新型コロナウイルス感染症が流行り出して3年目の夏。今年も海外渡航は難しいと判断し、国内の涼しいところへ行くことにしました。1週間ほど滞在できるキッチン付の宿で、車がなくてもなんとかなりそうなところを探しましたが、これがなかなか見つかりません。
ようやく見つかったのが春に訪れた白馬でした。白馬には主に外国人向けのキッチン付の宿が結構あるのです。
今年の夏は特別に暑いので、白馬といえども平地は暑そうです。
そこで今回は自転車は条件が良ければ乗ることにして、主に高地でハイクをして涼むという計画です。
このサイダーとサリーナの計画にレイナ、レイ、ペタッチが乗っかってくれて、後半にはユッキーが参上ということに。
ところが天気予報によれば白馬は、この先の一週間ずっと雨続き。なに〜! 現地に乗り込んだ8月4日も夕方から雨です。しかし翌5日は午前中は晴れで、昼ごろから雨という予報に変わりました。
検討の結果、とにかく出発して、天候次第で適当なところで切り上げることも視野に入れて行動することに。
そうと決まればまずは朝食です。
朝食とともに作ったのはハイキング先でいただく弁当。
そこに半日遅れでやって来るペタッチから連絡があり、予定の通りに8時に到着できそうとのこと。ペタッチは朝の3時起きでこちらに向かっているのです。
今回のハイキングの予定は小遠見山(ことおみやま)、栂池自然園、八方尾根自然研究路の3ヶ所。天気予報からすると、ハイクできるチャンスは今日この日しかないかもしれないので、どこがいいか検討しますが、このあたりをよく知るレイによると、予定の通りの小遠見山が良かろうと。
そうこうしているところにペタッチがやってきて、小遠見山の上り口になる白馬五竜スキー場のテレキャビン乗り場『とおみ駅』があるエスカルプラザへ向け、いざ出発。
朝は青空が見えていたのに、エスカルプラザに到着した時には空は真っ白。
え〜っ! これは上る価値ないかな・・・
それはともかく、エスカルプラザのすぐうしろに広がる白馬五竜スキー場の下の方は、この時ちょうど花が咲き乱れていてとてもきれいです。
ここでまず全員集合の記念撮影を。左から、山歩きはほとんどしたことがないサイダー、山ガールのレイナ、山男でスキーヤーだからこのあたりには100回は来ているレイ、アルピニストでヒマラヤ登山経験者のペタッチ、山はほとんど未経験のサリーナ。
花畑を眺めていると、スタッフの方が声を掛けてくれました。
『今、上は晴れで暑いくらいです。雲海が見られますよ〜』
お、やった〜、雲海が見られるってよ〜、と、いそいそとテレキャビンに乗り込みます。
テレキャビンは徐々に高度を上げ、雲を突き抜けてその上に出ました。
ヤッホー、雲海だ〜
やっぱり山はこうでなくっちゃ。
テレキャビンに10分ほど揺られるとアルプス平駅に到着。この駅の屋上は展望台になっているので行ってみました。するとまだ朝の9時台だというのに、すでに気温は30°C以上あろうかという暑さで、暑いの大嫌いなペタッチは、
『なんや〜、白馬、ちっとも涼しくないじゃないのぉ〜』 と、ブーブー。
『まあ、もっと上に上れば少しは涼しくなるんじゃあないの。』 とサイダー。
まあしかし、ここからは東に連なる真っ黒な夏の山々と真っ白な雲、そして真っ青な空が見えて気分爽快です。
そして下には白馬五竜高山植物園が広がっています。その向こうには雲がなければ唐松岳が見えるのですが、この日は残念。
アルプス平駅からハイキングを始めることもできるのですが、今日はこのあと天気がどうなるかという問題もあるので、私たちは植物園の見学は後にして、リフトでさらに上ります。
ヨーロッパや北米では道端で良く見るヤナギランですが、日本では高地でよく見掛けますね。
アルプス平駅から植物園を少し北に下ってリフトに乗れば、うしろには白馬村とその奥に横たわる真っ黒な山々。
リフトを降りると北に八方尾根が見えます。
その稜線を辿ると真ん中あたりの平場に黒菱平のリフト乗り場が、そしてその左上に赤い屋根の八方池山荘が見えます。もし明後日晴れていたら、あそこへ行くつもりです。
雲がなければこの八方尾根の上には白馬三山が見えるのですが・・・
稜線のさらに先、北西には相変わらず雲に隠れた唐松岳。
谷に少し残雪が見えるのがいいですね。雲がなかったらもっといいですけれどね。
さて、ここからいよいよトレッキング開始です。
標高は、目指す小遠見山山頂が2,007m、リフト降り場は1,640mで高度差は約370m。パンフレットによれば片道90分程度だそうです。
リフト降り場を出るとすぐに道は二手に分かれます。左を行くとアルプス平自然遊歩道で、木道が続く比較的なだらかなコースになります。
右はこれとは対照的に急峻な上りから始まるコースで、すぐ先に地蔵ケルンが見えます。ここは地蔵ケルンに牽かれて右へ。
この高度感、どうでしょう。
レイナのすぐ左にあるのがリフト降り場で標高1,640m、その向こうに見える大きな建物がテレキャビンのアルプス平駅で標高1,530m。そして一番下に見える黄緑色の平場が私たちの宿やテレキャビン乗り場があるところで、標高700〜800m。
ほんのちょっと登ると地蔵の頭(標高1,676m)に到着です。その真ん中には地蔵ケルンが置かれています。
うしろの黒々とした山々が圧巻。
見てのとおり雲の上は日差しが強く、とても暑いです。
ここで山男のレイに周辺の山の説明をしてもらいました。
この日は高い山のほとんどの山頂は雲の中に隠れていますが、ここは360°のパノラマヴューが楽しめます。
良く見れば山のそのまた向こうの山のそのまた向こうまで山々が続いています。
この写真は南東方向を見たもので、雲の中には浅間山あたりが隠れているのかもしれません。
地蔵ケルンで眺望を楽しんだら、次に目指すは見返坂(標高1,740m)です。
熊除けのプレートを打ち鳴らして、ゆっくりと登って行きます。
アルプス平自然遊歩道の合流点を過ぎると道は森の中を行くようになります。
ここからが意外ときつくてへーこら。
地蔵ケルンから見返坂まではすぐだと思っていたのに、暑くてきつくて、わずか10分歩いただけで休憩しなければなりませんでした。
しかし本当にきついのはここからでした。
勾配はきつくなり、暑さも時間の経過とともに厳しくなってきます。
しかしそんな中をさすがにアルピニストのペタッチはガシガシ登って行きます。サイダーとサリーナはちょっとふらつきながらその後を追い、よれよれで見返坂(標高1,740m)に到着。
見返坂はその名のとおりにこれまでやってきた側の眺望が素晴らしく、下には先ほど通過した地蔵ケルンも見えます。
夏山はあまりやらないレイナはこの暑さにちょっとバテぎみでゆっくり登って来ました。
山はマイペースが一番です。
見返坂にはデッキが設けられていて、ここは記念撮影をするにはいいのですが、木蔭が一切なく、暑い暑い!
一息付いたら木蔭があるところを探して移動します。
見返坂から先を見れば、これまで見えなかった稜線が見えています。
ここからはあの稜線に沿って登って行きます。
見返坂から7〜8分登ってようやく小さな木蔭を見つけました。このルートには大きな木がないので、木蔭もほとんどないのです。
暑い〜、きつい〜 という言葉を合い言葉にみんなで木蔭に倒れ込みます。このあとの短い休憩時間には、ペタッチが春に尾根縦走をして来てここを下った話など、山の話題で盛り上がりました。
そしてここで天気予報をチェックすると、雨は15時頃から降るかも、と言う程度で少し良い方向になってきているようです。
木蔭休憩のあとは、ペタッチがここは直登で結構きついと言うところを行き、なんとか一ノ背髪(1,892m)に到着。
この案内標識によれば小遠見山まであと35分。
一ノ背髪の北西には平川の谷に落ちる八方沢や崩沢が見えますが、雲が下がってきていて八方尾根は見えなくなりつつあります。
一ノ背髪からは少し下りもありますが再び上り出して、かなりへろへろになって二ノ背髪に到着。
そしてそこに立つ案内標識を見た瞬間、
『え〜、まだ小遠見山山頂まで20分もあるの〜』 と呻くレイナでした。
『背』や『髪』は稜線の狭いところを指す言葉だと思います。
案の定このあたりは写真のような道が続きます。
二ノ背髪から山頂までは極めで穏やかな道で歩きやすく、案内標識の半分の10分で小遠見山山頂(標高 2,007m)に到着。
よかった〜!
ここまでアルプス平のリフト降り場から130分もかかりました。90分が標準だとすれば40分も余計にかかったことになります。それだけ今日は暑さが厳しかったということだと思います。
パンフレットのイラストを見ると小遠見山山頂は広い広場のように描かれていて、お地蔵様や石碑、そしてベンチがたくさん並んでいるのですが、確かにそういったものはあるにはあるのですが、面積は想像の1/10といったところでした。
この山頂もかなり眺望のよいところで、天気が良ければ連なる北アルプスの稜線がずっと見えるはずですが、この日はちょっと残念。特にここから見る鹿島槍ヶ岳と五竜岳は圧巻だそうです。
天気はここに来て少し怪しくなってきており、雲が厚くなりだしました。左に見える雲は下から沸き出しています。
山頂には木蔭がなくてとても暑いのですが、周辺のどこにも逃げ場がないので、ベンチに腰掛けて弁当を広げ、昼食にします。
そそくさとサンドイッチを平らげたら下界へ下るとしましょう。
アルプス平自然遊歩道までは登ってきた道を引き返します。
雲が低い!
帰りは地蔵ケルン方面へは行かずにアルプス平自然遊歩道に入ります。
アルプス平自然遊歩道は湿原の中を行く道で、木道が整備されていてとても歩きやすいです。
湿原のメインの花はあらかた終わっていましたが、ここはのんびり下れるのがありがたいです。
アルプス平自然遊歩道の中間地点付近にあるのは『地蔵の沼』という小さな沼です。
沼というより池といったほうが良さそうな大きさと雰囲気ですが、周囲が整備されていなかったらちょっと怖そう。
この時期の花としてはこのシモツケソウと、
ニッコウキスゲでしょう。
ニッコウキスゲは一日花で、朝咲き出して夕方にはしぼんでしまい再び咲くことはありません。群落を形成しますが、これは次から次へと新しい花が出てくるということです。
このあたりでパラッと来ましたが天気はなんとか持ちそうなので、アルプス平自然遊歩道からはリフト降り場には戻らず、白馬五竜高山植物園に入ります。
白馬五竜高山植物園はこの時期、かなりの花が咲いています。
これはシモツケソウの群落。
終わりかけですがコマクサも。
タカネマツムシソウは高嶺松虫草と書き、日本の固有種です。薄青紫色がきれい。
あこがれの高山植物エーデルワイスはあの映画サウンドオブミュージックの中で歌われる歌で有名ですね。
日本にはウスユキソウの仲間をあちこちで見掛けますが、これもその一つです。
クガイソウは九階草と書くようで、葉が9 段くらいあることからその名が付いたとも言われています。
これも薄青紫色できれいです。
オオバギボウシも高地でよく見掛ける花です。
蕾が擬宝珠(ぎぼし)に似ているので大葉擬宝珠というようです。
アサギリソウ(朝霧草)です。別名をシルバーマウンドともいい、日本原産の多年草だそうです。
朝霧草の名は、光を通す細い葉と光に輝く白い葉が朝霧を連想させるところから来ているとされます。
麒麟草もしくは黄輪草という字が当てられるキリンソウ。小さい花ですが、鮮やかで結構目立ちます。
さて、白馬五竜高山植物園はこれくらいにしてテレキャビンで麓へ下りましょう。
エスカルプラザのうしろまでやってくると、そこにも珍しい花が咲いていました。
これはエキナセア(ムラサキバレンギク)。花は大きく、中央部が毬栗のようになっているのが特徴で、この部分が固いのにレイナはびっくりしていました。
小遠見山のトレッキングと白馬五竜高山植物園の散策を終えたらエスカルプラザにある『竜神の湯』で汗を流し、ス−パーマーケットで買い出しをして宿へ戻ります。
そして今宵のBBQとダッチオーブンの支度を。
ペタッチが持ってきてくれたダッチオーブンに鶏と野菜を詰めて、炭が起きるのを待ちます。
その間にこれまたペタッチ持参のタラバガニをつまみに呑み出し、BBQに突入。
ダッチオーブンの鶏に米を詰めてもいいというのでやってみましたが、これは失敗。炊いたものを入れた方が良かったですね。これはかき出して、明日炊いていただきましょう。
とりあえず、でけた〜(笑)
十分に呑んで食べて、夜遅くまでおしゃべりして、夏の楽しい一日は更けていきました。
今日はなんとか天気が持って良かったですが、明日はどうなるか。天気予報では少し良くなってきているようではあるのですが、予断を許しません。