山寺駅
まずは山寺へ。閑さや岩にしみ入蝉の声 で有名なここは、かつては深き山の中にあったのでしょうが、現在は目の前まで立派な道と鉄道が走っています。軟弱ジオポタは山形駅から山寺駅まで列車で移動です。
今日は昨夜合流したジークもいっしょ。ひとまず山寺駅でハイ、ポーズ。
駅前の橋から山寺を見上げる
正面にこんもりした山が迫っています。見上げればその中に小さなお堂がいくつか見えます。これがかの山寺です。
駅からすぐの赤い橋を渡ると、かつての門前町の雰囲気が少しだけ感じられる宿や飲食店が建ち並ぶ道に突き当たります。それらの建物のすぐ後ろには満開の桜。この山も新緑はまだで、代わりに桜が化粧しています。
石段から蝉の声が染み込んだ岩を見る
門前町の中にある立石寺の駐車場に駐輪させてもらい、登山口を上り出します。
最初に現れる根本中堂の前を通り、山門をくぐるとすぐに石段の上りが始まります。石段の高さはわりかし低めで上りやすいのですが、自転車の上り同様に数分でアヘアヘになってしまうジオポタでした。
せみ塚から見上げた岩
アヘアヘしつつもなんとか『せみ塚』に到着。
芭蕉の句をしたためた短冊をここに埋めて、石の塚を建てたことからこの名が付いたそうです。そこから見上げると、確かに蝉の声も吸い取ってしまうくらい、あちこちに穴があいた岩が聳えていました。
仁王門
せみ塚で一休みしたのち、さらに上るとなかなか立派な構えの門が高いところに建っています。仁王門です。両袖には運慶の弟子の作といわれている仁王様が、ぎょろっとした目をひんむいてこちらを睨みつけています。
釈迦堂方面を見る
仁王門で奥の院までの半分くらい来たでしょうか。休みながらえっさ、えっさと上り詰めます。なんとか辿り着いた奥の院はちょっと拍子抜けのものでしたが、少し下にある五大堂からの眺めは素晴らしいといいます。
今度は来た道をわっせ、わっせと下ります。五大堂へ向かう途中、東側の釈迦堂方面への眺めはなかなかです。新緑だったらもっとすばらしいでしょう。
五大堂からの眺め
これがその噂の五大堂からの眺めです。山間に消えて行く道を進めば、最初計画していた仙台からここに抜ける二口峠です。二口峠はまだ冬期通行止めが解除されていないので、昨日私たちはあの山の向こう側を超えて山形に入ったのです。
立谷川
五大堂からの眺めを楽しんだあとは山を下り、いよいよサイクリングです。
山の下には立谷川の流れがあります。この流れに沿って、駅前の赤い橋から二つ目の橋の袂からサイクリングロードが西へ延びています。
立谷川沿いを行く
幅2mほどのこのサイクリングロードは快適です。山寺よりさらに東、宮城県との境に横たわる山々を後ろに
『わぁ~、ここはきもちいい~』
と快調に飛ばすサリーナとケロガメ。しかし一人遅れ気味のジークが後方でなにやら叫んでいる。
『あえいおう~ぅ~』 意味わからん! なんとジークは次の演奏会に向けて発声練習をしていたのでした。あ~りゃま~
前方に朝日連峰
そんなジークを放って、ケロガメが飛ばしサイダーと続く。
前方には新潟県との境に横たわる朝日連峰が、うっすらと雪化粧をしてまるで雲がたなびくように現れました。視界の左の端から右の端まで延びるこの連峰は圧巻です。その右端の丸っこい山は月山だったでしょうか。(写真では見えず)
立谷川と桜
この快適なサイクリングロードはこの先、寒河江まで延びて行きますが、私たちは5kmほどのところにある荒谷橋から山形市内に向かいます。
荒谷橋近くのサイクリングロードは桜並木で、足元には色鮮やかなチューリップも咲いていました。
旧山形師範学校
立谷川沿いのサイクリングロードを離れ、r19山形山寺線で市内にまっしぐら。山寺から10kmほどは穏やかな下りなのでどんどこ行きます。山形山寺線は交通量は多くないものの、あまり特徴のない道です。
山寺から小一時間で市内の旧山形師範学校、現県立博物館・教育資料館に到着です。明治時代の建物で木造建築ですが、ルネッサンス様式を基にしたちょっとユニークなものです。明治から最近までの教育に関する資料が展示されていて、自分の子供のころのそれらを見るとなつかしいです。
旧県庁
師範学校の次は文翔館です。こちらは旧県庁。
先の師範学校と同時期の明治期に建てられましたが、現在のものは火災により焼失したあと大正年間に再建されたもので、昭和から平成にかけて修理されたものだそうです。ルネッサンス様式による煉瓦造の三階建てで、外壁には石が貼られています。昨夜はきれいにライトアップされた姿を見せていました。
室内も品格のある意匠でいい感じです。
旧県会議事堂
旧県庁の脇に建つのは旧県会議事堂。煉瓦造の二階建てで、公会堂として様々な催しに使われたそうです。
議場内部
議場兼公会堂のインテリアはかまぼこ型ボールト天井に細い列柱というしゃれたものです。
山形城跡のお堀
文翔館のあとはそばで腹ごしらえして山形城跡に向かいます。
このお城の土手も満開の桜。ここは本当に見事です。東側のお堀は散った花びらで水面が見えないくらいでした。
桜のトンネルを行く
山形城の跡地の多くは運動場などの実用的な用途で埋められていました。その廻りにある土手に上がると、先ほどの桜がトンネルになっています。
ここは自転車に乗ってはもったいない、とゆったり桜を満喫するジークとケロガメ。
旧済生館
山形城跡地内にはあまり見どころはないのですが、唯一といっていい見どころがこちら、旧済生館・現山形市郷土館です。
旧山形師範学校や旧県庁と同年代の明治期の病院建築で、元は市内にあったものを移築したものだそうです。木造三階建ての洋風建築で、低層部は円形に近い多角形、最上層は八角形の楼となっていて、ちょっとかわいらしい。出来た当初はきっとみんな、あっ、と驚くようなしゃれた建物だったことでしょう。
現在、内部には医療関係の展示がされています。
山形城の南門を出る
桜と旧済生館で山形城跡を楽しんだあと、南にある門を出て山形駅の西側の再開発地区を抜け、蔵王温泉に向かうべく南下します。
蔵王公園線に入る
山形城跡の霞城公園から7~8kmほど走り蔵王公園線に入ります。
ここまでほぼ平坦だった道が急に上りになります。すぐに勾配は7~8%になりちょっとあへあへ。しかしすぐに5~6%に落ち着きました。
上り序盤のケロガメ
下から250mほど上ったところで後ろを振り返れば、大きく裾野を広げているのは白鷹山でしょうか。一旦穏やかになった勾配の道を余裕で進むはケロガメです。
そして行く手には頂部にちらちらと白いものを残した、あの蔵王の山々がついに現れました。その山々に向かってえっこらえっこらペダルを踏むサリーナ。(TOP写真参照)
徐々に蔵王に近づく
この蔵王公園線は二車線で路肩もまずまずの広さがあり、交通量は少ないので安心して走れます。山道特有のあのうねうねとしたヘアピンカーブはなく、曲がりもおおらかです。
上り詰めるケロガメとサイダー
しかし勾配はずっと7~8%が続き、時に10%超えに。平均斜度はそれなりにきついのですが、極端な勾配の変化がないので走りやすい上りです。
『そ~はいってもね~、やっぱりきついんだよ~』 とヨタヨタのサイダー。
開けた視界
標高700mを超えると右手の視界がパッと開けました。そこにはずいぶん近づいた蔵王の山々の姿があります。
中盤に空は雲に覆われたのですが、ここではその雲はどこかへ行ってしまったようで、清々しい青空です。
蔵王温泉到着
蔵王公園線から蔵王ラインに入ると勾配は急に緩くなりました。この道に入ればもう蔵王温泉まではすぐです。えっこら~、と一漕ぎして蔵王温泉の街に到着。
私たちの宿は大通りに面した『ちとせや』さん。荷を解き一服したのち、宿のグランパに大露天風呂まで車で送ってもらいました。大露天風呂は1kmほど上にあり、激坂なので歩いて行くのはちょっと大変なのです。
大露天風呂
車のエンジンが悲鳴を上げそうな激坂を上り、到着したのがこちら。この露天風呂はスキー場のゲレンデ間にあり、その通路となる部分からアクセスします。駐車場で車を下りると、ちょっとした木立の向こうに露天風呂が見えます。距離はそれなりにあるものの、ほぼ丸見えに近い状態なのに少々びっくり。まあ、見えるのは男湯ですが。
周囲には硫黄の臭いが立ちこめています。まずはかけ湯をと桶に湯を汲みバシャっとやると、
『アチチチチー』
ここの湯はとても熱いのです。そんなわけでか湯船も上下の二カ所に別れています。上は熱くて下はそれよりぬるめです。アッチーのが好きなケロガメは上段に、ぬるめが好きなサイダーとジークは下段です。
『あ~、お~、ふぅ~~ぅ』
こうして気持ちのいいお風呂で、上りの疲れを取ることができました。
P.S. 『ちとせや』さんの夕食はたまたまだそうですが、蔵王牛のすき焼きでした。大きくて新鮮な肉は食べきれないほど。どうしてこの値段でこんな食事が出せるのかわかりません。夕食以外の部分も含め、コストパフォーマンスは★★★の宿、お薦めです。
ひとこと by 参加10周年のジーク
普段はのんびり一人でポタっているので、こんなに速いスピードでこんなに長く一日中走ってこんなに何日も走り続けるのは一年に一度のこのGW企画だけで、見どころがいっぱいありすぎて超満腹の「みちのく横断」でありました。
例えばあちこちでの満開の桜にびっくりしたのですが、一転蔵王では残雪と強烈な寒風にまたびっくり、雄大な雪の回廊でのサイクリングという稀な体験をしました。日本海にそそぐ荒川沿いの「赤芝峡遊歩道」の新緑の美しいパッチワークも大変印象に残りました。
不思議な縁で"GEO POTTERING"と出逢ったのが10年前で、以来一度も欠かさず参加して今年がちょうど10年目! 今回は、相変わらず若きサイダー&サリーナに加えて一年のうちの4カ月は我が家を離れて全国を走り続けているという超健脚のケロガメとの4人とあって、3人に迷惑をかけないかと危惧したジークでしたが、筋肉痛も疲労感もなく、さすがのサイダー企画を満満喫させていただきました。