せっかくの年末休み、便利な近場のどこかの温泉に行きたい!と探して発見したのが福島県の『白河温泉』。新幹線で1時間半ほどの郡山駅からは、ずっと平地でのんびり走るには距離もちょうど良さそうです。
ところが、その数日前から日本海側を中心に大寒波がやってきました。まさか雪だったりして。。とやきもきしましたが、最高気温5度とかなり低めながら郡山駅を降りた時点では晴れ。『これなら何とか走れそうね~』とホッと笑顔のサリーナ、カメラはサイダー。今回の旅はこの2名です。
ところで郡山駅には新幹線の他に在来3路線が乗り入れており、長い渡線橋で線路をいくつも越えて、ようやく駅の東口に到着します。
郡山市の中心市街地は駅の西側に広がっており、反対側の東側は広々したローカルムード。青空の下、出発~
2kmほど走ると阿武隈川の手前の交差点に出ました。ここから阿武隈川沿いのサイクリングロードに入ります。
阿武隈川は全長239km、東北では北上川に次ぐ長さの川です。その源流は那須連山の近くの甲子旭岳で、白河市から須賀川市、郡山市、福島市と福島県を縦断し、宮城県に入った後は岩沼市と亘理町の間で太平洋へ注ぎます。
サイクリングロードに入ると自転車も歩行者もほとんどなく、土手の上から広い空と水辺を眺めながら走るのは爽快です。
私たちは上流の南へ向かって走っています。と言っても、ほとんど勾配は感じません。それに、お日様のおかげで思ったほど寒くはないのがありがたい。
『ふむふむ、なかなかええのお~』とサイダー。
ところでこの道は『みちのくサイクリングロード』という名前で、途中まだ工事中の区間もありますが、阿武隈川沿いの全長約30kmの自転車道となっています。私たちは、途中須賀川市の中心部に立ち寄りながら、このサイクリングロードを17kmほど走る予定。
ほどなく、阿武隈川に注ぐ笹原川との分岐があります。
笹原川を少しだけ遡ると、小さな橋がありました。
橋の上からは、笹原川が阿武隈川に合流する地点が見えます。一羽のカルガモが泳いでいます。
『のどかないい景色だね』とサリーナ。しかし、風が少し強くなってきました。
阿武隈川沿いに戻ってみれば、川面に何やらたくさん浮かぶものあり。『ああ、マガモがたくさん!』と大喜びは、カモが大好きなサリーナ。
緑の頭に黄色いくちばしと白っぽい胴体はオス、地味な茶色はメスです。
しばらく進むと、ここまで左岸を走ってきた自転車道は県道110号にぶつかり、『みよたばし』を渡って阿武隈川の右岸へ。
河原が狭くなり、川の両側は木々に覆われています。
右岸では、サイクリングロードは田畑や集落の脇の田園地帯を通っていきます。
おお、畑には雪がちょっと残ってる。。
田んぼの横をずんずん走ります。両側に柵が設けられているエリアもあり、車も通らず安心。
と言っても、このあたりの田舎道では一般道もあまり車は走っていなさそうですが。。
ときどき、小さなアップダウンの林の中を通ったりするのも変化があって楽しいものです。
快調に飛ばすサリーナ。
そして、郡山市から須賀川市に入ったようです。サイクリングロードはこの先工事中らしく、川沿いの土手の道は通せんぼしてありましたが、やはりサイダーはズズイ、と入っていきます。
『ほら、川沿いの道で気持ちいいじゃろう~』とサイダー。
『まあ、そうやねえ~』とサリーナ。
ルンルンと走っていけば。。
やはり最後は行き止まり(笑) ちょっと戻ってダート道を進みましたとさ。
ところで、この近くに『須賀川ジェラート』というアイスクリーム屋さんがあり、寒くなければ立ち寄ってみたかったのですが、まあまたの機会に。
そして、すぐに下江持橋を渡ってサイクリングロードとはいったんお別れ。須賀川市の中心部を目指します。
阿武隈川には中洲も見えて、この辺りの川幅は広いですね。
そのまままっすぐ須賀川駅前に行く予定だったのですが、車が多い二車線道路は走りにくい。
そこで阿武隈川に戻り、そこから分岐して須賀川市内の中心部近くを通る釈迦堂川沿いに進むことにしました。
釈迦堂川の土手を走るサイダー。
行く手に小高い丘があり、中心部はもっと左手(南)側になるので、左に進んで丘を迂回しようとするサイダーですが、『待った~!』とサリーナ。
駅から釈迦堂川を渡って須賀川本町に至る須賀川橋の南端は、『ぜひ通らなければならない!』とサリーナが主張。そこで、坂をわっせわっせと上ります。高低差は10mほどですが。
坂を上り終えたところが須賀川橋でした。
そこに何があるかって? この方がいらっしゃいます。ウルトラマンタロウ!
須賀川市はウルトラマンの生みの親、円谷英二監督の出身地。そんなことから、市は2013年にウルトラマンの故郷『M78星雲 光の国』と姉妹都市提携を結んだそうな。ここから須賀川本町への『松明通り』にはウルトラヒーローや怪獣たちが立ち並び、私たちを出迎えてくれます。
『なんじゃこりゃ~』と言っていたサイダーも、それを聞けば納得の様子。
『これがウルトラの母。。』などつぶやきながら、松明通りを南下していきます。
怪獣もいます。これはゴモラ、古代怪獣。なんでも1億5000万年前の古代生物の生き残りで、大阪万博(1970年の方)への展示のために連れてこられ、逃げ出して大阪市内に住み着いていたとか。
ゴモラの背後左に見える建物は、2018年にオープンした須賀川市民交流センター『tette』。図書館や生涯学習施設、そして円谷英二ミュージアムが入っています。
さて、ウルトラマンよりずっと前の江戸時代、『奥の細道』の旅で松尾芭蕉がここ須賀川宿を訪れています。須賀川宿は奥州街道屈指の宿場町として栄えており、豪商相楽等躬のもてなしを受けて一週間ほど逗留したそうです。
芭蕉と曾良の像がある『結の辻』は中心部の角地に2010年に整備された広場で、地域の行事やイベントなどが行われているとか。
さらに南へ進むと、芭蕉ゆかりの資料などがある交流施設『風流のはじめ館』の前庭に出てきます。そして、その横にはイベントスペース『等躬の庭』も。
このあたり、須賀川市の中心市街地は東日本大震災で大きな被害を受けたそうで、まちの賑わいを取り戻す取り組みが続いています。
そして、その先の交差点のはす向かいには、『軒の栗庭園』。
芭蕉が須賀川宿に滞在中、栗の木陰に庵を結ぶ僧の可伸を訪ね、『世の人の 見つけぬ花や 軒の栗』と詠んだ句に因んで名付けられた小さな庭園です。等躬や芭蕉の像があります。栗の木はないような?
お昼ご飯のあとも、ウルトラヒーローを探して引き続き松明通りを散策。
真打ち、ウルトラマンがいらっしゃいました。しゅわっち!
そして、ご存知『コイン怪獣カネゴン』。幼少時(生まれていたか?)の記憶ではコインがザクザク出てくる怪獣、という印象しかなく、調べてみたら、何と金の亡者のガキ大将が変身した怪獣なんだそうです。
私たちは松明通りのウルトラヒーロー&怪獣像を楽しみましたが、須賀川駅の駅前広場や市役所にもモニュメントがあるそうなので、ウルトラマン好きの方は立ち寄ってみるのもいいかも。
須賀川中心部を出て、再び阿武隈川のサイクリングロードへと向かいます。
田んぼの中の道を走っていると、『須賀川牡丹園』というサインがありました。江戸時代中期からこのあたりで牡丹の栽培を始め、昭和7年(1932年)に国指定名勝に登録されたこの牡丹園、5月には7,000株の牡丹が咲き誇るとのこと。
阿武隈川を渡って右岸へ。ここで『みちのくサイクリングロード』に戻れるはずでしたが、そこの入口は閉鎖中で一般道へと迂回。
ほどなくサイクリングロードに戻れば、藁がロールで山積みになっているところに出てきました。『牛さんの飼料になるんだね』とサイダー。
そして阿武隈川が見えると、これまでとは全く異なり渓谷の様相です。
阿武隈川は平地をゆったり流れているイメージだったので、この景色にはびっくり。
しかし渓谷風なのは先ほどのところだけだったようで、その後、サイクリングロードは穏やかに進みます。
田んぼの中を走ったり、
川沿いに戻ったり。
阿武隈川は蛇行を始め、左へとカーブを描いていきます。『もうすぐ乙字ヶ滝だね~』と快調に進むサリーナ。
ところが、またまた『工事中、迂回』の看板が。
その迂回路は田んぼの脇の林の横の道。吹き溜まりになっているのか、結構雪が残っています。
しかも、最後は雪のダート。きゃー。。
滑りそうになり、愛車を泥んこにしながらこの罰ゲームのような区間をガシガシ漕ぐサリーナ。『迂回路も舗装路でお願いしたい。。』
工事区間が終わり、サイクリングロードに復帰。
川の横でひらけているからか、こちらには残雪は全くありません。ああ、よかった。
そして、乙字ヶ滝に到着。ここで『みちのくサイクリングロード』は終了です。
乙字ヶ滝は、このサイクリングロード周辺の最大の見所の一つ。名前の由来は、滝を上から見ると『乙』の字に見えるからだそうです。滝見不動堂の脇を通って滝に近づいてみましょう。
高低差はそれほどありませんが、カーブを描いて広がる幅広の滝です。この幅の広さから『小ナイアガラ』とも呼ばれているそうですが、それはちょっと言い過ぎかな。。
ここは阿武隈川唯一の滝だそうで、江戸時代には阿武隈川の舟運の最大の難所だったとか。そのため滝の北側の岸壁で堀割り工事をして船を通した運河跡があるそうですが、どこがそうなのかわかりませんでした。
松尾芭蕉がこの滝を詠んだといわれる『五月雨の 滝降りうづむ 水かさ哉(みかさかな)』の句碑が滝見不動堂の後ろにあります。
句碑の前では南天が真っ赤な実をたくさん実らせていました。
乙字ヶ滝を出発。滝へのアクセス路は赤い提灯で飾られ、まるで南天の中を通っているようなサイダー。
滝の横は公園になっていて、ここにもたくさんの提灯が吊るされています。年末年始にかけて、公園と滝がライトアップされているのだそうです。
阿武隈川と別れ、しばらく田園地帯を走ります。
刈り取った田んぼの他に、庭木用の低木を育てている畑もあります。
そして、紅葉を思わせるこれは何でしょうか?
作物じゃなさそう、庭木用かな。畑一面が橙色に染まってとてもきれいでした。
岩瀬牧場に到着。時間がないので入りませんでしたが、動物とのふれあいやエサやり、バター作りなどの体験ができるとのこと。
ここは日本最初の国営牧場(1880年の開設当初は宮内省御開墾所)で、昔の姿を偲ばせる歴史資料館などがあります。藁葺きの『とうもろこし乾燥舎』は道路からもよく見えます。
このあと、牧場通りをまっすぐ進んで旧陸羽街道に入ろうと思っていたサリーナですが、サイダーが田園地帯の田舎道の方がいいと言うので左折して南へ。
鳥見山公園に入ってトイレ休憩。ここは野球場や陸上競技場などのスポーツ施設もある総合公園です。
周辺はまさに田園風景。田舎道を繋ぎながら南下していきます。
そして、大池公園に到着しました。池や松の自然を活かして2004年に整備された公園で、7月に咲く大賀蓮が見所なんだそうです。
赤松林を抜けると大きな池があり、まずは北の端にある六角堂へ。
池の中に六角堂が浮かんでいます。
今の時期はちょっと寂しい風景で、六角堂はここから見るだけにしましたが、水蓮が咲く頃にこの橋を散策するのは楽しいでしょうね。
松林を戻り、池の中央の橋を渡って対岸へ。静かな池の周りを巡ります。
すると、いたいた。カモの群の先に一羽のサギが佇んでいます。
池の水面には雪か氷が残り、寒そうです。まさか、足が凍りついているわけではないでしょうが。
そのさらに先には、白鳥が群れで泳いでいます。
冬の水辺は寒々とした光景ですが、鳥たちに出会える楽しみがありますね。
大池公園のすぐ南には三光稲荷神社があり、赤い鳥居が並んでいます。衣食住の神様だそうです。
さて、大池公園を出て東北本線の線路を渡ると、旧陸羽街道に入ります。
江戸時代の五街道の一つに『奥州街道』があり、江戸城から白河までの街道を指していたそうですが、その後、さらにその北の陸奥国、蝦夷地までの物流が増え、陸羽街道と称されるようになったとのこと。通り沿いは少し街道の雰囲気も残っています。
そんな街道の雰囲気を感じる間もなく、先ほどからチラチラ降っていた雪がかなり本格的になってきました。矢吹駅前の交差点で止まり、慌ててスマホをしまったり雨具を着込んだりします。
ふと横を見ると、目玉のような建物が見えてびっくり。これは1995年に建てられた矢吹駅の駅舎だそうです。
雪の降る中を再スタート。寒いし雪が顔に当たってちょっと痛い。
街道から外れ、隈戸川に出てきました。
あと少しでホカホカの温泉~、と念じつつ走るサリーナ。
そしてついに、今宵の温泉宿『弁天荘』に到着。
宿の明かりが暖かい。ああ、雪が酷くならなくてよかった~
部屋で荷を解くと、早速温泉へと急ぎます。ここはアルカリ単純泉、源泉かけ流しでトロトロのお湯でした。あったまる~! そして宿の夕食は豪華、地酒も美味しく大満足。
郡山から白河へのポタ初日、心配されたお天気は何とかもって、のんびり走れる阿武隈川のサイクリングロードもなかなか良かったです。