鹿沢高原の朝6時の気温は20°Cと涼しく、快適です。
モーニングコーヒーを入れ、しばしゆったりとした時間を過ごします。
朝食は本館でバイキングです。
このバイキング、たくさんメニューがあってついつい食べ過ぎてしまいます。
今朝早くに都心を出発したマージコとシンチェンゾー、そしてタキスキーがやってきました。マージコは朝5時に出発したら高速道もガラガラで、7時には小諸ICに着いたそうです。
今日は、昨日ここでキャンプしたサイダー、サリーナ、ムカエルにこの三人が加わり、総勢6名で池の平湿原のハイキングです。
ところが、準備を整えいざ出発という段になると、『あれ〜、おかしいな、おにぎりが一個足りないよ〜』 と、マージコが騒ぎ出します。今日のハイキングのためにマージコは全員分の六つのおにぎりを買ってきたのですが、最後の一人まで行き渡らなかったのです。マージコが言うには絶対六つ買って、ここのテーブルの上で六つあることを確認したと言うのですが。。
池の平湿原まではムカエルの車で向かいます。
朝9時に休暇村のキャンプ場を出発し、r94を南下します。
するとすぐに、前方に池の平湿原の外輪山が見えてきます。あそこに上れば遠くに北アルプス、そして八ヶ岳、南アルプスと360°の大展望があるといいます。
右手には湯の丸スキー場のリフトと牛さんが。この湯の丸スキー場のすぐ先が地蔵峠で、池の平湿原へはここでr94を離れ、湯の丸高峰林道に入ります。
湯の丸高峰林道を4km行くと、池の平湿原の入口にある駐車場に辿り着きます。
かつては夏の週末はここはマイカー乗り入れ禁止で、地蔵峠の駐車場からシャトルバスが出ていましたが、現在それはなくなったようです。
浅間山の西側に位置するなだらかな高原地帯は湯の丸高峰自然休養林で、これから向かう池の平湿原もこれに含まれています。
池の平湿原は数万年前の三方ヶ峰火山の噴火口跡とされており、標高2,000m付近に広がっています。そのため、年間を通じ多くの亜高山〜高山性の植物が見らます。その種類は千を超えるとか。
駐車場から歩くこと1分で池の平湿原の入口です。正面には湿原のすぐ向こう側に位置する三方ケ峰が見え、そのさらに先に、八ヶ岳の天狗岳が見えます。
この入口周辺でもすでに、高山植物がいくつか見られます。
高地でよく目にするニッコウキスゲですが、これは高山植物と言っていいのかどうか。低地に咲くものもあるのです。
この花は朝咲いて夕方には萎んでしまう一日花です。高原がいつもこの花で満たされているのは次から次へと別の花が咲くからで、とても一日で萎んでしまうようには見えませんね。
整った形と鮮やかな色彩のハクサンフウロ。
池の平湿原の廻り方はいくつか考えられますが、私たちはまず外輪山を半時計回りに行き、あとで湿原に下ることにしました。
足元にはきれいな紫色のアヤメが咲いています。
一般的に目にするアヤメの花は観賞用に品種改良された花びらの大きなものが多いですが、これは小ぶりです。
しかしアヤメの特徴である花びらの付け根の網目模様はちゃんとあります。
一本のカラマツが倒れています。その倒れた幹から出ていた枝は垂直に伸び、ほとんど幹のようになっています。それも何本も!
自然というのは面白いものです。
エーデルワイスはとても有名ですね。なぜ有名なのかは私は知りませんが、たぶん高山植物を代表するものだからでしょう。
隣を行く方がある花をエーデルワイスと呼んでいたので調べてみたら、このウスユキソウは日本ではそう呼ばれることもあるようです。薄雪草という漢字名はなかなかいいと思いますが、エーデルワイスが有名だからでしょうか。
日本のウスユキソウもヨーロッパのエーデルワイスもどちらもウスユキソウ属なので、これらは親戚ですね。私が知る限り両者の違いは、花の形状が少し違い、ヨーロッパのものは背がとても低いということです。
テガタチドリ。
ちょっと変わったこの植物の名は、その根っ子が手のひら状をしていて、花が千鳥の飛ぶ姿に似ていることから名付けられたといいます。
カワラナデシコ。秋の七草のナデシコはこれを指します。
このハイクの序盤は意外と上りが多く、ちょっとアヘアヘ。
木立の中から抜け出ると岩を敷き詰めたような道になり、空が広くなります。
この先は『雲の上の丘』というところらしい。
どんどこ上って行くと視界が開けてきます。勾配が緩くなり、マウンド状の広がりがあるところに出ました。ここが『雲の上の丘』です。
南東には外輪山と高峰山が見えます。
そして西に目をやれば、遠方にずらりと雪山が。あれは北アルプスの後立山連峰あたりでしょう。中央には白馬三山が見えています。
その手前に見えている緑の山は、地蔵峠のすぐ西にある烏帽子岳。
視線を移して行くと、槍ヶ岳の穂先がちょこんと飛び出ているのが見えます。
西側を見渡すとこんなふう。
『ここ、いいじゃん。重いカメラを抱えて来た甲斐があるよ〜』 と、最近はカメラ小僧のムカエル。(左)
『自転車で200km走って来ようかと思っていたんだけど、こう暑くちゃねぇ〜 でもこんな景色が見られるんなら、自転車でなくても良かったぜ!』 と、この景色に満足げなシンチェンゾー。(右)
たっぷりと雲の上の丘からの眺望を楽しんだら、先へ進みます。
左手の下に池の平湿原が見えてきました。こうして見ると、ここが三方ヶ峰火山の噴火口跡だというのも頷ける景色です。
亜高山帯の薄暗い針葉樹林の中で一際華やかなのが、ハクサンシャクナゲ。
この時期はほぼ終わりかけですが、大きな花はやはり見応えがあります。
ここは花もたくさん咲いていますが、昆虫もたくさんいます。
そしてここの昆虫たちはまったく人がいないかのように自由に飛び回り、自由に花に止まり、場合によっては人の手に止まったりもします。
野花を眺め、昆虫たちと戯れつつ、見晴岳へ向かいます。ストック持参でやる気満々のタキスキーは、この旅で車好きであることが発覚。愛車はなんとドイツ製の某スポーツカーでびっくり。
タキスキーに続くマージコは、ここ池の平湿原はなんと四回目だといいます。空ばかりでなく地面も徘徊していたんですねぇ。
南の谷が見えてきました。
千曲川の流れに沿って延びるこの谷は、南に小諸、西に上田の街を抱えています。
見晴岳の山頂までやってきました。ここからの眺めは遮るものがないのでかなりいいのですが、残念ながら雲が山を覆い始めています。
でも一応ここで記念撮影を。(TOP写真) ちなみにみんなが首に撒いている手ぬぐいは、ジオポタ20周年を記念するものです。今年、我らがジオポタは設立20周年を迎えたのです。
見晴岳からの眺望を堪能したら、ちょっと戻ってコマクサ園に向かいます。
コマクサは、『The 高山植物』とでも言いましょうか。
コマクサは他の植物が生育できないような、砂礫が動く厳しい自然環境の中でも育ち、美しい花を咲かせることから『高山植物の女王』とも評されます。
ここは斜面地の岩場で、まさにそのとおりの環境です。
さすがのコマクサですが、今年はやはり暑いのか、少し萎れ加減の花が多いようです。
花はコマクサばかりではありません。
ヤマオダマキは下を向いて咲くので、写真が撮りにくいですねぇ。
もうほとんどおしまいですが、ウツボグサもまだかろうじてきれいな紫色を残しています。
この植物は薬用に使われており、主に消炎や利尿に効くそうです。
良い桃色はシモツケソウ。
これは桃色ですが、中には白色の花もあります。
下に湿原が見えてきました。ここで道は二手に分れます。一方は今見えている湿原に下り、もう一方は三方ヶ峰へ向かっています。
三方ヶ峰は眺望が良くコマクサ園もあるので、私たちは三方ヶ峰へ。
クルマバナは車花。その名のとおりに花は輪っか状に何段にも並びます。
三方ヶ峰に着きました。ここは外輪山の輪の一部が吹っ飛んだようなところの端っこにあり眺めが良いのですが、遠方の山々はすっかり雲に隠れてしまっています。
その雲を良く見ると、同じような形が何遍も繰り返したようにして並んでいます。自然って本当に不思議ですね。
三方ヶ峰のコマクサはあまり咲いていなかったので、湿原に下ります。
池の平湿原の中には木製のデッキが通されているので、これを行きます。下るとすぐに鏡池という小さな池があります。この湿原は尾瀬のようにそこら中に池があるわけではなく、この鏡池が唯一といっていい水溜まりです。
鏡池周辺は人がいっぱいだったのでこれはパスし、近くにあったベンチで例のおにぎりをいただきます。
一説によると、なくなったおにぎりはカラスが奪っていったのではないかとも。さてはて、どうなんでしょう。
おにぎりで小腹を満たしたら、湿原の中を行きます。
今朝通って来た湯の丸高原を始めとし、このあたりにはレンゲツツジの群落があり、半月ほど前までは見事な花を咲かせていたようですが、この時、それはほぼおしまいでした。
時期的にか、この時は湿原の中に咲く花はほとんど見られませんでした。
周囲を見渡せば、ぐるりと外輪山に囲まれているのがわかります。ここはかつて火口だったのですね。
湿原の散策がほぼ終わり駐車場へ引き返そうとすると、そこの足元にニッコウキスゲが咲いていました。この花はゼンテイカ(禅庭花)と言うそうですが、そんなふうに呼ばれるのは聞いたことがありません。知らないのは私だけ?
もっとも変種や近縁種は多く、有名な佐渡のトビシマカンゾウや北海道のエゾキスゲ、東京に自生するムサシノキスゲといったものがあります。
さて、湿原散策は以上にて終了。駐車場に引き返しましょう。
『あ〜、早くビールが飲みたい!』 という面々です。
これは少し寒い地方で良く見掛けるヤナギラン。
葉が柳に、花が欄に似ていることからその名が付いたようです。群で咲くととてもきれいです。
さてさて、以上にて池の平湿原のハイキングは終了です。時は12時半。ちょうど昼飯に良い時間なので、湯の丸高原まで戻ってランチタイムに。
ここ湯の丸高原もハイキングに良さそうな所で、湯の丸山まで一時間と手頃な上、その山頂からは浅間山の噴煙や鹿沢の山々、白根火山などが一望にできるといいます。もちろん花々もきれいだそうです。
軽い昼食を済ませたらキャンプ場に戻るだけですが、その直前に『たまだれの滝』があるので覗いてみました。
道路際の駐車場に車を停め、短い吊り橋を渡ります。
この吊り橋の下を流れるのは私たちのキャンプ場のすぐ傍を流れている湯尻川です。
橋の先にはまん丸い池があり、その畔で大きな虫採り網を持った方が数名、長い柄を伸ばしてなにかを捕まえようとしています。
どうやらなにかを捕まえたようなので見せてもらいました。トンボです。
捕まえた方はトンボの種類を教えてくださいましたが、失念、ではなく覚えられませんでした。(笑) とにかく、金色に光るきれいなトンボです。
このあとこのトンボはしばらく観察されたのちに、元いた空に帰っていきました。
池の先は薄暗く、少々上りになっていて、滝の水のせいか足元が濡れていて滑りやすくなっています。
ここでステーンと転けたのは赤シャツのシンチェンゾーでした。
このすぐ奥にたまだれの滝はひっそりと落ちていました。
周囲には大きなカメラを三脚に括り付けたカメラマンが数名。何を狙っているのか聞いてみると、うまく陽の光が射すと滝の前に虹が出るので、その瞬間を狙っているとのこと。でも周囲が木々に覆われているので、いつ陽が射すかは運みたいなものだそうな。
この滝は非常に小さくて、落差はせいぜい3mほどしかありません。
しかし本滝の横にしずくのように流れ落ちる幾筋かの細い流れがあり、風情があります。この細い流れが玉垂れなのでしょう。
ここは静かに流れ落ちる水の音を聞いているだけで、何か心が癒されるような気になれます。
そしてふと上を見上げれば、緑の何と美しいこと。
滝に心を洗われたら、半分だけ現世に戻ってキャンプ場です。下界に下ったら猛暑の現世に逆戻りですが、ここは涼しく快適ですわ。
私たちがハイキングをしている間にベネデッタとプリンが到着していました。この二人は遥々栃木県からやってきましただ〜 そしてこちらはなんちゃってではなく自前テントを張り、BBQ機材も食料も持ち込みです。ま、車ですがね。
さっそっく火起こしに掛かります。プリンは持参の炭にあっという間に着火し、悠然としています。一方のシンチェンゾーは、『この炭、まったくシケたヤローだぜ!』と、中々着火しない炭に当たり散らしています。(笑)
火起こしの間にベネデッタが準備してくれた前菜は、自前味噌きゅうり、ひよこ豆のフムス・バゲット添え、英国スタイル厚切りロ−ストビーフ、なんちゃって高級スモークオイスター、蒸し焼きトウモロコシと国際色豊かで、これでほぼお腹いっぱいに。
マージコとタキスキーがいよいよとBBQの焼きに回るも、半分焼きが回っている二人は、アッチッチーだの、お〜火が消えちまう〜、だので何ともはやの大騒ぎ。まあ、それでも楽しく賑やかに夜は更けていくのでした。