖塔がすぅっと遠方に姿を現したときは感激だった。穏やかな下りを終えて街に入る。
かつて城壁で囲まれていたサント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダの旧市街はとても小さくて、赤茶のスペイン瓦の建物が並んでいる。
この街の名は、聖ドミンゴ(修道士ドミニクス)が巡礼者のためにカルサーダ(石だたみの道)などを築いたことによるという。
遠くから見えた塔は、その中心にあるサント広場に建っていた。この広場の周りには12世紀建造のカテドラルとパラドールがある。塔はカテドラル付属のものだが、珍しいことにここでは独立したものとなっている。
私たちは運良くここのパラドールに泊まることができた。このパラドールは12世紀に建てられた救護院で、巡礼者のための宿となっていたものだそうだ。石造のアーチに木製の梁が架かる天井の重厚なロビーはなかなか見応えがある。
19世紀前半に建てられた感じの良い建物の前に、4~5台のマウンテンバイクが停まっていた。大きな荷物から見るとキャンプツーリングでもしているのだろうか。
ここの家々はみな石造で歴史を感じさせるものばかり。ちょっと街を散策すると、本当に中世に迷い込んだような錯覚を覚える。アンダルシアの白い街とはまったく違う、乾いた情緒のようなものがここにはある。
翌日はブルゴスまでバスで移動。ブルゴスはかつてのカスティーリャ王国の首都で、巡礼の道の三本目、大西洋岸を進む道がベホビアで別れ、一方はそのまま大西洋に沿って進み、もう一方は内陸に向かいビトリアを経てこのブルゴスに流入する要所でもあったようだ。
アルランソ川のすぐ北にはサンタ・マリアの城門が聳え建つ。かつてこの街には八つの城門があったようだが現在残るのは五つ。その中でもこれが一番立派。
サンタ・マリアの城門の先にはカテドラルが建つ。このカテドラルは、トレド、レオンとともにスペインの三大ゴシック・カテドラルと位置づけられている。その前のサンタ・マリア広場には凝った彫刻の噴水がある。
ブルゴスの街はずれにはアルフォンソ8世が建てた王立救護院と12世紀建造のウエルガス修道院がある。
ここはかつてカスティーリャ王家の礼拝堂でもあったようだ。
ここにはヨーロッパ各地から伝えられた様々な音楽を14世紀に編纂した『ラス・ウエルガスの写本』が残る。
スペインの建物の多くは美しい中庭を持っていて、それはパテオと呼ばれている。ここのパテオも緑豊かできれい。
ブルゴスから60kmほどのサント・ドミンゴ・デ・シロスの修道院はもっとも美しいロマネスクの回廊を持つといわれているが、このウエルガス修道院の回廊もなかなか見応えがある。この建物はロマネスクに始まり、ムデハール、ゴシックと多様だ。
ブルゴスの中心部から東へ4kmほどのところにはカルトジオ会のミラフローレス修道院がある。ヒル・デ・シロエ作の金ぴかの祭壇衝立(レテーブロ)、イサベル女王の両親、フアン二世とイサベル・デ・ポルトガルの横臥像が載る墓ある。