シオンの朝
B&Bの屋上テラスでカテドラルの塔を見ながら朝食。 今日も晴れで後ろの山々もすでに目映いばかりの輝きです。
シオンを後に
今日はローヌ・ルートの最終日、ヴォー州(ジュネーヴ湖地方)のエーグルまでローヌ川沿いに60kmです。 広場の泉で水を汲みシオンを後にします。
林檎の畑
シオンを出ローヌ川沿いに辿り着くと、その脇にはぶどうや林檎、洋梨などの畑がずっと延びています。
ローヌ沿いの木立の中を行く
ローヌ沿いにはこれまでと同様、ちょっとした木立に覆われたサイクリング・ロードが走っています。
『ここは涼しくて気持ちいい〜』 とサリーナが飛ばします。
土手から降りる
しばらくこの土手の上を進みましたが、突然コースは右の標識が出ています。 先の土手は砂利道なので、標識に従いここで下に降ります。
ぶどう畑とサリーナ
下の道はぶどう畑の中を進んでいました。 後ろにはごつごつした岩山が聳えます。
『ここの畑のぶどうは実がぎっちりたくさんなっているね〜、全部ワインになるのかな〜』 こんな会話を楽しみつつどんどん行きます。
小川とぶどう畑
左手に小川が現れました。 どう見てもこれは今までのローヌとは違います。 ローヌはこの小川の向こう側に流れているようです。 ローヌから導いた用水用の川でしょうか?
正面の山はローヌの曲がり角の先にあるもののようです。 どうやらローヌは右手の山の麓をぐるっと回り込んでいるようです。
ローヌとサイダー
下の畑の間を4kmほど走ると、元のローヌの土手に復帰しました。 ゆったりとしたうねりの向こうには対岸の南側の山が近くまで迫っています。 この奥にはフランスのモンブランがわずか40kmほどのところに鎮座しているはずなのですが、残念ながら手前の山に隠れてその姿は見ることができません。
北側の斜面
反対の北側の斜面はこんな調子。 南側の山がすべて木々で覆われているのに対し、こちらは山の中腹までぶどうや果樹などの畑が作られています。
ローヌの曲がり角
先に目をやればローヌの曲がり角が近づいてきています。 これまで南西に向かっていたローヌは、カーブの先に見える山を回り込んで、ほぼ90度方向を変え北西に向かうのです。
迫る山
そのちょうど曲がり角に来ると、右手の山はローヌ際を走るサイクリング.ロードに覆いかぶさるほどに迫ってきました。 対岸には高速道路、その向こうには山が迫っています。 この曲がり角の谷はとても狭まっているのです。
道が方向を変えるとざわざわという音は聞こえるものの、木立に遮られてローヌは見えなくなります。 山は相変わらずサイクリング.ロードに覆いかぶさってきています。
この山が少し退いたところにある小さなドレナーズ村のカフェで一休み。
ドレナーズ付近
ドレナーズからサイクリング・ロードに戻る間は車の道を行きますが、ここはほとんど交通がありません。 道の脇はぶどうや果樹ではなく、麦かないかの畑のようです。
北西に向かうローヌ
ローヌに再び出会うと少し様子を変えていました。 川面はこれまでサイクリング・ロードとほぼ同じ高さにありましたが、ここでは道路が高く、水は茶色く濁っています。
先には本日の目的地エーグルの向こうのベルニューズらしき高い山が見えてきました。
薮と畑
高速道路沿い、車の道、そして薮と畑の間とここは様々な道を通ってようやくローヌの左岸に出ました。 木々の合間からチラチラッとローヌを眺めながら進みます。
ローヌに別れを告げる
サイクリング・ロードがわずかに上りになったところに斜張橋が現れました。 その袂にはたくさんのサイクリストがたむろしています。 この橋を渡ると今日の目的地エーグルです。 鋭いとんがった山々を背後にしてこの木造の橋を渡り、ローヌ川に別れを告げます。
ローヌはこの先10kmほどでジュネーヴ湖に流れ込み、そのあとフランスを流れ地中海までの旅に出ます。
エーグルのB&Bからの眺め
私たちの旅は今日はここでおしまい。 ぶどう畑の中にあるB&Bに荷を解きます。 窓から外を覗くと、北にあるお城とぶどう畑がきれい。 エーグルはこのお城を中心に、美しいぶどう畑が広がるワインの名産地なのです。 お城は現在はぶどうとワイン造りの歴史を伝える博物館になっているそうです。
エーグルの中心の通り
昼食をとるため、宿のご主人に教えてもらった中心部と思われる通りにあるレストランに向かいました。 この街は比較的新しい街のようですが、この付近だけは歴史があるようです。
イタリア人サイクリストと
すばらしいランチをとっている間に、今日はまだ時間があるので、裏手にあるレザンの上にあるベルニューズに上って、そこからエーグルまでダウンヒルをしよう、ということになりました。 頂上からは、晴れていればアイガー、マッターホルン、モンブランなどアルプスの名峰の数々を望むことができるといいます。
こうして本日の第二部は始まったのです。 私たちの出発と時を同じくして、同じレストランで食事をしていた人がキャノンデールのマウンテンバイクで出かけるところでした。 声を掛けてみると、この方、トリノのイタリア人で3週間の旅を終え帰るところだといいます。 フルカ・パスを始めとし、主要な峠をいくつも越えていました。 すご〜
登山列車で
エーグルからレザンへは登山列車です。 エーグル駅で先のイタリア人はトリノに向かい、私たちは小さな電車に乗り込みました。
これまでの列車は自転車を平場にそのまま置くようになっていることが多かったのですが、この車両は小さいからか、自転車用のハンガーが設えられていました。
自転車ハンガー
激坂をゆっくり上って行くこの電車窓からどんどん下に遠ざかるエーグルの街を眺めていると、隣から日本語が。 あれっ、と思って話しかけるとなんとこの近くに住む高校生で、マウンテンバイクを持っています。 ダウンヒル遊びのためにやってきたのだそうです。 こんな山で日本人に会うなんて、ちょっとびっくりしました。
エーグルから30分ほど揺られると終点のレザン・フェイデイ駅です。 駅を出ると豊かな自然と素朴な雰囲気の山岳リゾート地、レザンです。 ここから数百m離れたベルニューズ行きのテレキャビンの駅に向かいます。 テレキャビンって、まあ覆い付きのリフトのことです。 もっとも最近は覆いのないリフトのほうが珍しいですが。
テレキャビンから
そのテレキャビンの駅で、オットマッターとサリーナが切符を買いに行きました。 ところが5分経っても10分経っても戻ってきません。 サイダーが様子を見に行こうとするところにようやく戻ってきた二人。 ところが手に切符はなし。 どうしたのかと聞けば、上のコースはマウンテンバイク用で、かなりの難所があるらしいとのこと。 私たちの自転車で行けるかどうか不安だという。
不安なら自転車は止めて展望だけ見に行こう、というサイダーに、オットマッターは駅員が自転車を見て判断してくれるという。 そこで自転車を担いで乗場に向かい、駅員の意見を聞くと、最初の1kmほどはダートの激坂下りなので、押して下ることになる。 その後は砂利道が少しあるが乗れるだろうとのこと。
『じゃあ問題は最初だけで、そこは押せばいいんだから行こうよ。』 というサイダー。 オットマッターはその後もしつこく駅員に状況を聞いている。 こうしてああだ、こうだ、と時間を費やしたものの、オットマッターも結局行くことに。
ベルニューズ駅
こうして上ったベルニューズの標高は2,048mです。 ここは冬はスキー、夏はマウンテンバイクを楽しむ人で賑わう人気のスポットだそうで、なんと回転レストランがありました。
ベルニューズから南の山々を見る
『時間がないから早く下りよう。』 とせかすオットマッターは展望台にも上ろうとせず、なにやら焦っている様子。 しかしここまできて展望台に上らない手はない。 ちょっと見てくるから、と展望台に向かうはサイダーとサリーナ。
ここの展望はなかなか素晴らしいです。 夕方で空気の透過度が低く、雲も出ているので遠くまでは望めませんでしたが、運が良ければこの南側にはフランスのモンブランが見えたはずです。
ジュネーヴ湖
そして西にはジュネーヴ湖。
北東の山々
北東は明日上って行く近くの山の向こうに、ベルナーオーバーラントのアイガーあたりが見えるはずなのですが?
気持ちの良い湖
さて、一通り展望を楽しんだ後は例の激坂下りが待っています。 展望台から降りると、
『お〜、ここ行くんかいな?』 という、確かにすごい激坂。 もちろんダートで幅がとても狭く、なんとか自転車一台が通れるくらいしかありません。 そして先陣の轍であちこちが抉りとられています。 そーっと踏み出すも、ズズズッと滑り落ちてしまうくらいです。 慎重に先を行くサイダー。 サリーナもなんとか下りてきます。 しかしオットマッターはあちこちで立ち往生。 なんとオットマッターはロード用のビンディング・シューズだったのです。 この区間は写真なし。 途中でカメラを取り出すだけの余裕さえ、ここではありませんでした。
とにかくなんとかこの難所を終えると、そこには小さな湖がありました。 ここで体勢を整え直します。
いよいよダウンヒル
湖からは少しだけ砂利道がありましたが、ほどなくそれはアスファルトに変わりました。 いよいよ本格的なダウンヒル開始です。
激坂を下る
所々に林があり、その合間から遠くの山並みが見え隠れするすばらしいダウンヒルです。 一カ所かなりの勾配のところがありましたがその後は比較的穏やかで、林の下に出ると素晴らしい見晴らしです。
写真休憩のサイダー
『お〜、ここはすばらし〜』 と立ち止まるサイダー。 サリーナもオットマッターも立ち止まって写真撮影です。
下にエーグル
この道、ガードレールがないので慎重に下ります。 オットマッターはなんと平地以下のスピードでのろのろ走行。 体はでかいが心臓は意外に小さい?
主要道を下る
この山道をレザンまで下り、さらに下のレ・セペイまで下ると主要道に出ました。 この主要道は明日上る予定の道で、エーグルに続いています。 車がそこそこ通るのでゆっくり慎重に下ります。
ヘアピンカーブを過ぎると、下にエーグルのお城が見えてきました。
ぶどう畑とお城
まだまだ明るい19:30、ぶどう畑広がるエーグルの街中に戻ってきました。
ベルニューズからの下りは、最初の押しのところだけ気をつければ、あとはどうということはありません。 素晴らしい眺めの素晴らしいダウンヒルでした。
さて、今日でローヌ川とはお別れ、明日は今下ったばかりの道を逆に上り、チーズでおなじみのグリュイエールに向かいます。