今日はGW後半企画の天竜川の初日。その天竜川を下り出す前に、せっかくだから諏訪大社の下社にお詣りしようということに。
早朝の5時半に宿を出ます。
目の前には朝日を受けた清々しい諏訪湖が広がっています。
その向こうの山の上に白いものが。お〜っ、あれはもしかして北アルプス?
そうです。あれは紛れもなく、北アルプス。左の塊が穂高連峰、その右に大滝山、右の端には槍ヶ岳の頂部が飛び出しているのも見えます。昨日、美ヶ原からはまったく見えなかった北アルプスと、ここでようやく対面できました。
ついに現れた北アルプスに感動したら、諏訪湖を廻って諏訪大社下社へ向かいます。
諏訪湖の畔には遊歩道が巡っていますが、残念ながらそこは自転車乗り入れ禁止なので、その外側の一般道を行きます。
しばらく一般道を行き、諏訪湖の北東に差し掛かると、車道脇に自転車道が出てきます。
ここから西へはこの自転車道が続いて行きます。
私たちは高浜公園で諏訪湖を離れ、山側へ向かいます。
1kmほど行くと、諏訪大社下社秋宮の前に辿り着きました。ここから西には大きな道が延びています。これが参道でしょうか。
この大通りの突き当たりに秋宮の鳥居が建っています。
この鳥居は、昨日見た上社本宮の表参道にあったものと同じく、銅板で覆われています。
鳥居をくぐり穏やかなスロープを上って行くと、まず巨大な杉の木が目に入ります。
これは『根入の杉』と呼ばれ、樹齢は八百年と推定されるそうです。
そして正面に鎮座するのは本殿でも拝殿でもない神楽殿。
その前には珍しい青銅製の狛犬が置かれています。なんでもこの狛犬、青銅製としては日本一大きいとか。
神楽殿には巨大な注連縄が飾られています。
有名な神社では比較的よく目にする注連縄ですが、ここのものもかなり立派です。
この神楽殿をぐるりと廻り込むようにして進むと、その真後ろに拝殿が建ちます。
ちょっと変わった造りの拝殿ですが、これは二重楼門造りというものだそうです。
この拝殿の奥には、左右に神明造りの宝殿が並びます。諏訪大社には本殿がありません。下社で拝するのは木です。二つ並んだ宝殿の奥が、ここの御神木をお祀りする最も重要な場所で、その御神木は一位の木だそうです。
もちろんこの秋宮にもあの御柱は四本立っています。
これは拝殿左にある二之御柱。御柱はすべてモミの木です。
さて、秋宮の参拝が済んだら春宮へ向かいます。
秋宮のすぐ近くには中山道と甲州街道の合流点があります。
写真は中山道で、この突き当たりから右へ延びるのが甲州街道。
そして中山道は突き当たりで左へ折れて続いて行きます。
ここはかつては中山道の下諏訪宿で、その本陣だった岩波家が残っているようです。
もちろん早朝のこの時刻には、その門は閉ざされたままです。
秋宮から春宮へは旧中山道を行きます。
多くの歴史的な道はいち早く拡幅され、今ではその面影を残すところは少ないのですが、ここは道幅からしてかつての幅員のままのようです。
これは1864年建築と推定される旧商家です。
現在は復元修理され、休憩所になっているようです。
春宮の前にやってきました。
その鳥居の手前には下馬橋があります。
この橋は下社で最も古い建造物とされています。現在この橋を通ることができるのは、年二回の祭の神輿だけのようです。
『下馬』は神社でよく立て札に書かれているのを見かけますが、要するにここで、馬や籠から降りろ、ということですね。
下馬橋の先に建つ春宮の御影石の鳥居です。
この鳥居をくぐると正面に神楽殿。
建物の形は若干異なりますが、まず神楽殿という配置は秋宮と同じです。
そして、こちらにも大注連縄。
これも秋宮に同じ。
神楽殿を廻り込むようにして進むと、
拝殿。
これもそっくり。
威風堂々。
拝殿のうしろに二つ並んで宝殿が並ぶのも秋宮と同じです。そのうしろの御神木はこちらは杉の木というのが違うかな。
ん〜ん、あと秋宮と違うのは、、、
あった! 賽銭箱。春宮の賽銭箱は拝殿の幅いっぱいに造られています。お賽銭、いっぱい入るね。そしてその中央に渡り板というのが、なんとも不思議。
秋宮と春宮は同じ時期に建て替えられています。その折り、この二つの社殿を建設するそれぞれの大工には、同じ設計図が渡されたようなのです。それでこの二つは、全体の配置も建物の形も瓜二つというわけです。
秋宮と春宮を請け負った大工は、我こそが当代一の名大工とそれぞれに腕を奮ったことでしょう。その腕前のほどは、各所の彫刻に現れているといいます。
春宮の近くには『万治(まんじ)の石仏』という、ちょっと古い石仏があります。
春宮の境内の横を流れる砥川(とがわ)を遡って行くと、
清々しい川の流れに初々しい新緑。
この流れの横に『万治の石仏』はあります。がっしりどっしり、ずしんと座っています。プリミティヴとも見える像ですが、独特の雰囲気があり、ちょっとかわいい感じもします。
万治は日本の元号で1658年から1660年までの期間を指します。春宮に大鳥居を奉納する際、石にノミを入れたらそこから血が流れ出たので、その石に阿弥陀様を刻んだ、というのがこの石仏です。現在の春宮の大鳥居は万治2年(1659年)の建立とされ、この石仏と同じ作者によるものといわれています。
さて、これで諏訪大社下社とその周辺の散策はおしまい。宿に引き返すことにします。
春宮の社頭から延びる通りは、かつては春宮の専用道で、また流鏑馬を競った馬場でもあったそうです。この道をどんどこと諏訪湖に下ります。
下った先の諏訪湖には競技用のボートが浮かび、激しくオールが動かされていました。
これでGWの前半企画の『日本アルプス眺望』は終わりです。序盤の甲斐駒ヶ岳と八ヶ岳はまったくもって素晴らしかったし、中盤のビーナスラインから見た南アルプスと中央アルプスもなかなかでした。美ヶ原からは見ることが出来ませんでしたが、この諏訪湖で北アルプスも眺められたので、全体としてはかなり満足の行く旅となりました。
さて、これからはGW企画の後半、諏訪湖から流れ出る天竜川を下って太平洋の遠州灘へ向かいます。