平家の落人が発見したと伝わる湯西川温泉の朝は朝靄が立っています。
天気予報では晴れるはずなのですが、さて、どうでしょう。
湯西川温泉で私たちがお世話になったのは湯西川館本館で、源泉掛け流しの湯に浸かって身体を目覚めさせたら、朝ご飯です。
旅館の朝ご飯は和食と決まっていますが、サラダが付くようになったのはいつ頃からでしょうかね。ここは大根おろしとともにナラタケが付いているのが珍しいです。このキノコはナメコのようにちょっとヌメヌメしていておいしいです。
おいしい朝ご飯をたっぷりいただいたら、準備を整えて湯西川温泉を出発。元気がよい若女将が写真を撮ってくださいました。
今日のメインイベントは龍王峡のハイキングで、湯西川ダムからベネデッタが参加します。ということでまずは湯西川ダムへ。
湯西川温泉は手頃な大きさの温泉街で、大小の旅館や民宿が3〜400mほどに渡って続いています。
湯西川温泉は標高750mほどなので紅葉はこれからですが、それでも早い木々は赤や黄色に染まってきています。
温泉街の隣の集落の川戸にある水の郷大つり橋は昨日渡ったのでパスし、そこから旧道に入ってみました。
旧道は川の両岸にあるのですが、右岸のそれは行き止まりになってしまうので左岸を行きます。
この左岸の旧道はセンターラインこそ引かれていないものの二車線の幅員があり、路面もきれいに舗装されています。
メインロードのr249黒部西川線はそれなりに交通量がありますが、こちらは車は皆無でジオポタ向き。
しかしこの旧道はあっという間に終わってしまい、元のr249黒部西川線に出ました。
その先で銚子トンネルを抜けると、むささび橋を渡ります。このむささび橋の南側の岩場の上の木々はなかなかいい色になってきています。
湯西川は湯西川温泉では道とほぼ同じ高さにありましたが、ここでは遥か下を流れています。
その上に橋が架かっているのが見えます。あの橋は旧道のもので、湯西川に流れ込む長沢という小さな沢沿いを進んで2〜3km行けるようですが、現在はその先には何もないようです。かつては集落かなにかがあったのでしょうか。
このコースは景色はまずまずなのですがトンネルが非常に多く、正直に言えば自転車向きではありません。しかし朝は車が少なく、下り基調なのでそう不快感なく走れます。
赤下トンネルを抜けるとオクタボリ沢橋です。
この橋からは湯西川ダムとそれによって作られた湯西川湖が見えます
このあたりの山はほとんど紅葉していませんが、局部的には色付いた木々がありました。
穴田トンネルを抜けると湯西川ダムに到着。
85戸を水没させ、30年かけて造られたこの湯西川ダムは2012年竣工で、湯西川の上流4ダムの中でも最も新しいものです。この展望台からの写真では良くわかりませんが、実際はかなり巨大で恐ろしいほどです。
ここでベネデッタから連絡があり、湯西川駅に着いて出発準備が整ったので、これからこちらに向かうとのことです。ベネデッタとはここで待ち合わせでしたが、私たちが予定より早く到着してしまったのでベネデッタがいる湯西川駅で落ち合うことにしました。
湯西川ダムを出るとすぐ打越トンネルをくぐり抜け、打越沢橋を渡ります。
下には湯西川沿いに砂利道らしい旧道が見えています。本当はあれを行くはずでしたが、昨日現地の方から得た情報では工事中で通り抜けできないとのことなので、今回は断念しました。
上野トンネルを抜けて湯西川温泉駅のすぐ横にある道の駅に到着。元気印のベネデッタと合流しました。
道の駅からは本日のメインイベント会場の龍王峡へ向かいます。
r249黒部西川線は湯西川温泉駅のすぐ先でR121にぶつかって終わります。R121はすぐに湯の里トンネルに入りますが、ここにはトンネルを迂回できる旧道があるのでこれに入ると、そこは土砂で埋まっていました。いつぞやの台風の影響でしょうか。早く復旧されるといいのですが。
仕方がないので湯の里トンネルをくぐり抜けてR121を行きます。
r249黒部西川線と同様に、湯西川も男鹿川に流れ込んで終わります。
その男鹿川はこの下の五十里(いかり)ダムで塞き止められているため、このあたりは五十里湖(いかりこ)とも呼ばれています。
湖という名は付いていても、ここは幅が狭いので認識としては川ですね。
先に会津方面へ続く道に架かる海尻橋が見えてきました。たまにあることですが、あの海尻橋のルートもここと同じR121です。
今日のルートはほとんどが下りなのですが、海尻橋を過ぎたあと、五十里トンネルまではちょっとだけ上りがあります。
『いや〜ん、今日は下りだけだと思っていたのに、何で上りがあるのぉ〜』 と、最初から文句を垂れるベネデッタでした。
五十里トンネルをくぐり抜けると道は穏やかな下りとなり、五十里ダムに到着。
ダムを境に男鹿川の上流と下流を見ると、なるほど上流は湖という気がしないでもありません。なんといっても、水下には川がほとんどないと言ってもよいほどですから。
堤高が112mある五十里ダムは1956年(昭和31年)の竣工で、当時は日本で最も高いダムでした。
先ほどの湯西川ダムと比べると、さすがに全体に黒ずんでいて汚れが目立ちます。
五十里ダムを出るとすぐに川治温泉です。
川治温泉の温泉街は国道沿いにありますが、ここでもっとも有名なのは男鹿川の右岸にある露天風呂の『薬師の湯』でしょう。国道を離れ、その薬師の湯方面へドーンと下って行きます。
川が近づくと先に青い橋が見えてきました。あれは薬師の湯とあじさい公園を結ぶ小金橋です。
わたしたちはここからあの黄金橋を渡って遊歩道を行くのですが、橋の上から振り替えると川の左に薬師の湯が、そして右には温泉街に立つ大きな旅館が見えます。
黄金橋を渡ります。
この下を流れるのは昨日下ってきた鬼怒川で、左後方より男鹿川が流れ込んできています。
黄金橋の先はあじさい公園です。
しかしここは最初から階段の担ぎ降ろしでたいへん。ベネデッタは、『今日はサイダー道ないと思っていたのに、こんなところに仕込まれていたなんて・・・』 とブー垂れています。
とりあえず平場に出たのでほっと一息の面々です。
あじさい公園はこの時期は誰もおらず、ジオポタ独占でした。
自転車を押して公園を通り抜けると、今度は上りの担ぎ上げ。ヘーコラしつつ先へ進みます。
公園から先も乗車できるところは少ないのですが、ちょっとだけ乗れました。
黄金橋から下流はたっぷりとした水量の鬼怒川となります。これはこのすぐ下に小網ダムがあるからです。
向こうからカヌー軍団がやってきました。ダムで鬼怒川が塞き止められているので流れがほとんどなく、初心者がカヌーを操るにはちょうど良さそうです。ここはSUPが浮かんでいることもあります。
難所現る。散策路がぐっと狭くなると岩場の強烈な上りになり、全員アセアセ。Eバイクのレイナの自転車はちょっと重いので、レイが交代して持ち上げたりと、バタバタ。
意外とパワフルで、どんどん担いで登って行ったベネデッタが撮ってくれた一枚。
先ほど見えたカヌー軍団が横を通って行きました。
『え〜、あんなところを自転車で行っているよ〜』と、こちらを指差して笑っていました。こちらは『え〜、あんなところをカヌーで行っているよ〜』と。(笑)
野岩鉄道の鉄橋をくぐってしばらく行くと、うっすらと紅葉が見えます。
この対岸にはカヌーが数艇置かれていました。先ほどのカヌーはここから出発したようです。
小網ダムの横で遊歩道が終わり、r23川俣温泉川治線を渡って逆川林道に入ります。
逆川林道には照明がないトンネルが三つ連続しますが、これらはいずれも距離が短いので問題なし。
トンネルを抜けると逆川林道はこの先も逆川ダムまで続いて行くのですが、わたしたちは浜子橋を渡って龍王峡に入ります。
周囲はまだ緑色の広葉樹が陽の光を透かしてきれいです。
しかし下は落ち葉がびっしりで滑るので、下り坂ですが自転車を押して進みます。あと2週間もすればこのあたりも素晴らしい紅葉に包まれるでしょう。
浜子橋に出ました。この吊り橋は下がグレーチングで川面が見えます。
中央部に合板が敷かれていますが、元々は全面グレーチングだったようです。お〜怖!
小網ダムより下流の鬼怒川は水量が少なく、流れもあまりないように見えますが、いよいよ龍王峡という雰囲気が漂っています。
浜子橋の先は穏やかな上りでなかなかいい感じです。
上の舗装路に出る直前、陽の光の中に出たので記念の一枚を。
この道は三ッ岩トンネルの旧道で、今は車は通らないのでとても静かです。下に川治第二発電所が見えると龍王峡のハイキング路が合流してきます。
このあとは白岩から龍王峡入口までバスで移動し、龍王峡を散策してここまで戻ってきます。計画では白岩バス停まで自転車で行くつもりでいたが、その付近に駐輪できるかどうか不安だったので、三ッ岩トンネルの入口に自転車を置いてバス停へ向かいました。
白岩バス停までやってくると、道路の向かいに車が2〜3台駐車できるペースがありました。な〜んだ。(笑)
ここのバスは本数が極めて少ないので乗り遅れると大変なのですが、今回は余裕を持って到着できました。
龍王峡の入口に到着。
まずは腹ごしらえを。観光地の食堂なので大したものはありませんが、天然の舞茸があるというので舞茸天ぷら付きの蕎麦にしてみました。やはり天然だと歯ごたえも香りも違います。
おいしい舞茸をいただいたら、龍王峡の散策を始めます。
入口の鳥居をくぐって階段を下れば、まず目に飛び込んで来るのが『虹見の滝』です。
この滝は岩陰の狭いところに落ちているので豪快感はあまりありませんが、音が素晴らしいです。鶏頂山を源流とする野沢の末端で鬼怒川に落ちますが、野沢が火山岩の角閃輝石閃緑玢岩(かくせんざせきせんりょくひんがん)でできているのに対し、本流の鬼怒川はそれより柔らかい流紋岩でできているため、鬼怒川の川床の方がより早く浸食されて、ここに虹見の滝ができたそうです。
虹見の滝の手前にある五龍王神社にお詣りしたら、もう一つの『竪琴の滝』を見てみましょう。
竪琴の滝は落差5mほどで、野沢に水が竪琴の弦のように幾筋にも分かれて落ちることから付けられた名だそうです。
野沢。この沢はとてもきれいな流れです。
少し下って虹見橋に出ると、いよいよ龍王峡です。
ごつごつした岩場と鬼怒川の流れ。
振り返れば、先ほど横を通った虹見の滝が見えます。こちらからだと豪快に落ちている様子がわかります。
その向かいに見えるのが五龍王神社。
このあたりから一本上流に架かるむささび橋までが龍王峡の観光の中心で、白い流紋岩が多いため白龍峡と呼ばれています。
むささび橋までは鬼怒川の両岸にハイキングルートが設けられていますが、虹見橋を渡って右岸に渡ったので、このまま右岸を北上します。
このあたりの紅葉はまだ始まったばかり。
対岸には名の知れぬ滝がひっそり落ちています。
先へ進むと、ちらほら紅葉している木々も出てきました。
パステルカラーの紅葉は、盛期のビビットカラーとはまた異なる味わいです。
40分ほど歩くとむささび橋に出ました。この橋からの眺望が龍王峡の代表でしょう。
上流側にも下流側にも見事な岩場が連なります。
ここから上流の右岸に道はないので、むささび橋を渡って鬼怒川の左岸に出ます。
むささび橋付近から上流は緑色をした大谷緑色凝灰岩が多くなり、青竜峡と呼ばれています。この岩石は名に大谷とあるように、かつては建築資材として良く用いられた大谷石の仲間です。
しばらく行くとアーチ状をした五光岩が出てきました。凝灰岩は場所によって軟硬があるため、軟らかいところが削られて真ん中がなくなったのです。
このあとは、柱状節理、川幅が4mほどしかなく兎が跳ねて渡れるくらいであることから名付けられた『兎はね(とはね)』が続きます。
そして『かめ穴』がたくさん。
大きなカメさんが棲んでいる穴です。甌穴とも言います。(笑)
かめ穴付近から上流、白岩半島あたりまでは紫龍峡と呼ばれます。これは安山岩の斜長石の斑点が緑紫色をしているためだそうですが、あまりはっきり認識できませんでした。
ここはちょっと黄葉が始まっていますね。
歩き出して1時間10分、白岩バス停への分岐が出てきました。
計画ではこから白岩バス停へ向かうつもりでしたが、自転車はその先の三ッ岩トンネルの入口に置いたので、白岩半島を廻って行くことにしました。
パンフレットでは白岩半島は記念写真に絶好の場所とありますが、ん、それはいったいどこ?
絶景があるのかと思いましたが、川はあまり見えず、ちょっと寂しい雰囲気でした。
それでも木々は思った以上に紅葉を始めていたので良かったです。終盤はちょっと疲れましたが川治第二発電所に辿り着いて、なんとか自転車のところに戻って来ました。ここまでハイキング4.5km、1時間45分です。
このあとは鬼怒川公園の露天風呂に浸かる予定でしたが、みなさんとりあえずお茶にしたいと言うので、龍王峡入口へ向かうことにしました。
龍王峡入口ではみなさん、ベンチでアイスクリーム休憩です。そこに茶店のおやじさんがやってきてまずはお茶をサービス、そして店の商品の黒豆の紹介をじょうずに始めました。これがかなりおいしかったのでレイナがお土産に3袋購入して分けてくれました。
本日のメンバー全員集合。左より、山男なのでこれくらいのハイキングはへっちゃらな王様レイ、今日は下りだったので自転車は問題なし、ハイクはちょっと長かったかな〜というサリーナ、今度からサイダー道率を提示のことと手厳しいベネデッタ。龍王峡は何回も歩いて知り尽くしている女王レイナ、日頃歩かないのでハイクはきついサイダーでした。
龍王峡入口で一服したら、ここに車を停めてあるベネデッタと別れ、3人は鬼怒川温泉駅へ向かうことにしました。
道は下り基調なのでストレスなく、あっという間に鬼怒川温泉駅に到着。
鬼怒川温泉から今市まではSLが走っていて、鬼怒川温泉駅の前には転車台もあります。この時はちょうどSLの発着が重なり、転車台の回転も見ることができました。
2022年の紅葉企画第一弾は昨日の霧降高原がメインで、今日の龍王峡はまだ始まっていないと思っていましたが、少し色付いた木々があったのがラッキーでした。龍王峡の紅葉の見頃は11月に入ってからになると思いますが、いつ歩いてもいいところだと思います。