015 スカルラッティ/ソナタ集/ホロヴィッツ

アルバムの写真イタリアが続きます。 モンテヴェルディがバロックの入口に立つ巨人なら、ドメニコ・スカルラッティ(1685-1757)はイタリア・バロック末期の天才、いやバロックの鬼才とでもいいましょうか。

父親アレッサンドロはナポリ楽派の大家で、オペラの発展に貢献した人でしたが、ドメニコのほうは器楽、特に鍵盤楽器の分野に秀でたものがあります。 1685年、この年はなんとバッハ、ヘンデル、そしてこのドメニコ・スカルラッテイが生まれた年です。 その同年生まれのヘンデルが彼と競演し、オルガンはヘンデル、チェンバロはスカルラッテイの勝ちとなったという話はあまりに有名です。

彼はナポリの出身だけれど、サン・ピエトロ寺院の楽長を務めたあと、ロンドンやスペイン、ポルトガルでも活躍したようです。 そんな巾広い国際的な経歴からか、彼の曲はなんと現代的に響くことでしょう。 彼の音楽には他の誰にもない、強烈な『ひらめき』を感じる。

ここで取り揚げるのは、チェンバロ用に書かれたソナタ集です。

このレコードについて

モンテヴェルディのところでいったことと矛盾するようだが、僕はスカルラッティのはどうも、ピアノのほうがぴったりくる。 それでこれを。 スカルラッティのものだけ12曲が選ばれている。

ホロヴィッツのことは知らない人はいないだろうから省略します。
彼のあの、一つ一つの音が真珠のような粒立ちの、そんな音で本当に独特の世界が作られています。
独特のスタッカートと、それを繋ぐ流れるようなリズム。
実は今ではあまりこれは聴かなくなった。 すこしロマンチックに聴こえるようになってしまったから。
でも僕には、これに変わるものはいまのところない。


ホロヴィッツとの出会いはなんだったろう。 僕がピアノの音をあまり好きではなかった話は前にしたけれど、ホロヴィッツのだけは当初から違っていた。 絶対に忘れられないのはレコードでの、シューマンの『クライスレリアーナ』。

彼は二度来日した。 初来日の時、僕は迷って結局これには行かなかった。 あまりに法外な値段に怒ったからだけれど、ラジオで聴いた。 散々な演奏だった。 世間の評判もあんまり芳しくなかったと思う。
しかし、二度目はどおしても行きたくなった。 演目がすばらしい! スカルラッティとシューマンの『クライスレリアーナ』があったから。 1986年のことです。 実は僕はそれほど期待していたわけではない。 前回のを実演ではないけれど知っていたから。 しかし意外にも好演だった。 往年の眩いばかりのテクニックはもうなかったけれど、彼のあの独特の音はまだ残っていた。 『クライスレリアーナ』は確か、演目変更でやらなかったような気がするが、実はよく覚えていない。 しかし、スカルラッティはたったの3曲だけだったけれど、すばらしかった。 これらの小品から夢の中に誘うような、そんな独特の世界を見せてくれた。 僕はとても満ち足りて帰った。 そしてそれから2~3年して、彼は死んでしまった。

今ならチェンバロでいい演奏があるのだろうか。 全曲を入れたロス、それにドレフュス、ピノック、コープマン、古いところではレオンハルトも聴いたけれど僕にはどれもしっくりとこない。 新しいところのルセとシュタイアーは聴いていない。 シュタイアーにはかなり興味があるのだけれど、どちらかというとピアノ・フォルテでだ。 彼がもし、チェンバロでなくピアノ・フォルテでこれを入れたのなら、一度は聴いてみたいとおもうけれど。

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uploaded:2004