清々しいエーグルの朝、ぶどう畑とお城の見えるテラスでプチ・リッチな朝食を済ませ、グリュイエールに向けて出発です。
今日はローヌ川に別れを告げ、エーグルから標高差1,000mほど山を上る予定でしたが、オットマッターが、
『上りはいやだ〜、列車で上ろ〜よ〜』というので、ル・セペイまで登山列車になりました。 小さなかわいらしい列車に30分ほど揺られるとル・セペイ駅です。 ル・セペイはレザンに折り返す地点にあり、昨日はこの駅をかすめてエーグルまで下ったのでした。
駅を出て幹線道に向かうと、その下をくぐり抜けてしまいました。 先には幹線道に上る道が見当たりません。 仕方なく土手をエイ〜と押し上げて、この幹線道に無理矢理出ます。 駅から反対方向に進めば難なくこの幹線道に出られたらしいのですが。。
さて、いよいよここから上りです。 一番高いモス村までは標高差500mほどです。 エイとふんばり、上り始めるオットマッター。
昨日の下りでは気になった車も今朝はさほど多くありません。 周囲の山々を眺めつつ順調に進みます。
この周辺は山の中腹まで民家がまばらにあるところで、集落と呼べるようなものはないのですが、道端に突然こんな教会が現れたりします。
えっこらえっこらとオットマッターが行き、サリーナが行き、サイダーと続きます。 斜度は4〜5%で丁度いい感じです。
1時間半ほどでモスに到着したようです。 このすぐ先で道は下りになるので、ここのカフェのテラスで休憩です。 周辺はスキー場のようでリフトがあり、ちょっとしたキャンプ場もありました。
モスからは穏やかな下り。 先に見えるごつごつした岩山を目掛けてススーと下って行くと、ロンガン湖への曲がり角になるラ・レシェレットが見えてきました。
ラ・レシェレットから左に行けば依然道は下りです。 スーっと下って、川のせせらぐ音が聞こえるな、と思ったら行き過ぎ。 ロンガン湖への分岐を見逃していました。 ちょっと戻ってやり直しです。
分岐からは急に道が細くなり、路面はアスファルトからコンクリートに変わりました。
覆いかぶさるようになってきた木々の間を抜けると、ロンガン湖が現れました。 山々の合間にある湖は碧く、ひっそりとした佇まいです。
『あ、みえた〜』 と叫ぶサリーナと追うオットマッター。 湖畔を見下ろすと、牛が草を食んでいました。
湖の周囲を中程まで進んだところに、ちょっとした木陰を見つけました。 ここでお弁当ランチです。 周囲には車でやってきた家族が数組、やはりピクニックをしています。
湖畔の道はダムのところで進路を変え、山の中に向かいます。 その山へは、ごつごつした岩をくり抜いた素彫りのトンネルを通り抜けます。
トンネルを抜けると、開けた視界の先には鬱蒼とした木が生える山があり、道はその中に向かって進んでいます。 おおむね下り基調ですが、ここから細かいアップダウンが始まりました。
道はどんどん山の中に入り込み、路面も少々荒れたところが目立つようになります。 脇には小川が流れているらしく、サラサラという水の音だけが響いています。
森を抜けると視界が開け、先には遥か彼方まで起伏の激しい山並みが続いています。 これまでしばらくなかった民家が現れ始めました。
民家が現れだすとすぐ、左手は土手になりその上を線路が走るようになります。 この線路に沿って進んでいると、チンチンという音が。 このすぐ先には駅があり、その手前の踏切の音です。
こんなところを通る列車って、きっととても小さな列車だよねぇ〜 などと噂しているところへやってきたのはすごく立派な観光列車。 みんなちょっとびっくりしてカメラを向けてしまいます。 どうやらこれはモントルーからルツェルンまでの有名なゴールデンパス・ラインらしい。
ゴールデンパス・ラインに手を振りつつ山を下り、幹線道に出ます。 そこは先のゴールデンパス・ラインも通ったに違いないモンボヴォンの駅です。 この幹線道をほんの少し進み、再び枝道に入ります。
すると小さなレソック村に入りました。 その真ん中の広場には釣り鐘のような妙な形のものが建っています。 おや、あれはなんだ、と近づくと、
それは水場、泉でした。 オットマッターはボトルに水を汲み、サリーナは顔を洗い、サイダーはTシャツに水を浴びせかけます。 この日もお天気で結構暑いのです。
泉からさらに進めば木造の家々の先に白い教会の塔が見えます。
その教会のすぐ脇の民家はこれまでの切り妻屋根と違ってこんな形。 ベルン周辺に良くあるスタイルで、このあたりが文化圏としてはベルンに近いことを感じさせます。
ここからはカントリーロードの一本道です。 穏やかな起伏が続く道の先には、グリュイエールの脇の山とおぼしき山が現れました。 気持ちのいいこの道も、相変わらず下り基調ではあるのですが、アップとダウンの連続です。
快調に飛ばしている下り坂の途中、左手の山が退いて行くとその向こうの丘の上に、グリュイエールのお城が見えてきました。
お城をぐるっと廻るようにして下の街中を抜け、駅前からの正統なルートでこの丘の上にアクセスしました。 途中のヤギ道を上ると近道だったようですが。
丘の上にあるグリュイエールの旧市街は、通りの長さが100mほどしかないほんとに小さな街ですが、一大観光地でかなりの賑わいです。
ひとまず休憩を、と入ったカフェで、ここの名物クレーム・ドゥ・グリュイエールとメレンゲを試してみます。
クレーム・ドゥ・グリュイエールはダブル・クリームとも言われ、乳脂肪分の多い濃厚な味ですが、スムースで極めて美味。 メレンゲは卵白と砂糖を泡立てたおなじみのお菓子ですが、これもおいしい。 この二つをあわせて食べるのがここの定番だとか。 私たちはもう二つ、アイスクリームとフランボワーズ(ラズベリー)もあわせてみました。 どちらもGoooood!
ダブル・クリームのあとはお城探検です。 11〜16世紀の古いこのお城に車椅子用のエレベーターがあるのにびっくり。
鶴の紋章のグリュイエール伯爵家のお城だったこの建物には、窓ガラスにもその紋章が嵌められています。 ところがこの鶴がおもしろい。 どうみてもダチョウ?
テラスからの眺めは素晴らしいです。 南には教会と私たちがその麓を走ってきた山並みが見えます。
北にはブロの街とグリュイエール湖が。
お城探検を終え、ギーガー美術館をちょっと覗いてから、グリュイエールの丘を後にし、本日の宿に向かいました。
宿はグリュイエールのすぐ北西にあるパキエール村にあります。 都合でオットーマッターは駅前のホテル、サイダーとサリーナはそこから1.5kmほどの村はずれにある農家民宿です。
オットマッターと分かれたサイダーとサリーナを待っていたのは、もの凄い激坂。 オットマッターのホテルが標高730m、サイダーとサリーナの農家が870m、1.5kmで140mの上り。 ほぼ10%近い!
『ぎゃー、最後がこれ〜〜』 と嘆きつつ、えっこらえっこらとペダルを回します。
そして、やっと着いた〜、と思った家はなんと一つ手前の家でガックリ。 気を取り直してなんとか進み、着いたのがこちら。 牛がたくさんいる農家で、立派なでっかい家でした。
これで無事到着、あとはご飯だけ、と一安心。 ところがこのあと、思ってもいない展開が待っていたのでした。
シャワーを浴び、オットマッターのホテルに食事をしに出かけました。 ところがそのホテル、運悪くこの一週間はシェフが休みでレストランも休業とのこと。 近くにレストランはなく、最も近いのはグリュイエールか反対のビュルだといいます。 仕方なくタクシーで北にあるビュルに向かったのでした。
最後の激坂と休業レストランには参りましたがこのコース、上りあり、湖あり、山あり、アップダウンあり、観光名所ありと、バランスが取れた楽しいものでした。