バンジャガラの断崖の上にあるドゴン族の村ドゥールー。
朝の目覚めは勇ましいコケコッコー。これはいつも同じです。
さて、これがドゥールーの私たちの宿泊小屋。村での宿泊はほとんどどこも同じで、完全に泥の世界です。扉の横にある木は階段になっていて、これで屋根上などに上れます。
そうそう、ここは小屋の内部にゴザが敷いてあるのが上等でした。しかしこの世界とももうお別れです。
今日はドゴンの村を離れモプティへ戻らなければなりません。3泊はあまりに短かすぎます。一週間、いや二週間は居たいところでしょう。しかしそうも言ってはいられません。ここからは断崖を離れ、まずこの辺りのドゴンの村々への起点でもあるバンジャガラへ移動です。
朝食はドゴンのパン。
現地名は忘れてしまいましたが、仏語はガレット・デ・ミレッだと思います。
バビロンは足の手配のためにバンジャガラへ向かい、その間、ママドゥがアタイを入れてくれました。アタイはこの辺りで良く飲まれるお茶で、小さめの器に注がれ砂糖がたっぷり入れられます。これは稗のビールとともに、なくてはならないものの一つです。
ようやく車の手配できたらしく、バビロンが戻ってきました。ところがここからはプジョー(このあたりの標準車)のはずが、数日前の雨で道が荒れていて車では行けないとのこと。村にはもちろんそれ以上のオフロード対応車なんてない!
やってきたのはオフロード仕様の125ccのヤマハと、ぼろいオンロード仕様の100ccのバイクです。ヤマハはともかく
『そんなに悪路なのに、こんなオンロードバイクで大丈夫なの?』 とサイダー。
『… 彼はベテランだから…』 とちと端切れの悪いバビロン。
しかしとにかく足はそれしか無さそうです。バビロンとママドゥは後でなんとかするそうな。とにかくヤマハにサリーナ、ボロバイクでサイダーが出発。
ドゥールーからバンジャガラまでの道は想像を絶する悪路でした。アップダウンが多い上にボコボコのダートで、水たまりの連続。これではニッサン・パトロール(オフロード仕様の最高級車)でもちょっと苦しいかもしれません。そんな中をサリーナのヤマハはなんとかこなして先を行きます。ところが案の定、サイダーのボロバイクはちょっと行っては止まり、ちょっと行っては止まりの繰り返し。そしてついにガラガラ・ガッシャ〜ンという音と共に停止!
『そら見たことか!』 と怒りのサイダー。しかしサイダー以上に困っているのはドライバーのよう。目的地まで到達出来なければおそらく契約金をもらえないだろうし、二度と雇ってもらえないかも知れないのです。しかしこのドライバー、少しの工具も持っていない。呆れつつも携帯ナイフの工具を取り出し復旧にかかるサイダーでした。
なんとかかんとか復旧を終えたサイダーもバンジャガラに到着です。
『遅かったね〜、何やってたの?』 とはヤマハで問題無く到着したサリーナでした。おいおい!
ちょっと休憩後に近くを散策してみると、ここにもありました、ドゴンのドグナと呼ばれる集会所。
『こんなに低いんだね〜』 と集会所の下のサイダーです。バンカスのものは柱が木で出来ていましたが、ここのものは石で出来ています。
しばらくしてバビロンとママドゥもなんとかやってきました。
バンジャガラは現世に近い村で、ここには現代のビールがあります。何日かぶりで飲む現代のビールはうまかった〜(笑)
2時間ほど休憩の後、今度こそプジョーでソンゴへと移動しました。バンジャガラからソンゴへの道は問題なく、無事に45分ほどでソンゴに到着。
ここで記念撮影を。左から、ガイドのバビロン、サイダー、サリーナ、ポーターのママドゥ、プジョーのドライバー。
ソンゴはバンジャガラの断崖から30kmほど離れたところにありますが、やはり大地は岩でできていて、村の向こうにテーブルマウンテンが見えます。
しかしここは岩ばかりではなく土もそこそこあるようで、家は石造と日干しレンガ造とが入り交じっています。
こうして見ると家と倉庫は日干しレンガ造が多く、塀は石造ですね。
面白いことを発見。右の奥の家は全部日干しレンガで造られ、その上に泥が塗られています。
その手前の一段下がった家とさらに低い塀とは石積みですが、頂部付近に日干しレンガが積まれています。左奥の家は全部石積みです。
しかし倉庫だけはどこもかしこも、みんな日干しレンガの泥壁です。
倉庫には三つの種類があります。穀物倉庫、男の倉庫、女の倉庫。
穀物倉庫はバンジャガラ断崖の下では陸屋根なのですぐにわかりましたが、断崖の上の村は陸屋根の倉庫は見当たらないので、他と同じようにとんがり屋根なのでしょう。
これは上下に窓があるので、穀物倉庫でしょう。
こちらはどう見ても人の顔にしたと思える倉庫です。一つしか窓がなく、杵や臼、ひょうたんの器が置かれていることからして、これは女の倉庫でしょう。
はじめに女の倉庫だと言われたものはとんがり帽子がなく、その下の土が露出したものだったので、とんがり帽子がないものが女の倉庫だと思っていましたが、これはどうやら間違いで、最初に見た女の倉庫の屋根は痛んでなくなったと考えた方がよさそうです。
では男の倉庫はというと、ここでの写真はないのですが、それはどうやら窓が二つのものらしいです。
さて、ソンゴではドゴンの宇宙を表わした壁画を見なくてはなりません。
その壁画はこんな岩壁の下の方に描かれています。これは15世紀より受け継がれる割礼の岩絵とされ、現在もここで三年に一度、割礼の儀式が行われているそうです。
ここに描かれている様々な絵は、蛇を始めとしほとんどが具象的なものですが、中には説明されても分からない抽象化されたものもあります。そしてそれらの図にはそれぞれにその背後のドゴンの宇宙が秘められているのです。
下の右1/3のところにある縦長で中に白い点がたくさん打たれたものは、インという双六のようなゲームで使われる木をくり貫いた道具でしょう。この道具はノンモの箱船から来ているとされています。
絵は大きく二つのゾーンに別れるようで、目通りから上には大きな図柄が、下には小さな図柄が描かれています。
上の図柄はより抽象的に見えます。
この『出』は仮面でよく見掛けるものです。そのマスクはカナガマスクと呼ばれています。
カナガは伝説では黒い額を持つ白い翼の猛禽類で、上の横棒が天、下の横棒が地、真ん中の縦棒がドゴン族が暮らす世界を表しているそうです。また、神を表す仮面とも言われ、横棒はその手足だそうです。絵の下の部分はおそらく仮面のマスク部分だと思います。
ここには同じような図柄がたくさん描かれています。
これらの絵にはゾーンごとに、『犠牲になったノンモの血の跡』『復活したノンモの停止(場所)』『カメレオンのtonu』(tonuは舌かと思うけれど…)と呼ばれているそうです。
最初の二つの絵は60年に一度行われるシギの儀式の時に書き換えられ、また、最後のそれは割礼が行われると書き換えられると言います。
これは割礼の儀式の際に使われる楽器で、両側に輪っかが付いており、両手に持って演奏するものだそうです。
神話に満ちた壁画を見て外に出ると、辺りは夕日を受けてオレンジ色になっていました。
さて、これで本当にドゴンの世界とはお別れです。ソンゴからはまたプジョーに乗り、ドゴンの旅の出発点だったモプティーに戻ります。
明日はジェンネに移動し、巨大な泥のモスクの前で繰り広げられる、エネルギッシュな月曜市を眺めます。