7月の『海の日』を含む三連休はまだ梅雨が明けず、土日とも朝晩雨で激しい雷雨もありました。この連休最終日も雨予報でしたが直前に好転、曇り時々晴れとなったので、近場に走りに行くことに。
予報気温はこの時期にしては最高28°Cとやや穏やかですが、それでも平地は厳しいということで、ちょっとだけ高度のあるところへ。
選んだのは埼玉県の秩父付近、奥武蔵グリーンラインを絡めたコースです。しかし山と前日の案内ということで参加者はたったの二人。西武鉄道の横瀬駅でお弁当を仕入れ、いざ二人旅に出発。
この日の天候は、さすがに梅雨時だけあり湿度は高いのですが、気温は走り始めで25°Cと、まずまずといったところ。
秩父の武甲山は石灰石の塊で、それがセメントの材料となることからこの周辺にはセメント工場がいくつかあります。走り出すとすぐに、うしろにその武甲山とセメント工場の姿が見え出します。もっともこの日は曇りなので、武甲山は雲の中。
R299を渡り、横瀬川を渡れば道は徐々に上り出します。
道脇には大分背の伸びてきた青々とした稲が並ぶ田んぼ。その向こうには小高い山が見えています。
この道が上の道にぶつかると、それが林道丸山線です。林道丸山線は横瀬川の支流の曽沢に沿って上って行きますが、道脇にあった田んぼとその先の小山はすぐに木立によって見えなくなり、二軒の鉱泉旅館を過ぎれば民家もなくなり、右手にせせらぎの音をだけが聞こえるようになります。
両側から深い緑が覆い被さるようになると、しばらくは眺望もなく、ひたすら上りという雰囲気が増してきます。
そんな中、時折右手の木立の合間に遠方の山が見え隠れします。
その右手の木々が少しの間途切れます。ここは芦ケ久保駅の上あたりのようですが、その駅もその上にある集落もここからは見えません。ただ、もっと手前の山ともっと遠くの山の稜線が見えるだけです。
林道丸山線の勾配はここまで7~8%とほぼ一定で、アップダウンや勾配の変動がなく、かなり上りやすいといえます。これは頂上の県民の森近くまで続きます。
勾配同様にここまでは景色にもあまり変わらなかったのですが、それが変化するのは道が曽沢を渡って谷の南側を走るようになるところから。ここからは谷を挟んで北側に、これまでその袂を走っていた山を見ながら走るようになります。(TOP写真)
つまり今まで右手が谷だったのが、ここから左手が谷になるのです。その左手の谷が大きく開け、秩父の町が見えるところもあります。
さらに上れば、曽沢の谷の一番奥に辿り着きます。ここからは、左右から山が落ちていく曽沢の谷が、ずっと先の秩父を流れる荒川まで続くのが見えます。
曽沢の谷を再び渡り、道が元の北の山側を行くようになると、そこからがこの林道の最大の難所で、10%超えの激坂になります。ヘアピンカーブを一つ過ぎ、ヨタヨタと這い上がるように上れば、左:野外活動センター、右:県民の森、の標識のあるT字路に出ます。ここで激坂は終わりです。この間1.5km。
このT字路からは勾配が穏やかになり、1km少々行くと、県民の森の入口に到着します。この入口には下界ではすでに終わったあじさいが咲いていました。気温は高度の上昇とともに下がり始め、この標高890mの県民の森入口では、なんと19°Cで、ちょっと肌寒く感じるくらいで、快適。ここまで上ってきた甲斐があるというものです。
ここは林道丸山線の最高標高地点ですが、特に峠の名もなく眺望もありません。しかし駐車場の脇に小さな東屋があったので、そこでお弁当休憩に。
眺望もなく喫茶店も売店もないので、お弁当を食べてしまうともう特にすることもありません。ということでそそくさと下り始めます。
ここからの林道丸山線は、上ってきた道と同じような森の中を2kmほど下ると、大野峠に出ておしまいになります。
大野峠は、南東から尾根を走ってきた奥武蔵グリーンラインがここから北へ下り、高篠峠を経て白石峠に向かう地点でもあります。
その大野峠から奥武蔵グリーンラインで1.5km下ると高篠峠です。大野峠も高篠峠も今日のコースでは下りの途中になるので、なんでこれらが峠なのか不思議ですが、下から上ってくると峠という感じのところです。
このまま高篠峠を直進すれば白石峠から定峰峠に抜けますが、ここは大野に下ることにします。
高篠峠に石の立派な竣工之碑が建っているこの道は、林道大野峠線といい、大野の集落まで6kmほどの下りとなります。その上半部は森の中のヘアピンカーブの連続。
そして下半分は視界が開け道幅も広がり、都幾川の谷に沿う気持ちのいい道となります。
上半分は慎重に、そして下半分は豪快に下って大野の集落に到着。大野からは七重に向かうのですが、林道大野峠線の下の方は快適でスピードが出ていたので、その道の入口を見落として下り過ぎてしまいました。さらに下からでも七重には上れますが、当然下れば下るほど、その上りは厳しくなるのです。
ということで、大野からはまず激坂上り。そんな中、道端に大きなユリが咲いていました。良く見ればそれは花の模様もかなり派手なもので、また、かなり強い香を放っています。
そしてこちらは真っ赤なカンナ。この花が咲くと夏も本番というところでしょう。
左手には先ほど下ってきた都幾川の谷と、その先に奥武蔵グリーンラインが走る山々が見えています。
あれっ、七重は北だから都幾川の谷に沿って走ることはないよな、とこの時、誤った道を走っていることに気付くのでした。どうやら激坂に気を取られていて、林道赤木七重線に入り損ねたようです。
この時、すぐ先に山側へ向かう道を発見。もしかするとこの道で七重に行けるかもしれないと、その道に入ってみます。しかしこれはちょっと山を上っただけで、元の道に戻ってしまうのでした。
しかしこの合流点のすぐ先に林道赤木七重線の入口がありました。林道赤木七重線は都幾川の支流、七重川に沿って上って行きます。
その七重川に架かるのは小さな石橋の『かみかわはし』。このうしろの流れは岩が段上に積まれ、滝のようになっています。
林道赤木七重線の西は堂平山と笠山です。森が開け七重の集落が現れると、笠山の南に位置する堂平山が見えるようになります。今日はお天気が今一つだからか、普段はあの山頂付近から盛んに飛んで来るパラグライダーの姿はありません。
道が白石峠側から下って来る林道剣ヶ峰七重線と合流すれば、すぐに七重休憩所が見え出します。この休憩所はハイカーのために整備された施設で、舞台状の広間とトイレがあります。いつだったかここを通過した時、ハンガーノックになった同行者を休ませてもらった思い出のあるところです。
林道赤木七重線はこの七重休憩所を過ぎると、500mほどでピークに辿り着きます。
下り出すとほどなく右手からせせらぎの音。上り側の川は七重川でしたが、こちらは館川で、小川町で槻川に流れ込みます。
その館川に沿って下れば赤木の集落はすぐです。
館川とその支流の栗山川の小橋を二つ続けて渡ると、道端に小さな石碑が三つ建っています。右端のそれには馬頭観音と彫られています。これは、このあたりに古くから集落があったことが伺い知れる資料の一つでしょう。
この馬頭観音のところから西に道が延びています。その入口には林道栗山線の標識が。
このまま赤木七重線を下ってしまえば小川町まではすぐなのですが、今回は時間もあることなのでこの林道栗山線を行ってみることにします。
左手に栗山川を見ながら上り出す林道栗山線は、入口は10%を超すかなりの急勾配で、ここはえっちらおっちら。
上り口が急坂という例はかなり多いのですが、こうした場合、その後は大抵勾配が落ち着きます。しかしこの栗山線はなかなか斜度が緩みません。しかも午後になりお日様が顔を出し、気温もかなり上がってきて、暑く苦しい。
なんとか足を止めずに、ここはただ黙々と上り詰めて行きます。
せせらぎの音が近くなると、いつの間にか道脇に栗山川が流れています。
道がヘアピンを描き栗山川が見えなくなると、栗山線は左手の笠山に上って行きますが、その途中、右への分岐があります。この道は林道栗山支線といい、東秩父村に入ると名称が変わり林道萩帯線となります。この林道栗山支線に入れば勾配は穏やかになり、すぐにピークに辿り着きます。
『ここは足にきた~』 と、よたよたと倒れ込むサイダー。
林道栗山線に入ってからここまではわずかに2kmほどですが、これはきつかった。
栗山支線を下り出し、もうこれからは下りだけと思われしも、行政区の境を越えて萩帯線に名称が変われば、そこからはちょっとした上りもあるのでした。それに加え、ここはあまり交通がないようで、路面に苔むしたところもあります。しかしこの道はなかなか気持ちのいい道です。
穏やかに上って下り、上って下り、青々とした田んぼと民家が現れればそこは萩平。ここで林道萩帯線は終わります。
この終点からまたちょっと上り返して小さな萩平川を渡ると、集落の中心部に到着。ここからは林道白萩線が始まります。これもまずは上り。
今日のコースにはあまり展望はありませんが、ここは北側に視界が開けていていい感じです。
『ちょっとへばってきた~』 と、しばらく走っていないサリーナはこのあたりでよろよろ。
白萩線は両側が木々に覆われるようになると路面に苔が生えだします。しかし上りはすぐに終わり、下りに転じます。すると道幅は半分ほどに狭まり、路面一面に苔がびっしり。雨上がりのこの日はかなりウェットなので、慎重に下って行きます。
かなりの急勾配の下りの先に車の音が聞こえたと思ったら、そこはr11の熊谷小川秩父線でした。
このr11は槻川に沿って延びています。
ここからまた山に向かうこともできるのですが、空には青空が広がるようになり、気温もかなり上がっています。これはもう町に下ってビールをあおるしかない、と下に向かうことに決定。
ここからのr11は穏やかな下りで、壮快。落合橋でr294にぶつかると、左に行けば寄居、右に行けば小川町で、槻川もそれに沿って流れています。ここは小川町に向かうことにしました。
いつもならできるだけ幹線を避け細道を選んで走るのですが、この日はビール優先でr11をまっしぐら。
やや広くなった槻川を渡るとすぐに小川町の市街に入ります。ここまで来れば小川町駅までは、もう一こぎ。
夏場のサイクリングは走る場所が限られます。できれば標高が1,000mを超える涼しいところを走りたいものですが、そうした所まではアクセスに時間が掛かるし、なにより難易度が高くなるので気軽にホイッと行くことはむずかしくなります。
都心から一時間ほどで行け、標高もそれなりにあるこのあたりには車がほとんど通らない快適な林道も数多くあるので、本格的な夏になる前のこの時期に走るには最適だったかもしれません。