本州は尾道から四国は今治を繋ぐ『しまなみ海道』が開通した1999年、早々にサイダーとサリーナは自転車で、そしてペタッチはなんとマラソンで通ることにしました。しかし偶然にも両者とも、最長の来島海峡大橋を渡れませんでした。今回はそのリベンジを! と意気込んで尾道に乗り込みます。
電車の窓から瀬戸内の島々が重なるように見えだすと、気分は否応なく盛り上がります。真っ青な海に反射する太陽の光とそこに浮かぶ緑の島! ああ~、瀬戸内!!
尾道大橋・新尾道大橋
『しまなみ海道』には自転車のルートが設定されていて、気持ちよく走れます。レンタサイクルも発達していて、ルート上に10カ所ほど設定さているターミナルで乗り捨てができる上、数日間に渡って借りることもできるので便利です。かつては広島と愛媛の県境で自転車を交換しなければなりませんでしたが、現在は改善されていて、県を跨いでも問題なく利用できるようになりました。マーコンとペタッチ、そしてビジターのマコネーは尾道駅前で貸自転車(3段変速)を借りました。今回3人はこれで今治へ向かうのです。
尾道で腹ごしらえしたあと、いよいよサイクリング開始です。しかし、尾道から向島に架かる新尾道大橋は自動車専用道で自転車は通れないし、古い尾道大橋は狭く車が多いので快適ではありません。
向島への渡し
安全で快適なのはこちら、『渡し』です。わずか数分で尾道と向島(むかいしま)を結ぶこれら航路は複数あり、若干の料金の違いがありますが、まあ大差はありません。私たちは福本渡船(一番安いらしい)を利用、70円でした。私たち以外にも地元の人が数人自転車を乗せていました。ここでは『渡し』は古くからある庶民の足なんですね。
いつの間にか『渡し』は、動き始めたのがわからないほどスムースに、尾道水道を渡り始めました。そして5分も経たないうちに対岸の向島に到着です。
向島の運河を行く
向島に上陸するとまず小さな運河沿いを南下します。さあサイクリング開始、と張り切るペタッチを先頭に、マコネー、マーコン、サリーナと続きます。途中、別の渡船がこの運河をゆっくり走って行きました。
御幸瀬戸を行く
国道に出た後、西に向かうとr377に入ります。まだそこそこ車の交通量があるものの徐々にのんびりした風景になり、再び海面が現れると、そこは岩子島(いわしじま)との間の御幸瀬戸。進むにつれ、後ろの尾道の山並みがだんだん小さくなります。
向島大橋とマコネー
向島の西側、向かいは岩子島で、そこに架かる真っ赤な橋が現れました。サイクリングは初めてというマコネーが快調に行きます。
『お~、あれが因島(いんのしま)大橋かな? あれを渡るの~』
『いえいえ、あれは向島大橋、因島大橋はもっと先です~』
と、まあこんな会話を楽しみながらのんびり行きます。
因島大橋へ向かう
向島大橋を過ぎ、正面の因島がぐっと近づくと、逆光の中、大きな吊り橋が見えだしました。どうやらこれが因島大橋のよう。海面は正面から差す太陽の光を反射して、強烈な輝きを放っています。
因島大橋を渡る
因島大橋は、先ほどの赤い向島大橋とは比べ物にならないくらい大きく、どんどん近づくと、その威容に圧倒されます。
『お~、すご~っい!』
『わ~、感動!!』
と叫びつつ橋の下をくぐります。しばらく進むと橋への上り口です。橋は高いところに架かっているのでちょっとした上りで、標高50mくらいまで上ると、ようやく橋に到着しました。この橋はめずらしい2階建てで上が車、下が自転車や歩行者のゾーンになっています。下のゾーンは、上が塞がっているのと、構造の鉄骨が複雑なのと、転落防止のネットフェンスが近くに張り巡らされているのとで、他の橋よりだいぶ閉鎖的な印象です。
白滝山へ
しかし、無事最初の橋を渡り終えるとやっぱり感動ものです。海や島々がよく見えますからね。
さて、因島に渡った私たちはここでちょっと標準ルートを離れ、白滝山(しらたきさん)に向かいます。そこには、すばらしい紅葉と景色が待っているはずです。しかし、その代償は… 山というからにはやっぱり高いところにあります。ここでもちょっとアヘアヘで、貸自転車3人組はついに押しに。
白滝山から三原方面を望む
みかん畑を眺めながらよろよろと押し上げると、小さな駐車場に出ました。ここからは徒歩で上ります。結構な石段を上ったところはこんなところ。
紅葉と因島大橋
紅葉、そしてその下に広がる瀬戸内の海と島々。この対比がなんとも素晴らしい!
白滝山から因島大橋を望む
渡って来た因島大橋と続く島々です。
白滝山の五百羅漢
白滝山には小さなお寺と五百羅漢があります。石仏は実際は五百を越え700体あるのだとか。山全体の紅葉には少し早すぎたようですが、それでもところどころは真っ赤に染まっています。
のんびりした風景
白滝山で紅葉と眺めを堪能したあとは一気に下り降ります。周辺はこんもりした山を背景に、畑が広がるのんびりした風景です。
生口橋
主に内陸を行く因島の標準コースには、途中にさほど見所がなく、次の見所はもう生口(いくち)橋です。橋へは海面近くからアプローチするので、その手前2kmほどから海と橋とが楽しめます。それでこちらがその生口橋、主塔から何本も斜めにケーブルを張り、それで橋桁を支える形式の斜張橋です。完成した当時は斜張橋としては世界一の規模だったそうです。
生口橋を渡る
この橋は欄干が低く斜めのケーブルもうるさくないので、橋からの眺めはとてもいいです。海面はまるでここが海ということを忘れさせるほどに平らで静か。ちょうど行く先の山の頂に夕陽が落ちて行きました。反対側を振り返ると、因島の上にうっすらと白い月が出ています。
夕陽
生口島に渡ると今日の終着地はもうすぐです。ここからはずっと海岸線を走ります。さっき山の上に沈んで行った太陽は、海岸に出るとまだ健在でした。神戸から来たという学生たちに混じって、どんどん沈む太陽を追いかけて競争。このときばかりは、まるで少年や少女に帰った気分でした。沈むにつれ大きくなる太陽、不思議ですね。
そんな中、突然ペタッチが遅れだします。
『ど~したの、ペタッチ、疲れたの?』 と聞けば
『なんか急に自転車が重くなった!』 とのこと。
そういえば少し前からペタッチの自転車からは、なにかギコギコ、ガシガシというへんな音がしだしていたのです。調べてみると、後輪がほとんど回転してくれない状況。ありゃ、ま! しかし宿はもうすぐ。気力でガンバレ、ってことで、他のメンバーは無視して夕陽を追い続けます。ペタッチ、危うし!
満腹、海の幸!
夕陽を追いかけて、追いかけて、ちょうど陽が沈んだところで、本日の宿に到着しました。完璧なスケジューリングです。サイクリング初挑戦のマコネーは終盤ちょっとよろよろし始めたものの、それでも無事完走、すばらしい。 ところでペタッチは? 最後は押しても動かないくらいの自転車を引きずるようにして、なんとか到着。
マコネーの初サイクリングを祝し、ペタッチの無事を祝い、そして全員の完走を祝してこのあと大宴会が始まったのはもちろん言うまでもありません。すばらしい刺身にたこシャブ、煮魚にあれやこれやともう満腹。中でも『あこう』(キジハタ)の刺身は最高でした。瀬戸内ってすばらしい!
ところで、貸自転車のチェックは慎重にね、ペタッチ。そんで、明日はどうなる?
ひとこと by サイダー
今から8年前の1999年、本州から四国に自転車で渡れる『しまなみ海道』が開通したと聞き、直後に勇んで出かけました。いくつもの橋を自転車で渡りながら、最後は四国に足を着けられるなんて、なんて素敵なんでしょう。瀬戸内のおだやかな海とそこに浮かぶ緑の島々の素晴らしい景色、そしておいしい海の幸。その時の感動をもう一度味わいたくて、ペタッチからの誘いに二つ返事でOKしたものの、直前だったので新幹線は取れずに広島空港からのアプローチになりました。
時間的な都合で空港からはバスを利用しましたが、山の中からずっと海までダウンヒルなので自走でも楽しそうです。途中、緑の島々がきらきら輝く瀬戸の海とともに姿を現したときは感動しました。
さて『しまなみ海道』、海沿いは楽しく、橋からの眺めはとってもすばらしい。標準ルートは今治まで80kmほどなので、一日でかっ飛ばしてもいいのですが、それではちともったいない。このルートからちょっとはずれたところにも魅力的なところが沢山あって、前回は大三島のサイクリングコースが楽しかった。今回は因島の白滝山に上り、生口島の隣の高根島を一周しました。
白滝山まではちょっと上りですが、素晴らしい紅葉と因島大橋方面への景色が最高でした。高根島はみかんが生る静かな島で、海沿いは景色が良く、ちょっと山も楽しめる、サイクリングが楽しめる島でした。
『しまなみ海道』は、どこでもいいから、ちょっと寄り道がおすすめですね~