御船蔵
萩には3カ所の重要伝統的建造物群保存地区があります。三の丸にあたる堀内地区、橋本川沿いの武家屋敷と土蔵、鍵曲(かいまがり) の平安古(ひやこ)地区、そして北前船で栄えた町家が多く残る浜崎地区です。宿に近い浜崎をぶらぶらすると立派な商家や酒蔵、そしてこんな船の倉庫などがありました。
鶴江の渡し
その浜崎の入り江あたりの阿武川には、対岸が渡る『渡し』があるとのことなので探すと、漁船の前で漁師が場所を教えてくれました。
『舟は向こう岸にいるから手を振って合図すると来てくれるよ。』 とのこと。教えられた場所に着くと『鶴江の渡し』という看板と小さな小屋がありました。なるほどそこに人はおらず対岸に手を振ってみますがどうも気づかないようです。そこでジークが、
『お~い!』 とでっかい声で叫び、さらに手を振って合図します。すると船頭が気づいたようで対岸の小屋から出てきて、小舟を操りゆっくりとこちらに向かってきました。この渡し、現在は市が運営していて無料、自転車も乗せてくれます。現在でも市民の足になっていて、一度向こう岸にサリーナたちを渡した舟はおばあさんを乗せてふたたび渡ってきました。
萩対岸の阿武川を行く
渡しで対岸に渡った私たちはいよいよ津和野に向けて出発です。このあたりの河岸には小さな漁船がたくさん停留していて萩が漁村であることも伺えます。
広くなった阿武川
長旅の疲れが心配というジークと東萩駅で分かれた後、橋本川と分かれる前の広い阿武川を遡って行きます。後ろも前も小高い山で囲まれています。萩は周辺をぐるっと山で囲まれたところなんですね。
阿武川ダムへ上る
川幅が徐々に狭まり対岸の山が迫ってくると道は上りになります。目的地津和野は山の中にあるので、今日は一日ほとんど上りのコースでが、萩からしばらくは緩い。
阿武川ダム付近の眺め
勾配が突然急になりグッと踏んで標高100mまで上ると、ちょっと視界が開け阿武川ダムに到着です。このダム湖には湖という名が付いてなく、川とも湖とも言えるような広さのものでした。木々は新緑というより、もう深い緑に変わろうとしています。
阿武川を駆けるデラリン
ダムから先の阿武川沿いはほぼ平坦。デラリンが快走し、サリーナが後を追います。ケロガメとムカエルは遥か後ろに!
たまには並んで
『お~い、まっちょくれ~』 とのムカエルの叫びにペースを落として今度は4人仲良く並んで走ります。このあたりは萩から近い景勝地ですが、車はめったに通らないので大丈夫。
重塀岩
長門峡(ちょうもんきょう)の表示が道端に現れるようになってきたころ、突然にょっきりとした岩、重塀岩(じゅうべいいわ)が現れました。長門峡は阿武川の上流にあたる渓流の景勝地ですが、その入口にあるのがこの重塀岩です。山は深く、穏やかな川面から一つだけそそり立つこの岩はなんとも奇妙です。
龍宮淵を進む
重塀岩を横目に進むと、川の流れはダムの水位を越えたらしく突然、狭く浅くなりました。長門峡の佳境に近づいたようです。道が大きなカーブに差し掛かると龍宮淵の表示とお店が現れました。ここが長門峡の散策路の出発点、龍宮淵です。
食堂で早めの昼食を取りつつ、この先、生雲川に沿って生雲ダムに抜けられるか聞いてみると、その散策路は現在は閉鎖されていて行けないと言います。
さすがに行けそうにない!
ともかく先をちょっと覗いてみようということで散策路を進むと、道幅は60cmほどになり、片側はごつごつした岩場の下に渓流です。自転車で行ったらUターンして引き返せなくなるかも、ということでこの道は断念。
山越えだー
来た道を引き返し山越えをすることにしました。橋を渡り山道に入るといきなり10%超えとなりあへあへ、はひはひが続きます。いえいえ、続きませんでした。最初から押し、押しですねー。
雨の中激坂を押し上る
そこに突然パラパラと冷たいものが。空が急に暗くなり雨が降り出しました。いそいで雨支度を整えると、
『上りだから雨もちょうどいいねぇ。』 と訳の分からないことを言いつつ、わっせわっせと自転車を押し上げます。
田んぼ
150mほど押し上げて頂上に着き、さあ下りは注意してと思ったら、ほんのちょっとで下りは終わり穏やかな上り基調の道になりました。田植えが済んだばかりの田んぼがいい雰囲気です。
晴れてきた~
しっとりとした田舎の風景を見ながら走っているとどうやら雨は上がったようです。
『わ~、晴れてきた~、ワイワイ!』 とデラリンがダッシュ。
田んぼの間を快走
ケロガメは半袖半ズボンになり、ムカエルも半ズボン姿でのどかな景色の中を行きます。この県道から国道に入ると道は広くなり、やや単調に感じるようになります。
砂利道を行く
そんなときは、ダートだ~。。ちょっと横にそれるとそこは道のような道でないような。
『ダートはいやだ~』 とケロガメがケロケロ泣くのですぐに国道に戻りました。
大衆食堂
今日の昼食は少し早めだったので小腹が空いてきました。雨もあり、ごろんと寝転んだ休憩も取っていません。国道から県道13号に入る交差点の裏側で見つけたのは、まだこんな食堂があったのか、というような『大衆食堂』です。小さな看板に営業中とあるのでガラガラと戸を開けると、奥からおばあさんが出てきて、 『やっていますよ。』 とのこと。ここで第二の昼食&休憩です。いや~、ありがたや。
馬草峠
この食堂の正式名称は富士屋食堂といいます。名前がまたいいねぇ~ その富士屋食堂でゆっくりくつろがせてもらった後は一路津和野に向かいます。しばらく上ると島根県津和野町の看板が。ここが山口と島根の県境、馬草峠です。さよ~なら~山口県、と手を振り、ここから一気にダウンヒル。
赤い瓦屋根は津和野の象徴
爽快に下ると赤い瓦屋根の集落が見えてきました。津和野をはじめこの周辺にはこの赤い瓦が多く使われています。この釉薬がかかった瓦は石州瓦といい、島根県の石見地方(石州)が産地で、愛知県の三州瓦、兵庫県の淡路瓦と並ぶ代表的な瓦の一つだとか。
『来たね~、津和野に。』 とサリーナがいえば、
『じゃあここからは案内しま~す。』 とケロガメ。またしてもケロガメはこのツアーに参加する直前に津和野入りし情報収集していたのでした。
到着、津和野
西周の旧居と鴎外の旧居を覗いて津和野の街中に到着です。白い塀の向こうに赤い瓦屋根の立派な建物、その足下には津和野のお約束、鯉が泳いでいます。
ここ津和野でデラリンが離脱、電車でやってきたジークと再び合流です。デラリン、4日間おつかれさま、そして完走おめでとう!
ひとこと by サイダー
大きな緑のうねりに白群の空。
浮かぶ雲は早送りの映画のように変化し、うっすらとした筋雲から細かい鱗雲に変化してゆく。
エメラルドの池にすがすがしい萌黄の滝。
驚くほど静かな朝の海は深き群青。
褐色の岩を洗う白波。
森を抜ければ突然薄藍鼠の日本海。
鮮やかな黄色はアヤメか菖蒲か。
土壁と白壁に銀鼠の瓦。
錦の鯉の後ろには赤錆に柿渋色の瓦がざわめき、朱の鳥居を上れば交差する光と影。
すばらしい色々のツアーでした。