ハルダンゲルフィヨルド(Hardangerfjord)に面したウトネ(Utne)の朝。船着き場のあたりを散策してみれば、朝日ののぼる空を覆う雲が少しずつ切れて、光が差してきていました。
そして青空が広がってきた8時過ぎ、サリーナに見送られてサイダーがウトネを出発。
今日は午後から雨という天気予報もあって、サリーナは宿でゆっくりしてバス移動することにしました。
サイダーはここウトネからヨンダール(Jondal)まで、ハルダンゲルフィヨルド沿いの景観ルートを走り、フェリーで対岸に渡ってノールハイムスン(Norheimsund)からバスに乗ります。
今日は土曜日。ウトネからヨンダールに行くバスはないので、サリーナは対岸のクヴァンダル(Kvanndal)に渡ってバスに乗り、ベルゲン(Bergen)に行く予定です。
「今日は土曜だから、ベルゲンに着いたら今日明日分のビールを買っておいて」とサイダーが何度も繰り返しながら去っていきます。ビール命、ですなあ。。
サイダーが走るハルダンゲルフィヨルドの南岸を行くウトネからヨンダールまでのルートは、Fv550の一本道。これはサリーナがバスで行くフィヨルド北岸とともに、『18の景観ルート』の一つになっています。
ウトネを出ると道はすぐに上りになり、すぐにさっきまでいたウトネの宿が下に見えるようになります。
道はどんどん高度を上げ、海抜100mまで上ります。
先に見えるのはフィヨルド対岸の山でしょうか。
振り返れば、ハルダンゲルフィヨルドが朝日を受けて輝いています。
ハルダンゲルフィヨルドから、昨日通ってきたその枝の小さなフィヨルドが奥に延びているのも見えます。
20分ほど走ると道はピークに達し、しばらく細かなアップダウンののち下りに転じ、小さな集落に入ります。
周囲は赤い実を付けたりんご畑で、その先に静かなハルダンゲルフィヨルドが続いています。
このフィヨルドは、ガイランゲルやネーロイフィヨルドのように観光客で賑わうこともなく、車はたまに通るだけ、観光船もごくたまに通るだけと、ひっそりしています。
ヴィネス(Vines)という村に下りてきました。
名前からしてワイン村といったところなのでしょうか。この周辺はぶどう畑がたくさん。
細かなアップダウンが続き、次の村アルソーケル(Alsåker)に入ります。
ここもぶどう畑。
村は大抵フィヨルド際にあるので、村まで下りたらそこからは再び上りが始まります。
上り鼻にあるのはクワルヴィク村(Kvalvik)。
穏やかな坂道の上に、絵に描いたような赤い家が現れます。その先の青いフィヨルド、足元の芝生のような牧草地とのコントラストが美しい。
やってきた方角のフィヨルドを見れば、どこまでも低い山並みが続いています。
このフィヨルドにはゴツゴツした岩山が見当たらず、女性的といっていいような景色です。
道はどんどん上っています。ここで今日はないだろうと思っていたヘアピンカーブが出現。えっさこらさとゆっくり上って行きます。
そしてこれまでフィヨルドに沿っていた道が内陸へ向かい、小さな半島の付け根を越えて進んでいきます。
さて、ちょうどそのころサリーナは。。
「11時半のフェリーに乗れば、ベルゲン行きのバスに乗れるなあ」とくつろいでいたのですが、部屋の窓から広がる真っ青な空を見て、ちょっとは走りたいという気分がむくむくと湧いてきました。
そうと決めたら荷物をまとめて自転車に積んで、すでに港に到着していた9時半発のフェリーに駆け込みました。写真の水際の真ん中の建物が泊まったゲストハウスです。
クヴァンダルへ向かうフェリーからフィヨルドの東を見れば、山並みを覆っていた雲が散り散りになり、光を受けた海が輝いています。
反対の西側を見ると、青空の広がるフィヨルドがあります。
フィヨルドの左手の海沿いをサイダーが走っているはずで、サリーナはこれから対岸の右手側を走ります。
フェリーは20分で昨日出航したクヴァンダルに到着。
サリーナのほかはモーターバイクのライダーたちが乗船していて、すぐに走り去っていきました。
フェリー乗り場の横には芝生の広場があり、青空にフィヨルドの風景が広がっています。う〜ん、いい気持ち!
10時。クヴァンダルからFv7を西へ走りはじめました。
サイダーの通っている対岸ルートとともに、この道は昨日通ったグランヴィン(Granvin)からフィヨルドに沿って続く『ノルウェイ18景観ルート』の一つとなっていて、フィヨルドの景観が楽しめます。車交通も思ったより少なく走りやすい。
4kmほど走ったところで本道はトンネルに入りますが、海沿いに1車線の迂回ルートがあります。
水際を通り、小さなトンネルを抜ける静かな楽しい旧道です。
再び本道と合流し、西に向かって進みます。オルヴィク(Ålvik)に近づくと道の両側に民家が現れはじめました。
町の中心部に入る手前に小さなマリーナとトイレがあったので、小休止。空には次第に雲が広がってきています。
11時過ぎ、クヴァンダルから約12kmのオルヴィク中心部に到着。空模様が怪しくなってきたので、自転車はここまでにして、バスの時間まで町を散策することにしました。
町はやっぱり上り坂。小学校や教会のある高台からフィヨルドと対岸の丘が見えます。
スーパーでおやつと飲み物を買い込んで、12時26分発のベルゲン行きバスに無事乗りました。ちょうど雨が降ってきて、いいタイミングでした。
こちらは再びサイダー。クワルヴィクからの上りを続けています。
海抜が300m近くになると、ようやくこの上りは終わり、先にヘーラン村(Herand)とその前にある小さな湖が見えてきました。
フィヨルドはあの湖のちょっと右手にあります。
下りのヘアピンカーブを一つ、二つ、三つとこなして行くと、丘の上に羊が放たれています。
羊毛は寒い地域ほど良いものがとれるというので、きっとここのものは上等なのでしょう。
この羊たちを横目にさらに下って行くと、フィヨルドの入り江が見えてきます。その廻りには家々が建ち並んでいます。ヘーラン村の中心部はどうやらあのあたりのようです。
フィヨルドまで下ると、そこには小さいながらもマリーナがあり、レジャーボートが浮かんでいました。このあたりは人口も少ないだろうに、ひょっとしてベルゲンあたりから休日にここに遊びに来るのかもしれません。
ここで空が暗くなってきました。今日は午後には雨になりそうなので、ゆっくりもしていられません。
ヘーラン村のマリーナは海抜0m。
ここからはまた、えっこらよっこらが始まります。
植生が変わり、周囲に松の木が現れるようになると、その足元はなんと岩場。
ここはヒーレイアンナ(Hereiane)というところのようで、道横に小さな駐車スペースとグレーのスレートで覆われたトイレがあります。
松林の先には、奇妙な尖った山が見えます。ここからはまた細かいアップダウンの連続。
スヴォーサン村(Svåsand)です。
あの奇妙な山がぐんと近くなってきました。
ノルウェイは石は豊富なようで、草屋根でない家の屋根は大抵天然スレートで葺かれています。この小さいものは一枚50cm角ほどですが、大きいものになると1m四方を超えるものもあります。
ソーレスネス村(Solesnes)から対岸を見ると、ポコポコした山並み。そして進行方向には、あの奇妙な山が立ちはだかっています。奇妙山はヨンダールのすぐ近くにあるようで、この先は山に近くなり過ぎてその姿は見えなくなります。
ハルダンゲルフィヨルド南岸の旅の終わりが近付いてきました。
最後にちょっとした丘越えをすると、下にフェリーがやってくるのが見えます。ヨンダールに着いたようです。
ヨンダールはこのあたりではかなり大きな村で、スーパーマーケットがあり、フィヨルド対岸のトゥレビクピック村(Tørvikbygd)とを結ぶフェリーが出ています。このフェリーは意外と大型で、この路線が比較的重要なものであることを伺わせます。
ちょうどスーパーマーケットの前に着いた時に、空からパラパラと雨が落ちてきました。ここでちょっとした買い物をしてフェリーに乗り込むと、運良く、すぐにフェリーは出航しました。
デッキから廻りを見ると、空に青みはなく、それを映したハルダンゲルフィヨルドも銀色に変わっています。
振り返ると奇妙山が見えます。ヨンダールへ向かっている時は気が付かなかったのですが、ここから見ると奇妙山は二こぶ駱駝でした。
ここの航海は20分で、すぐに対岸のトゥレビクピックに到着します。
トゥレビクピックに降り立つと、目の前はすぐに道路で、フェリーの順番を待つ車の列が出来ていました。
降り出した雨は止まないので、ここでお昼にすることにします。右手にバスの待合室とキオスクの赤い建物がありますが、キオスクは残念ながらこの日は休み。他には何もないので、待合室で弁当を頬張ります。
弁当を食べ終わっても雨は止まないので、ベルゲン行きのバスが出るノールハイムスンへ向かうことにしました。この天候ではノールハイムスンで本日の自転車旅は終了となりそうです。
フィヨルドが見えるところまで上ると、フィヨルドの中に丸い輪っかがいくつも並んでいます。あれは養殖生簀です。何の養殖をしているのでしょうか。サーモン?
先に小さな島が見えてきました。アクスネスホルマーナ(Aksnesholmane)というところのようです。
この島はノールハイムスンの入り江の入口にあるので、もうすぐノールハイムスンに到着します。ところが雨は本降りになってきており、バス停の小さな小屋でカッパのズボンを履き込んで出発し直します。
雨の中、入り江沿いを進んで行くと、島影の向こうにハルダンゲルフィヨルドの奥へと続く山並みが見えます。
入り江がどんどん狭くなり、その奥に、低い丘の麓に広がるノールハイムスンの街が見えてきました。
ほどなくノールハイムスンの街中に入ります。この街は今日通ったどの村よりも大きく、郡の役所があるところで、マリーナも少なくとも二ヶ所あります。
その一方のマリーナの近くまで来ると、バスが数台停車しているところに出ました。ベルゲン行きのバスもここから出ているに違いありません。
一方のサリーナ。反対側からバスで近づいてきています。
オルヴィクからしばらくの間、乗客はサリーナただ一人。その後、フィヨルド沿いの道を蛇行しながら、バスは橋を渡ってオイステーセという町を過ぎ、次の岬を回るとマリーナやホテルが並ぶようになって、対岸に白や赤のかわいい建物が並ぶノールハイムスンの町が見えてきました。
ハルダンゲルフィヨルドの北西端に位置するノールハイムスンは、夏は観光の交通の要衝として賑わっています。
バスはレストランやお店で賑わう海沿いを抜けてバス停へ。しばらく停まっていると、小径自転車の人がバスの横をスーっと通り過ぎて、海辺の写真を撮っている。何と、サイダーでした! おーいおーい、と窓越しに手をぶんぶん振る。
サイダーが、え〜っ、と辺りを見回すと、一台のバスにサリーナの姿が。雨も降っているし、必然的に自転車旅はここで終了となりました。そそくさと自転車をバスの荷物室に入れ、ここからはバス旅です。
というわけで、一緒のバスに乗ってノールハイムスンをスタート。
そこから3kmほどのところに、観光地として有名なスタインスダル滝(Steinsdalsfossen)がバスから見えました。ノルウェイに滝はいろいろありますが、この滝は遊歩道で滝の裏側を通れると人気です。
滝を過ぎるとすぐに山の中に入り、トンネルをいくつか抜けるとクヴァンスコーゲン(Kvamskogen)に出てきました。
道路は川に沿って、そしてラングヴォトネ湖(Langvotnevatnet)を回り込んで走っていきます。
クヴァンスコーゲンは丘の連なる中にある台地で、キャンプ場や冬はスキーリゾートがあるところです。
そして山を回り込むと、右手にフローランド湖(Frølandsvatnet)が見えてきました。左右の景色がどんどん変化していきます。
険しい地形の中を通る幹線は、トンネルを抜け、湖をつなぎながら、フィヨルドに達したようです。
ベルゲンが近くなって、民家も増えてきました。
車窓はフィヨルドとトンネルが続きます。
そして、ついにビル群が見えてきました。ベルゲンです。
久しぶりの都会にやってきました。
時刻は14時半。ノールハイムスンからはバスで1時間20分ほどでベルゲンに到着しました。
バスターミナルはベルゲン鉄道駅の横にあり、ぐるっと回って駅正面にやってきました。このターミナル駅は1913年に開設されたそうです。
そして駅からの通りを3ブロックほど南西に進めば、今日から3日間滞在するホテル、シティボックスに到着しました。
入るのにパスワードとかちょっとアタフタしましたが、とても便利な場所にあります。
予定より早く着いたので、ビールをたくさん買い込んでサイダーもご満悦。でも、今日はせっかく都会に来たので夕食は外食しよう、と町に繰り出しました。
そして選んだレストランはタイ料理のお店。ヤムウンセン(エビと春雨のサラダ)、グリーンカレー、そしてご飯。ああ、久しぶりで超絶的においしい〜!
よく考えると外食も久しぶり。ずっと朝昼晩サンドイッチで、よくまあ峠を上ったものですねえ。さて、明日は1日ベルゲンの観光。世界遺産のブリッゲンも楽しみです。