昨日に引き続き今日もお天気。今年のGWは天気絶好調です。今日は温泉地と温泉地を繋ぎます。スタートは浜坂で、ゴールは兵庫県でも一二を争う有名どころの温泉、城崎温泉(きのさきおんせん)。その間には美しい日本海と風光明媚な海岸線があるはず。
今日の前半にはちょっとした上りが続くので、ベネデッタは余部(あまるべ)まで列車移動と決めました。そのベネデッタに見送られて自転車組が浜坂の宿を出発。決めポーズは『カニ、カニ!』
昨日、浜坂には夕方遅くに着いたので周辺を散策していません。そこで浜坂を出る前に自転車組は集落内をちょっと一廻り。
浜坂は温泉地であると同時に漁業の村で、海岸近くには肩を寄せあうようにして漁師さんの家が並んでいます。
その密集漁師村を抜けると海岸に出ます。爽やかな朝の海です。
浜坂の湾には岸田川が流れ込んでいます。
その岸田川の河口にはこんな舟溜まりがあります。湾には立派な浜坂港がありますが、ここに停泊しているのは、川かごく近海で漁をする小舟のようです。
この舟溜まりからは味原川が内陸に続いています。
この流れに沿ってあじわら小径が整備されており、その周辺には浜坂の主要な建物がいくつか建っています。
これは温泉の源泉。
ここの温泉は1978年(昭和53年)に、消雪用の水源を求めてボーリング工事が行われた際、偶然に発見されたものだそうです。
こちらは浜坂先人記念館『以命亭』で、現在は文学館・博物館になっています。
さて、ざっと浜坂を廻ったら、城崎温泉に向けて漕ぎ出します。
岸田川を渡り、久斗川沿いをどんどこ。いい春の朝で、姿は見えませんが空ではヒバリがさえずっています。そして時々草むらから雉が飛び出してきます。
久斗川を離れると道は田んぼの縁を行くようになります。GWが始まったばかりのこの季節、このあたりの田んぼはようやく田植えの準備をし出したところで、まだ水は張られていません。
浜坂から余部までの幹線道路はR178とその旧道ですが、私たちはより海側を通るr260を使います。この道、田んぼが終わると森の中のきつい直登の上りでアへアへ。
いったん下って三尾トンネルまで上り返し、トンネルを抜けたら三尾大島目掛けて下ります。
三尾の入り江まで下ってきました。
この入り江の色はエメラルド色で、海底には種類はわかりませんが藻がたくさん生えています。
入り江から上り返しの急坂を上ると、『御火の浦』と書かれた石碑の前に出ます。そのうしろにはあの三尾大島が海に浮かんでいます。
このあたりの海岸は但馬御火浦(たじまみほのうら)といい、8km続く国の名勝・天然記念物です。
ここでドローンを飛ばしている方がいました。上の写真はその方がドローンで撮影してくれたものです。
このドローン、三尾大島の遥か先まで飛行して行ったのですが、残念ながらその撮影は失敗に終わったということで画像はなし。その代わりに、かつて撮影した鳴門海峡の映像を送ってきてくださいました。まあ、なぜ鳴門海峡? という疑問は残るのですが、ともかく、ありがとう、ドローンさん。
三尾大島の展望所からは、細長い三尾の集落を眼下に山奥へ。
ここから道は林道三尾御崎線となります。この林道は漁火林道とも呼ばれるようです。
さすがに林道だけあって、この最初の上りはかなりきつくてアヘアヘです。カーブの先でおばあさんが一人畑仕事をしています。
『おやまあ、大変ね。でももうちょっとよ。先に灯台が見えてくるからかんばって。』 と、エールを送ってくださいました。
そうか、もうちょっとか、と、なんとか自転車を降りずに踏ん張りますが、なかなかこの上りは終わらず、灯台は影も形も見えません。
しかしなんとか標高170mほどのピークに到達したようです。そこから見る海岸には500mほど海に突き出した鋸岬が見えます。
いったん100mまで下ってまた上り。すると今度は鋸岬を東から眺めるようになります。この上りはしつこく、標高300mまで続いていきます。
山の中には鶯がたくさんいるようで、あちこちから上手なホーホケキョという鳴き声や、あまり上手ではないけれど長〜い、ホケホケホケキョキョキョキョキョキョキョーといったさえずりが聞こえてきて、上りの辛さを和らげてくれます。
道脇ではタニウツギがピンク色の花を咲かせています。
この花は田植えの時期に咲くので『田植え花』と呼ばれ、この花が咲くと田植えをして良いと言い伝えられていたそうです。
エッコラヨッコラと上り詰め、なんとか標高300m越えのピークに到達。このピーク付近からようやく白い灯台がちらっと見えました。余部埼灯台です。その余部埼灯台に向かって、今度は豪快なダウンヒルが始まります。
この道は新緑が美しいのですが、木からぶら下がった毛虫がとても多い。あっちに除けこっちに除けと忙しく動き回りましたが、結局あちこち喰われてしまうのでした。
余部埼灯台に到着です。
この灯台は見かけは小さいですが、海面から光源までの高さ284mは日本一だそうです。
余部埼灯台までくれば、余部まではすぐです。
眼下に余部から香住(かすみ)の先までの出入りの大きな海岸線を見ながら、一気に下って行きます。(TOP写真)
ぐわ〜んと下って小さな川を渡ると、余部に入ります。
するとすぐ、正面にコンクリートの橋梁とガラス張りのエレベーターが見えてきます。良く見ればそこには赤い鉄骨の柱も建っているのに気付きます。
この赤い鉄骨の柱こそが、かつての余部鉄橋の橋脚です。
余部鉄橋は1912年(明治45年)に完成した全長約310m、レール面までの高さ約41mの鉄橋で、2010年にコンクリート製のものに架け替えられましたが、一部の橋脚が残され、周辺は余部鉄橋『空の駅』として整備されました。
出発地の浜坂から列車移動したベネデッタは餘部駅で下車し、そのまま空の駅展望施設の上部にいると言うので、さっそくガラス張りのエレベーターに乗り込みます。ベネデッタが下車した餘部駅は橋梁の上にあるのです。
エレベーターを降りると、そこはこんなところです。
新しいコンクリート製の橋は山側に造られ、海側に鉄橋の線路の一部が残されています。
餘部駅近くではこの線路の上を歩くことができます。
さすがに地上40mはかなり高さを感じます。ここの線路の保守点検は、かなり恐ろしいものと想像できます。
サイダーとサリーナはこの鉄橋を30年ほど前に通ったのですが、列車に乗っていると鉄橋そのものはほとんど見えないことや、やたらに高くてちょっと怖かったことなどを思い出しました。
かつての余部鉄橋に思いを馳せたら、道の駅で一休みし、余部を出ます。
こうして見ると、新しいコンクリート製の橋はごく普通に見えますね。
余部からは香住に向かいます。ここは海岸から離れ、標高150mまでエッチラオッチラしなければなりません。
余部まで輪行したベネデッタの足はフレッシュですが、その他の面々はここまでにかなり痛めつけられていて、少し辛そうです。
三田トンネルをくぐったら三田浜に抜けようと思っていましたが、先頭のシンチェンゾーがr4を真っすぐ行ってしまったので、仕方なくその後を追い、香住に直行します。
香住はこのあたりでは比較的大きな集落で、かなり街っぽい施設が建ち並んでいます。その海はと言うと、西にビーチ、中央に公園、東に漁港。
今日の昼食はここ香住の海辺で。山陰の海といえば蟹ですが、香住には香住ガニがいます。これはベニズワイガニで、松葉ガニに比べて漁期が長いので、この時期でもいただけます。
『今夜は蟹が出ると思うよ。』 というサイダーの忠告を聞かずに、一人豪華にかに御膳に挑んだのはシロスキー。あとの面々は蟹丼やホタルイカづくしなどをいただきました。
昼食の後は香住の集落内を進んで岡見公園へ。
岡見公園は香住の北にちょこんと飛び出した城山半島の小さな岬にあり、国の名勝になっています。
先には白石島が浮かび、その手前には香住漁港の東港が見えます。
岡見公園から西の岩場を見たところ。
ベネデッタ作、火曜サスペンス『カニは見ていた!』の犯行現場。
岡見公園を出たら、あとは城崎温泉までさしたる見どころや名所はありませんが、美しい海岸線と砂浜が続いているはずです。
海岸近くを走る道から日本海を眺めつつ、ひたすら東を目指します。
まずは城山半島を廻り、香住漁港東港に下ります。
本日の観光班のキルピコンナによれば、この先の今子浦にカエルそっくりの『かえる島』があると言うので行ってみることにしました。
それは白石島の東にある黒石島のさらに東にあるそうです。
白石島を左手に見ながらちょっとした坂道を上って行くと、今子トンネルの手前の海岸に薄紫色の桐の花が咲いています。
今子トンネルをくぐり抜けたすぐ先で、r11から左に下って行くと今子浦で、その先に大きなカエルがいました。
ゴジラ岩だのなんとか岩だの、世の中には○○岩というのがいくつもありますが、大抵そうしたものにはがっかりさせられます。しかしこれはまさにカエルですね。
かえる島からひと丘越えて柴山港に下り、さらに東へどんどこ。
道は午前中のような大きな上りはないものの、高低差数十メートルの小さなアップダウンがどこまでも続いています。しかしこのあたりには山陰本線が並走しているので、いつでもどこでも上がることが可能です。
そこで、少々疲れてきた人と早めに城崎温泉に着いてまったりしたい人は、佐津で上がることにしました。
美しい新緑の中を佐津駅に下って行きます。
佐津駅は木造の小さな駅です。それでも無人駅ではなく駅員さんがいます。
この集落はさして大きくは見えませんが、温泉地で宿がいくつかあり、ビーチがあり、小学校もあるので、このあたりではそれなりの集落ということなのでしょう。
次の列車は50分後で、列車組がゆっくり輪行準備をしている間に、シロスキーが栃餅を買って来ました。この方、酒も好きなら甘いものも大好きな両刀使いです。
栃餅は栃の実をもち米とともに蒸してから突いて餅にしたもので、茶色っぽくて、ほんのり栃の実の味(ん〜ん、どんな味だ? クルミのようなかな。)がします。
列車組はベネデッタ、キルピコンナ、サリーナの三名。
50分後にやってきた列車はかわいらしいオレンジ色の二両編成でした。
さて、自転車組はそうまったりはしていられません。せっかく城崎温泉に行くのですから、外湯に浸からないわけにはいきません。栃餅を食べ終わったらそそくさと出発です。
佐津から先も細かいアップダウンが続きます。安木浜に下って上り、
標高90mのピークを越えて濱須井に下ります。
濱須井付近からは岬がいくつも見えます。中央に見えるのは切浜でその奥にちょこんと先端だけ竹野の猫崎が見えます。
短い須井トンネルをくぐり抜けると、見返りに、岩と岩の間に丸い岩が挟まった『はさかり岩』が見えます。
『はさかる』とは『挟まる』の方言だそうで、この岩は落ちそうで落ちないことから、受験生の合格祈願の地として人気だとか。
はさかり岩の先には切浜のビーチがあります。
山陰の海岸は切り立った出入りの激しい岩場が多いのですが、複雑な地形がこうした砂浜をも形成するようで、小さいながらも砂浜は意外とあちこちで見ることができます。
竹野川を渡ると竹野の集落に入ります。
竹野の海岸は竹野浜で、きれいな白い砂浜と透明な水で人気の海水浴場だそうです。
その西には『お昼寝キューピー』こと猫崎半島が横たわっています。ここからだと、あんましキューピーちゃんには見えませんね。
竹野は長く突き出た猫崎半島があるために地形がより複雑に見えます。
その猫崎半島は風から船を守る役目も果たしたでしょう。ここはかつて、北前船の寄港地として栄えたそうです。
竹野からもアップが。海に落ち込む急斜面の岩山の一部が削り取られ、無理矢理道が造られています。
そして次の宇日の浜に落ちていきます。
この浜にはシーカヤックが浮かんでいました。
この日は風も穏やかで、カヤックには打ってつけだったようです。
さて、宇日の浜からはまたまた上り。まあ、海まで下ったら次は上りと相場は決まっています。
ちょっこらエッコラすると穏やかに下り、そして最後の上りに入ります。この最後の上りがきつかった。標高150mまで上って下って上って・・・ ゴルフ場の近くにあるあまり見晴らしの良くない展望台で一休み。
この展望台が最後のピークだったようで、そこからは城崎マリンワールドに転げ落ちるように下っていきます。
途中の御待岬からは、下にマリンワールド、その先にどこまでも続いていく出入りの激しい海岸線の絶景が見られました。
城崎マリンワールドの横を通過するとほどなく、円山川(まるやまがわ)沿いに入ります。円山川は兵庫県中部の朝来市生野町に源を発して北流し、豊岡盆地を形成して城崎温泉の先で日本海に注ぐ、長さ68kmの川です。この川は明日以降も私たちの伴をしてくれます。
もう今宵の宿は近いと、円山川沿いをカッ飛ぶシンチェンゾー。
自転車組が円山川沿いに入る遥か前、まだアップダウンに苦しめられていたころ、電車組は城崎温泉駅から円山川の土手上を走って宿に向かったのでした。
そして宿に着くや早々に城崎温泉の外湯に出かけ、ゆっくりと温泉を楽しんだのでした。
一方の自転車組は、へろへろになりながらもなんとか宿に到着。
しかし、外湯に出かける時間はなく、とりあえず内風呂で汗を流し、電車組が外湯から戻ってくるのを待ちます。
19時近くになって戻ってきた電車組をせかすようにして、宴に突入です。
豪華な晩餐。やっぱり、ここ、蟹が出たぜよ、シロスキー。まあ、足だけだけどね。(笑)
いつもなら延々と続く宴ですが、この日はちょっと様子が違いました。ここは城崎温泉。やっぱり外湯にいかなくちゃあね。ということで、程々で宴を切り上げ、外湯に向かいます。
女性陣はすでにたっぷり温泉を楽しんだので、足湯に。男性陣は露天風呂がある鴻の湯へ。
夜の城崎温泉は賑やかでした。GW期間中ということもあると思いますが、それでも四半世紀前の印象からはまったく想像できないほど、そこは人で溢れていました。当たっても倒れないと貰えない射的もまだありました。それも何ヶ所も。そこに人が並んで待っている様は本当に驚きです。
賑やかで繁盛はいいことです。でも本当に驚きましたよ、この城崎温泉の変わり様には。なんだか、ちょっと寂れてうらぶれた城崎温泉が懐かしく思えるのは、旅人だから許される感情なのでしょう。
さて、明日は城崎温泉の奥にある大師山の山頂まで登ってから内陸へ向かい、玄武洞、コウノトリの郷と巡って、城下町の出石へ向かいます。
◆ひとこと by キルピコンナ
前日,鳥取空港へと高度を下げる飛行機の窓からポッコリとした三尾大島と,屏風のような鋸岬がはっきりと見えました。印象的だったのは浦富海岸の辺りでしょうか,黒々と光る甍の波! なんと美しかったことでしょう。この日は,そんな風に見下ろしていた「御火の浦」にちゃんと降り立つことができて,ちょっと感動。えい!えい!とペダルを踏めばちゃんと目的地に着くのですねぇ。
しかし一方で,今回痛感したのは「ときには休む」という切り替えの重要性です。なにしろ毎日早朝から,走って,荷ほどき,風呂,宴会(合間に洗濯),就寝,という怒涛の日々。宴会が無ければまさに高校生の合宿のようなジオポタ。ついていくのが大変なのです。しかしこの日は城崎まであと少しという場所で輪行したのが大正解。お陰さまで私は何とか温泉を楽しむことができたのです。最後までペダルを踏まなくて本当に良かった。輪行隊長のベネデッタ,ありがとう! その教えを胸に,これからも体力に見合った ポタリングを心掛けたいと思います。
◆ひとこと by シロスキー
朝一番に浜坂の町内(良く整備された”あじわら小径””西光寺””以命亭”)を廻りました
又、途中地元の人とも出会い簡単な地元自慢(愛)も聞けた
最近は各地で地元の小川の清掃とか、ボランティアとかで地元を紹介する人々が増えている
東京町田でも何か出来るかな
三尾から餘部までの海岸線の見事なこと、伊豆半島ジオパークは何度かジオポタで行っているが、ここ山陰海岸ジオパークは観光開発がされていないので見応えがある
海の透明度が素晴らしい 海に入る機会が無かったのが残念